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J1昇格プレーオフ決勝 福岡vsC大阪 「夢と絶望の90分」を味わったC大阪

2015/12/07 19:59配信

武蔵

カテゴリ:コラム

J1昇格プレーオフ。

3位までが自動昇格であった2011年までとは違い

3位から6位までの4チームが

トーナメントにより1つの昇格枠を争うJ1昇格プレーオフに変わり

今年で4年目となります。

「夢と絶望の90分」と銘打たれ

ことさら、エンターテイメント性が強調されています。

その甲斐あってか毎年、様々な出来事が起こってきました。

徳島サポーターで俳優の大杉漣さんの言葉を借りれば

「長いシーズンの積み重ねというサッカーの本質を

凌駕することが起きるのがJ1昇格プレーオフ」

ということが言えます。

決まって強烈なインパクトを与える試合が行われてきたゆえに

その存在の確立を認めさせてきたのが、J1昇格プレーオフです。

昨年は準決勝の磐田‐山形戦での

後半AT、GK山岸範宏の劇的な決勝弾というドラマが生まれましたが

今年で4回目の2015年はどうだったでしょうか。



今年の決勝は福岡‐C大阪の組み合わせとなりました。

予算規模、ともにJ1経験クラブでもあるということに加え

3位と4位のチームが勝ち上がったということもあり

順当な組み合わせだと言えるでしょう。

しかし、リーグ戦においてこの両クラブには

15もの勝ち点差が広がっていました。

5勝分もの勝ち点差が広がる両クラブのどちらが

来期J1の舞台に上るに相応しいか。

それを考えると、どちらかというと

3位福岡が勝つ方がフェアな結果と言えるのかもしれません。


せめてもの救いとして

前後半合わせて90分を行って同点の場合は

3位福岡の勝ち上がりとなる規約があります。


決勝の舞台は、中立地扱いのヤンマースタジアム長居です。

重苦しい前半は嵐の前の静けさ

立ち上がりは重苦しい展開となりました。

福岡が試合の入りで慎重を期すことは

見る側にとって想定を上回るものではありませんでした。

ただでさえ0‐0でもミッションコンプリートの福岡は

基本的に堅守の541で相手を待ち構えます。

最終ラインに前向きの選手が多い状態で守備をすることにより相手の攻撃を撃退し

その流れの中で、1トップでも効果を発揮するウェリントンの

キープ力を生かした速い攻撃が生命線のチームだからです。


しかし、C大阪も慎重な立ち上がりを見せたのは意外でした。

勝たなければいけないC大阪は

幸運にも決戦の舞台が、日頃使い慣れた長居であることも味方に付け

大熊清監督が得意とする猛烈な前線からのプレスを

スタートダッシュとばかりに繰り出してくるものと思われました。


しかしC大阪は、しっかりと陣形を固め

山口蛍と橋本英郎の連携や、山下達也の単純な強さで

福岡の攻撃の生命線であるウェリントンに仕事をさせません。

低い位置でも良いから確実にボール(=攻撃機会)を奪い

確実に自陣からパスを繋ぐ、という目論見がありました。


福岡は541で撤退しても、我慢ができるチームです。

攻撃の形が作れない福岡は、引き分けでも勝ち抜けということもあってか

決して無理をせず、重い腰を上げることなく、前半を過ごします。

対するC大阪も、前掛かりになることなく

落ち着いてボールをキープして機を窺いました。


プレーオフ決勝というシチュエーションを考えると

嵐の前の静けさ、といった感じの前半でした。

しかし、その嵐を起こすかどうかの選択権を握っているのは

ボールをキープできているC大阪と言えたでしょう。

果たして後半は、C大阪が嵐の45分を呼び込むことになります。

C大阪の「夢」と「絶望」

C大阪は勝たなければ「夢」を掴むことはできません。

そのためにはこのゲームを動かし、嵐を起こさねばなりません。

C大阪が「夢」を掴むための一手。

それは、低いラインを敷く福岡の大外で勝負することでした。


福岡は541なので、サイドの守備は基本的に2枚です。

C大阪も442なので、同サイドには基本的に2枚となります。

その均衡を崩して人数を掛けることで

福岡の守備にも、その片方のサイドに人数を掛けさせます。

そして、そこからのサイドチェンジ。

もっと言うと、ゴール方向へ向かう斜めのロングパスを狙いました。

後半10分過ぎ、福岡の右WBの外、大外へのロングパスを

ワンタッチで折り返すという形で決定機が生まれます。


福岡の井原監督は、その直後に

「ラインを上げろ!」

という指示を盛んに飛ばします。


何故かというと、福岡は片方のサイドに寄せられたことで

全体がボールサイドにスライドします。

そうすると、よりゴールの近くにはWBがスライドしてきます。

そこへWBの外、いわゆる大外へロングパスが入ると

身長の低いWBが、相手の高いFWと競るというミスマッチが

よりシリアスな場所で起きやすくなります。

この決定機においては

右WBで167cmの中村北斗とFWで181cmの田代有三が

マッチアップする局面となりました。

この、身長という如何ともしがたい差を少しでも解決に向かわせるには

相手を自分たちのゴールから遠ざけるしかありません。

オフサイドというルールがあるサッカーにおいては

最終ラインを上げることが、それに当たります。

しかし、それにより福岡の守備陣に狂いが生じたと言わざるを得ません。

C大阪に最終ラインを上げさせられた

つまり、自発的にラインを上げたわけではないということの影響か

福岡のチャレンジとカバーリングのシステムに齟齬が生じます。

それが、C大阪の先制点へと繋がりました。


福岡は人数を余らせた最終ラインによる

前へ出ての撃退守備が持ち味ですが

それは主に3枚のCBの仕事です。

そしてその空けたスペースをケアするのは

同サイドのWBの絞りであったりするのですが

特に最終ラインの裏のスペースのケアは

GKである中村航輔の仕事でもあるのです。

ユース年代から、瞬発力ある飛び出しと広い守備範囲を

持ち味としてきた中村を組み込んだカバーリングのシステムが

福岡の守備の堅さの一因となってきました。


しかし、それが崩されてしまいました。


後半15分の得点は

C大阪の崩し、玉田圭司の技術とパスアンドゴーが見事でしたが

この得点は、C大阪が福岡を動かしたことで生まれた

まさに戦術による得点であったと言え

C大阪が「夢」を掴むための一手によって生まれました。

しかし「絶望」もまた、C大阪自身の一手によるものでした。

C大阪は後半33分、橋本英郎を下げます。

ここまでの橋本英郎は、まさに効いている存在でした。


福岡はこの試合、遅攻の中の有力な手段であるサイド攻撃を繰り出すべく

左サイドの亀川諒史に多くのドリブル突破を仕掛けさせました。


そこは右MFの関口訓充が運動量豊富に援護することで

守備面で、このサイドの数的優位を作っていましたが

それが間に合わずに速い攻撃を受けそうな時には

決まって橋本がサイドへ赴き、数的劣位を作らせませんでした。

福岡はこの試合、まともなサイド攻撃がなかなか作れませんでした。


また、橋本がスペースを管理することで

山口蛍が猟犬と化すことができ、ボールを狩り取るシーンが多く見られました。

橋本あっての山口蛍、橋本あってのC大阪ペース

と言える中で、橋本は退きました。

橋本が下がって以降

中盤で守備のフィルターが掛かる場面が少なくなり

そこからサイドへと展開されたり

勝っているのに速攻を食らう場面が見られるようになりました。


そして後半42分、途中出場の坂田大輔が中盤を突破し

左サイドの金森健志へ縦パスが入ります。

その金森を3人掛かりでも潰せず、オーバーラップしてきた亀川へパスを出され

その折り返しを中村北斗にファインゴールを許しました。



橋本は36歳のベテランで

スタミナ面に不安があるというのは一理あります。

この試合も集中力を発揮し、消耗は激しいものがありました。

ただ、リーグ戦のラスト2戦とプレーオフ準決勝という

シビアな局面で90分+アディショナルタイムの出場を

続けてきたという、直近の実績があります。


この試合の重要さ、今シーズンの最終戦ということを考えても

この試合に懸ける意気込みの足りなさを示す采配であった

という思いは大きいものがあります。

結果として、最後に「絶望」を呼び込むこととなってしまいました。


福岡はこぼれかけたJ1への切符を

自力で引き戻しました。

リーグ戦の結果から見ても、終わってみればフェアな結果だったと言えます。

自身の理想である442のゾーン守備を早々に諦め

後ろ体重を厭わず541を導入し

就任1年目で最高の結果を出した井原監督をJ1の舞台で見られることは

率直に言って、非常に楽しみなことです。

願わくは、戦力を保持した状態で挑んでほしいと思います。


C大阪は、予算規模や前評判からすれば

まさかのJ2残留となってしまいました。

ブラジルの名将も苦しむ戦術地獄や

この日の「夢と絶望」を味わったことで

J2がどういう舞台かを、身を持って知ったと思います。

それにより、クラブとしてのポテンシャルは日本屈指であるこのクラブが

さらに逞しく成長し、それに相応しい結果を残すことを願って止みません。

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