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【第5回】 流通経済大学サッカー部を知る。 全員に与えられる挑戦権と可能性 【大学サッカー】

2015/06/16 12:54配信

飯守 友子 (CHANT編集部)

カテゴリ:コラム


たくさんのプロサッカー選手を生んできた。

立派な施設があったから?
お金があるから?
選手をかき集めているから?

そうではない。
そのひとつひとつは当たり前にあったものではなく、流経大が積み上げてきた軌跡。そのものだ。


流通経済大学サッカー部連載5回目をお伝えしたい。
中野監督にお話を聞いた。


●プロを輩出してもタイトルを獲っても難しい選手獲得

Jクラブでも欲しいとする選手が優秀であればあるほどに、他クラブとの競合になるが、大学サッカー界も当然そういった競争が付き物である。
流通経済大学には流通経済大学付属柏高校(以下流経柏高)が存在し、流経柏を下部組織として考えるとそこから上がってくる選手たちが多いのも当然だ。
しかし、Jクラブのように第一優先候補が自チームであるとは限らず、流経大への推薦を蹴って他大学からのオファーがある場合には、そこに行くという選択もでき、多くの選手が他大学に進む。

これだけJリーガーを多く輩出していても、当然全員がプロ選手になれるわけではなく大学時代に芽が出ないことも考えられる。
その他にも、怪我をしたらどうする
試合に出場できなかったらどうする
をはじめとした不安要素によって、流経大に行くという選択よりも少しでも就職に有利な大学に行くべきではという選択をされてしまうというのだ。

サッカー部強豪校の中には全国的に超有名な大学も存在する。
中でも早稲田大学、慶応大学という2大私立大はサッカー部も強く、経歴という部分でいうと武器になること間違いなしの名門校だ。
早稲田、慶応の他にも明治大や法政大といった東京六大学と呼ばれる大学も、将来を考えてという選択になると進学の選択肢として流経大は並ぶことは難しいという。

競合するとなると国士舘大学や駒澤大学との選択ということになるが、流経大が建つ場所は茨城県龍ヶ崎。
都内にある大学とは違って良くいえばサッカーに集中できる土地であるが、大学生活を送るには都内が良いという選択をする選手も多い。
そういった中で、次世代の選手たちをスカウトするには何枚もの壁を越えなければならない。

高校サッカー界やクラブユースの中からJクラブに進む選手、そして東京の有名大学に進学したいと選択する選手たちのその次の選手たちが集まることになるという流経大。
流経大は選手を確保する段階では2番手3番手どころか5番手6番手になることが多いという。
もちろん流経大の戦いを見たりその結果やプロ輩出の手腕を信じて1番手に選択し入ってきてくれる選手も今は増えたものの、それでもチーム編成という部分で新入生をスカウトするには結果を出していても、プロ選手を輩出していても、毎年難しいという。

それでも4年間を経て、卒業するときにはプロになる選手が一番多いのが流経大サッカー部なのだ。
高校やユースで試合に出ていなかった選手でも、4年を経て流経大のトップで試合に出場しプロ選手になる選手もいる。
その4年間でその選手がなぜそうなるか。
それは中野監督や大平コーチなどの流経大サッカー部の指導者たちに出会ったからと選手は表現するだろうが、中野監督はそうではない、という。

その4年間、その選手が人一倍努力したからこそです。
と言い切る。

流経大に来たときは5番手6番手…またはそれ以下の評価だった選手が、流経大で過ごす4年間でその時1番手2番手だった選手を越えて
プロ候補として強化指定選手となったり、複数Jクラブからオファーが来たりするのは
流経大で選手たちが努力を重ねた結果。
中野監督や流経大のスタッフたちはあくまで主役ではなく、主役である選手たちに間接的に関わり、それを選手たちが自分なりに受け止めた中で努力した結果だという。

元々超一級である選手はほとんど他の大学との競合で負けてしまうと中野監督は話す。
しかし、大学入学の時についている能力の差は流経大での4年間でひっくり返すことも可能であり、流経大に入ってきてくれた選手たちを信じどこよりも成長させてあげようと選手としてだけでなく、人としての部分にも関与し4年間を共に過ごす。

中野監督はピッチでは厳しいと表現される監督だ。
試合中に選手を怒鳴っている姿を見たことがあるという人も多いかもしれない。
お前、なにやってんだよ!?
そう怒鳴る姿に、あの監督すごい怒ってるな…と感じることもあるかもしれない。
しかし、その言葉には必ず背景が存在する。

試合に向けての準備期間の1週間から2週間の練習。
選手に対して行っている指導の中で選手が改善しなくてはいけない点や、修正しなければいけない点を選手たち自身が理解し練習に取り組んでいるが
そう取り組んできたのにも関わらず同じミスをしてしまったり、同じ経過をたどってしまったりすることで
お前、なにやってんだよ!?
という言葉はとても抽象的な表現であると感じるかもしれないが、それには背景があり、その部分は修正してきたはずなのに同じことを繰り返してしまったと気づいている選手に対してかける
中野監督と選手の間にある時間を最大限表す言葉なのだと 中野監督は言う。

試合だけを見に来ると中野監督はただ怒ってると見えるかもしれない。
しかし、その言葉の背景には選手と中野監督だけが理解できる背景が詰まっているのだ。

●流経大のシステム。1軍から6軍ではなくすべての選手に可能性を与えるトップチームを取り囲む5チームの可能性

流経大には6チームが存在する。
流経大は1軍から6軍という分け方ではない。
トップチームを中心に残りの5チームが囲むように存在していると中野監督は話す。

トップチームを指揮する中野監督だが、他のチームのコーチたちから選手たちの情報は常に入ってくるようになっている。
スタッフ陣から最近この選手が良いですよ聞くと、その選手をすぐにトップチームに呼ぶことにしているという。

トップチームは人数の定員は設けていないが、30数名がいることが多い。
そこにトップチーム以外から呼んだ選手をトップチーム選手が30名いるとしても31番目の選手として呼ぶのではなく
他チームで良いとされている選手をすぐにトップチームの試合で中野監督は起用する。
まずは使ってみる、と中野監督は言う。

そのチャンスを生かせるか否か。
その状況でチャンスを生かせなければ、プロでは当然やっていけないと中野監督は考えている。
機会が与えられた試合のためにどう準備して、どう対応して、結果を出すか。
まずはどの選手にもその時間を与えるのだという。

チャンスの結果が振るわなくてももちろん見捨てることはしない。
その経験をもとに、自分に足りないものはなんだったのかを考え、また日々に生かすその姿をしっかりと見る。
それが流経大の選手たちのモチベーションに繋がっている。

レギュラーの選手であっても控えの選手であっても隔てなく、可能性は全員にあると伝え続ける。
トップチームで試合に出られるのは11名。

そのメンバー発表が毎回一番指導者としての一番つらいと感じる瞬間だと話す。

調子の良い選手は俺を使ってくれという目で見つめるんです。
その目には、頼むという願いが込められている。
監督、頼む、という信頼を含めて向けられている。
でも、11名を選択しなくてはならない。ルールを侵した選手は入れないが、今のベストを組むことで試合を迎えようとする中で、調子が良い選手が11名とは限らない。どうしても選ぶことができなかった選手もいる。
その選手が準備してきた一週間を思い返すと、申し訳ない気持ちになってしまう。

と、監督は話す。

選手たちを信じているからこそ、使ってあげたいと常に思っている。
選手たちを固定ではなく、随所で入れ替えたり可能性を探るために起用したりと多彩だからこそ
レギュラー選手じゃなくとも、流経大からはプロ選手が輩出されるのであろう。

試合に出られるのは11名。
しかし、一年で13名もの選手をプロに送り出したこともある。
いかにスタメンという固定ではなく随所で選手たちの最大限の良さを理解し、起用してきたかという手腕であろう。

流経大は企業でいえば中小企業だと中野監督は表現した。

最大は日大の7万人
法政大には35000人の学生が在籍し
明治大や地方である福岡大でも2万人の学生を抱えているが
流経大の総学生数は5400人。
企業としては中小企業であり、お金がある大学なんてことはない。
しかし、ひとつづつマネジメントしお金のないところにお金を作り、選手たちを抱えるに必要な施設を整えてきた。

238名の部員がいるからサッカー部にお金があるのではない。
238名もサッカー部に入れておいて、練習場に238名が収まらなかったり生活ができなかったら、それは詐欺と同じだと中野監督は言う。

それだけの多くの選手が、試合に出られるかわからない中でチャレンジしたいと思うような場所でなくてはならない。
サッカーをしに茨城県龍ヶ崎の大学に来たのだから、それ相応の施設がなくては失礼にあたると、中野監督は話す。

数万人規模の学生を抱える大学はそれだけ授業料やさまざまな収入が見込まれ、数億円を用意することは難しくはないところもあるという。
しかし、5400人の学生規模の大学である流経大が数億円の施設を数か所も持つことは難しいことだ。
しかし、そこで諦めてしまってはそこで止まってしまう。
夢を拡げるためには、行動力が必要であり無理と決めつけてしまったら道はそこで途絶えてしまう。
中野監督は、ないものは作り出す、難しいことにはチャレンジする。

そう切り開いてきた17年間があっての、今の流経大サッカー部なのだ。

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