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【RKU】 二人の守護神が高め合う 新井栄聡×オビ・パウエルオビンナ 伝え合う刺激と経験 【流通経済大学】

2017/12/22 13:31配信

CHANT編集部

カテゴリ:コラム


インカレこと全日本大学サッカー選手権は、残すところ決勝のみとなった。
流通経済大学は、3年ぶりの決勝進出を決め、タイトルまであと1つというところまできている。

流通経済大学は、同じメンバーを固定せず流動的に選手を起用するが
今大会、ここまで戦ってきた中で一番の変化を挙げるとするならば、GKに変更があったことであろう。

昨季から公式戦ではほぼオビ・パウエルオビンナがゴールマウスに立ってきた。
GKで1年生の一番最初から公式試合に登場するのは、異例といっても良いほどに衝撃的な印象を与えたが、
入学してすぐにリーグ戦から出場し続けたオビは、大学の試合はもちろん、Jリーグクラブとの練習試合等でも経験を積んできた。

清水エスパルスに内定しているGK新井栄聡は、昨季までJFLで戦う流経大ドラゴンズでプレーしてきた。
現在のチームが新チームとして迎えた頃、トップチームに昇格。
「トップに上がったからには、4年生ということもあり、もちろん試合に出るつもりでチャンスを掴もうと思っていた」
「でも、そこにはオビがいた」。

●タイプの違う二人の競争。「あの時」を振り返る

二人はタイプが違い、ゴールマウスに立って放つ影響も異なる。
お互いを刺激しあい、競争する日々がはじまった。

関東大学リーグ開幕戦でゴールマウスに立ったのは、新井だった。
インカレ準決勝でも当たった東京国際大学と迎える 自身はじめての関東リーグ開幕戦だった。
リーグ優勝を目標と掲げた流経大にとっては、大事な初戦。
「東国大は実家からも近く、練習場も近くにあることもあり、地元というイメージを持っていた。
そういう気持ちもあり、開幕戦はモチベーション高く入ったが、ミスをしてしまいチームに迷惑をかける結果になってしまった」
チームは、敗戦。自らのミスを悔やむ結果となった。

インカレ準決勝。東京国際大に延長の末2-1で勝利した後に、新井が振り返った開幕戦での苦い思い出。
振り返れば、あの時。
オビは自身のポジションを取り返すためには、どうしたら良いのかと、できる限りのことを考えていた。

リーグ開幕戦で、ゴールマウスに立つことができなかったオビは
試合に出場している選手たちではなく、その控え組中心で挑む浦和レッズとの練習試合を、自分のアピールの場と考えた。

1年生時からオビは
「浦和と練習試合をすると、いつも衝撃を受ける。自分の中ではありえないと思っているところにシュートが飛んでくる」
と話してきたように、浦和レッズとの練習試合ではいつも自分の未熟さを突きつけられ、そして学ぶ。
その場だからこそ、1シーズン守護神としてゴールマウスに立ってきた経験と、今自分が出せる限りを出すことで、
チームにアピールができると考えていた。

「前半は気合いが入りすぎて、落ち着けずに空回りしてしまったけど、後半は落ち着きを取り戻して、自分らしくアピールすることができたと思う」
と、自身が手ごたえを感じた通り、その後オビが再び公式戦のゴールマウスに立った。

「栄聡さんは、自分よりもチームを盛り上げるのがうまい。声をかけて選手たちの志気をあげることができるし、
選手としてすごくストイック。学ぶことも多くて、自分はこのままでいいのかと自信がなくなることもある。
でも、自分にないものを比較しても仕方ないし、自分にあるもので勝負しようと思っている」
と、その時期オビは新井と自分を比較し、改めて自分を見つめていた。

リーグ戦、アミノバイタルカップ、総理大臣杯…
オビがゴールマウスに立っていても、新井はベンチで自分らしさを持って常に戦ってきた。
ベンチから誰よりも大きな声でピッチにいる選手たちを鼓舞する。
セットプレーの際にはオビに提案の声を送り、ハーフタイムに戻ってきた選手たちを励ました。
大きな愛情を持って、リスペクトを持って。
自分が出られなくとも、心からチームを支え声を出し、チームで使う物を大切に運ぶ姿が常にあった。

そういった姿に、周囲の選手たちも新井の存在感と信頼がチームになくてはならないものとして
ピッチに立っていなくとも、欠かせない存在となっていた。

●U-20代表選出とポジション争い ゴールマウスに立ったのは。

シーズンを終盤にして、二人は痛みを抱えていた。
新井は手を骨折し、オビは肩の痛みがあった。
最後の大会、インカレに向けてお互いに標準を合わせ準備しようと回復に努め、ピッチに戻ってきた頃だった。

オビがU-20に選出され、タイ遠征へと行くこととなった。

東京五輪世代となるこの世代の代表について、オビは選出前。
どこか現実的にはまだ捉え切れていなかった。

自分の世代が五輪世代となることは、16歳の頃から意識は持っていた。
しかし、U-17など世代別代表に選出されても、ハーフながらに持つ身体能力や将来性という部分がピックアップされ
「自分でもなんで選ばれていたか、正直わからなかった」
と感じるほどに、「他に選ばれる人たちがうますぎて…その差を突きつけられていたので、どこか消極的で。いきたくないなぁと思っていた時期もあった」と、いう。

プロ選手を多く輩出する流通経済大学で、1年生の開幕からゴールマウスに立ったが
それでもなお、しばらく選出されていない自分の世代の代表には距離があり、現実的ではなかった。

強豪と呼ばれる流経大で試合に出場し、多くの強豪大学や有名な将来を有望視される選手たち、
Jリーグクラブとの対戦を重ねていく中で、自分になかったストロングポイントも生まれ、
徐々に東京五輪という目標が明確になり、代表に選出されている選手たちを見ると、悔しいという感情を抱くようになった。

そして、ついに選出されたU-20。
これまでに選出されてきた選手というよりは、チャレンジという意味合いが強い
森保監督となり初の代表選出。「自分のことをみてくれて評価してくれる人たちがいる」と改めて感じた。

「かなり驚いたが、絶対になにか残さなくてはと思った。他に選出されたGKは年下だし、
自分が一番できて当たり前だと思って合宿に挑んだ」

とにかくアピールをして、自分の能力を出し切らなくてはと決意を持ち、合宿に参加した。
特別緊張もなかった。もちろん17歳の頃に感じた代表に行くのが嫌だなという消極的な感情も消えていた。
流通経済大学で2シーズンほぼゴールマウスに立ってきたことは、自信となっていたからだ。

しかし、森保監督から大きな声で指摘が飛んだという。
「自分はビルドアップに関しては自信を持っていたが、ボールを足元に持った瞬間にオビー!と大きな声が飛んだ。
自分でやれると思っていた足元は、森保監督が求めるものには全然達していなくて。
練習の中で取り入れられるフィールドの選手とのパス練習でも、フィールドと同じスピードと正確性が求められる。
森保監督が求めるGKは、足元がもっともっと必要なんだと痛感した」

代表で新たな刺激と課題、そして経験を重ねていたオビ。
インカレ2回戦には間に合わず、3回戦に間に合う帰国スケジュールという中、
インカレ初戦となった2回戦。ゴールマウスには新井が立った。

「オビがいないということは自分がゴールマウスに立つんだ、と。そう思って準備に努めた」
という新井は1-0の完封で2回戦突破に貢献。難しい初戦を0で抑えた。

オビが帰国したのは、3回戦の前日。
再び競争がはじまったが、3回戦もゴールマウスに立ったのは新井だった。

「今日もちょっとどっちが出るのかと、不安な部分はあったと思う」
と新井の心境を言葉にしたのは、JリーグでGKとしてプレーした経験を持つ 遠藤大志コーチ。
新井とオビの良い形での競争を一番近くで見てきた遠藤コーチは、
「誰が出ても自信を持って送り出せる。お互いをリスペクトできている関係であるからこそ
良い競争の日々を経験にできていると感じる」と話す。

延長戦まで戦った3回戦。
チームの勝利は心から嬉しいが、オビはベンチという位置に
「悔しくないわけがない。出たい、ピッチに立ちたいと強く感じた」
「勝ち上がってくれたので、2日間のトレーニングでしっかり良いアピールしたいと思う。インカレに出たい」。

中野監督は
「うちのチームは代表だからという特別扱いはしないし、代表にいってる間にポジションを奪われる気持ちで行けと送り出す。
その間を埋める選手が良いアピールができれば、その選手がポジションを奪うことになる」
と、話す。これはオビだけではなく、これまで選出されてきた選手たちも同じだった。
選抜や代表で離れている間に、新たな選手が結果を出す。
そして生まれる層の厚みもあり、再びポジションを奪うために選抜や代表という名に優越感を得て勘違いせず、原点に立つ大切さを伝える。

迎えた、準決勝。
東京国際大戦。
「リーグ開幕戦で、自分のミスで負けてしまったというあのスタートが新井に残っていると思う。
だからこそ、立ちたいという気持ちもあるはず」と遠藤コーチ。

準決勝のゴールマウスに立ったのは、新井栄聡だった。
しっかりと集中し、押される場面でもチームを救うセーブでチームを鼓舞する。
ミスした選手にも、大きな声ですぐに励ましの言葉を贈る。
チームの一番後ろから見えることすべてを把握し、チームのために声を出す。

2-1。
チームはついに、決勝行きの切符を掴んだ。
全員で目標にしてきたタイトルが、現実味を帯びてきた。

新井は、4年生。
「これまでのインカレはスタンドからみてきた」
1年生の時に獲ったインカレ優勝という大きなタイトルは、スタンドで応援という形だった。
「今はピッチに立っている。4年生。これまでのことを思い出す」と話す。

「オビはこれまでゴールマウスを守ってきて、もちろん世代別代表に選出されるほどの良いGKではあるが、
タイトルをチームに獲らせるGKに今はなっていない。事実これまで惜しいとされながらも、タイトルを逃してきた。
いろんな要因はありながらも、新井は今タイトルに届きそうなGKになっている」

「タイトルを獲れるGKと獲れないGK。その差はどんなところなのか。技術だけではない部分。
それを4年生である新井が、オビに示してくれることになれば良いかなと思っている。
4年生である新井が後輩のオビに残すもの。
来年からは、オビに今のような競争はなくなってしまうかもしれないからこそ、
今二人の間にあるこの経験は貴重です」
と、遠藤コーチ。

400チーム近くある 大学サッカーの頂点を決めるインカレ決勝。
一番長くサッカーをすることができた2つのチームに、流通経済大学が残った。

新井栄聡と、オビ・パウエルオビンナ。
競争はあと二日のトレーニングでも熾烈を極める。


全日本大学サッカー選手権大会
決勝
流通経済大学×法政大学

12月24日
浦和駒場スタジアムにて、12時キックオフ。

Writing/Tomoko Iimori    Photo/Yasuko Tohyama,Yuka Matsuzaki

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