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私と、FC東京と、石川直宏。

2017/08/05 04:07配信

サッカー君

カテゴリ:コラム


石川直宏選手が、引退を発表した。

多くのサッカーファンにとっては、そこまで大きいニュースではなかったかもしれない。

しかし、FC東京のサポーター。

とりわけ、10年以上もFC東京を応援してきた人にとっては、ここ何年かで一番の出来事であったと思う。



驚きがあったかと言えば、そうでもない。

怪我に苦しみ、試合に出れない日々どころか、年々が重なり、早いもので年齢も36歳。

年々充実していくFC東京の選手層。

「もう無理なのではないか」といった感覚は、応援したい気持ちとは裏腹に、育っていった。


わかっていたはずなのに、いざ直面すると切なくなってしまう。

そう思わせる魅力が、石川直宏という選手には備わっているのだと思う。




ここで、私個人の話となってしまうが、石川直宏のお話を振り返ってみよう。

私が、石川直宏を知ったのは2004年。

当時大学生だった私が付き合っていた彼女がFC東京のファンで、サッカーに全く興味がなかった私が、味の素スタジアムに連れて行かれたのが始まりだ。



当時はまだ「部活サッカー」と呼ばれた名残が残っていた時代。

しかし、石川直宏という名前はどこかで聞いたことがあったのか、メンバー表を見て、唯一「耳にしたことがある選手」だった。

そして、彼女も石川直宏のファンであった。

私とも同い年であり、とても親近感が湧いたことを覚えている。



ボールを持つと、独特のリズムで、大きなストライドでサイドを切り込むドリブル。

石川直宏のドリブルは、シルエットだけでも分かるような、独特の世界観を持っていたと思う。

正直、素晴らしいテクニシャンというわけではなく、ドリブルも大味で奪われることも多いのではあるが、それでも石川直宏がボールを持つと、スタジアム全体が期待をして熱気が高まるのを、感じたことをとても覚えている。

そして私も、スタジアムの雰囲気に倣うように、石川直宏が右サイドでボールを持つとワクワクするようになった。



しかし、当時の私も若かったので天邪鬼。

女子に人気だったのに嫉妬していた部分もあったと今では思うが、ベタに石川直宏を応援する気になれず、地元が近く同い年だった茂庭照幸のユニフォームを買って応援していた。




そんな中、最初に石川直宏の存在感を感じたのが、ファンになって翌年の2005年だ。

彼の出身であった横浜F.マリノス戦。

私自身も、横浜国際に観戦に行っていた。

当時は、まだマリノス出身の選手、といった色合いが強く、マリノスファンからも「裏切り者!」といった意味のブーイングが起きたことを覚えている。

石川直宏にとっても、古巣戦ともあり、気合が入っていた様子が強く感じられた。

しかし、接触プレーでもない場所で、急に倒れ込む石川選手。

診断結果は、右膝の前十字靭帯損傷で、全治8ヶ月。

サッカー選手が、一番したくないと言われる怪我だ。

石川直宏がいる右サイドが当たり前だと思っていた中で、いざ長期離脱を突きつけられると、チーム自体の活力が失われる気がした。

そして、その後の試合の選手紹介で、石川選手が呼ばれないことに、サポーター全体からいまいち盛り上がりに欠ける雰囲気を目の当たりにする。

FC東京は、石川直宏のチームだったのだと、痛感したことを記憶している。

今でこそ、FC東京は日本代表クラスがひしめく素晴らしいクラブに発展したが、当時は石川直宏頼みの泥臭いクラブだったのだ。



怪我から復帰したのは、実に305日後の2006年7月19日。

しかし、その後も怪我前のパフォーマンスを出せず苦しんだが、2008年頃から再び輝きのあるパフォーマンスを見られるようになった。



そして、FC東京サポーターなら、忘れるはずのない2009年の石川直宏。

この年の石川直宏は、「ボールに関われば、決める」と言えるほど、圧倒的な決定力を示し、Jリーグ史上初のミッドフィルダーでの得点王を狙えるほどに活躍をした。

しかし、ここでも石川直宏の成功への道を邪魔したのが「怪我」だった。



得点王争いをしていたリーグ終盤の第29節、柏レイソル戦。

https://www.youtube.com/watch?v=bPMkpTkyviM

縦のフライスルーパスに反応した石川直宏か、軽やかに脚を当てて、見事にゴールを決める。

しかし、競り合いながら決めた着地の時に、膝に負担をかけてしまい、そのまま負傷退場。

診断結果は、悪夢の2005年と同じく、今度は左膝の前十字靭帯損傷。

2005年の同じ怪我からようやく感覚を取り戻して復活をして、再び同じ怪我で長期離脱をすることになるという、悪夢ともいうべき怪我であった。



しかし、この年のJリーグアウォーズにて、石川直宏は自身初の「ベストイレブン」を獲得。

私個人としては、もし選手を1年ごとに切り出せるとしたら、贔屓目もあると思うが、2009年の石川直宏は、Jリーグ史上のベストイレブンに選出できるほど輝いていたと、私は思う。




その後復帰後は、2012年にザッケローニ監督によって日本代表に復帰するなど、怪我から見事に復活。

しかし、2013年からはエースのルーカスが右SHで起用される機会が増えるなどで、この時期から出場機会が激減してしまう。

タイミングの悪いことに、 腰椎椎間板ヘルニアを患ってしまい、2014年はカップ戦のわずか1試合のみの出場。



しかし、その後復活し、2015年には第4節甲府戦で、1年4ヶ月ぶりのゴールを決める。

これまでのサイド起用ではなく、2トップの一角として存在感を放ちつつあり、「石川復活か!?」とサポーターも大いに期待した。


だが、やはり、ここでも石川直宏を怪我が襲う。

2015年の親善試合フランクフルト戦にて、再び左膝前十字靭帯の損傷。

サッカー選手が、絶対にしたくないという怪我を、三度目にしてしまった瞬間だ。



年齢も、34歳。

この時期に引退を考えたとも言うが、クラブからの慰留もあって復帰を決意。


しかし、その後J3での復帰はしたものの、J1での復帰はできないまま、先日の引退発表に至った形だ。







このように、石川直宏を振り返ると、「怪我に泣いた」サッカー選手人生だったと思う。

24歳で大怪我をして、ようやく復調してようやくブレイクかというタイミングの28歳で、再度大怪我。

そして、再びパフォーマンスが戻ってきた34歳でダメ押しの大怪我を負ってしまう。。




「もし、怪我をしなければ」

そう思ってしまうと、サポーターとしては、残念で仕方ない。

なぜなら、日本中を探しても、石川直宏のような観衆を期待で包み込むようなプレーヤーはなかなかいないから。




しかし、同時に思うのです。

そんな度重なる怪我があっても、変わらない石川直宏のパーソナリティ。

どんなときも、誠実に。

どんなときも、前向きに。

私は、気づくとサッカー選手の中で、石川直宏のことがいちばん好きになっていました。



石川直宏の魅力は、メンタリティだと思います。

ブログや、インタビューのコメントを見てても思います。

石川直宏は、他のどの選手よりも、酸いも甘いも経験をして、達観をしているのだと。

このような苦い経験によって、何より石川直宏選手には、試合に出ていなくてもチームを引っ張っていけるだけの、パーソナリティがあると思うのです。

そして、石川直宏が話す言葉だからこそある説得力も生まれていると思います。




同じように、若くして前十字靭帯の損傷を繰り返してしまった米本拓司。

彼も、若くして日本代表に選出されるなど、将来を渇望された選手です。

彼にとって石川直宏選手の経歴は、とても大きな支えになったのではないでしょうか。




アマラオ、ルーカス。

FC東京には、紛れもない「レジェンド」が存在していました。


しかし、それでも「地味」だったFC東京の黎明期2002年に、石川直宏は当時名門だった横浜マリノスから移籍をしてくれました。

そいして、それから、ずっと石川直宏は、FC東京のアイコンであり、スターなのです。


「○○よりも」といった比較論になってしまうと、様々な意見が出てきてまとまりませんが、少なくとも「FC東京の顔」として、石川直宏以上の選手は、FC東京にはいなかったのではないでしょうか。

そして、彼の誠実さは、佐藤寿人選手や、彼自信がライバルと指名した茂庭照幸選手らのコメントに現れていると思います。




こういうと怒られてしまうかもしれませんが。

石川直宏は、Jリーグ全体で見ると、ダントツで上手いわけでもなく、有名でもなく、ブランド力もある選手ではないかもしれません。

しかし、間違いなく、FC東京サポーターにとっては「アイドル」であり、バルセロナにとってメッシやネイマールのような「アイコン」なのです。



2018年。

FC東京は、史上初めて、アイコンを失うことになります。

今まで、当たり前のように在籍してくれていた、石川直宏が、いなくなってしまうのです。


アイコンと言われる選手は、各クラブにもいるかと思いますが、彼ほど愚直に一つのクラブを愛してくれ、在籍してくれた選手はいないのではないでしょうか。

逆に、これほどまでに石川直宏を引きつけてくれた魅力が、FC東京にあるのだと信じたいです。




石川直宏は、FC東京のレジェンドになります。

この言葉に賛同しない人は、いないのではないでしょうか。



ただ、15年も在籍した石川直宏が、こんなシーズン半ばで引退を発表したのは、覚悟以外の何物でもありません。

期待とは裏腹に、順位は沈んでしまっている。

しかし、これから、もっと浮上できるはず。

ここに、石川直宏の人生をかけるという意味での発表だと思うのです。



すでに成熟をしてしまって、他クラブからも積極的に補強をできるようになってしまったFC東京。

もしかしたら、石川直宏のようにこれだけ長く在籍をしてくれる選手は、二度と現れないかもしれません。



石川直宏選手を、見れるのもあと半年です。

出場しなくとも、今のFC東京には、石川直宏が宿っていると思うのです。



「振り返るのは、シーズンが終わってから」と話した石川直宏。

ぜひ、今シーズンが終わるまでは、石川直宏と一緒に夢を見たいとは思いませんか?



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