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【大宮アルディージャ】 強く籠めた「勝つ」という想いと覚悟 さいたまダービーで力強く掴んだ今季初勝利 【J1】

2017/05/01 20:05配信

CHANT編集部

カテゴリ:コラム


ダービーは戦場―。

ルヴァンカップ第3節 北海道コンサドーレ札幌戦後。
監督会見の最後に、渋谷監督が口にした 決意の漲る言葉だった。

2月25日に開幕したリーグ戦を重ねること8試合。
ルヴァンカップでは、負け無しながらも2引き分け。
今季に入り10戦勝利のないまま迎えた さいたまダービー。

迎える浦和レッズは、開幕戦こそ落としたもののリーグ8戦を 6勝1分1敗で戦い首位に立ち、
ACLでもレギュレーションにより2位となっているものの グループリーグにて強く大きな存在感をみせる戦いを続けてきている。
今季「も」強い 浦和レッズを相手に「1/34というよりは、この一戦に『今後に懸ける想い』を持っていきたい」と話した、渋谷監督。

ダービーは、特別な試合となる。
順位は関係ない。現状も関係ない。
何が起こるかわからない。それがダービーだ。

選手たちも、口ぐちに意識を置いていると話した さいたまダービー。
ここまで結果を掴めず苦しく進んできたからこそ、そのビッグマッチに「懸ける」「籠める」想いを持っていた。
だからこそ、絶対に勝たなくてはならない。
負けるわけにはいかない、というよりは、この試合に勝つことでこの先に繋げられるという信念を持って
全員で向かい挑んだ、決戦だった。

前節では、ガンバ大阪を相手に0-6という厳しい結果に終わった。
どう見てもその試合は惨劇と映る、違いを真っ向から突き付けられた試合となった。

開幕から勝利なく約2ヶ月進んできたが、0-6という厳しい現実を迎えたことに
監督、選手をはじめクラブ全体として大きなダメージとなったことは否めないであろう。
しかし、ダメージが大きくともその後も試合が続く。
その結果を受けて、渋谷監督はそこで得た課題に取り組むため、足りないと感じた部分、違いを感じた部分に意識を置く修正を取り入れたトレーニングを組んだという。

「ガンバ戦で学んだところは、アプローチのスピード、ボール際の部分。我々にボールを持たせてくれない、あのスピード。」
と、渋谷監督がルヴァンカップ札幌戦後に、ガンバ戦での敗戦について触れ、「あと1mいけるかいけないかというところで大きく変わる」と分析し、
「Jリーグ1」と評した浦和を迎えるさいたまダービーに向け、修正課題を挙げ、取り組んでいることを話した。

昨季は、ダービーがゴールデンウィークの連戦最終だったこともあり、直前のリーグ戦ではメンバーを入れ替え戦いに挑み、ダービーに向け選手たちのコンディションを整えたが、
今季は直前のルヴァンカップに、ダービーや今後の戦いを想定した要素を落とし込めた。
結果は1-1のドローではあったものの、怪我から復帰した瀬川祐輔が後半に投入されると、攻撃に良いスイッチが入り、新たな可能性を感じさせる材料が生まれたことは、さいたまダービーに向けて良い準備ができた試合だったといえるのではないであろうか。

瀬川投入後、攻撃に変化が生まれたことに江坂任は
「瀬川が入ったことで、それまでは自分だけが裏に抜けられる選手で厳しかったところから、ボールを持った時に裏へ出してそのまま走り込むことができるあいつの特徴も含めて、バリエーションが増えた。
結果的に相手を揺さぶることもでき、攻撃しやすくなった」と話した。

さいたまダービーを迎えるにあたり、「(ボール支配は)一方的な試合になるのは間違いない。それでも失点しなければ勝機はあると思っている。
出場するかはわからないが、自分が出たとしたら(さいたまダービーという)特別な機会なので思い切り勝負したい」と
はじめて迎えるさいたまダービーへ、ルヴァンカップ札幌戦にて移籍後初ゴールを決めた瀬川が決意を語った。

ボール支配率は34%。
ボールを回され、多くのパスを繋がれた試合だった。
「圧倒的な試合になる」それは渋谷監督も選手たちも口ぐちに言葉にしたことだった。
それでも、勝機はある―。

浦和の連動するボールとポジショニングの速さやゲームの支配は、Jリーグトップクラスのひとつの基準となっている程に
強力な圧力を感じるほどの迫力と、余裕がある。
ダービーでもそういった力を強く感じる時間帯が長く続いたが、それでも浦和レッズにいつもはみられない多くのパスミスが起きていたのは確かだった。

試合開始から、浦和のエース興梠に対し、マンマークでついたのはこの日キャプテンマークを託された、金澤慎。
メンバー発表の際に、渋谷監督にキャプテンを命じられたという金澤だが、ここに渋谷監督の「懸ける」気持ちがまたひとつ見える。

渋谷監督が話してくれる多くのインタビューの中で、自然と何度もその存在を例えとして指す時に出す名が、金澤だ。
アカデミー時代から指導に携わってきたこともあり、その成長を見守り手を伸ばし変化を受け止めてきた指導者であるからこそ、金澤の名が自然と挙がる。
育成というキーワードが出る話になると、必ずといって良いほどに金澤を例に、渋谷監督は振り返る。
プロサッカー選手として歩み出してから今日まで、そしてサッカー少年からプロサッカー選手となるまでの道程を隣で寄り添ってきたであろうその情景が浮かぶほどに、記憶しているその細かな瞬間の数々を渋谷監督は、目を細め、語る。

ある時、渋谷監督はトップチームの選手に対し
「アカデミーではすごく近い存在でいることを意識してきたが、トップチームの選手たちには距離感を取ることも大事だと思っている」
と、話した。
と、いうのもプロの選手は自分のステージアップを考え、移籍を選択する場合もある。
逆にチームとして、上を目指すために、どうしても選手との別れを選択しなくてはならない場面もある。
だからこそ、距離感をとって選手が先を選択することに感情を持ち出しすぎてしまわないように、良い意味でドライでなくてはならないと、話したことがあった。

それでも、渋谷監督からは、選手たちへの愛情が常に見え感じられる。
そして誰よりも、大宮アルディージャに対しての愛情を深く持っていることも伝わってくる。

すべてを懸ける試合と位置付けたからこそ、金澤慎にこの試合のキャプテンマークを託したのではないであろうか。
アカデミーから続く、ダービーという因縁。
その意味を深く知るのはアカデミーからダービーを戦い続けてきた選手であり、長く関わりを深めてきた金澤慎にキャプテンを託した渋谷監督の「想い」が見える。

金澤が興梠にマンマークでついたことで、浦和としてはやりづらさを感じていたのは確かだったはずだ。
序盤から激しい浦和の攻撃を前に、集中した守備の時間が続く。
GK塩田は相手選手と交錯し強い衝撃を受けながらも、何度も身を投じてゴールマウスを守る。
浦和のキレのある切り込みとボールコントロール、精密なパスを前に、何度もゴール前に運ばれながらも、集中したディフェンスで跳ね返す。

少ない攻撃の中でも、光を魅せたのは、瀬川だった。
ルヴァン札幌戦でゴール後、「J1という場所ということもあり、すぐに研究されて分析されると思う。ひとつのプレーが材料になると思うが、それだけではないというところを増やしていかなければならない」
と瀬川が言ったように、まだJ1での分析材料の少ない瀬川だが、札幌戦でのプレー・ゴールはおそらくダービーへ向けての分析対象となったであろう。
それでも、瀬川はまだ大宮では見せていない奥行を感じさせるプレーで、浦和ゴール前で数々の可能性を仕掛け続けた。

後半に入ると、前半に大きなチームのチャンスに絡んだ長谷川アーリアジャスールを下げ、大山啓輔を投入。
大山もまたアカデミーから、さいたまダービーを戦ってきた選手だ。
絶対に勝たなければならないこの戦いに、身体と胸に染み込んだプライドを持って、ピッチに立ったことであろう。

前半、ハードな守備の連続だっただけに疲れが出ると思われた後半だったが、大山投入により大宮アルディージャは攻撃の舵を獲ることに成功する。

前線が活性化し、この日ボランチではなく右ハーフに入った茨田がより躍動しはじめると、ゴール前で可能性を生んだのは、やはり瀬川だった。
瀬川が何度も相手ゴール前に顔を出し、チャンスを作り相手ゴールに攻め入る。
何度もあと一歩のところまで詰め寄りながらも、日本代表GKでありJリーグ最高のGKである西川周作が何度も立ち阻む。
浦和レッズの強固となる3バックも幾重にも重なり阻止にかかる。

ルヴァン札幌戦でも3枚であったディフェンスを前に、対3枚の戦い方を頭に置きながらプレーしたという瀬川。
浦和レッズとの個の力や守備の組織に違いはあるものの、イメージは出来ていたはずだ。
瀬川は1度目、2度目、3度目と、対峙するたびに同じことは絶対にしない。
対相手がどのような動きをしているか、クセがあるかを対峙した際に掴み取り、次はこうしようとトライの方法を決める。

ダービーでも、そういった瀬川の「勝負」が何度もみられた。
結果として、ゴールという明確な結果には結びつかなかったものの それでもチームとして攻撃のリズムを掴み、波状となる攻撃を仕掛けられた大きな原動力となったことは間違いない。
チームとして攻撃に向かう良い雰囲気を作り出し続けた。

そして、その瞬間がやってきた。

浦和「らしくない」パスミスからカウンターを仕掛け、ゴール前へと送られたボールは江坂を経由し、右に流され
そこに走り込んだ茨田が、浦和のキャプテン阿部が滑り迫るわずか先で、渾身の想いを込めて、脚を振り切った。
そこに込めた気持ちが瞬間的に伝わってくる、シュートだった。

オレンジに染まるゴール裏の目の前で、ゴールネットが揺れる。

大宮アルディージャ、先制―。


その後、浦和レッズの怒涛の反撃を受ける。
1試合平均3得点、今季0点で終わった試合がない浦和は、何度も何度も大宮ゴールに迫る。
時間を重ね、体力的に厳しくなってくる時間帯でも、
「タフに。タフにやるのは当たり前ですが、それでもタフに。」と、ずっと言い続けてきていた渋谷監督の言葉通り、大宮の選手たちはタフに走り続けた。
巨大で強靭な敵を前にするからこそ、それを上回るために必要となる集中力で、何度も迫りくる攻撃を、何度も何度も跳ね返し続けた。
泥臭く、身を投げ、キレイではなくとも気持ちを込めて、何度も立ち上がって立ち上がって、跳ね返した。
何度も浦和には普段ほとんどないパスミスが起きたことも、大宮アルディージャから漲る何かが起こさせたのかもしれないと感じるほどに、
「勝ちたい」という強い気持ちはゲームを動かし続けた。

負け続けたからこそ
勝ちたくても勝てなかったからこそ
苦しい時間を過ごしてきたからこそ

勝ちたいという その強い気持ちと、その想いは、ホームスタジアム全体をひとつにした。


試合の終わりを告げる瞬間は、オレンジに染まったスタンドが一斉に両手を挙げ、勝利の瞬間を手放しに喜んだ「歓喜」だった―。


大宮アルディージャ 1-0 浦和レッズ

ついに手にした今季初勝利は、浦和レッズを相手にしての さいたまダービーでの勝利だった。


苦しく我慢の時間を過ごしたサポーターたちは、涙を流し歓びを噛みしめた。
勝つ、って嬉しい
勝つ、って幸せ
勝つ、って気持ち良い

大きな、大きな1勝。
これまで勝てなかった10戦を経て、この1勝を持って
この勝利を起爆剤にできるか否かは、これからの戦いに懸かっている。
大切な大切な今後になることであろう。


大宮アルディージャは、全員で1つとなり得た勝利を持って
この先も、挑み続ける―。

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