CHANT(チャント) ヴァンフォーレ甲府

ヴァンフォーレ甲府の2017年は変革の年になる

2016/11/17 18:14配信

武蔵

カテゴリ:コラム

J1はリーグ戦の全日程が終了し、年間順位が確定しました。

J1残留争いに目を向けると、名古屋、湘南、福岡が降格となり

最終節まで降格の可能性を残していた磐田、甲府、新潟は残留が決定しました。


来季へ向けた動きが、お家騒動的な部分も含めて活発なのは名古屋と言えますが

残留を果たした甲府もまた、変革を志向しています。

その中で甲府の来季の監督が吉田達磨氏に内定したという報道がありました。


甲府は昨年の5月から、佐久間悟氏が監督を務めてきましたが

GMとクラブの副社長を兼任するなど多忙を極めていました。

また、昨年に続き今年もチームを残留に導くことに成功しましたが

J1残留を第一の目標とし、541による専守防衛を基本線とした上での

今年の勝点31は誇れる数字ではなく、例年なら降格してもおかしくない数字であり

今オフでの監督交代は既定路線と言えました。


では、なぜ吉田達磨なのか。

そこには、ハッキリとした理由と、そこに至るまでの流れがあり

吉田氏に懸かるのは、来季だけでなく、未来の甲府だと言えます。

思想家・吉田達磨

吉田氏は2年連続でJ1の監督を務めました。

そしていずれも1年以内での退任を余儀なくされた指導者です。

柏で10位、新潟で15位(途中解任)という成績しか手にできなかった氏を

なぜ甲府は監督として迎え入れるのでしょうか。

吉田氏が率いた両チームに共通して見られたのは

433(4141)によるボール保持に「こだわった」サッカーを志向したことです。

しかし、ボール保持には、どこでボールを奪うかが大事であり

そのボールを奪う仕組みに乏しいということで、ボールが奪えず

その結果としてボール保持が出来ないという事態が多く見受けられました。


そのため、新潟での終盤においては、守るために3バックを導入し

それによって、前線の枚数が減り、ますますボール保持に支障をきたすという

本末転倒な状況を呼び込んでしまい、4連敗ののち、解任となりました。



それでも監督としての仕事が絶えないのは、氏の誇るべき功績である

10年にも及ぶ柏の下部組織で積み上げた実績があるからでしょう。


柏のU-15、U-18、ダイレクターなどを歴任し

柏の現在に至る、ボール保持を大切にするサッカーを形作ってきました。

2015からトップチームの監督に就任した際には

「相手を破壊するサッカー」

という抱負を述べましたが、それに対して誰もが期待を抱いたはずです。

それも、彼がそれまで日立台周辺で築いてきたものが、評価を得ていたからでしょう。

では、なぜ吉田氏がトップチームの監督として成功を収められなかったのかといえば

それは、トップと下部では、監督に求められることが違うからではないでしょうか。

夏場のリーグ戦開催が少ないため、採るべき戦術に影響が出ますし

年代的に、監督には教育者的な側面が重視されるなどの違いがあります。


吉田氏や大榎克巳氏など、育成年代で成功を収めたからといって

トップチームでも成功を収められるとは限らないと言えるようになった昨今です。



しかし吉田氏は、確かに柏の下部組織における

哲学や思想設計に携わり、それをよく落とし込んだ人物と言えます。

それは、現在の柏の下部組織の繁栄や

下部組織出身選手がトップチームの半数以上を占めるという客観的な事実からも

明確に言い切れることではあります。


柏は現在、吉田氏と同じく、柏の下部組織に長らく携わってきた下平隆宏監督の下で

トップチームと下部組織との融合を図っています。

それを方向付けたという功績が、色褪せることは無いでしょう。



甲府が必要としたのは、そういった

思想家としての吉田達磨です。

これは、ヴァンフォーレ甲府というクラブのこれからを見据える上で

非常に重要な資質だからです。

ヴァンフォーレ甲府の挑戦

今季、甲府の1試合当たりの平均観客動員数は10,497人であり

前回J2だった2012年の10,407人に迫ってしまいました。

これで、4年連続でのマイナスということになります。


では、最盛期がいつだったかというと、2007年でした。

この年は、今では不可能となったホーム浦和戦の国立開催もありましたが

それにしても、J2に降格したシーズンだったにもかかわらず13,734人を記録し

ヴァンフォーレというクラブが、甲府という街の宣伝に一役買い

そして何より、甲府という街に根付く、大きなきっかけとなりました。


この年は大木武監督の3年目のシーズンであり

狭い局面を作り、細かくパスを繋ぐ「クローズ」と、前からの猛烈なプレスにより

前年からJ1に旋風を巻き起こしていました。


ここに、観客動員回復のカギが埋まっているように思えます。

つまり、541での「人は石垣、人は堀作戦」による

専守防衛でとにかくJ1残留を目指すサッカーには見切りを付け

能動的なサッカーをすることで、甲府の人々の目を惹きつけ観客動員へと繋げる。

そして、これこそが甲府のサッカーだという哲学を

ほぼゼロからでも築き上げ得る、その実績のある人物が必要だということです。

そこへ、甲府のクラブ規模という枠組みを考えた上で

吉田氏を招聘したというのであれば、合点がいく話であります。



甲府というクラブは、そういったトライを試みてきた歴史もあります。

今に続く541を形作った城福浩氏も、J2時代の2012年から就任した当初は

ダヴィを中心としてボールを保持するサッカーを志向しJ1へと導きました。


2015年に就任した樋口靖洋氏も、横浜時代のサッカーといえば

中村俊輔とマルキーニョスを生かすためのショートパス志向と

そのためのサイドでの数的優位とハイラインでした。


甲府フロントは、今までもボール保持にこだわるサッカーへの転換を図ってきました。

今回の吉田氏の招聘も、その流れの一環と言えます。



来季は、そういった戦い方の変換に踏み切ることになるでしょう。

チームスローガンに「プロヴィンチアの挑戦」を掲げる甲府のこと

予算の関係もあり、いつも以上に厳しい戦いになることは避けられません。


ただこれは、甲府というクラブが先へ進むために必要な変換であることも否めません。

甲府の2017年は、クラブにとって重要な、変革の年になることでしょう。

小瀬から遠ざかった甲府の人々をもう一度呼び戻すための

その第一歩を、吉田達磨とともに踏み出す年としたいところです。

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