CHANT(チャント) ジェフユナイテッド千葉

和製ベインズ・阿部翔平は ジェフ千葉を救えるか

2015/12/21 19:20配信

武蔵

カテゴリ:コラム

「続投」や「全力投球」など

野球用語がいつしか一般化した例は多々ありますが

この時期に活発となる移籍市場を指した

「ストーブリーグ」も、元々は野球界発の言葉です。


そのサッカー界のストーブリーグですが

シーズンオフに突入したクラブを始めとして

続々と来期へ向けた補強が進行しています。

その中でも注目なのは、阿部翔平(甲府→千葉)です。

J1からJ2への「ステップアップ」

阿部翔平は移籍初年度の昨年から今年の33節まで

なんと、67試合連続で先発出場を続けました。

甲府の3421の左ウイングバックとして

まさに、不動の存在と言えました。

そんな阿部翔平ですが

12月14日、J2のジェフ千葉への完全移籍が発表されました。

プロ入りを果たした名古屋、そして甲府と

ずっとJ1でプレーを続けてきた阿部翔平ですが

来期は初のJ2の舞台でプレーすることとなりました。

チームにとって不動のレギュラーであり

もちろん、契約非更新、いわゆる戦力外通告を受けたわけでもありません。

なぜ、J1の甲府からJ2の千葉への移籍に至ったのでしょうか。

その答えの1つは、両クラブの予算規模にあります。

甲府は元監督の城福浩氏の発言に代表されるとおり

「プロビンチャ」であると言えます。

プロビンチャとは、地方の規模の小さいクラブのことを指し

甲府のチーム人件費は7億6000万円ほどというデータがあります。

J1のトップ勢は軒並み20億円を超すことを考えると

その規模はおよそ1/3ということが言えます。

そして、同じ年の千葉のチーム人件費は10億6000万円です。

つまり、J1の甲府よりもJ2の千葉の方が

少なくともクラブ予算は多い、ということが言えます。


選手への待遇も、それに準じたものとなるでしょう。

複数年契約による好待遇であるという報道もあります。

今回の阿部翔平の移籍はある意味で

ステップアップと言うことができます。


千葉の泣きどころは2つ

とはいえ、甲府はJ1で千葉はJ2です。

千葉は来期で7シーズン目となるJ2暮らしからの

脱却をせねばなりません。

阿部翔平を獲得できたことは

その目標へ向けた問題解決への、大きな一歩となると言えます。

その問題は2つあり

1つはポジションの問題です。

甲府にとって阿部翔平が重要な選手であったと同じように

千葉にも中村太亮という選手がいました。

中村はその左足の精度を生かし

クロスやセットプレーから得点を生み出してきました。

しかし、その中村は来期の磐田への移籍が決定しています。

千葉は主力級の左SBを欠き

そのポジションの補強は急務であったのです。

そこに紛れもなくJ1レベルである阿部翔平の補強は

まさに、理想通りと言えるでしょう。

また、千葉はチーム戦術上の問題があり

阿部翔平のようなタイプの選手が必要だったのです。

理由の2つめは、引いた相手を崩せない、という問題です。

今シーズンの千葉はJ2リーグ全42戦のうち

先制された試合が15試合ありました。

その試合の勝敗は1勝2分12敗です。

J1昇格を争うチームとしては、偏りがあります。

また今年の千葉は、先制された試合に限らず

「先制して引いた相手に得点を挙げることができない」

という現象も起こっていました。

今年の千葉は、ボール支配率が60%を超える試合が6試合ありました。

1試合でボールを6割保持するということは

一方的な試合展開となることもあります。

しかし、その6試合の勝敗は3分3敗でした。

つまり千葉にとって、ボールを持たされる状況は

非常に都合の悪い展開だったと言えます。

その6試合のうち5試合で、今年の最終順位が

二ケタのチームを相手にしたものでした。

千葉が今年はプレーオフ圏内すら逃した原因として

下位チームからの取りこぼしがある、ということが言えます。


J1クラブよりも多い予算を持つ千葉は

もちろんJ2ではビッグクラブと言えます。

そんな千葉を相手に採る作戦は

守備を固めてのカウンター狙いであることが多くなるのは当然です。

千葉がJ1昇格を果たすためには

引いた相手に対する明確な崩し方が必要なのです。

和製ベインズ・阿部翔平

イングランド・プレミアリーグのエバートンに

レイトン・ベインズというサイドバックの名選手がいます。

2014ブラジルW杯のイングランド代表で

そのW杯では2試合で先発フル出場をしました。

2012年にはそのプレミアリーグのベストイレブンにも選ばれました。


足首のケガで手術を受けた影響で

最近のイングランド代表からは外れていますが

来年の欧州選手権には間に合わせてくるでしょう。

クラブでは15節のクリスタルパレス戦で復帰を果たしました。


彼の持ち味は左足の精度です。

もちろんクラブではセットプレーのキッカーを務めます。

「クロス職人」と、日本のメディアで書かれたこともあります。

しかし、それだけではありません。

自身からサイドハーフへのパスや

センターフォワードへの斜めのチャレンジパス。

あるいはワンステップでサイドチェンジできるキック力と精度・・・。

彼の左足から始まる攻撃のビルドアップは

クラブでも代表でも、そのチームの重要な攻撃手段となります。


Jリーグにおける阿部翔平のプレーは

イングランド・プレミアリーグでのベインズを

彷彿とするものがありました。

その長所から、体格の問題からサイドバックとしては

やや空中戦に不安があるところまで。

ただ、やはりボールを持つと目に付く長所は

リーグを代表するものがあるという部分が

一番の共通点と言えるでしょう。

2016年の千葉は、ボールを持たされた時に阿部翔平がいます。

阿部翔平は現状の千葉の問題を解決し

見事、J1へと導くことはできるでしょうか。

少なくとも、千葉がボールを持った時にサポーターが退屈する

というようなことは減るでしょう。

Good!!(0%) Bad!!(0%)

この記事も読んでみる