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【天皇杯】 ベスト4出揃う。12/29準決勝 95回目となる歴史に名を刻む決戦に挑む権利を掴むのは―。【元日決勝】

2015/12/29 00:04配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


日本サッカー最古であり、数々の歴史を重ねてきた天皇杯は今大会で95回を数える。
残り2試合となった今大会、95回目の頂点に立つのはどのチームになるであろうか。

今季の天皇杯終盤はかなり過密日程となっており、1週間で3試合というタイトなスケジュールをこなすことになる。

26日に準々決勝が行われ、勝ち上がった4チーム

ガンバ大阪×サンフレッチェ広島
浦和レッズ×柏レイソル

で行われ準決勝は29日、行われる。

●戦い続けるサンフレッチェ広島

セカンドステージを制し、それと同時に年間チャンピオンの座を獲得し、チャンピオンシップを戦いリーグのチャンピオンとなったサンフレッチェ広島は
その後すぐに始まったクラブW杯にて、世界を相手に広島サッカーを突き付け素晴らしい戦いを記憶に残した。

チャンピオンシップを戦うことなく、天皇杯の戦いも終了しているチームは11月の下旬にすべての公式試合を終えているが、広島は12月に入ってからすでに8試合目を迎える。
広島は12月2.5日のチャンピオンシップ決勝、10.13.16.20日のクラブW杯、そして26日の天皇杯準々決勝を延長120分を戦い、中2日で再び天皇杯準決勝に挑むという
かなり過酷なスケジュールが続いており、肉体的にも精神的にも疲労が蓄積されているのは間違いないが、
驚くべき点は、今季Jリーグにおいて強さを示し続けた広島が、さらに強くなっていると感じる点だ。

チャンピオンシップでの決戦は、アウェイでの戦いとなった第1戦で森保監督の采配が的中する形での気迫の逆転ゲームは強いメンタルへと繋がり
ホームで迎えた満員のエディオンスタジアム広島にて行われた第2戦では、先制されながらも追いつくことに成功し、チャンピオンシップを制した。
年間通して強さを増してきた戦いをしてきた広島は、今後もなかなか追い越せでないであろう勝ち点を重ね史上最高勝ち点を記録したことにも納得がいくほどに
これまでの経験から見えた安定と冷静さ、そこにプラスされた気迫と新しい戦力と可能性を持って、文句なしのリーグチャンピオンを獲った。

クラブW杯では、タイトな日程ということもあって広島には帰らず大阪、横浜と長期キャンプのような形となり
選手たちの疲れも考慮しながら、様々な選手を起用し広島サッカーの幅を魅せた。
固定したメンバーで戦ってきたように感じる森保監督の采配だが、今季は実にさまざまな選手を起用してきたことも強さの要因のひとつだったであろう。
若手との能力や実力の差が大きかったと感じた昨年までよりも、積極的にポイントを持って選手を起用し、経験を積ませたことは大きな成長に繋がった。
試合だからこそ積める特別な経験がそこに在ると選手たちが理解しているからこそ、試合に出ることの特別さを持って意識高く挑んだことで、チーム内競争は激しさを増した。

チーム内で競争が生まれることで選手たちの向上心と闘争心に火が灯り、良い形で融合が生まれた。
ポイントで起用することで自分が穴になってはいけないという責任を背負うこととなる選手たちが、穴になるまいと奮闘し、さらに先の選手の穴埋めではなく自分の良さを存分に出すことでまた違った可能性があることを示した。
それが、クラブW杯でもいきた形となった。

特にクラブW杯終盤で起用された茶島の活躍は、広島の新たな武器となり、世界と戦う上で慣れない相手であったとしてもフラットに戦える武器として
素晴らしいキックから生まれるセットプレーの数々に可能性を大いに持たせてくれた。
大舞台での堂々たるそのプレーの数々は、頼もしさを感じさせるものだった。

日本では戦えない、日本のチームにはない特徴を持ったチームと戦っていても、90分という時間の使い方を持って決して焦らず試合を運び
我慢の時間帯を迎えながらも耐えるだけではなく、相手の特徴を掴み、攻略する適応力は、広島のサッカーそのものだった。

クラブW杯の一戦一戦で強く逞しくなるサンフレッチェ広島に、どこまで強くなるのかと感じるほどに
チームの総合力を上げた大会となったのではないであろうか。

それからほどなくして、再開された天皇杯。
過酷なスケジュールは続き、移動の必要な長崎県で行われた試合であったが
クラブW杯にて南米王者であるリバープレートに負けるまで広島はしばらく負け試合はなかったが、約2か月前セカンドステージで敗戦となった相手・FC東京を相手に、早い時間に先制されたものの後半浅野がゴールし追いつくと、
延長まで試合は続き、またも浅野が決め、サンフレッチェ広島は準決勝へと勝ち上がった。

かなり厳しいスケジュールが続いているが、それでもタイトルを目指しひとつひとつ力を付けながら再び挑む。
試合を重ね強くなっているチームがまたひとつ強くなれたという実感を持ち、自信を付けているようにも感じる。
目指すはもちろん、頂点だ。


●もう負けるわけにはいかない ガンバ大阪

チャンピオンシップでは宿敵といって良いであろう相手・2位浦和レッズとの戦いに勝利し、3位という立場ながらチャンピオンシップ決勝へと挑む権利を得たガンバ大阪。
1戦目のホームでは、逆転負けという痛い敗戦となったが、アウェイの戦いでも先制するなど最後まで年間首位サンフレッチェ広島を苦しめた。
3位という位置ながら、当然目指したのはチャンピオンの座だった。
昨年3冠を獲ったガンバは、今季も年間通して強かった。

ナビスコ杯決勝では鹿島に敗戦となり、準優勝。
チャンピオンシップでも広島を苦しめながらもトータルスコアで届かず2位という結果となった。

残るタイトルは天皇杯。
チャンピオンシップが終わってから切り替えが一番早かったのは、ガンバ大阪だったかもしれない。
チャンピオンシップの過酷なスケジュール、そして今季日本勢として一番長く戦ったACLとリーグ、ナビスコ杯との兼ね合いの過酷なスケジュールなど
昨年から続く日程の過酷さと今年も戦ってきた。
その疲れをほんの少しだけの休みで癒し、その後すぐに天皇杯へ向けトレーニングを開始。
ナビスコ杯準優勝、リーグ準優勝という結果を持って、タイトルに届かない一年にはしたくはない。
ACLを含めたすべてのタイトルに関わる戦いをしてきたガンバ大阪は、今季も強いのだ。

準々決勝、鳥栖との戦いではエース宇佐美がゴールを決めた。
宇佐美が決めることでサポーターも含めたチーム全体が盛り上がることができるのが、エースである証だ。
この人が決めると勝てるといった方程式が生まれるような存在感は、創ろうとして創れるものではない。
限られた者だけが得られる称号だ。

準決勝の相手は今季5度目の対戦となる、サンフレッチェ広島。
広島はクラブW杯を経てさらに力を付けているが、ガンバ大阪にもチャンピオンシップを獲れなかった悔しさがある。
もう負けたくはない相手であるはずだ。

昨年の天皇杯チャンピオンの意地を持って、準決勝に挑む。

●タイトルを獲るために 浦和レッズ

クラブ史上最高タイの勝ち点を挙げながらも年間首位を獲れず、チャンピオンシップで敗戦となってしまった浦和は
ガンバ大阪と勝ち点が9差ありながらも3位という位置となったのは屈辱的な結果といえるであろう。
チャンピオンシップのシステムにも疑問が残るが、それでも現行のシステムでは3位という位置となる現実。
このままの位置では来季のACLはプレーオフからのスタートとなり、2月9日という2016シーズンのチームを作っている最中にACLプレーオフの戦いを迎えることとなる。

昨年、リーグタイトルを目前にしながらも逃してしまったという悔しという言葉で言い表せないほどの厳しい経験を経て、その挑戦を折ることなく今季こそはとキャンプから激しいトレーニングを重ねた浦和レッズ。
Jリーグの中でもトップクラスの選手たちが集まる浦和だからこそ、常に厳しい練習と競争が存在し、意識が高くなければ自分のポジションはすぐになくなってしまうという緊張感の中で一年を過ごすチームである。
その高いモチベーションとプロサッカー選手としての意識の高さが当たり前に存在する浦和レッズというチームは、やはりリーグ屈指のクラブであることは間違いない。

絶対にと挑んだ今年、無敗でのファーストステージ優勝を実現。
どのチームが浦和を倒すかという戦いとなった今季のJリーグだった。
敗けた数は最小の4試合。しかし、それでも年間タイトルには届かなかった。
しかし、まだ戦いは終わっていない。

トーナメントという戦いを得意としない浦和レッズというイメージがあるが、今季は9年ぶりに天皇杯ベスト4の位置についた。
前回の天皇杯優勝は、連覇という形で獲った9年前のこと。
当時の戦いを知る選手はほとんどいないが、今浦和には浦和の強さがあるという確たる自信を持つ浦和レッズだからこそ
天皇杯というタイトルを掴み、再び来季のリーグの頂点を目指したいところだ。

チャンピオンシップ敗退から長めの休暇を経て、元旦を目指す方向性を持った。
1月1日の舞台に立ち、サポーターと共に歓喜の歌を共に歌うことができるであろうか。
まずは、柏レイソルを相手に準決勝に挑む。

●4度目のACL参戦に向けて頂点を目指す 柏レイソル

今季リーグでは厳しい戦いが続き、来季からは新体制となることが決まっている柏レイソル。
リーグ戦ではタイトルに絡むような戦いができなかったものの、ACLでは勇敢なる戦いをみせ、アジア王者となった広州恒大との試合など、印象に残る試合が数多く残った。

チャンピオンシップの戦いはなく、天皇杯を戦う4チームの中では唯一、リーグ最終戦から1か月以上、公式戦を戦っていない柏レイソル。
公式戦が一時的に終了し、天皇杯への試合へ向けての調整やモチベーションの維持など難しかったと考えられる。
久々の公式戦となった天皇杯準々決勝だったものの、仙台との1戦ではどちらも譲らない戦いとなり、PK戦まで進んだ戦いを制して、準決勝へと勝ち上がった。

天皇杯優勝チームにはACLの出場権が与えられる。
今季ACLをプレーオフという位置から勝ち上がり、決勝トーナメントまでを進み戦った柏レイソル。
Jリーグとは違うその独自な戦いを経験している柏だが、4度目となるACLを再び挑戦したい場所と定める。

仙台戦では延長開始早々に失点し、疲れた中での失点を前に絶望的となってもおかしくはない場面で
1人少ない状況ながら食いつき、PK戦を経て勝ち上がったその興奮を持って準決勝に挑めるのは、疲れのマイナス面を打ち消すだけのモチベーションになるであろうか。

リーグ戦でも今季、柏は浦和を苦しめた印象にある。
試合としては1分1敗ではあるものの、強かった今季の浦和に3得点を得るなど、あと一歩というところまで苦しめた2戦だった。

3大会ぶりの天皇杯タイトルまであと2つ。
チャンピオンシップを含め今季のリーグの話題の中心だった、広島ガンバ浦和という3強に
柏レイソルが真っ向から挑む。


柏レイソル×浦和レッズ 味の素スタジアムにて13時キックオフ
ガンバ大阪×サンフレッチェ広島 ヤンマースタジアム長居にて15時キックオフ


1月1日。
天皇杯を掲げるのは、どのチームとなるであろうか。

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