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フィッカデンティのコネクション カビルは期待できるのか

2016/07/27 19:52配信

武蔵

カテゴリ:コラム

「夏補強」の締め切りが迫っています。

2016年の第2次補強期間、いわゆる夏の移籍ウインドウは

7月29日(金)をもって締め切られます。


さて、昨今のサッカークラブの補強において重要となるのはコネクションです。

コネ、というとネガティブなイメージを持たれる向きも多いかもしれませんが


「世の中、所詮は金とコネ」

「大事なのはコネと人脈」


と言われる場面は多々あります。

サッカー選手の、とりわけ外国籍選手獲得におけるコネの良いところは

クラブ側としては、海外の代理人任せとなったり

You Tubeでの映像を基に獲得を決めるなどの場合よりも

リスクを軽減することが出来る点です。

つまり、今風な言い方をすれば外国人ガチャを回すような

そんな、闇雲な補強策となることを回避する確率が高まります。


そして、Jリーグクラブへと移籍してくる、その外国籍選手にもメリットがあります。

指導者によっていかようにもスタイルが変わるサッカーという競技において

そのクラブに、ある程度の方向性を見知っている監督、強化担当が在籍していると

移籍先が例え異国だとしても、移籍のハードルが下がると言えます。


鳥栖の監督である、マッシモ・フィッカデンティは、今回のウインドウで

モロッコ代表経験のあるムスタファ・エル・カビルを

自身のコネクションを動員して、呼び寄せました。

フィッカデンティ監督は、自身がセリエA・カリアリを率いた折に

カビルを指導したという実績があります。


周知の通り、フィッカデンティ監督は

昨年までの2年間において、同カテゴリーのFC東京を率いたのですが

その2年間においても、コネを活用した外国籍選手の獲得を果たしています。

それら、2例の獲得実績をおさらいすることで

鳥栖のニュー・カマーの期待度を占うことが出来はしないでしょうか?

ミケーレ・カニーニ(キエーヴォ→FC東京)

U-21を始め、イタリアの各年代別代表での実績が光る

ボクシングの村田諒太似のイケメン長身CBです。

フル年代においても、セリエAで200試合以上のキャリアを誇ることから

日本のセリエAファンの間では、ちょっとした騒ぎになりました。


彼もカリアリで、フィッカデンティ監督とキャリアを共にしたことがあります。



ただ、FC東京においては、およそ1年間でリーグ戦10試合の出場に留まり

1年間のローン期間を終えた後、FC東京は買い取りオプションを行使することなく

契約満了となり、帰国の途に着きました。


問題となったのは俊敏性と意思疎通と言えるでしょう。

J1の日本人、またはブラジル人FWのクイックネスには手を焼き

特にドリブルを仕掛けられた際には苦しみました。

また、守備者としては意志疎通の問題もあり、GKからのコーチングや

DFライン間、または前線へのコーチングにおいて苦しんだようです。

日本において、イタリア語を母国語とする点も大きな壁となりました。


現在はセリエBのアスコリに在籍しています。

昨シーズンも25試合出場したことから、実力には問題が無かったのですが

日本での1年間で、その実力を発揮するには至りませんでした。


ただ、彼の加入により、眠れる大器・吉本一謙がレギュラーに定着したり

翌年には丸山祐市がレギュラー奪取、代表選出まで出世するなど

一応の影響は与えました。

ブラダ・アブラモフ(アタランタ→FC東京)

カニーニと入れ替わるようにやってきた、元セルビア代表のGKです。

セリエAの名門・フィオレンティーナでは

長らく、セバスティアン・フレイのセカンドGKを務めたことで知られており

日本のセリエAマニアの間では、静かなブームとなりました。


この時期のFC東京は、正GKの権田修一がオーバートレーニング症候群により離脱し

GKの質と層の両方に問題がある状況でしたので

その豊富なキャリアからも、非常に期待を受けていました。


彼もまた、フィッカデンティ監督とはカリアリ時代において、選手と監督の仲でした。



しかし、やはり彼も守備者として、コーチングにおける言語の問題がありました。

カニーニとは違い、英語を使ったとのことですが

それでも、一瞬の出来事の連続であるサッカーにおいて

言語の壁が無いワケではありませんでした。


また、ブラダは、Jリーグで活躍している数多の韓国人GKや

磐田のクシシュトフ・カミンスキーのようにビッグセーブで魅せるタイプというよりは

安定感を売りにするタイプのGKであったため、その価値が表れにくく

それ故に、昨年のJ1 2ndステージ第15節浦和戦での大ポカは

彼にとって非常に良くない印象を、クラブ内外に与えてしまいました、


TwitterでFC東京、並びに日本への残留を熱望したものの

こちらも半年のローン期間を終え、契約満了となり

フィッカデンティ監督とともにクラブを去ることとなりました。


コーチングで使う基本的な日本語の習得に熱心で

GKは守備者の中でも特殊なポジションであることから

プレシーズンをまたいだ長期間の在籍となれば、また違ったのでしょうが

半年の間に与えられたチャンスを生かせなかったということでしょう。

それで結局、カビルは期待できるのか

ここまで見ていただくと

フィッカデンティ監督のコネクションにより来日した選手は

あくまで2人ですが、2人とも定着するに至っていません。

もちろん、定着しなかったのはコストの問題もありますが

基本的には、完全移籍に至るような結果を残せなかったと言えます。


これではカビルへの期待度も萎んでしまうかもしれませんが、これには理由があり

フィッカデンティ監督と3人の選手たちを繋いだカリアリというクラブは

非常にメチャクチャなクラブなのです。


名物会長のマッシモ・チェッリーノは、監督交代の多さでその勇名を馳せ

フィッカデンティ監督も、2011-12シーズン開幕直前に招聘され

低迷すると、就任から3カ月で解任され

4ヶ月後には再登板を果たし、セリエA残留に導きますが

翌シーズンが始まって3カ月で、再解任されています。


つまり、フィッカデンティ監督とカリアリという組み合わせは

決してポジティブなものではないと言えます。

そこで発生したコネクションの精度も、そこまで高くないのは当然かもしれません。


ただ、光明もあります。

カビルは攻撃的なポジションの選手であり、そこが先の2人とは違う点です。

スウェーデンリーグでは55試合で28得点という結果を残し

ある程度は連携の必要無い、独力での突破が持ち味の選手です。

その上で、イタリア式の難解な守備システムの心得があるというのは強みと言えます。



スポーツ紙や専門紙においては「カルビ」や「エビル」などと

名前を間違えられるという手荒い洗礼を受けました。

また、来日した際には明らかに体重オーバーに見え

その通りに、指揮官からも特別に体重を絞る猶予を与えられるなど

早くも出だしからつまずいている部分もあります。


しかしイタリア流が徐々に浸透し

2ndステージでは4位に付ける鳥栖のさらなるブーストとして

そして、Jリーグを活性化させる、特殊なコネクションの成功例となるために

カビルには是非とも、期待したいところです。

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