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【大学サッカー】 札幌のレジェンド砂川誠氏率いる新生札幌大学 「やるからには勝ちたい」大阪夏の陣へ―。 【総理大臣杯】

2016/07/28 20:56配信

飯守 友子 (CHANT編集部)

カテゴリ:コラム


大学サッカー主要大会の1つである、大阪夏の陣。
今年で40回目の開催となる総理大臣杯は、32チームで開催される。

通年よりも出場大学数の多い今季の開催は、より白熱した戦いが予想される。

大学サッカーは、関東関西の強豪や名門が中心となり同じ大学世代といっても全国的にチーム力や個人能力の差が大きく出るが、総理大臣杯はトーナメント方式での戦いのため、何が起こるかわからない。

2年ぶり25回目の出場となる、北海道代表・札幌大学サッカー部―。

全国レベルで計ると要注意という位置で語られることはほとんどない。
しかし、北海道大学サッカーでは、圧倒的な強豪校であり歴史深い存在である。
その札幌大学サッカー部に今年、大きな「改革」が起きた。

名前的にはコーチだが、トップチームの事実上新指揮官として今年4月からチームの指揮を執るのは
昨年までコンサドーレ札幌にて12年半在籍し、レジェンドと呼ばれた特別な存在。
「俺たちの―。」と大きく響く、札幌という土地でサッカーをする者は知らない人はいないであろう
砂川誠氏だ。

市立船橋高校時代には選手権制覇、柏レイソルでプロデビューし、コンサドーレ札幌に移籍。
コンサドーレ札幌には12年半とコンサドーレ札幌史上最長となる期間在籍し、現役最後の年となった昨年は半年間の期限付き移籍にてFC岐阜でプレー。
多くの人々に惜しまれ愛されながら引退を発表し、ひとつの時代が幕を閉じた―。

砂川誠氏は今、札幌大学サッカー部で指導している。


●レジェンドが新指揮官となった新生札幌大学サッカー部

俺たちの砂川誠 ―。
札幌ドームに響くチャントは、札幌サポーターにとって誇り高きチャントのひとつだったであろう。
コンサドーレ札幌のレジェンドであり、砂川氏が背負った背番号8は札幌にとって特別な番号となった。
チーム1のテクニシャンでもあり、footballの楽しさを多くの人々を魅了することで伝えた選手だった。。
レジェンドとしてチームを象徴する存在であった砂川誠選手がFC岐阜へのレンタル移籍を発表し札幌を離れることとなった時も大きな衝撃を生み、一時的とはいえ別れを惜しむ人々の声も大きかったが
さらに大きな衝撃を与えることとなった現役引退を発表したのは、昨年の暮れのことだった。

多くの人々に惜しまれ、愛され、心からのお疲れさまを届けられた昨年末。
現在は自身が運営するサッカースクールで指導・運営をする傍ら、コンサドーレ札幌のアドバイザリースタッフとして、そしてコンサドーレ札幌といえばというほどに密接な関係にある「白い恋人」の石屋製菓の社員という立場にもある。
複数の活動を持つ中で今年春に声をかけられたのが、札幌大学サッカー部での指導だった。

Jリーガーとして刻み歩んだ時間を終え、次に目指すのは指導者の道だと決めていた、と砂川氏は話す。

ベテラン選手と長年の時間を重ねた選手を指しそう表現するが、実際ベテラン選手となれるのは、ほんの一握りの選手たちだのみだ。
毎年新しい若い選手たちが加入する中で長い時間必要とされる選手でいるというのは、並大抵のことではない。
それも同じチームで長い期間必要とされるという選手は、長く現役を続けているベテラン選手たちの中でもさらに絞られる。

「俺たちの」と歌われることは、簡単なことではない。
俺たちのと表現されるほどに、サポーターにとって愛され必要とされてきた選手だった。

ベテランになればなるほどに、第2の人生についてより現実的に真剣に考えることになる。
サッカー選手には、いずれ引退というひとつの節目がやってくる。
長く現役をやればやるほどに、引退していった選手たちを目の当たりにしその後の人生について考えるものであろう。
自分は、どういった道を選択するのか―。

砂川氏は長い時間プロという場でサッカーをしながら、たくさんの指導者に出会ってきた。
当然のことながら改めて、指導者によって違う理念や指導法を選手として受ける中で、自分の思考や方向性を自然と「考え」として持つようになったと言う。
同世代の選手たちから、若い選手たちまで多くのプロサッカー選手や指導者たちに出会う中、自分ならどうサッカーを伝えるか、どういった選手を育てるか―。
そういった想いを持って、その後の人生を指導者に向けて歩み始めた。

いろんなことを勉強したいと思った、と砂川氏。
その言葉通り今はJリーグ試合の解説や自身の運営するサッカースクールや活動に関わるマネジメントから経営、プロになりたいと本気で上を目指す子供たちに自身が伝え指導する立場、そして札幌大学サッカー部での事実上の監督。
さまざまな立場と角度から、サッカーを見つめ日々新しいことを吸収していると話す。

ひとつひとつに勉強する時間が必要で、今は本当に勉強することが多い、と語るように
砂川氏にとって今は、新しいチャレンジの連続だ。

その中で春に声がかかった、札幌大学サッカー部での指導。
コンサドーレ札幌と札幌大学は以前にも提携関係となり、元コンサドーレ札幌の選手としても活躍し現東洋大学監督を務める古川毅氏、現東海大学付属札幌高等学校でコーチを務める鹿島アントラーズやコンサドーレ札幌で活躍した池内友彦氏をコンサドーレ札幌からの出向という形で指導者として招聘し、サッカー部強化に務めた。
そして今年、砂川誠氏に札幌大学サッカー部の指導をという新たな「改革」が行われた。

最初は時間のある時に…程度の話だった、と砂川氏。
さまざまなことをする中で時間のある時に指導してほしいという話だったところから始まった指導だったが、指導していく中でチームを創ることへの責任からその比重が大きくなり、現在は実質トップチームの監督を務めている。
名はコーチだが、トップチームの指揮を執っているのは砂川氏だ。

自分は大学を出ているわけではないし、現役時代は大学サッカーを意識をしたことがなかったからまだ大学サッカーのことは全くわからない
と、素直に現在の大学サッカー指揮官初年度としての「位置」を話した。
リーグ、総理大臣杯、インカレ…その大会のひとつひとつの持つ位置づけも正直まだ未知だが、砂川氏自ら選手たちの熱の入り方を見て学んでいるという。

指導して約3か月。
その間に北海道学生リーグ、そして総理大臣杯予選を指揮官として経験した砂川氏。
総理大臣杯予選では北海道大学サッカー界の現在の2強である北海道教育大学岩見沢校と決勝で戦った。
今季は北海道からの出場枠が2校であるため札大は出場権を決めた後の決勝戦であったが、タイトルへ向けて当然ライバルとの戦いに全力でチャレンジし、優勝という結果を持って総理大臣杯へ繋げた。

砂川誠氏は、指導者として初めての全国大会への切符を掴んだこととなる。

●指導者としての第一歩 日々勉強と語る今

現在札幌大学サッカー部は、95名以上の選手たちが在籍している。

札幌大学サッカー部は北海道の大学サッカー史において文句なしの伝統強豪校である。
北海道の大学サッカーといえば札幌大学。それは揺るぎないものであるほどに強豪中の強豪。長年北海道の代表として全国大会に出場していることから、全国的にも北海道を代表する大学サッカー部である。

現在、北海道の大学サッカーでも関東や関西に遅れながらも芝のサッカーグラウンドが普及してきている中で、北海道という土地柄芝の管理も人工芝の管理も難しく資金面や維持費を前に現実的に難しいとする大学もまだ多く存在する。
札幌大学サッカー部は北海道を代表する大学サッカー部ながら現在も土のグラウンドで練習を重ねている。

95名以上が在籍しているサッカー部。
現在は大学リーグで戦うトップチーム、北海道社会人リーグで戦う札大GP、そしてIリーグで戦うチームと
3チームに分かれているが、グラウンドは長年使用している土のグラウンドが1面。
各チーム同じ時間に練習を行うことになり、1面しかないサッカーグラウンドで3チームがシェアしながら練習を行っている。

高校を卒業しプロという場で毎日を過ごしてきただけでなく、市立船橋高校という強豪高校でサッカーをした経験を持つ砂川氏にとって、環境の厳しさや違いに戸惑うことも多いという。

もちろんプロ基準の環境が当たり前だとしているわけではない。
ただし、結果を出しプロへと繋がるような選手を輩出するためには、環境も必要だと感じている。

土のグラウンドで日々プレーし練習する札大の選手たちが試合で使用する芝のグラウンドで結果を出してきているということは、実は大変なことである。
土のグラウンドはボールの跳ね方も当然違い、ボールの走り方も全く違う。怪我人が出てしまうリスクも多く背負っている環境であるといって良いであろう。
日々の練習をする土のグラウンドと試合をする芝のグラウンドの違いが大きいながらも、イレギュラーに対応し北海道でトップクラスに立ち続けていることは大きな結果だ。

しかし、その環境が良いとは決していえない状況をデメリットとしながらも結果を出している今をこれで良いわけではないはず、と砂川氏。
北海道学生リーグで戦ったピッチで驚いたことが起きたと話す。
芝というより野原のようなピッチ。たんぽぽが咲き、センターサークルの真ん中にマンホールがあった。
そのピッチでリーグの試合が行われる。選手たちがけがをするかもしれない。
真ん中にマンホールがあるという状況を選手たちが理解した上でプレーに考慮を加えながら、サッカーをする。
その事態を仕方ない、とは流せなかったと砂川氏。

新しく指導者として元プロサッカー選手が就任し、環境の違いに意見を言うのは良くない印象を与えるだろうと考えたという。
それでも選手たちのことを考えると、言葉はもう出ていた。
怪我をするリスクも大きく、なにより思い切り戦いに集中することすらできない。
誰かが切り出さないことには、なにも変わらず生まれない。
それを当たり前として受け入れていない今だからこそ、見える違いは今後、北海道の大学サッカーシーンにおいて「改革」に繋がる可能性も秘めている。

北海道の大学サッカーは長年に渡り全国で結果を出せていない。
関東関西はもちろん全国的に比較しても決してレベルが高いとはいえない。
長年その状況が続いているにも関わらず、全国に勝ちに行くようなチームが現れていないのはひとつの課題でもある。

その結果、本格的にプロを目指したい北海道の選手たちは、関東や関西の大学に迷わず進む時代になってきているだけに、より北海道学生サッカーの質が問われるようになってきている今日。
それでも札大他、北海道の大学でプレーする選手たちももちろん上を目指すため真剣にサッカーに日々取り組んでおり、一番楽しい時期であろう学生生活においてサッカーに基盤を置いて全国で戦うことを目標に日々努力を重ねている。

その時間を有効にしてあげたい、と砂川氏。
大学サッカーを砂川氏はまだ知らないというが、選手たちからその4年間という時間が貴重な時間であることが伝わってくると話す。
その時間を少しでも有効なものにし、向上につなげたいという。
プロという場で自身が経験してきたこと、プロだからこそ見えていた視点やサッカー感を少しでも札大の選手たちに伝え、世界を拡げたいと話す。
札幌の大学からでもプロで通用する選手を育成することができることに繋げられたら、と砂川氏。

自身が伝えようと言葉で表現していることが、札大の選手たちに伝わらないという現象が度々起きるという。
自身には見えている視点が、札大の選手たちには持ち合わせていないサッカー感であり、説明してもズレが生じる。
その違いに苦しんだ時期があったと話す。
それを指導者としてどう伝えたらよいのか、どうすれば見えるようになるのか。
最初の1ヶ月模索した上で、考え方を改め考え方も伝え方も変えたという。
それも指導者・砂川誠としての第一歩だったであろう。

現在は1週間でメニューを考える。
週末にある試合に向けて1週間のトレーニングメニューを考えることにしているという。
練習中、自身が考えてきたメニューのメモを見て、選手たちにトレーニングメニューを伝え大きな声で選手たちに伝えていた。

選手たちにとっても砂川誠氏が監督に就任したことは大きい。
現役時代を知っている選手たちが多く、一番身近なプロクラブであるコンサドーレ札幌のレジェンドであった砂川誠氏を身近で見て感じてきた選手たちが多いからこそ、実際にその大きな存在に指導してもらえることによってこれまでにない刺激を受けている。

砂川氏は指導者としてこれから歩むにあたり年齢が大人となる年代の指導はまだまだ先だと思っていたと話す。
実際、どんなに有名な選手であってもほとんどの場合小学生または大きくても中学生年代からの指導となることが多い。
大きな年代の選手から指導するというのは年齢も近いということもあり、より大人=プロに近いからこそ、距離感も難しく、ある程度土台が出来上がっている選手たちが多いからこそ、指導は難しいとされる。

大学生を指導することができることは、非常に光栄と話す砂川氏。
与えられたその機会を有効に、自分だからこそできることを伝え、結果として生み出したいという。

総理大臣杯直前まで夏休みながら選手たちは試験があり、気候の違う関西に直前まで入ることができない。
1回戦の相手は関東の強豪、筑波大学。プロサッカー選手でも全員が知っているであろう強豪を前にすることになるが、

それでもやるからには相手がどこであろうと勝ちたい、と指揮官は熱を持って話した。

指導者として初の全国の舞台。
札幌大学は2年ぶりの総理大臣杯となるが、新生札大はコンサドーレ札幌への積極的な練習参加も経て、選手たち個々の刺激も高めている。

昨年のインカレでは大学4冠の関西学院大学に2-3と迫った戦いをし大会を湧かせた札幌大学サッカー部。
その戦いを経験した選手たちも今、多くプレーしている。
札幌大学が総理大臣杯の大穴となれるか―。


戦いまであと1週間。
札幌大学に熱き夏がやってくる。

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