「米澤問題」を契機に下部組織の在り方を考える
2015/01/14 14:47配信
カテゴリ:コラム
初めに断っておくと、今回の題の「問題」というのは便宜上の事であって
本当は、現在の制度上においてなんらの問題もない事案です。
問題があるとしたら、そのいわゆる「火の無いところ」に煙を立たせた、
つまり、ことさら騒ぎ立てた一部サポーターなどの「問題」です。
便宜上ということで、自分の表現力の問題でもあり、恐縮です。
本当は、我那覇和樹本人には全く何も責任が無いにも関わらず、分かりやすさから
「我那覇事件」という表記をしてしまうような大手マスコミのようなことは
避けたかったのですが、やはり表現とは難しいと痛感しています。
神戸U-18のエースがC大阪に「昇格」
ヴィッセル神戸U-18は、最近になり結果を残し続けているチームです。
チーム単位では2013年に高円宮杯プレミアリーグWESTを初制覇し
個人単位では、小川慶治朗、岩波拓也、松村亮といった各年代別代表の主力となっていた
選手を育て、トップチームに継続して輩出してきた名門です。
その名門・神戸U-18の所属する、日本の最高峰のカテゴリーであるプレミアリーグの片割れ、
プレミアWESTで2年連続の得点王に輝いた実績を持つのが、
米澤令衣です。
育成年代で2年連続というのは、少なくとも下級生時代を1年は含むということです。
米澤は2,3年時の連続得点王ということになり、それは快挙と言っていいでしょう。
「問題」とは、その神戸にとって至宝とも言えるその米澤が
2015年シーズンより、C大阪に所属することが決まったということに端を発します。
一番的を射た表現であるのは「獲得」でしょう。
C大阪は神戸に対し、米澤獲得の対価としてトレーニングコンペンセーション(育成費)を支払うことになります。
もっとも、その額がJ1→J2の移籍で満額の800万の半分で400万円
そして、米澤が神戸の下部組織に在籍した期間が3年間なので
400×3で1200万円であることも、その「問題」の火種となったようですが・・。
とにかく、神戸はその至宝の流出を招いてしまったのです。
これはいったいどうして起こったのでしょうか。
他クラブのトップチームへの「昇格」は珍しいことではない
まず規則として存在するのは、所属するクラブの許可が無ければ、他クラブのトップへ
「昇格」することは出来ないということです。
この場合では米澤は、神戸が米澤の昇格を打診した場合、それを断って他クラブへ行くことは出来ません。
将来を考えそれを断り、進学をするケースは増えてきていますが。
従って、C大阪へ行くことが出来たのは、神戸が米澤のトップチーム昇格を打診しなかったということが言えます。
その場合は今回の通り、他クラブへ行くことを止めることは出来ません。
今回の「問題」は
「それだけの実績を残した選手をなぜトップ昇格させないばかりかみすみす隣のライバルチームに安価で売り渡したのか!」
という批判の声が主流と言えます。
ユースに所属する選手が他クラブのトップチームへ流れる例は少なくありません。
だいたいのケースが、所属する下部組織のトップチームよりも下位カテゴリーの
チームへの「昇格」になりますが、他クラブへと移る場合の競合相手となるのは多くの場合で大学です。
大学と他クラブへの移籍のメリットとデメリットを比べ、選択することになります。
経済的な理由、大学の4年という拘束期間などが主な理由となるでしょうか。
今回の米澤も、そういった面では大学よりもC大阪へ行く方がメリットが大きいと踏んだのでしょう。
神戸はなぜ「至宝」を昇格させなかったの
では、神戸はなぜ米澤を昇格させなかったのでしょうか。
さらにいえば、上記の大学か他クラブかの前に、下部組織の本分であるはずの
その下部組織のトップチームへの、本来の意味での「昇格」はなぜ果たされなかったのでしょうか。
それにはもちろん、トップチームの事情が大部分を占めます。
つまり、同じポジションに「偉大なる先輩方」がいるからです。
これは、他のクラブとはやや趣が違い、本当は嬉しい悲鳴とも言えるのですが
今回は「問題」を引き起こすことになってしまいました。
その選手達というのがまた問題で、名門・神戸U-18出身選手を3人挙げれば
たいていの人は挙げるであろう選手が上記の3人ですが、そんな神戸U-18の
レジェンドのうちの2人が同じポジションなのです。
それが、上記でも挙げた小川慶治朗と松村亮です。
そして、小川は今では主力ですが、松村はというと期待通りの成績は出していません。
今冬の補強次第ではレンタルによる武者修行もあり得る状況です。
そんな中で米澤が昇格したらどうなるでしょうか?
ユース卒の選手が、2つと無いポジションを巡って争うことになり
少なくとも2人が出場機会を逃すことになります。
そういった不幸を見越しての、今回の昇格見送りなのです。
下部組織は日本サッカー共有財産であるべき
私は、育成組織というものは、そのトップチームでなくても
プロ選手を輩出していればそれでいいと思っています。
いわば、カテゴリーに関わらず、日本サッカー全体の共有財産であるべき
いや、そう考えるべきだと思っています。
それはサッカーに関わる者全てに必要な考え方だと思います。
それは偏に、プレイヤーズファースト、選手を尊重するという大前提のためです。
選手の、選手としての成長を第一に考えれば、今回のような「問題」は
起きなかったのではないでしょうか。
サポーターとしての感情よりも優先させるべきものは、確実に存在します。
私も同意見です。
大学へ進学して4年後にプロになるというパターンはよくありますが、成長して大学サッカーでトップレベルになったとしても、多くの学生が推薦で入学するので卒業まで4年間通わなければならなくなります。
昇格させてレンタルで育てるのは1年ごとにチームが変わる難しさがあると思いまし、レンタル先のチームもレンタル選手より自チームの選手の方を育てるでしょう。
ユースから他チームのクラブでプロになる流れがJユース全体でもっと増えてほしいです。
そして米澤選手をここまで期待される選手に育て上げたヴィッセル神戸U-18は評価されるべきだと思います。
名無しさん | 1 2 |2015/02/28|02:30 返信