CHANT(チャント) 横浜F・マリノス

富樫敬真 「特指」を飛躍の足掛かりに

2015/10/29 10:16配信

武蔵

カテゴリ:コラム

特別指定選手制度とは、大学生や高校生が

Jリーグクラブという、より高いレベルで経験を積むことにより

さらなるレベルアップを目指すための制度です。

特別指定を受けることにより

そのJリーグクラブの練習に参加し

公式戦に出場することが可能となります。

しかし、もともとの実力の問題に加え

それぞれの所属する大学、高校の

公式戦のスケジュールを考えると

特別指定選手が公式戦でプレーする機会は

ごく限られたものとなります。

実際には、練習参加や練習試合への出場に留まる事がほとんどです。

しかし、今年はここにきて、リーグ戦での出場機会を掴み

それどころか、値千金のゴールまで決めたという

そんな選手が、J1の舞台に現れました。

しかも2人も同時にです。

今回はその片方

関東学院大学に所属しながら横浜F・マリノスの一員となり

極めて重要なゴールを決めた、FW富樫敬真についてです。

FC東京戦での初出場を果たすまで

J1 2ndステージ第11節

マリノスは、年間順位で3位に付けるFC東京との上位対決に臨みました。

マリノスとFC東京の試合は、いつも重苦しい展開となりますが

この試合もその例に漏れず

終盤まで0‐0の均衡が続いていました。

マリノスの方がチャンスを生み出し続けているものの

決定機と呼べるほどのチャンスは無く

時間は刻々と進んでいきました。

後半28分

富樫は同ポジションの伊藤翔と代わり、交代出場します。

富樫はこれがJの公式戦でのデビューとなりました。


富樫とマリノスとの関係は今から9年前

マリノスのジュニアユースに所属した時より始まりました。

ユースへの昇格は果たせませんでしたが

高校と大学、ともに神奈川県内でプレーしたことが功を奏したのか

関東学院大学に籍を置きながら

今回、特別指定選手として、マリノスでプレーする機会を得ました。

ここに、マリノスへの、一応の帰還を果たしました。


このFC東京戦の直前の新潟戦で、初のベンチ入りを果たしました。

「調子の良い選手の見極めに自信がある」

というモンバエルツ監督がメンバーに入れるのだから

能力や特性のアピール以上に

マリノスに在籍する名だたるプロに囲まれながらも

良い調整が出来た、ということが言えるでしょう。

この順応性は、これからも彼を支え続けそうです。


そして、0‐0というひり付く状況で

富樫に出番はやってきました。

中村俊輔のクロスに劣らない富樫の技術とは?

https://www.youtube.com/watch?v=kpm42G7kPr8&feature=youtu.be&t=5m30s


モンバエルツ監督からの指示は

「相手の最終ラインと勝負しろ」というものでした。

富樫は忠実にその役目を果たし

ボールを保持するチームにおいて

相手のDFラインにプレッシャーを掛け続けます。


そして後半43分

マリノスに在籍する名だたるプロの筆頭格である

中村俊輔の素晴らしいクロスに点で合わせ

元セルビア代表のブラダ・アブラモフのニアを射抜きました。


富樫の初出場初ゴールは

0‐0の、どう転んでもおかしくない試合の決勝点となりました。


この場面、確かに中村俊輔のクロスは素晴らしいものです。

FC東京が一瞬だけ中村俊輔をフリーにし

その隙を見逃さなかった勝負勘と技術は

やはり中村俊輔、としか言いようがありません

ただ、それと同様に

富樫の一連の動きも素晴らしいものです。

代表帰りのFC東京DF・丸山祐市がマークについていましたが

その丸山を置き去りにした、プル・アウェイの動きは

なかなか見られるものではありません。

中村俊輔にボールが入るや否や

スーッとマーカーから離れていく富樫を確認することができます。


FC東京が、このような単純なクロスで

おいそれとは失点しないチームであることが

富樫の技術の価値を保証していると言って良いでしょう。

富樫の戦いは続く・・・

富樫はこのように、J1でも通用した武器を携えて

プロ入りをすることは出来るのでしょうか?

富樫は本当の帰還を果たしていません。

華々しい活躍をしたとはいえ

マリノスの内定を勝ち取ったわけではないのです。


しかし、この得点がきっかけとなったのか

1ヶ月単位の特別指定の延長を勝ち取った富樫は

続く湘南戦でも同点時に途中出場。

第14節の神戸戦では、最長となる25分の出場を果たし

その試合ではチームの逆転勝利を呼び込みました。


富樫の就職活動は続きます。

ただ、それはマリノスにとっての貴重な戦力が

チームに居続けるということでもあります。

大学での富樫

ちなみに富樫は、謙遜混じりではあるのでしょうが

「今期、チームには何の貢献もできていない」と言います。

そのチームとは、本籍を置く関東学院大学です。


関東大学サッカーリーグの2部のそのチームは

残り3試合の段階で自動昇格圏内の2位・筑波大と

勝ち点差1の3位に付けています。

2節前の、直接対決となった筑波大戦では

湘南戦と合わせて2日連続の途中出場を果たし

4‐0の4点目を決めています。

ただ、それが11試合目の出場、3得点目ということで

本人はまだ納得してはいないでしょう。


J1でゴールを決める選手を

関東の2部で見ることが出来ます。

J1のリーグ戦は

ナビスコカップや国際Aマッチウィークなどで休みになるため

富樫はひとまず、関東学院大学の1部昇格に全力を注ぐことになります。

皆さんも是非、富樫の技術を見に

横浜F・マリノスの試合だけでなく

関東学院大学の試合に足を運んでみてはいかがでしょうか。

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