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【セレッソ大阪】 J2降格が決定―。優勝を目指したシーズンに降格という厳しい現実 【J1】

2014/11/30 00:14配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:マッチレポート

J1 1試合を残して セレッソ大阪の降格が決定した。
今年こそはタイトルをと目指した今シーズン、まさかのJ2降格という現実となってしまった。

Jリーグの中でも、注目をたくさん集めるクラブの降格はまさかの結果といって良いだろう。
セレッソ大阪は来季、J2で戦うことが決定してしまった―。


●成功するはずだった大物外国人の獲得。変わってしまったフロント。

セレッソ大阪といえば、数多くの有望若手選手を有することで有名なクラブだ。
今季途中まで在籍していたチームの看板である8を付けた柿谷曜一朗、日本代表としてブラジルW杯でも戦った山口蛍をはじめ、
ロンドン五輪で戦った扇原貴宏や杉本健勇、そして次世代期待のエース候補・南野拓実。
日本ではサイドバック不足が叫ばれている中で成長をみせる丸橋祐介…これらの選手はセレッソ大阪アカデミーであるユース出身選手たちだ。

昨年は育成チームとしてJリーグから表彰され、セレッソ大阪の育成システムを知りたいというチームは多く存在したことだろう。
その育成型チームだったはずのセレッソ大阪が今季、新たに大きなチャレンジに出た。

それがディエゴ・フォルランの獲得だった。


6億円とも7億円ともいわれる高額な年棒となったJリーグ久々の大物外国人の獲得は、Jリーグだけでなく日本スポーツ界に大きな衝撃を与えた。
ワールドカップ得点王となったことも記憶に新しい、超がつくほどの大物外国人の獲得の実現は大きな革命だった。
これはセレッソ大阪だけでなく、Jリーグとしての挑戦でもあったであろう。

大物外国人に求めることを「育成の一環」とセレッソ大阪は示した。
もちろんビジネス的な要素の部分も大きかったことであろう。
それはサッカークラブである以上当然のことだ。
大物外国人を獲得することによって生める注目や広告効果、集客効果など経済効果を大きく生むほどのビッグネーム選手であることは間違いなかった。
それと同時に、まだまだ日本という場のレベルでは活躍できる可能性があること、プレーヤーとしてまだまだ影響力のある存在であること、そして若い選手たちへのお手本になるべきビッグプレーヤーであること。
それを見込まれての獲得だった。

海外に行くことでしか見れない世界があるが、そのほんの一端かもしれないが、自分のクラブでワールドクラスを感じられること、それを日々感じられることがセレッソ大阪が示した「育成」という部分で期待したことだったのであろう。

しかし、それは選手たちに浸透していたかというところには疑問が残る。

セレッソ大阪の選手たちの多くは、他クラブと比べてもそんなに高額な年俸をもらっている選手ではない。
チームのエースであった柿谷曜一朗でさえ、ビッグクラブと言われるような国内の他クラブに比べても多額とはいえず、むしろこんな金額で…と感じる人もいるかもしれない。
それでも6.7億円という選手を全選手の雇えるような金額で獲得してきたことに、選手たちのモチベーションや理解はどう在ったのか。

それでもリーグ序盤はさすがといえるようなプレーが多く、期待ほどにゴールは生まれなかったかもしれないが、それでもさすがと声が出るようなゴールは多く生まれた。
その他、ここでこんな選択肢もあるのかと思わせるプレーもたくさんあった。

以前書いた記事でも触れたことがあるが、フォルランが日本レベルに合わせてしまった時はそれは「育成」には当たらない。
フォルランが通常の意識でプレーすることで、そのレベルに追い付こうとすることが大切だった。

しかし。

フォルランという大きな存在がいることで、いつも横一戦だった選手たちの価値に、特別という枠を作ってしまったのは歯車が狂う一因となってしまった感は否めない。
それは現場ではそれほどまでに大きくないことだったかもしれないが、チーム全体の部分でいってもやはりフォルランは特別に優遇されている部分はあった。
そういった部分でのズレはメンタルの部分で出てしまうことも多く、若い選手たちにとってはそれが受け入れられない部分でもあったかもしれない。

試合でも思うようにいかないフォルランのイライラがぶつけられることもあった。
そこに追いつこうと必死に追いかけている選手たちもいる中で、それを追い続けることで自分たちのペースを乱した試合も多数存在した。

フォルランを得たことは育成の一環で、チームにとってプラスの革命であるはずだった。
ただ、ここで言いたいのはフォルラン一人に責任を押し付けているわけではないこと。
フォルランを得ることで変わってしまった、チームの体制に問題があった。

強化としてなのか 育成としてなのか そしてビジネスのためなのか
それがあやふやになってしまった感が否めない。
それぞれがいいとこ取りできることが好ましいのかもしれないが、そう甘くはなかったことを痛感しているのではないだろうか。


チームの調子が悪くなると、緊急補強として二人目のビッグネームが補強された。
それがFWのカカウだ。

3億円ともいわれる契約で取ってきたワールドクラスのFWは結果として、チームのサッカーがどうであれ、得点を取るといった仕事をこなした。
すぐに熱くなり日本の笛になかなか慣れない部分は見られるものの、チームにすぐに愛着を見せ、厳しい状況でなかなか得点が生まれないチームに貴重な得点を挙げることは仕事に値するであろう。

しかし、3億円という数字の価値というと、大きな金額すぎて日本のサッカーでは示すことができない。
フォルランと合わせて10億近くの価値がセレッソ大阪には存在していたはずだが、結果としてその結果を出せないシーズンだったこと。
お金を投入してもJ2降格となってしまった現実。

いや。

お金を投入したからこそ生まれてしまった降格なのかもしれないという皮肉だ。


●一度狂った歯車を戻すことができなかったメンタルfootball

シーズン序盤は今のような状態ではなかった。
ちょっとづつ「おかしいな」と感じる歯車が狂った感覚があり、気づいた時にはもう手遅れな状況になっていた。
昨年セレッソ大阪はリーグ4位でシーズンを終えた。
優勝争いに終盤まで絡んでいたその強さは攻撃にも脅威があり、守備陣も終盤までリーグ1位を誇るなど安定していた。
しかし、今年まず目立ったのは得点力不足。
フォルランが期待するほど得点ができなかったことばかりが目立ってしまうが、それだけではなかった。
攻撃陣のほとんどが得点を挙げる機会が少なかった。

それはサッカーの体制の交代からなるものが大きな原因だった。
昨年から現場の体制も一新し、そして強化部長からGMまでいろんな人事が動いた。
ひとつのポイントだけでなく大きな人事交代があるとどうしてもチームをひとつにするには危険な匂いがしてしまう。
その予感が当たってしまったのだ。

現場の変化も大きく、ポポヴィッチ監督はキャンプからうまくチームを作ることができなかった。
前身のFC東京でも時間を有したことを考えると、浸透の時間は我慢も必要だったのかもしれないが、セレッソスタイルには難しく、人間批判のような言葉も監督から出てしまうようになったからには現場の不調和が生まれてしまう。
その結果、ポポヴィッチ監督を更迭。
中断期間に入った時期だった。

そしてその後、現場を任されたのはJリーグ初経験のペッツァイオリ監督。
イタリア人監督とはいえ、アジアでコーチ経験がありアジアのサッカー指導経歴のある監督だった。
なかなか結果が出ない中でも、光るものは感じることができ、現場の雰囲気も一変し、これからという雰囲気もあった。
しかし、勝てない状況やなかなか勝ち点が生まれないこと、目の前に降格とういう現実が迫ったことにより、監督を二度目の更迭。
ペッツァイオリ監督に与えられた期間は、たった2か月という短期間だった。

短期間で結果を出すのであればなぜJリーグ経験者である監督を招へいしなかったのかという疑問は大きく残る。
中断期間にキャンプがあったとはいえ、その期間だけでチームを作るのは難しく、たった2か月で勝てるチームにしろというのは酷な話だった。
もちろん監督のせいだけではない。それは選手たちが痛感していることだったであろう。

そして3人目の監督は育成チームとしてアカデミーを率いるユース監督の大熊監督。
多くのセレッソの若き選手たちを育てた監督が、トップの監督へと就任した。

しかし、その時には2度の監督の更迭と、うまくいかない感を溜め込んでいたしまっていた状態であり、なかなかそれを払しょくすることができなかった。
練習の雰囲気は悪くなくても、試合になるとうまくいかない感覚はサッカーとはメンタルのスポーツであることを痛感させるような状況だった。

選手一人一人の能力は高く、ほぼ全員が今年ピッチでプレーしてきた以上のプレーをすることができるであろう。
実力を出し切れないのは監督だけのせいではない。メンタルの問題が重くのしかかっていたからだ。

勝てない現実を前に、やれることを臆する選手や、やれるのになかなかやれない選手、勝てない現実が続きすぎて一生懸命を時に表現しなくなってしまう選手もいた。
それでもやらないことには、厳しい現実がさらに迫ってくることも知ったであろう。

降格というのは突然生まれるものではない。
積み重ねた負が生む、厳しい厳しい現実なのだ。

狂ってしまっているなと気づきながら、修正をしようと試みたものの、その歯車は気づいたときにはもうかなり重く
簡単には修正できなくなってしまっていたこと。
そしてその歯車をどうにかしようと、次々に狂っていき
一人一人のチーム関係者や現場スタッフ、選手たちが目指す未来や近い目標、こうしなければという意思に微妙なズレが生まれてしまった。


終盤はJ1にいながらも、J1の戦いとは言い難いような試合が続いた。
持っている実力はこんなものではないと言っても 出せないことには意味がない。
それを降格を決めた試合の相手 鹿島アントラーズに突き付けられた形となったセレッソ大阪。


今年限りでの辞任を 降格が決まってしまうかもしれないという大事な試合だった先週の仙台戦前にリリースした セレッソ大阪の現社長・岡野氏の挨拶が最後にあった。
大きなブーイングで包まれるヤンマースタジアム。

今年で辞任するとリリースした社長が口にした言葉は、自分の言葉というものではなく用意された言葉だったようにしか感じない適当なものだった。

一年でJ1復帰をするために一丸となって―。
そんな言葉は簡単に出していい言葉ではないし、大事な場面で真っ先に辞めますと言った人間が口にする言葉ではない。

J2は厳しい戦いの場だ。
技術やサッカーの質はJ1の方がものすごく高い。

しかし、J2は技術や質が高いからといって、勝ち上がれるところではない。
選手の個々の能力が高いだけでは戦えない。

一丸となって―。
そうなることが、できていたなら。
ひとつになっていたらきっとこんな結果にはならなかった。
厳しいかもしれないが、それが生んだ現実なのだ。

ひとつになることを こんなにも難しいことかと痛感した一年だった。


セレッソ大阪 J2降格。

優勝を目指したはずの今年、手にしたのはまさかの降格。

一人一人がそれをどう受け止め、深く考えることができるか。

残り1試合を残している。
最終戦の相手は大宮アルディージャ。
残留争いをしている相手であり、相手が決死の覚悟で挑んでくることが予想される。

しかし、最後だからこそ。
意地を見せてセレッソらしさを感じることのできる試合を期待する。


たくさんの期待を裏切った形となってしまった今年のセレッソ。


しかし

期待をすることをやめてしまった時。
それは手を離すこととなる。

だからこそ、「期待」することを諦めない。


最後の戦いは セレッソらしく―。

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