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【柏レイソル】 柏レイソルという魂が詰まった吉田新体制 アカデミーから繋がり確立するサッカーへ 【J1】

2014/12/24 10:06配信

飯守 友子 (CHANT編集部)

カテゴリ:コラム


ついに―。

柏レイソルの新監督が発表された時、柏サポーターの中にはそう感じた人も多いのではないだろうか。
ネルシーニョ監督という一時代が終わり、大きな功績を残した監督の後はどうなるのかといったところがクローズアップされているが、吉田達磨監督が就任すると発表があり、身震いすら感じる ついに来たという実感。

柏レイソルが吉田監督をトップの監督へと就任させた。
これはものすごく大きな一歩となり、吉田達磨氏が監督となり、トップを指揮するというのはどういったチームになるのだろうと好奇心でいっぱいになった。

吉田達磨氏。
柏レイソルの育成を確立し、世界を常に見つめ日本のサッカーを世界と比べ下に見るのではなく、横に置いて考えたきた人物。
その育成での経験を持って、トップを指揮する柏レイソルの今後。それはとても興味深く、これから柏レイソルがどう変わっていくか気になるところだ。

●柏レイソルの育成と世界

どうしても日本のサッカーを見つめるにあたり、世界との差や世界との壁を感じ比べてしまう傾向にある。
それは日本代表だけでなく世代別に見てもそうだ。
世界との差を比べたがり、世界はこんなにすごいんだという見方をしてしまう傾向にあるが、吉田新監督の考え方は違う。

吉田達磨氏は、柏レイソルでアカデミーディレクターというアカデミー全体の統括をしてきた人物であり、柏レイソルという名のつく全体の選手たちの育成に携わってきた。
重ねる結果と時間の中でどういった形で育成していくかということを常に考え、勝つことよりも経験させることに重点を置き、選手たちを育成してきた。
その結果が酒井宏樹であり、工藤壮人、茨田陽生など、たくさんの選手を輩出することに繋がった。

柏レイソルはJリーグ屈指の育成クラブの中のひとつといって良いであろう。
安定した育成年代の強さには定評がある。今年はユースがプレミアEASTにて優勝し、チャンピオンシップに進み2位という結果を残したが、柏レイソルの育成年代はもっと下の小学生年代から世界と戦っている。
小学生年代最大の大会となる全国少年サッカー大会には、過去4年で3回決勝に進出し選手たちが毎年変わる中で安定した強さを誇っている。
過去10年でみてもベスト4以上が6回という歴史を残していることをみても、少年時代のサッカーの基礎の部分でしっかりとした力をアカデミーの選手たちが付けていることがわかる。
8人制になってからの柏レイソルのU-12は特に その特性を持って強いイメージがある。

その年代から大会で上位になることで世界といわれるチームと戦うことも多くなる柏レイソルU-12。
世界と戦うことで世界の差を感じるのではなく、自分たちと世界の差はないことを知れることがプラスになるという発想を持つ。
世界と戦うと確かにまだまだ日本のサッカーは確率されていないと感じる。しかし、それは「差」ではなく歴史であり、育成年代の時系列の文化の違いがあると吉田氏は感じてきた。
日本の教育システムは決まっている。義務である小学校中学校で6年→3年。そこからさらに高校で3年、そして大学で4年という教育システムがあり、それに付属した形でサッカーの時間を作っていくのが通例であり、それは世界共通ではない。
ただし、世界に合わせるのではなく、日本のその教育システムに合わせた時間の中で日本らしい育成をしなくてはいけないと考えているのことが柏レイソルの育成の基盤だ。

世界との差を縮めるためにという課題ばかりを掘り起こしていくのではなく
まずは自分たちのできることをやり遂げる中で、足りなかった部分を自分たちで見つけることが重要と置く。

柏はU-15も高円宮杯では優勝経験はないものの過去5年で3度のベスト4進出、そして今年はユースがプレミアプリンスリーグEASTにて優勝。そしてチャンピオンシップでは負けてしまったものの最終的に準優勝という成績を残した。

柏ユースからはたくさんの選手たちが今までトップに輩出されている。
Jリーグにはたくさんの柏ユース出身者がいるが、そういった選手たちもアカデミーで育ち、そして今でも結束の強さを感じる独特の空気感を持っている。

柏レイソルのアカデミーという分野で育成をどうトップに、そして代表にという未来を見据えながら、日本は世界の一角という捉え方で進んできた吉田氏。
トップの監督になることで、柏レイソルをどう創り出すのか非常に楽しみであり、新しい育成との融合が見せる今後を期待してしまう。

●強化とアカデミーを繋ぐ 柏レイソルの今後

新監督に就任した吉田氏は、トップの強化部長を育成のディレクターと共に兼任していたことがあった。
それは育成年代を確立しつつ、トップの強化を「=」で繋げた形であり、ユース年代までにトップを強化するための選手に育て上げトップに選手を送り込むというチーム内での繋がりの関係を示す。
未来を見据えたことももちろんだが、即戦力としても使えるようユース年代を終える時にはトップとの差なく一人の戦力として上に上げるのがテーマだった。

ユース年代からトップに選手を昇格させるというシステムは、下部組織を持つことが義務付けされているJクラブならどのクラブも、たくさん選手の昇格を今までに実現してきただろう。
しかし、柏のようにトップの監督や強化部長といった重要ポストの人物が育成のすべてまでを把握しているチームは少なく、ユース年代だけでなくその下の世代…小学生年代までの育成方針や、実際の現場でどういったことが行われているか、というところまで一貫して把握しているというクラブは少ないのが現状だ。
しかし、柏レイソルはすべてが繋がった形となった。

トップからアカデミーまで「柏レイソル」らしいサッカーをすること。
それが一貫して創りあげていく方針であり、共通するスタイルであり、底上げとなっていくことになる。
ネルシーニョ体制ははネルシーニョサッカーというものではなく、引き出しが多いサッカーだったのに対し、吉田新監督が掲げるのは「柏スタイル」。

トップのサッカーをアカデミーに下ろすトップダウン方式ではなく、アカデミーで培った積み重ねたものをトップチームが吸収し大きくなっていくボトムアップ方式という考えを持っている。
ネルシーニョ監督はJリーグの歴史に深く刻まれるほどの優秀な監督であり、柏レイソルを世界へと導いた監督ではある。ネルシーニョ監督は多彩なサッカーをトップチームに植え付けた。
その中で柏レイソルのアカデミーからの吸収も大きく関係し、チームの戦力として今の柏レイソルの基盤となったことは確か。柏から現在日本代表で戦える選手を輩出できるほどに成長した選手たちもいる。

トップチームがスタジアムでサポーターたちに魅せるサッカーは、柏レイソルの最上級でなくてはならない。
柏レイソルのすべてが詰め込められ、選手たちも柏レイソルでプレーする歓びや価値、愛を感じながらそれを表現すべき場所でなくてはならない。
それがピッチの上から観に来ている人たちに届けることができるのなら、試合にサッカー以外のイベントやショーがなくてもサッカーで人を魅了できる。
柏レイソルを愛する人たちが、柏レイソルを愛する選手たちを見て共感し、柏レイソルのサッカーを観ることを一番だと感じる。
そういった形にしたいと柏レイソルは目標を持っている。

アカデミーで育つ選手たちに教えるのは、技術や取り組み方、戦術などサッカーことだけではない。
早い段階から柏レイソルでプレーすることの意味を理解させ、サッカー選手という職業の持つ重大な責任と言動の重みなども指導する。
いくら技術が優れていても人間力がない限りトップには昇格させない。プロサッカー選手としての重みをしっかりと感じることができること、理解できていることも重点となっている。


そう選手たちを育ててきた、輩出させてきた吉田氏がトップの監督に就任した。

就任会見では、どんなチームにしていくかなど詳細を避けた。
その理由は、まず選手たちに伝えなくてはいけないことだから という理由だった。
まずはメディアに話すのではなく、選手たちの顔を見て伝えるべきことだとした。
その姿勢から、吉田新監督が大切にする選手たちとのコミュニケーションが見え、吉田監督の大切にしているものが見える。

育成組織で監督、コーチ、育成ディレクター、トップの強化部長という経歴を持って監督に就任するというのは珍しい人事と言える。
柏レイソルの歴史の中で、柏を大きくしたネルシーニョ体制の後で、柏の育成・強化という部分の芯となってきた吉田氏がトップの監督に就任しチームを創るというのは、柏レイソルの「覚悟」が詰まっているのだ。

世界へと旅立った大津祐樹も柏へと戻ったこともあり、柏で育った選手が再び柏へと戻ってきた。
柏アカデミーの選手が世界でなにを得てきたのか、日本でどう表現するのか。そしてそれを吉田監督がどう力とするのか。

今季、柏レイソルは最終的に順位を4位まで伸ばし、チーグ優勝したガンバ大阪が天皇杯も優勝したため、4位ながらACLに出場できることが決まった。
柏レイソル三度目のACLへの挑戦となる。目指すはアジアの頂点。過去にリーグ優勝チームとして出場したクラブワールドカップでは4位という成績を残したこともあるが、ACL優勝チームとして出場したいという次の目標も持っている。
吉田監督がレイソルらしさを詰め込み 差があるのではなく世界の一角として柏レイソルを発進させる。


育成とトップの融合で起きる新たな化学反応によって今後の柏レイソルはどういった変化をみせるのか―。
最上級のサッカーで人々を魅力することができるのであろうか。

日立台は「柏レイソル」が詰まった場で サッカースタジアムらしくサッカーだけで勝負する。

柏レイソルという大きな魂を背負い、覚悟を掲げたこれからに注目だ。

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