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バランスを崩すという選択肢と「メリット2人、デメリット1人」 FC東京対広島

2014/10/29 18:11配信

武蔵

カテゴリ:マッチレポート

10月22日の水曜日に、J1全18チームは第29節を戦いました。
この時期のJリーグの戦いというものは主に5つに分かれます。これは私の主観ですが、シビアな順に優勝争い、残留争い、ACL出場権争い、賞金争い、何も関係ない争いの5つです。

ご存知の方も多いとは思いますが、Jリーグでは順位に応じて賞金が出ます。

1位(優勝)のチームから順に2億円、1億円、8000万円、6000万円、4000万円、2000万円、1000万円です。

これはマスコミではあまり取り上げられることは無いのですが、各クラブにとって非常に重要だと思います。

それはヤマザキナビスコカップ、天皇杯といったカップ戦において、賞金が出るのはベスト4からであり2000万円であることを、

また、その各大会でのベスト4進出の難しさを考えると、重要度が窺い知れることかと思います。

また、各メディアにおいての扱いがどうしても優勝争いや残留争いと比べ、極めて軽いと言わざるを得ません。

各クラブの目標として、ACL出場権争いにはもう少し足りないだろうというクラブには「今年は賞金圏内を目指す」といったような目標設定をして、

少しでもこの賞金争いを盛り上げてほしいなと思います。

というわけで今節のFC東京対サンフレッチェ広島は同勝ち点で並ぶ6位と7位の対決ということで、

上記5つのうち4番目の賞金争いにおける直接対決となりました。

バランスを崩したFC東京、その理由は?

広島はお馴染みとなった3421の可変システムを採用します。

攻撃時は415、あるいはシャドーが下がって433、守備時は541で守備ブロックを組みます。

しかし最近では変化を見せ、守備時に引いてスペースを消してミス待ちをするだけでなく、

523のような形で前からプレスに行く形を見せることがあります。

その際、サイドのスペースを埋めるべく前に出てくるWBの裏のスペースのケアが、

一貫して広島の目下の課題であり、攻める側としてはチャンスとなるポイントだと言えます。

FC東京は平山の離脱などに見ることが出来るFWの層の薄さを抱えているものの、

この広島戦では、その弱点を突くべく実戦投入可能なFWを前に3枚並べるという選択をします。

これによりFC東京は機を見てCFWタイプを投入するという戦略的柔軟性を欠くというデメリットがあります。
またデメリットといえば、守備時にも表れることが予想されました。

それは河野の不在です。

広島の攻撃時415を受ける形において、従来の4312とは違う433では1の青山を見る選手がいません。

守備において代えの利かない河野をベンチに置き、システムも変えることで、広島の攻撃を狙い通り、

円滑に行わせてしまうことになりかねない、ということを考える向きは、割と多かったのではないでしょうか。

それでもFC東京のフィッカデンティ監督は、この「攻撃的」と言える選択を採ることにしました。

基本的には人数をかけて守る広島から得点を奪うことを優先させた理由は、523という奇抜なアイデアながらも、

均衡させることを目的にした戦術を採り、結果的にディフェンディングチャンピオンの勝負強さを発揮されてしまった、

ビッグアーチでの敗戦が頭にあったのかもしれません。

また、単に数字に問題であったとも言えます。先ほど挙げた、FC東京の守備時のデメリットは相手の青山(1人)がフリーになること。

対して攻撃時のメリットは、上記の狙い通りWBの裏を突いたとして、そこからクロスを送れば、FC東京のFW3枚vs広島の残りの3~4枚ということで、ゴール前において五分以上の戦いをすることが出来ます。

そして、広島の2ボランチは前後分断気味のFC東京に対し、マークする相手を失うことになります。
この「デメリット1人、メリット2人」という人数の問題を踏まえた作戦選択であったと言えるかもしれません。

シンプルなFC東京のブロック崩し、そして打ち合いへ・・・

FC東京は先ほど挙げた、広島のプレスから始まりWBが出てくる動きをある程度は攻略出来ました。

ビルドアップでは無理をせずサイドに逃がし、出てきたWBの裏にインサイドハーフを走り込ませ、

クロス。ゴール前では4対3、または数的同数を作ることが出来ていました。そして、その形から先制点まで、

生まれた決定機は2~3ありましたので、一定の効果を得られたと思います。

現状のFC東京の問題として、ボールを繋いで攻めながら、失点のリスクを最小限にしつつ時間の経過を待つ、

という言わば器用なことが出来ないということがあります。

果たして、FC東京は先制後にボールを明け渡してしまします。

そうするとデメリットである、

青山を見る選手がいないという面がより多く出ることになり、いくつかの決定機を作られることになり、PKまで与えてしまいます。

同じく3421相手のリード時、ホームの浦和戦でも見られたこの現象はFC東京の課題と言えるでしょう。

ただ、この「バランスを崩している。あえてね。」という気構えがあったからか、結果的にはセットプレーでの、

しかもGKのミスによる1点に抑え、しかも勝つことが出来ました。

この勝利を完遂するためには、中断明け以降に猛威を奮ってきたFC東京の43ブロックの固さも必要だったでしょう。

しかし、ホーム味スタでの広島戦、

09年から連続で無得点に終わっていたという過去から決別すべく打った「バランスを崩す」という選択肢が何より重要だったと思います。

そしてこれは、バランスに固執する昨今の風潮にくさびを打ち込む契機となり得るのではないでしょうか。

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