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【鹿島アントラーズ】 浦和0-2鹿島 ジーコスピリットを感じさせる「鹿島らしさ」で力強く歩む王者復権への道 【浦和レッズ】

2016/06/13 12:13配信

飯守 友子 (CHANT編集部)

カテゴリ:マッチレポート

J1第15節が行われ、1stステージ優勝争いに向け注目された2位鹿島アントラーズと3位浦和レッズの対戦は、
浦和レッズのホームスタジアムである埼玉スタジアム2002にて行われ、2-0で鹿島アントラーズが勝利した。

鹿島は浦和との直接対決を制し、大きな1勝を挙げたと言えるであろう。
全勝しても川崎フロンターレが全勝すると追いつかない状況ではあるものの、勝ち点1差で追いかけており、まだまだ優勝争いをしている状況だ。

浦和はACLの影響で2戦少ないながらも首位川崎フロンターレとの差は7と拡がり、今後2戦消化し勝利しても届かず、日程が厳しく2週間で4試合の戦いが待っている。
川崎と鹿島の結果が大きく左右するが、今後浦和がタイトルに手をかけるには負けることが許されない。

浦和にとって6月は勝負の月と表現しても良いであろう過酷な1ヶ月だ。
鹿島、ガンバ、広島、東京と強豪クラブとの戦いが続く1ヶ月のスタートとなる試合だったが、黒星発進となった。

浦和と鹿島。
Jリーグを代表する両者がぶつかった、質の高いこの試合を振り返る。

●鹿島のしたたかさもひとつのジーコスピリット

日本代表活動期間によりストップしていたJリーグ。
浦和はACLを戦い、敗退が決まった直後鳥栖と試合をした5月29日から2週間の時間が空いたが、対する鹿島はナビスコ杯があったため、代表期間中にも試合をこなし迎えたJリーグ第15節。

前半序盤から浦和がボールを支配しパスを繋ぐ時間帯が続いた。
浦和らしいボール回しから鹿島を崩しにかかる時間帯だったが、鹿島は無理をせず前から行かない戦い方を選択し、守備に時間と人数をかけ対応する。
いつもよりも人数を増やし、ボランチとセンターバックで浦和の独特の攻撃陣に対応しながら、やりきらせずに、ボールを奪うとカウンターというシンプルな狙いを定めていた。

両者共にボールを奪われると、すぐにボールを奪い返すために数人で囲み奪取にかかる。
そのためボールを奪った際には速い展開となることが多く、鹿島は特にカウンターで浦和に攻撃をしかけると、カイオの個人技術の高さや、金崎のゴールへと思い切り進むプレーで打開をポイントで試みた。

浦和は攻撃を組み建てようとする中で、鹿島の良い言葉でいえば「したたかさ」悪い言葉で言えば「汚さ」という
プレー中の細かなファールの取り方に、選手たちがイライラし始める。
大勢のサポーターで埋まるホーム埼玉スタジアムだからこそ、浦和レッズの選手たちはボルテージが上がり、この試合に気合充分で入っていた。
アジアの頂点を目指し戦っていたACLで惜敗し、その後リーグ鳥栖との試合をドローとしたものの代表期間中に気持ち的なリフレッシュと過密日程で戦ってきた身体を癒し、リーグタイトルへと改めて切り替え迎えたからこそ、より力の籠った試合となっていたのかもしれない。
その気持ちが全面に出る中で前にした鹿島のしたたかさを前に、一部の選手はイライラしてしまった感があった。

しかし、それも含めて「鹿島アントラーズ」なのだ。
ジーコの伝えたブラジルサッカーの一部である。

以前、「王者」と呼ばれた時代の鹿島アントラーズに所属していた選手が引退後、社会人リーグでコーチ兼選手としてプレーしていた時のことを思い出した。
相手選手との競り合いの際に、主審から死角となる位置で、相手が肩に乗ったような崩れ方をした時があった。
主審からは二人共に背中しか見えていない。正面から見ると相手は肩に乗りかかるどころか、一切力を入れていなかったが、ファールとなり、マイボールとなった。

相手選手はファールとなった行為を否定し声を荒げたが、主審の見た位置からは「ファール」。
ファールじゃないものも、ファールとする。したたかさ。
フェアプレーではない、という人もいるかもしれないが、それが日本サッカーに足りない部分でもある。
ルール的には正しいことが一番だが、世界の笛はそう簡単には鳴らない。
騙し合いもfootballにおいて、必要とされていることだ。

鹿島から移籍し現在では浦和のエースである興梠にも、鹿島で育ったことがわかる マイボールにするための術が身に付いているのことも、プレーを観ていれば理解することができるであろう。

そういったしたたかさは鹿島の伝統のひとつであり、それを何度も前にしてきたからこそ対戦する相手はそれもひとつの「鹿島らしさ」とわかっているはずだ。
しかしそれをこの日、ボルテージが上がっていることもあり、真っ向から受け止めてしまった浦和の選手たちはイライラを募らせてしまった。
したたかさを持って空いてにイエローカードが出る原因となったり、試合が荒れたり冷静さを失ってしまうと、鹿島の手中にハマってしまうこととなる。

特に鹿島のすべてを引き継ぐ小笠原のしたたかな駆け引きは、いつも通り絶妙だった。
したたかさから失う冷静さズレが後に焦りとなってしまうことや力みすぎてしまうことの原因となってしまうことになり、怒りというメンタルによってチームに目に見えない敵が生まれてしまうことを長年の経験で知っている小笠原は、
相手選手の性格やその時の感情などを見比べながら「いつも通り」表情を変えることなく、自らのプレーの中にちょっとしたしたたかさを組み込む。

絶対に負けられない決戦だからこそ、両者熱くなっているのは当然だが、冷静さを持っていたのは鹿島アントラーズだった。

浦和がボールを持つ時間が多いものの、カウンターをしかける鹿島の攻撃の方が効果的かつゴールを匂わせる決定的な場面を生み出し続ける。
浦和はボールを持たされているような形となり、随所で効果的なカウンターを受け、やられてしまっているという印象がぬぐえない前半となった。

しかし、この日浦和で輝いたのは梅崎。
リーグ戦では第9節名古屋グランパス戦以来のスタートからの起用となった梅崎だが、スターティングメンバーを勝ち取ったからこそ絶対に自分の良さを出しチームに貢献するという想いが見えるプレーをしていた。
ほとんどの試合で梅崎は途中交代で出場しているが、決してその位置に満足はしていない。
スタートからピッチに立つことにこだわりを持たないような選手は競争すら成り立たない。梅崎は常に練習でも自分に厳しく周囲に厳しく全力でプレーし、試合に出たい、と全身から放ってきた。
練習試合でも練習試合だからという気持ちで入らず怪我を恐れることなく果敢に自らの持つ能力を発揮し、取り組んできた。
リーグ再開となったこの日。梅崎は途中出場ではなくスタートからピッチに立てる機会を必ず結果を持って出し切ると決めて入った試合であったことがプレーのひとつひとつから伝わってきた。
どこでも顔を出し、浦和のチャンスを作り出しすボールを入れた。
鹿島のディフェンスが浦和に対応する柵を持って待ち構えても、果敢に攻撃機会を生み出した。

しかし、決定機を決めることはできない時間が続くと鹿島にカウンターを受けることが多くなり、
前半は0-0で折り返した。

●勝つためのfootballを魅せた鹿島の「らしさ」


前半をスコアレスとした鹿島は後半、前に人数をかけ攻撃的にゴールを奪うため仕掛けることをスタート。
その中で浦和も早い時間帯に得点を奪おうと攻撃を続けて仕掛ける中で、浦和のパスミスを鹿島は見逃さなかった。

カイオがボールを拾うと前半は守備に貢献し、浦和のシャドーの守備に時間を割いていた柴崎が攻撃参加。
スペースを見ながら右へと大きく開いた柴崎は、カイオからボールを受けるとココぞという場所にダイレクトで配球。
金崎夢生が柴崎がそこにボールを入れることを想定するコンビとしての信頼をみせる形で走り込み、ドンピシャで合わせ先制点を生んだ。

大きな先制点だった。
相手のミスを見逃さずその1本の絶好機を完璧な形で決め切ったそのゴールまでの流れは、チームに勢いを付けるゴールとなった。


その後、浦和は2枚同時に選手を交代させ、試合の流れを変えにかかる。
梅崎に代えて駒井、宇賀神に代えて関根を投入すると、浦和はより攻撃的に駒井のキレのある打開や関根の積極的なサイドの駆け上がりによって攻撃の仕掛けを増やす。
何度も鹿島ゴールを脅かすものの、ゴールを決めきることはできない。
鹿島は猛攻を仕掛ける浦和を前に、冷静に守備を敷き積極的に前へと出て守備に当たることでシュートコースや選手の入り込むスペースを僅差で消すことで、枠内にシュートを打たせない。
浦和は武藤を中心に果敢にゴールを狙うものの、ゴールを奪うことができずにいた。

浦和の猛攻に耐える時間の中で鹿島が攻撃を仕掛けた際、ペナルティエリア内で途中交代・鈴木優磨に浦和・駒井が痛恨のファール。
鈴木の下半身にタックルするような形になってしまったことで、PKを与えてしまう。

PKを獲得した鹿島の若武者・鈴木がボールを離さず自分が決めたいという意思を持ってボールをセットすると、日本を代表するGK西川を前に怯むことなく放ったボールは、ゴールネットを揺らした。

85分、鹿島に追加点が加わり2-0。
5万人以上が詰めかけた完全アウェイの埼玉スタジアムで、ビジター席をびっしりと埋める鹿島サポーターが、揺れた。


試合は2-0で鹿島アントラーズが勝利した。
いつもの鹿島らしいサッカーではなかったかもしれないが、これもootballだと感じさせる熟練された「鹿島イズム」が詰め込まれたサッカーだった。
鹿島を前にした浦和はどこか「未熟」さが目立った。
Jリーグの舞台で常に先頭集団に立つ浦和レッズがそう見えたのは初めてかもしれないというほどに、鹿島のサッカーは浦和を吞み込んだ。

王者鹿島と言われた時代の再建へ向けて鹿島は走り続けているが、これぞ鹿島を感じさせた試合となった。
90分という時間を知り尽くし、強き相手を前にしっかりと集中しながら勝つためのサッカーを選択し、やり切った。
鹿島アントラーズという存在感を再び重く大きく示す、そんな試合だった。
さまざまな戦い方でやり切れることもひとつの強さと言えるであろう。

鹿島アントラーズは、残り2試合。
次節はノエビアスタジアム神戸でヴィッセル神戸とアウェイで対戦、1stステージ最終節はホーム・カシマスタジアムにてアビスパ福岡と対戦する。
1stステージ優勝のためには残り2試合すべて勝利することが、タイトルへの道となる。

リーグ戦で浦和を相手にしての勝利は6年ぶりとなった。
だが、そこまで苦手意識も持っていなかったはずだ。

強敵・浦和レッズを吞み込み、鹿島アントラーズは頂へ向け、ラストスパートを切った。

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