CHANT(チャント) FC東京

大宮vsFC東京 地味だけど論理的な熱戦

2016/11/07 19:51配信

武蔵

カテゴリ:マッチレポート

今年のJ1リーグは11月3日で最終節となりました。

順位表を見渡せば、セカンドステージの優勝争いは既に決着しましたが

年間勝ち点1位争い、そして残留争いが大詰めを迎えています。

そして年間順位も、3位までは大勢が決していましたが

4位争いの可能性が残るチームが2チームありました。

年間順位で4位となると、他力ながらACL出場の可能性があります。

従って、この争いも意義深いものがあると言えます。



大宮は4位と躍進しており、最終節に勝てば4位が決まります。

J1再昇格1年目となった今季は、既にクラブ史上最高順位が確定しており

それが、天皇杯制覇による自力以外でのACL出場権獲得の可能性がある4位か

それとも5位であるかは大きな違いとなります。

ここ10戦で7勝3分という、好調さを生かしたいところです。


対するFC東京はセカンドステージで10位、年間でも9位と

一見して、この試合には出場給や勝利給以外のものは懸かっていないように思えます。

しかし、篠田監督の就任以来7勝2分2敗、この最終節を3連勝で迎えたとあれば

天皇杯、さらには来季へ向けて、この好調なチームに乗り遅れないことは重要であり

ぜひ、存在感を発揮しておきたいところです。

キャリアにおいて、無駄な試合など1つも無いはずです。

FC東京が思い通りの試合展開で支配した前半

大宮の強みは、攻守のバランスが崩れないところにあります。

大宮は強力な2トップと、サイドに張ることで妙味を出す泉澤仁を生かすなど

ボールを前進させる術を複数保有しています。

そのため、ある程度DFラインを下げて守備を行っても守備一辺倒となることが少なく

また、中央を締め、スライドの精度も高いため

ひとたび引いて強固なブロックを組むと、なかなか失点とはなりません。

降格した2014年途中から指揮を取る渋谷洋樹監督の指導力の高さの賜物でしょう。



対するFC東京はビルドアップの精度に特徴を持つチームとなっています。

特に前々節の鹿島戦からは、ボールを前進させるルートが確立された感があり

相手のプレスを空転させた上で、崩しての得点というのが見られました。

2CBと2ボランチが全てボールを持つことで特徴の出る選手ではありますが

前任の城福体制、またはその前のフィッカデンティ体制において

一貫して苦しんだと言えるビルドアップが、途中就任ながら改善された点は

こちらも篠田監督の手腕が光ると言えるでしょう。



この両チームの激突、前半はFC東京が優位に立ちました。

9分にFC東京のCBに対して、大宮が連動してプレッシングを仕掛けますが

FC東京はこれを回避し、ワンタッチを交えながら

あっという間にアタッキングサードへとボールを運びました。

これにより大宮はプレスに行けなくなり、少なくとも高い位置では奪えなくなりました。

ここで前半の趨勢が決まったように思えます。

FC東京がボールを前進させ、大宮を押し込んでいきます。



FC東京の先制はセットプレーによるものでしたが、それを獲得したのは

ハーフスペースでフリーを作り、クロスを上げたところ

大宮の右サイドバックである奥井諒がコーナーキックに逃れたというものです。

そのクロスのターゲットは流れた前田遼一でした。


スライドの精度が高いチームは、相手がサイドでボールを前進させた時に

サイドバックが自ゴール前に位置することが多く

そういったチームの攻略法として、サイドに振ってクロスを上げ

サイドバックのところでの身長差、ミスマッチを利するというものがあります。

そこでスライドを疎かにすれば、選手間のスペースを使われてしまいますので

それが、サイドバックに身長、空中戦の強さを求める傾向として表れています。


ともかく、これは大宮の組織力、精度の高さの表れと言えますが

この後のセットプレーで仕留めたFC東京は、そこをキッチリと攻略したと言えます。

大宮が攻勢に出るも、来季への課題が出た後半

後半の大宮は、特にボランチがビルドアップ時のフォローを増やしたことで

FC東京の守備を引き出し、空いたスペースを使う場面が増えました。


それは特にサイドで顕著に表れ、家長昭博が順足である左サイドに流れることで

そこで起点を作りつつ、深い位置では精度の高いクロスを供給しました。

FC東京の攻撃型ボランチの2人はサイドのフォローの頻度が少なく

この形は前半にもありましたが、48分にはこの試合最大の決定機を迎えました。


この大宮のペースアップに対して、FC東京の守備がハマらず

かといって撤退して守るということもなく、しばらく不安定な状態が続きました。


しかし、ここからの選手交代とメッセージで安定を取り戻していきます。

68分には高橋秀人を投入し「ボランチ脇が空いている」(篠田監督)とのことから

そこを修正し、次第に安定を取り戻していきました。


FC東京に落ち着かれてしまった大宮は、無理をする必要が出てきます。

そして、守備に難があるもののドリブルで1~2枚剥がせる力があり

シュートレンジも広く、そして下がってボールを受けに来られるマテウスを投入し

次いでビルドアップ時のボランチのフォローを補うべく岩上祐三と

サイドでの強力なフィニッシャーであるペチュニクを投入し

強みであるバランスを崩してでも勝ち点を取りにいく選手交代を見せます。


これに対してFC東京は、その誘いに乗らず

河野広貴を入れて「ボールを落ち着かせること」(篠田監督)を選択します。

大宮が攻めに出た前後から、カウンターの機会は幾度となくありましたが

そのための選手交代をすることもなく

2点目を取りにいくというよりも、ゲームを殺しにかかりました。

独力でもフィニッシュまで持ち込めるバーンズの投入も

「東が自分から」(篠田監督)交代を申し出たためであり

そうでなければ平山相太を投入するはずだったとのことです。

これは、セットプレーでの高さ要員と、キープ力を見込んでのことだったでしょう。


大宮は最後、リスタートのボールをGKまで下げたところでホイッスルを聞きました。

手を尽くしたものの、根負けの様相を表していたと言えるでしょう。

大宮は5位となり、注目の集まったACL出場権は

天皇杯というメジャータイトルとともに、自力で手に入れなければならなくなりました。

しかし、攻守における確かな武器と自信とともに

クラブ史上最高順位を得たという事実はなんら揺るぎません。


それは試合後、選手たちのゴール裏への挨拶の直後から鳴り止まなかった

「We are ORANGE We are OMIYA」と

ホーム最終戦セレモニー後の「寝ても大宮」の大合唱が示しています。


大宮が次なるステップに辿り着くには

ボールを持った時の攻撃の精度を上げることが求められるでしょう。

渋谷監督は「カウンターの精度を上げなければ」と話しましたが

少なくともこの試合においては

CBとボランチのところで持たされて停滞する場面がありました。

これは、はっきりと来季への課題と言えるのではないでしょうか。


しかしCBは守備の要であり、強みである最後の所の固さを失うわけにはいきません。

従って、ボランチのところに新戦力を招くことになるでしょう。

その点、柏の茨田陽生にオファーとの報道も納得できるものです。


とはいえ、まだシーズンは残っており

この日は敗れたものの、好調さを維持したまま天皇杯を迎えたいところです。



FC東京は篠田監督就任以来、これで8勝2分2敗、4連勝でのフィニッシュは

篠田監督に限れば年間勝ち点3位のペースとなります。

途中就任ということもあり、驚異的なものと言えました。

広島戦から鹿島戦までの中断期間で、ボール保持の精度が上がったことを考えれば

天皇杯4回戦をクリアした後の1ヶ月で、さらなる上積みも見込めます。

大久保嘉人の獲得が取り沙汰される中、最後の1冠が視野に入ってきました。


今後の課題は、やはり2点目が取れるようになることでしょう。

後半も、チャンスが無かったワケではありませんし

むしろカウンターの精度を求めたいのはこちらかもしれません。



しかし好調の両チームの激突は、互いが持ち味を出し合ったことで

優勝も残留も懸かっていない、地味なものだったかもしれませんが

確かに両チームの色と論理的な積み上げが表れた熱戦となりました。

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