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希望を打ち砕くクリスティアーノの一撃。天皇杯3回戦 柏VS愛媛 試合レポート

2016/09/22 22:58配信

下田 朝陽

カテゴリ:マッチレポート

第96回 天皇杯 全日本サッカー選手権大会

3回戦 柏レイソル1-0愛媛FC

一瞬の静寂を経て、スタジアムは一気に湧き上がった。希望を絶たれたチャレンジャーはうなだれ、同点に追いつく気力はもう残っていない。均衡を破った僅かな1点が、選手たちの足をとてつもなく重たいものにした。

先制点を確信したサポーターも多かったはずだ。延長前半終了直前、瀬沼優司が2人のDFを交わし、ゴール前で待つ鈴木隆雅へラストパス。彼が越えるべき壁はGKの中村航輔だけだったが、痛恨のコントロールミスを犯した。この日最大のチャンスを逃した場面だ。

愛媛としては、ジャイアントキリングを予感させるような展開で試合を進めていた。90分間は5-4-1のブロックでサイドを厚く守り、それこそボランチにはかなりのスタミナを要する戦術ではあったが、藤田息吹はこれを遂行。その後、彼に変えて攻撃的ボランチの小島秀仁を投入し、5-3-2にシステムを変更する。2トップには交代選手の2人を並べ、このフォーメーションの泣き所であるサイドの対応は彼らの運動量でカバーできていた。

ただ失点シーンを見ても分かるように、CBの西岡大輝、深谷友基、浦田延尚の3人はかなり消耗している。これに一役買ったのが柏が後半途中に投入した中川寛斗だと私は感じた。シャドーの位置から何度もダイアゴナルに走り込み、細かくDFラインを動かす。このプレーは当事者、ここでいう中川よりも外側にいる選手の矢印を内側に向けることで、チャンスを作りやすくなる訳だが、DFラインをスライドさせるという意味でも非常に有効だ。

それ同等に目立ったのが、狙い撃ちしたかのような裏への抜け出し。52分の大津祐樹、67分の伊東純也の決定機で見られたが、サイドバックをタッチラインまで引っ張り、さらにセンターバックを1枚前に引きずることで、広大になった裏のスペースをスピードのある選手に使わせるプレーだ。右のサイドバックに起用された茨田陽生も、パスの出し手として機能した。このように5バックの相手に対してもスペースを作り出し、そこに適正な選手を走らせることで愛媛DFは疲弊し、徐々に崩れていった。もとより、愛媛は90分間で決着をつけたかったのだろう。完全に引いた戦術で臨んだわけでもなかったし、サイドを捨ててまで中央にプレスをかける場面も多かった。

決勝点はそのサイド攻撃から。伊東純也のクロスにクリスティアーノがドンピシャで合わせた。愛媛はGKも含めて全く動けず。まさに勝負ありの一撃だ。柏はディエゴ・オリヴェイラにクリスティアーノと、途中投入された外国人が「やっぱり」流れを変えた。彼らにはかなりの決定機があったが、結果よければ全て良しといったところだろうか。

アウェイスタンドからも熱い声援が飛び続けたこの試合。ハーフタイムには、愛媛のコールリーダーが中央に密集するように呼びかけ、それに他のサポーター達が応える場面があった。決して人数が多いわけではないが、120分間戦い抜いたのは選手だけではない。対して柏のサポーターは、ゴールキックをなかなか蹴らない児玉剛に幾度となくブーイングを浴びせたが、これもホームチームだけがなせる業で、かなりの迫力があった。

ジャイアントキリングを許さなかった柏。点を取られていないという事実がチームを安定させ、必然の勝利に繋がった。センターバックは中谷進之介と中山雄太の若いコンビだが、年齢の割に落ち着きがあり繋ぎも滑らかだった。愛媛は敗れはしたが、J1チーム相手に得た手応えももちろんあるはず。彼らが目指すのは、来季同じ舞台で柏と対戦することだろう。

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