南米を制したサン・ロレンソ(アルゼンチン)
2014/08/19 11:01配信
カテゴリ:コラム
先日、コパ・リベルタドーレス2014決勝が行われ、
アルゼンチンのサン・ロレンソがパラグアイのクルブ・ナシオナルを1対0で破り、
クラブ初のコパ・リベルタドーレスを手に入れました。
ファーストレグは1対1で引き分け迎えたセカンドレグ、
両クラブとも南米らしく堅い守備からの速攻で相手を攻めたて、
均衡を破ったのはサン・ロレンソでした。
前半にクルブ・ナシオナルのハンドにより得たPKを
パラグアイ人でサン・ロレンソに所属するネストル・オルティゴーサが決めて1対0。
その後は、激しく堅い守備で失点をしなかったサン・ロレンソ、
見事に初めてリベルタドーレスを制しました。
◆守備を重視した南米スタイル
常に打ち上げ花火が飛び散るスタジアム、大歓声の中で試合は行われていました。
アルゼンチンのスタジアム特有の金網が客席前には取りつけられていて
いつでも飛び込んできそうな熱きサポーターを制止させていました。
試合は、失点をしなければ負けないと言われているほど、
まず守備を徹底的に固める南米のクラブ。
今回優勝したアルゼンチンのサン・ロレンソも身体を張った守備が目立ちました。
前線の選手もハーフライン付近まで下がり、
パスコースを限定しながら相手にプレッシャーをかけていく。
ボールへの執着心は観てる方もアドレナリンが出るくらい激しく、
ピンチであれば身体を投げ出してでも相手を止めにいきます。
彼らは勝利のために、FWであろうとディフェンスを疎かにすることはありませんでした。
1点がどれだけ重要なのかということを、彼らはプレーで示してくれました。
もちろん超満員のスタンドもその身体を張ったディフェンスを声援で後押ししていました。
◆エンガンチェ(ゲームメーカー)
アルゼンチンのクラブではほとんどのクラブに
エンガンチェ(ゲームメーカー)が存在しています。
ディエゴ・マラドーナを始め、ファン・ロマン・リケルメやパブロ・アイマールなど、
数多くのエンガンチェを輩出してきています。
エンガンチェとはスペイン語で「引っかける」という意味です。
必ずと言っていいほどこのエンガンチェにボールを預けるのがアルゼンチンスタイル。
今回のブラジルワールドカップでは、メッシがこのエンガンチェを担っていました。
今回、このサン・ロレンソのエンガンチェはレアンドロ・ロマニョーリという選手。
ロマニョーリは2001年ワールドユース優勝メンバーの一人で、
ハビエル・サビオラやマキシ・ロドリゲスなどとプレー。
アルゼンチンユース代表のエンガンチェとして10番をつけてプレーしていました。
当時から、彼の特徴は切れ味鋭いスピードに乗ったドリブル。
そのドリブルで相手を交わしてから決定的なパスを出すのが彼の得意技でした。
しかし当時はまったくと言っていいほど、ディフェンスをしない選手。
さすがにワールドユースではしていましたが、
サン・ロレンソでは若き頃から王様状態であったロマニョーリ。
ディフェンス時は歩いているだけ、相手が目の前を通過しても
ボールを取りにいかないことが多々ありました。
それを監督が許していたのか、攻撃のための体力温存なのか、
ディフェンスをしなくてもチームの中心としてプレーしていました。
そんなロマニョーリもポルトガルのスポルティング・リスボンに移籍をすると
もちろんそんなことは許されず、ボールを持ちすぎることも許されず、
よりシンプルにかつ自分のドリブルを活かせるように変化しました。
そんな大人になった彼が魅せたこのリベルタドーレス決勝でのプレーは素晴らしかったです。
チームの王様でありながら、ディフェンスもしっかりとこなし、
自分の得意なドリブルもうまく使いこなしチャンスメイク。
彼が後半終了間際に交代でピッチを去る時には、
サポーターから惜しみない拍手が送られていました。
大人になった彼のプレー、そしてサン・ロレンソというチームを、
今年のクラブワールドカップで観れることが今から楽しみです。