鳥栖とFC東京 この糧は、1ヶ月が勝負!
2015/08/06 19:38配信
カテゴリ:コラム
8月1日と2日
サガン鳥栖とFC東京、2つのJリーグクラブが
海外クラブとの親善試合を行いました。
結果を見れば、ともに敗戦。
残念な結果に終わった、という各紙報道の見出しを
否定することは出来ません。
ただ、内容はどうだったでしょうか。
鳥栖はアトレティコ・マドリードに対して
1点ビハインドから追い付き、PK戦で敗れました。
扱いでいえば引き分けということになります。
FC東京はアウェイでフランクフルトに対して2点先制しました。
ともにひと泡吹かせた、と言えるものでしたし
内容が伴ったと言える試合でした。
この経験は、必ず先に繋がるはずです。
仕掛け続けた鳥栖は、追い付いてのドロー
藤田直之、キム・ミヌ、キム・ミンヒョクを
東アジアカップによる代表招集で欠き
豊田陽平、林彰洋といった主力をケガで欠き
さらには、水沼宏太、赤星拓といった面々も欠いた鳥栖は
豊田離脱後に進めていた343すら採れずに
442で迎撃することになりました。
しかしこれは
この日、解説の玉乃淳氏も言っていた通り
「似たスタイルを持つ両チーム」ということで
前監督のユン・ジョンファン氏が作り上げた
このクラブの原点ともいえるスタイルが出た試合となりました。
それが、似たスタイルを持つアトレティコ・マドリードに
ボールを持たせるという形で
功を奏したという面も現れました。
つまり、ボールを持たれて劣勢ながらも
鳥栖としては、チームとして狙いの分かる
試合運びが出来たと思います。
立ち上がりに相手のアンカー脇にボールを入れ
あわや決定機と言う場面を作りました。
アグレッシブな入りを見せることが出来ました。
失点はミスによるものです。
442崩しの定石通りである
CBとSB間を狙った崩しから得たCKを
ファーに蹴ったスペイン代表のコケのキックは
非常に素晴らしいものではありましたが
チームとしては第3GKである藤嶋栄介の手は
届く高さにありました。
それでいて触れなかったのは、技術的なミスです。
それ以降、チームとして臆病になり
相手に脅威を与えられなくなります。
ミスによる失点は
チームとしてはなんら引きずる必要が無いだけに
惜しいと思わせる点でした。
しかし、HTでは森下仁志監督から
「自信を持ってもう一度」と送り出され
若いチームは息を吹き返します。
藤嶋が66分のビッグセーブでチームを救い、ミスを取り戻すと
途中出場の田村亮介が
60分や75分などの再三の仕掛けを実らせて
83分に同点としました。
オウンゴールではありますが
ゴール方向への仕掛けが怖いのは
アトレティコも例外ではなく
アグレッシブな鳥栖らしさがより濃く出た場面でした。
同点ということでPK戦へ。
PK戦では田村が相手GKであるミゲル・アンヘル・モヤに
お返しとばかりにセーブされてしまったなど
1‐4で敗戦。
日本の各年代別代表でも現れる
PK戦の弱さが出たでしょうか。
内容としては見るべきものがあったと言えるでしょう。
森下監督の進める変革の最中ながら
立ち返れる原点を見つけたことは収穫でしょう。
個人としてはやはり藤嶋を挙げたいところです。
ミスから失点はしましたが、その後は立ち直り
ビッグセーブを複数回見せました。
元々は、近年でも有数の大学ナンバーワンGKの呼び声も高く
世界水泳の行われているカザンでの
ユニバーシアードでは日本の銅メダル獲得に貢献するなど
今でも大いに期待されている逸材です。
これを機に飛躍することがあるかもしれません。
FC東京は2点先行するものの逆転負け
例によって代表組のいないFC東京。
権田修一、森重真人、太田宏介、米本拓司と
ケガにより梶山陽平、羽生直剛が不在。
また、今回は招待の人数が決まっていたため
17名での渡独ということになり
リーグ戦から中3日でのドイツ入りの上に
そのような交代面での制限が掛かる事態となりました。
直行便とはいえ、時差もある中での強行軍。
前半はやりたいことが出来ていましたが
8人を交代させたフランクフルトと比べると
徐々に失速、足が止まってしまいました。
前半は4312システムでコンパクトさを保ったことで
狙い通りのショートカウンターを仕掛ける場面が目立ちました。
1点目のCKもその形でしたし
2点目は素早いプレッシングから相手のミスを誘発させ
奪ってから2手でのフィニッシュと
素晴らしい攻撃の形を見せました。
また、20分の中央に絞った陣形でプレスを掛け
出させた縦パスを橋本拳人がカットしたシーンは
守備面だけで見れば理想と言えるものでした。
ただ、2‐0となってからのマネジメントは拙く
勝っているのにボール回しで焦り
カウンターを食らうなどした点は
不合格としか言えないものでした。
それはチームカラーとも言える弱点で
状況に応じたプレーが求められる点は
以前と変わらない面を出してしまいました。
ただ、チームとしては大きな収穫があります。
Jリーグで頭打ちとなりつつあった4312による
コンパクトな守備は、ブンデスである程度は通用しました。
真ん中を固めてサイドで取る
真ん中を固めて真ん中で取る
最近になって失点が減らないチームとしては
こういった形を取り戻すきっかけにしたいところです。
Jリーグではやられないような精度の
フィニッシュでの失点も、チームの意識をさらに
高いところへ導いてくれるでしょう。
この試合の解説であった川勝良一氏は
「この手の、強豪との親善試合の効果は1ヶ月」としました。
鳥栖、FC東京の両チームの
今後1ヶ月のリーグ戦には要注目です。