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【Jリーグ】 勝ち点の積み重ね方を考える 勝・敗・分の計算によるリーグの戦い方 【日本代表】

2015/07/31 12:36配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


メディアがよく報じる、○試合負け無しという言葉。
たくさんの試合で負けていないことを表現し、負けていないことはとても良いことのように聞こえるが、果たして本当にそうなのであろうか。

リーグ戦では勝ち点の計算が絶対的に必要であり、勝ち点予測をしてチームは先行きの計画を立てている。
この時期までに勝ち点がこれくらいほしいという現実的なプランやボーダーラインを立てているチームがほとんどであろう。

勝利と敗戦、そして引き分け。

当たり前となっているがここで改めて見つめ直したい。
勝利か負けか。そして引き分けたから1拾えて良しとするのか。

勝利の勝ち点3
引き分けの勝ち点1
敗戦の勝ち点0

リーグ戦における勝ち点の積み重ね方を考えたいと思う。

●3分よりも1勝1分1敗が良い

J1は今年2シーズン制となったこと、チャンピオンシップが導入されること、そして日本代表活動期間はJ1はストップすること。
J2はプレーオフがあること。それによってリーグ開催期間は過密な日程で進むことが多い。
今後は天皇杯も絡んでくること、さらにはナビスコ杯の決勝トーナメントも待っている。

1週間に3試合をこなす日程も一年の中には多く含まれているが、この3連戦を軸に勝ち点の積み重ね方を考えたい。

負けなし。
この言葉をよく目にするが、負けなしは負けなしでも勝利の数が多いのであればそれは評価に値するが
引き分けが多い負けなしに関しては、果たして評価されるべきことであろうか。

○戦負けなし、といってもあまり印象に残らずそうだったんだと言われて気づくこともあるであろう。
その場合は引き分けを多く含んでいる場合が多い。

引き分けには2パターンあり、勝ちきれなかった試合と、なんとか追いつき引き分けに持ち込んだ試合とがある。
勝ち点1を拾えたということになるが、それでは3連戦で考えてみたい。

3戦をすべて引き分けで終えた場合。
得る勝ち点は3。負けなしで連戦を終えたということになる。

しかし、1勝1分1敗ではどうであろうか。
負けが1つあるものの1つ勝利し、1つ引き分けたことで得る勝ち点は4。

負けなしよりも1つ負けがあってでも、勝ち点は多く得たことになる。

リーグ戦において特にW杯など3戦しかない状態でのリーグ戦の戦い方は、入念な勝ち点計算が必要となる。
もちろんJリーグの長いリーグ戦でも勝ち点の計算は重要だ。

つらい3連戦であっても、そこでどれだけの勝ち点を奪えるかとプランを持って迎えなくてはならない。
ひとつひとつの試合に全力で、という言葉はいつも聞かれ、もちろんサポーターに向けては常に全力でという選手としての声は必要であるが
チームとしてはそこで現実的に考えて、勝ち点の最低ラインを決めておく必要がある。

ひとつの目の前の試合に勝ち点3を狙いに行き、すべて勝利で勝ち点9を狙うだけでは長いリーグは戦えない。
ここで誤解してほしくないのは、負けて良い試合は存在しない。
ただし、全力でリスクを負ってでも勝ち点を獲りに行く試合が必要だということだ。

「1試合は確実に勝ちに行く」
もちろんこれは相手との実力差や環境、戦力なども考慮してのことだ。
そして「1試合はリスクを負ってでも勝ち点を獲りに行く」
この場合のリスクは失点リスクだ。前がかりになり勝ちに行くことで失点のリスクは負ってしまうかもしれないが、勝利=勝ち点3を奪うために少し無理をする試合。
この試合に関しては失点リスクがあるため負けることも想定して勝ち点計算をしたい。
そして「1試合は勝利は当然奪いに行くものの、引き分けでも良い試合」
特にアウェイで行いたい策だ。失点したくない試合を展開し1でも良いとする試合。
もちろん目指すべきは3だが、最低ラインとして1でも良い試合。
無理をする試合の後中2日で考えると最低分けでも良いという試合としたい。

最大勝ち点9、最低勝ち点4のプランだ。

これがすべて勝ち点1のゲームばかりになってしまった場合。
勝てる試合で1しか奪えず、勝負する試合でも1に終わり、前2試合が1だったため3ほしいところを1しか奪えなかった。
という負けなかったが、プランとしては最低ラインを下回ってしまった計算となるのだ。

負けていない状態といっても、決してチームのプランとして良い状態ではないことがわかる。
引き分けが多いチームはプラン通りにいっていないことが多いのだ。


●守備的なチームに難しい 白黒

守備的なサッカーからチームの戦術を立てるチームは勝利、そして敗戦の鍵を握ることが難しい。
チームによってさまざまな戦術が敷かれているが、サッカーには大きく分けて2つのパターンに分けられる。
ひとつは点を獲られずに試合を進めるサッカーか
もうひとつは攻撃は最大の守備と失点リスクを多少負ってでも攻撃し続けることで得点を生むサッカーか
他にも細かいことを言えばたくさんのサッカーが存在するが、大きくわかりやすく分けるとこの二つに分類するとしよう。

その場合、守備的な戦術を敷くチームは言葉の通り守備での決まり事が多く、守備に時間をかけるため
失点は少ない。
しかし、その分得点を生むのは難しく、複数得点を生むことが極端に難しくなる。
そのため守備がうまく機能せず2失点以上した場合や、追いつかれてしまった場合に極端に厳しいサッカーが待っていることになる。

J2に多いのだが、ブロックをうまく組み立てて守備的に守りながらカウンターで試合を決めたいチームが多い中で
そのブロックとなる1ピースにアクシデントがあると簡単に崩壊してしまったり、そこを隙として狙われ大量失点につながったりと組み立てている分、崩れてしまうと失点が多くなる。
練習の重点を守備に回すことから、得点を獲ることへのバリエーションが少なく、手詰まりの状態になってしまう場合も多い。

しかし、そのサッカーでも勝利への方程式を持つチームもある。
その代表格がサンフレッチェ広島であろう。
守備的であり攻撃もシンプルでありながらも、得点を重ねることができるだけの熟成を持っている。

広島のようなサッカーを目指しているであろうチームの戦術を持ったクラブも多いが、なかなか守備を組み立て失点を少なくしたうえで得点を重ねるということは難しいようだ。
どちらのサッカーが良いかという答えはなく、あくまで結果が出ることが必要だ。

選手たちの能力をしっかりと監督が把握し、チーム戦術を決めた上で
勝ち点の積み重ねを計算した時、守備的であれば守備以外のプランを、攻撃を得意とするクラブなら我慢して守備をする試合をといったように相手やその時の勝ち点によって戦い方を考慮しつつ
計算する必要があるのだ。

1試合1試合すべてにおいて勝ち点3を獲ることがもちろん理想だ。
しかし、だからといってすべてを勝ち点3でプランを練って、リーグを戦うことはできない。
ここで落としたとしてもここで必ず取り返す、ここは1だとしてもここで3獲れる…というプランを持ってチームは動いているはずなのだ。

●短期決戦W杯でも勝ち点の計算が重要

次回のW杯へ向けてハリル・ホジッチ監督が指揮を務める日本代表だが、日本代表こそ勝ち点の計算が必要となる。
当然それはW杯の時だ。
W杯ではたった3戦で戦わなくてはいけない。ほとんどの場合でAシードの国として強豪国が入ってくることになり、格上との対戦が待っている。
3戦の中で勝ち点を落としても仕方ない試合を想定しなくてはならない。
すべての試合で全力で、というのが理想でサッカーを観る者にとってはそういった試合が見たいが
1戦落としても仕方ない試合をどこで迎えるかが鍵となる。

例えば2006ドイツ大会。
なんといってもどの大会でも大切になるのが初戦だ。
これはどこが相手であっても、全力で全精力で戦わなくてはならない試合となるであろう。

ドイツ大会では宿敵となったオーストラリアに先制しながらも試合の終盤にまさかの3発を浴びるという無残な形での敗戦となった。
この試合がすべてだったといって良いであろう。
2戦目にはそれを引きずった形でドロー、そして3戦目にはブラジルを迎えた。
ブラジルに勝ち点3を奪わなければという状況になってしまったことはプランとしては失敗だ。
1戦目で勝ち点3を獲っていればそのあとの戦いは大分ラクになるのだ。

2014ブラジル大会も同じくだ。
初戦のコートジボワール戦で日本代表は敗戦。
あの試合で勝ち点を得ることができていたら、状況は違っていたかもしれない。

3戦しかない中で初戦という大事な入口で勝ち点を奪えるかによって積み重ね方が変わってくる。
当然すべての選択肢を持ってプランを用意しておくことが求められるが、日本代表はまだ勝ち点を入念に計算しているであろうが、それに適した戦いができていない。
チームが勝ち上がるための勝ち点の積み重ね方を日本サッカー全体で取り入れていかなくてはならないのではないだろうか。


負けないチームというのは確かに強い印象を持つ。
たが、負けてでも勝ち点を獲りに行く試合、リスクを負ってでも勝ちに行きたい試合がリーグには存在する。

勝ち点ですべてが決まるリーグ。
勝ち点の積み重ね方に注目してクラブの動向を逆算して計算してみるのも
ひとつのサッカーの楽しみ方となる。

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