CHANT(チャント) 徳島ヴォルティス

【徳島ヴォルティス】 74失点から学んだ守備の改革と自信 再挑戦に向かう「今」ここからの戦い 【J2】

2015/08/20 22:04配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


Jリーグは現在、一番の山場となる過酷な夏の戦いの最中だが、戦国時代J2で夏場に入った後半期からチーム状態が上昇し
勝ち点を積み重ねているチームが、在る。

徳島ヴォルティスだ。

現在13位と、まだまだ昇格争いに食い込んでいるとは言えない状況だが、それでも後半期から着実に勝ち点を伸ばしている。
戦国時代と呼ばれる今季のJ2の上位に今後、存在感を示すことも充分に考えられる徳島ヴォルティスの今後に注目したい。

●苦しく厳しいながらJ1という場所でしか得られない経験をした2014

一昨年、プレーオフをJ2 4位という順位から挑み、聖地国立で夢のJ1の舞台を勝ち取った徳島ヴォルティスは、チームの歴史の中でも一番の時を迎えていた。
はじめてのJ1昇格、プレーオフという負けられない戦いでの勝者となった国立競技場の舞台。
多くのサポーターと勝利を分かち合ったあの瞬間は、最高の瞬間だったはずだ。

しかしその後、はじめて挑んだJ1での戦いは、徳島にとってチーム史上一番苦しいシーズンとなった。
J1という場所はこんなにも過酷なものかというほどに勝てない試合が続き、大きな失点をしてしまう試合も少なくなかった。
順位も最下位から一度も上がれることのないシーズンとなり、シーズンで勝てたのは34試合中、3試合。
ゴール数は16ゴール、失点は74にも積み重なってしまい、総勝ち点は14と苦しい厳しいシーズンとなった。

J1という場所が苦しすぎて、これならばJ2で勝っていた時の方が楽しかったかもしれないと、徳島のとあるサポーターが漏らしてしまった言葉からは大きな精神的な苦しみが伝わってきた。
差を突き付けられる厳しい現実は、精神的にも大きな打撃を生んだ。
チームが勝てない状況が続くと、サポーターのみならず選手たちもどんなに強く我慢をしながら戦っていても、精神的に大きなダメージを受けていることが多い。

どうにかしなくては―。
その責任感のある想いが強くなればなるほどに、結果が出ない反動は大きくなっていくものだ。

しかし、苦しいだけのJ1ではなかったはずだ。
自分たちがしてきたサッカーが通用する部分は少なかったかもしれないが、それでも光が差したプレーや戦いがなかったわけではない。
ゴールのひとつひとつや接戦となった試合に自信が生まれなかったわけではない。最終戦で絶好調ガンバ大阪相手にスコアレスドローという試合をし、結果的には優勝したガンバ大阪の優勝の行方への一角に関わった。
自分たちでも出来る。そう感じることができた試合は結果で見るよりも数多くあったはずだ。
ただ、そこで感じた少しの違いが実は大きな違いを生むということも現実として受け止めなくてはならない部分も知ったシーズンだったのではないだろうか。

J2降格が決まってから、J1で出来るだけ多くの徳島の爪痕を残そうとチームが降格でバラバラになるのではなく
ひとつになり戦っていた印象がある。
徳島ヴォルティスの意地をしっかりと残そうと最後まで戦った。

苦しく厳しい大きな壁を感じたシーズン。
ただその壁は果てしないものではなかったはずだ。
手の届かないほどの高い高い壁ではなかったはずなのだ。

苦しかった勝てなかったJ1の厳しさを知ったからこそ、もう一度チャレンジしたい。
J1で通用するためには足りない部分があると学んだからこそ、自分たちに厳しく練習を重ね、もう一度チャレンジしたい。
それが徳島の誓いだった、はずだった。


●現実の厳しさは今年も続いたが改めて生まれた「今」

次こそは―。
そう仕切り直して挑むJ2となった今季だったが、降格してきたのは徳島の他に大宮アルディージャ、セレッソ大阪とJ2規模のクラブではないといえるクラブが降格となった。
ジュビロ磐田やジェフ千葉といったクラブもJ2残留となり、J2のクラブ資金力の推移が一気に上昇した今季。
その中で、そのラインに挑もうと資金力を上げ今季に挑んだチームも多い中で、徳島は昨年までのエースを失いながらも補強という部分では良い補強ができたシーズンインとなった。
選手の流出はエースの存在は大きかったものの、それでも最小限に抑えられ補強も進み、J1で戦ってきた経験を踏まえて今季は強豪たちが揃うJ2の中で、昇格争いの一角を狙っていく予定だった。

しかし、現実は厳しく待ち受けていた。

J2でも勝てない日々が続いた。
J1で難しいシーズンを過ごしたその後遺症が続いてしまっているのかというほどに、勝てない試合が続く。
それでも徳島は特別崩れているわけではなかった。
勝利こそ少ないものの、失点は少ない状況が続いていた。
それは今でも同じく、どんなに強いチームであっても徳島は昨年J1で失点を74と大きく重ねたが、今季は1点差ゲームが続き3点以上取られたゲームは1試合のみ。
その他は1点差ゲームが多くを占める。

問題点は得点を思うように重ねられない点だ。
今季の前半戦では、6試合連続引き分けという時期も経験し、勝てない状況が続き一時期は順位も21位まで落とすなど
J2でも大きく後退する順位の位置になるなど、苦しくなかなか勝利を得られない時期も経験した。

J1で現実を突きつけられるような苦しいシーズンを送ると、次の年ステージを下げた中でもなかなか立ち上がることができず
勝つための方法を忘れてしまったように結果が出ないという現象がよく起きてしまうが、徳島も今季なかなか勝てない状況が続いてしまっていた。
前半戦で勝てた試合はたったの、3試合。
戦国時代と言われながらも戦い慣れているはずのJ2で、そしてJ1を経験したからこそもっとその経験をいかしてチーム状況を上げたかったその先行きが見えなくなってしまうほどの
厳しい戦いが続いていた。

それでも失点が少ない。
その結果が徳島のスタイルとなり、長所となった。
順位は下位の位置にいることも多かったが、ひとつの光は昨年74失点したが今季はJ2ということもあるが、それでも失点が少ないこと。
それがJ1での経験が生きているところであり、徳島にとって今、光となっている。

厳しい夏場を含める後半戦が始まると、徳島は勝利を重ねた。
シーズン折り返しである後半期に入り8試合を消化したが、6勝2敗と前期21試合で3勝しかできなかった徳島が
現在は勝利を重ねている。
武器となった守備の良さで1-0というゲームが多く、0に抑え得点はいまだ少ないものの1点をもぎ取ることができるゲームが増えた。

J2で現在上位争いの主役になりつつある東京ヴェルディを相手に、PKで得た1得点を守りきり
パス回しが速く足元の技術も高いヴェルディ相手に勝利を収めたことは大きかったはずだ。

徳島は残り13試合の中で、上位との戦いを多く残している。
今週はジュビロ磐田、その後Vファーレン長崎やセレッソ大阪、大宮アルディージャと上位チームとの戦いを残しているため
そこで勝ち点を重ねることができると、自らの順位を上げることも当然できるであろう。
一時期は21位など下位に低迷していた徳島だが、現在13位まで順位を上げてきた。

しかし、13位という位置ではまだまだ昇格争いに加わることはできない。
勝ち点は今季上から下までがかなり混戦となっている状況であり、勝ち点を落とすとすぐに下位からの上昇によって順位も抜かれてしまうような状況にある戦国時代。

この中で、J1を経験してきた意地を徳島が魅せることができるか。
そしてプレーオフの戦い方を知っている徳島だからこそ、プレーオフ圏内に入りもう一度J1で戦うためにという想いがある中で
昇格争いに手を挙げ緊迫する昇格争いを戦いたい。
J1での苦しい戦いを知っている選手が多い時期に、チャレンジしたい想いは強いはずだ。

チームの歴史は続いても「今」を知る選手は「今」しかいない。
サポーターも同じく「今」を共に戦っているその時間は、偶然の重なり合いであり、ひとつの奇跡だ。
だからこそ、未来も大事なチームの道だが「今」を共に戦いたいはずだ。

残り13試合。
42試合中残り13試合となったJ2は、これから昇格争いに向け本格的に熱闘が始まる。
徳島ヴォルティスはここから戦国時代の戦いに挑む。
得点することができないチームは、サッカーでは勝てない。
しかし、失点されないことも大きな武器であることは間違いない。
守備に自信を持って戦えることを昨年の今時期に予想することは難しかったはずだ。
失点を重ねた分だけ、徳島のディフェンスは経験を得たのだ。
得点を重ねることが課題ではあるものの、光る部分を持っていることは武器となるはずだ。

もう一度あの場所へ―。

その想いは、まだ灯り続けている―。

Good!!(88%) Bad!!(11%)

この記事も読んでみる