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【日本代表】 ハリルホジッチ監督からの提案で見える 日本サッカー改善への「本気」 【ハリルJAPAN】

2015/04/17 12:54配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


早くも次のロシアW杯に向けての戦いが始まる。

先日、ロシアW杯に向けたアジア二次予選の抽選会が行われ、組み合わせが発表された。
1998年に行われたフランスW杯で、念願の初出場を果たしてから次で6大会目となる日本代表。
W杯に出場し続けることは当たり前ではなく、毎回予選というものは過酷なものと思い知らされる。

当然、勝ち上がり、出場権を得ることが最低限のノルマとして設定されることは間違いないが、今の日本の立ち位置からするとかなり過酷な予選となりそうだ。
と、いっても二次予選は圧倒的な突破が最低条件となり、負けることは許されない。
世界の壁にぶつかった昨年のブラジルW杯。
あの時の経験をいかすためにも、まずはW杯の舞台に必ず立たなくてはならない。

日本のプライドを懸けた戦いは、早くも今年6月にスタートする。


【ロシアW杯 アジア二次予選】

開催期間:2015年6月11日-2016年3月29日
8グループに分け、各グループの1位チーム、そして8グループの中からグループ2位が成績順に4チーム 計12チームが最終予選に進むこととなる。

<グループE>

日本 シリア アフガニスタン シンガポール カンボジア

<日本代表 試合日程>

2015. 6.16 ×シンガポール(アウェイ)※利用するスタジアムに空きがなくホーム開催になる可能性
2015. 9. 3 ×カンボジア(ホーム)
2015. 9. 8 ×アフガニスタン(アウェイ)
2015.10. 8 ×シリア(アウェイ)
2015.11.12 ×シンガポール(ホーム)※ホーム6月開催となった場合はアウェイ
2015.11.17 ×カンボジア(アウェイ)
2016. 3.24 ×アフガニスタン(ホーム)
2016. 3.29 ×シリア(ホーム)

W杯予選初戦は6月16日のシンガポール戦となるが、その前に国内で調整もかねての親善試合を行うことを発表した。
アジアの国と対戦することが予想され、6月11日に日産スタジアムにて行われる。

選手たちが久しぶりに楽しそうにサッカーをする姿が見られた、記憶に残るハリルJAPAN初戦。
いよいよここからが本格的に戦いとなる。


●国内合宿の提案とJリーグ全体に求める一貫性

ハリルホジッチ監督は、国内組の定期的な国内合宿を求めている。
月に一度の招集、そして合宿を求めており、国内でプレーする選手たちの底上げと自らの求めるサッカーを浸透させたい狙いがある。

日本代表に限らず、各代表の難点は代表を招集できる期間が短いことだ。
所属クラブでの試合が当然存在するため、代表に割り当てることのできる時間が短い。
しかし、それでは「チーム」を創るにあたり、時間がかかってしまう。
FIFAの規定で国際Aマッチでなければクラブから強制的に招集することができず、海外組の招集の頻度を増やすことはできないものの、国内組の合宿を定期的に実施できないかとJリーグと日本サッカー協会、そして各Jクラブに協力を呼び掛けている。

ハリルホジッチ監督は、前回の合宿と試合、そしてJリーグを実際に観て、海外でプレーする選手たちと国内でプレーする選手たちに大きく違いを感じ、国内でプレーする選手たちに自らが立ち上がり指導していくつもりだ。
この機会にJリーグクラブの指導者たちやJクラブのアカデミーの指導者たちが参加し、ハリルホジッチ監督の唱える理論と指導をクラブに持って帰って生かすことも歓迎だと述べた。

Jリーグクラブにとっては良い機会となるが、Jクラブにとっても日程はタイトであり、ナビスコ杯などカップ戦の予定もある場合も多く、アカデミーに関しても日程は大きな大会だけでもかなり厳しいものがある。
選手を派遣するにしても月に一度の招集となると、クラブとして選手に支払っている年棒は日々の練習なども考慮して支払われているため、苦言が出ることが考えられる。
しかし、A代表からの発信が多ければ多いほど、今強化という面で岐路に立っているクラブとしては、プラスになることも多いのではないだろうか。

なかなか国内以外での強化ができずにいるJクラブのトップチームにとって、代表を指揮する指導者の練習メニューやメニューの組み方と理論を勉強する場として活用できること。
そして世界を知ることができること。それは大きなプラスになるのではないだろうか。
国内組だけの合宿が頻繁に行われることで、招集される選手の機会も増え選手たちのモチベーション向上に繋がり、チームでのプレーをより質の高いものにし、結果にこだわるようになることも考えられる。
相乗効果としてクラブも大きなものを得ることも考えられ、その反面怪我の機会が増えるのではないかというデメリットもクラブは考えるかもしれない。
代表に選出される回数が多いということはそれだけメディアもそれに合わせて取り上げる回数も多くなり、日本代表選手は注目され、所属するクラブは注目度も高くなる。
その結果、観客動員などに反映される影響もあることも考えられる。

Jリーグの試合を観戦し、足りない部分に言及したハリルホジッチ氏。
当然世界との差は大きく、衝撃は大きかったようだ。
しかし、だからといって今すぐに多くの選手が海外に移籍し海外でプレーするようになれるわけではない。
だからこそ、Jリーグ全体を底上げし、日本国内で強化していこうというのだ。

代表監督として与えられた時間の中で尽くすのではなく、与えられた時間だけでは足りないと自ら時間を要求し、日本代表というカテゴリーではなく日本サッカー全体の強化を提案したのだ。
それだけ、ハリルホジッチ氏は全力を注ぎ込んでいく覚悟でいるということだ。

関わるからには全力で。
それがハリルホジッチ氏の示した向き合い方なのだ。

●過去に日本サッカーに大きな影響を残した代表監督たち

過去に一貫性を求めて、五輪代表の監督も務め自らのサッカーをJリーグに浸透させた監督がいた。
日韓W杯で指揮を務めたトルシエ監督だ。

トルシエ氏は熱く、時には選手たちを顔を真っ赤にして怒鳴り、身体をぶつけ、理不尽なことも発言するなど物議も多く問題も多くしながらも
独自のサッカー論で日本サッカーを良い意味で巻き込み、一貫した。
はじめての自国開催となったW杯。日本代表にとって二度目のW杯でベスト16に導き、自国開催でのW杯を成功させた立役者となった。
あの時の日本代表が「日本代表」という定義として残っている人も少なくないはずだ。

当時は海外でプレーする選手も今よりは少なかったものの、それでもトルシエ氏もまた細かい合宿を提案し、たくさんの合宿を組んだ。
国外での試合も多く、国外でキャンプすることでたくさんのことを吸収した。
選手たち全員で朝に行うビスケットタイムと呼ばれる散歩タイムを経て、選手たちの素直な意見をスタッフ陣に話させる場を作った。
選手同士のコミュニケーションの場としても貴重な時間となり、全員で同じ時間を過ごさせることで「チーム」の意識を持たせた。

今再び話題となることが多い散歩隊が生まれたのも、このビスケットタイムの名残だ。
このビスケットタイムがチームを創る上で意識を高めた結果が指導者たちに講習などによって伝えられ、今でも大学サッカーやユース、高校サッカーなどで大会遠征時に実施しているチームも多い。
トルシエ氏が残した日本サッカーへの影響と向上の結果だ。

ハリルホジッチ監督も、形は違うものの日本サッカーに日本代表からの発信を伝え、そして自らの経験と指導を日本サッカー全体に伝達したいとしている。
トルシエ氏の時、そして後に、日本サッカーが大きく変わったように、ハリルホジッチ監督が発することで日本サッカーがまた大きな一歩を踏めるかもしれないのだ。

日本は今後、苦しい時を迎えようとしている。
年代別の各世代代表がアジアで勝てず、育成・強化の部分で行き詰まりを感じるのは確かだ。
アジアで勝てないということはその先の世界との戦いを経験することなく、通過しているということなのだ。
各Jクラブアカデミーでは年々世界に出て強化するようなシステムも増えてきているが、それでも現在アジアで最先端というわけではなくなってきている。
JリーグクラブもACLを中心にして考えることはなく、国内重視で戦ってきていることでアジアの戦い方が浸透していない。

このままではという警笛が、近年は何度も鳴り続けている。

それを変えるひとつの刺激が、ハリルホジッチ氏からの伝達かもしれない。
かつて、オシム氏が日本サッカーに強烈に残した強化の数々。
オシム氏はクラブからその影響を開始したが、代表監督となり国内組合宿を何度も開き、たくさんの選手を呼び、とにかく頭を使ったサッカーを浸透させた。
代表監督自らが、行動を活発化することで日本のサッカーはその機会を受け止め、プラスに変えてきた。
世界で経験があり、世界を知る監督が就任するからこそ、簡単にその指導や理念に触れる機会は少なく、日本代表だけがその機会に触れるのではなく日本サッカー全体で触れることが理想的なのだ。

●招集機会が増えることで期待する選手たちの意識向上

日本サッカーの頂点である日本代表。
そこから放たれる刺激によって、Jリーグに所属する選手たちがそれを意識して日々戦うことで意識の向上とパフォーマンスの向上に繋がると、Jリーグ全体のレベルの底上げに一番スピードを持って浸透するのではないだろうか。
そして合宿を複数回組むことにより、海外クラブ所属選手たちよりも、ハリルホジッチ監督の指導を受ける回数が多いからこそ「知る」ことができる。
そこで「差」を付けることができるかもしれないというチャンスも、国内クラブ所属選手に生まれるかもしれない。

選手たちの情報交換の場としても、効果を生むであろう。
お互い敵同士としてピッチでは戦うこととなるが、ピッチを離れて違うクラブでプレーする選手の日々の過ごし方や、どんな練習をし取り組んでいるか、どんな意識を持ってやっているかというのはとても重要な情報交換だと感じる。
どんな練習をして、というのはチームの情報をリークするといったことではなく、取り組み方としてどう向き合っているのか、求めているのかといったところで刺激を与え合うのは必要だと感じるのだ。

と、いうのもさまざまなチームの練習を観るとそれぞれの空気があり、それぞれの練習との向き合い方がある。
意識を高く持ち、毎日が勝負で少しでも抜くとポジションが取られるといった緊張感の中で練習しているチームもあれば、本当にこのチームは目標に向かっているのだろうかと疑問に思うほどに緩い練習で時間が経過していくチームもある。
しかし、その時間が「当たり前」となってしまっている日常で、それ以外を知らないことがほとんどだ。
他のチームの選手がどんな姿勢で練習をしているか、自分のチームと他のチームの比べようが今のJリーグクラブの選手にはないのだ。
あるとすれば、他チームとの練習試合の時の練習試合への入り方と位置づけであろう。

お互いを刺激する場があれば、それをクラブに持って帰ることもできるし、それを個人として意識の向上に繋げることもできる。
ストイックにこだわりすぎていた選手が、少しリラックスしても良いんだ、そういうやり方もあるかと気づけば、日々ピッチ外ではなにもしていなかった選手が、ピッチ外でも取り組むことで体質改善に繋がりプレーに生きるかもしれないと気づくこともあるであろう。
サッカー界はサポーターが思っている以上に世界がとても狭く、繋がりは至るところであるものの、サッカーと向き合った状態でお互いを伝える機会は少ないことが多い。
しかし、国内組キャンプが増えることで日本代表であるための努力を共有したり、同じ目標を共有すること、そして刺激も共有する機会が増えるかもしれないのだ。


クラブ側にはクラブ側の予定があり、クラブとしての結果も出さなくてはいけないため、頻繁にチームを離れることに難色を示すことも考えられるが
クラブとして日本代表からの発信を得るためにも、世界を知るためにも、強化に繋がる道としても
国内組キャンプ月1開催は是非実現してほしい。

ロシアW杯二次予選まであと2か月。
二次予選は9か月かけて行われるが、志気を保てるような代表スケジュールになってほしいと願う。

対戦国をみても圧勝しなくてはならない相手だが、何が起きるかわからない。
それがW杯予選なのだ。

ロシアW杯に向けての戦いは、もうはじまっている―。

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