「お人好し」と呼ばれた武藤嘉紀 更なる進化のために必要なもの
2015/11/11 20:42配信
カテゴリ:コラム
今年7月、J1・FC東京から
ドイツ・ブンデスリーガのマインツへと
移籍を果たした武藤嘉紀ですが
武藤は移籍後、4231のセンターフォワードとして活躍し
早くもその地位を確固たるものとしています。
では、その活躍とは、いったいどのようなものなのでしょうか。
武藤はドイツでどのようなパフォーマンスを見せているのでしょうか。
評価のベースとなっている「献身性」のオモテとウラ
武藤は毎試合に出場し、2節以降は先発出場をしています。
その中で、必ずと言って良いほど
12kmを走り、20回以上のスプリントを記録します。
もちろん、90分に近い時間、ピッチ内を駆けずり回ります。
また、武藤はそういった運動量だけでなく
動きの質においても献身性を発揮しています。
攻撃時には1トップとして、ボールキープに成功することが増えてきました。
また、それと合わせて、頻繁に相手の裏を取れるようにもなりました。
これらの相手に嫌がられる動きは、味方に選択肢を用意するプレーであり
攻撃的な献身性と言って良いものです。
さらに、守備時には持ち前のスピードを発揮して
迫力のあるプレスを敢行します。
武藤がボールを追いかけることで、歓声が起きるようにもなりました。
このように、武藤は献身的なチームプレイをベースに
その上で、フォワードとしての結果
つまり、得点を追い求めるというプレースタイルを確立しつつあります。
しかし、その献身性も
チーム、または個人による結果が得られない時には
悪い方向にとらえられてしまうことがあります。
「お人好しのプレー」とは?
10節のブレーメン戦、武藤の反撃弾もむなしく
ホームで1‐3と敗れた試合後の現地評では
「マインツの攻撃陣では一番目立っていた。」
「後半にもチャンスはあったが、シュートを打たずにパスを出してしまった」
とされていました。
これを日本のメディアは
「お人好しのプレー」としました。
問題の本質は「お人好しなプレー」ではない
確かに武藤はドイツに渡ってから
FC東京時代や、それ以前のアマチュア時代のような
「エースの自負」
というようなものをあまり出していないように思えます。
というのも、そのような決定機での横パスというのは
このブレーメン戦が初めてだというワケではないからです。
4節のシャルケ戦で同様の場面がありました。
自陣からのカウンターとなり、ラツァのスルーパスに抜け出した武藤は
迎えた1対1の局面で横パス。
それにクレメンスが追い付いてシュート。
そのポストに当たった跳ね返りをマリがプッシュして得点となりました。
この場面で問題があるとすれば
武藤が抜け出して迎えた1対1の局面の方が
クレメンスのシュートシーンよりも決定的と言えた点です。
つまり、武藤の横パスは、プレー選択を誤ったとさえ言えるものです。
この場面、武藤はパススピードと自身のスピードが少しズレ
ボールとゴール、相手キーパーを同一視野に入れられていなかった可能性があります。
その辺りからくる自信の無さが、横パスというプレーを
選択させてしまったのかもしれません。
しかし、それならなおのこと
ファーサイドのクレメンスの動きが見えていたとは考えにくく
実際に届けられたのは、確実性の高くないパスとなっています。
このような決定機においてプレー選択のミスをするということは
選手としての能力、さらにはフォワードとしての適性を
疑われかねない事態なのです。
この時は結果として得点になりましたが
もし得点になっていなかったら
「お人好し」と、1ヶ月半早く言われることとなっていたでしょう。
もちろん、額面通りに「お人好し」と言われてしまうような
消極的という評価を受けるようなプレーもマイナスになり得ます。
バイエルン戦やドルトムント戦のように
決定的なチャンスでシュートを外したことは、ある種、仕方のないことです。
それは技術面と精神面の、いわゆる決定力の問題であり
学習能力の高さが元々の武器である彼のこと
Jリーグで稀に見る進化のスピードを見せた実績からして
やがてはそのような局面でも決めるようになるでしょう。
ただ、チャンスを前に尻込みをする
もしくは尻込みをしたと評価されてしまうようなプレーは避けなければなりません。
武藤はサポーターに心配をさせない
http://sports.yahoo.co.jp/video/player/70462
しかし、武藤はその進化のスピードを
ドイツの地でも緩めてはいないようです。
お人好しと言われたブレーメン戦の次節
11節のアウグスブルグ戦ではハットトリックを達成しました。
3点とも再現性を持ったゴールだったと言えます。
自身の得意とする動きでフリーとなっており、質の高さを示しました。
それと同時に3点目は、積極性をも示したゴールでした。
FC東京時代にフィッカデンティ監督から教えられた
「シュートを打ち切ること」を
実践したようなゴールでした。
とにかくエリア内でシュートを打ち切ったことで
DFに当たり、コースが変わってゴールに吸い込まれた、というものでした。
そういった積極性を、ベースとしている献身性に
プラスしていくことが求められています。
しかし、それにしても武藤はサポーターに心配をさせません。
開幕節で先発から外れれば、2節では先発出場を果たし
2節のボルシアMG戦で決定機を2つ外せば
3節のハノーファー戦では2得点を挙げ
今回も、10節で「お人好し」と呼ばれれば
11節では3得点を挙げ、3点目では、その「人の好さ」を払拭してみせました。
ドイツにいながらも
FC東京時代と変わらない速度で、更なる進化を続ける武藤。
次はどんな進化を見せてくれるのでしょうか。