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【松本山雅】 決まってしまったJ2降格 はじめてJ1に残す松本山雅のfootballのカタチ 【J1】

2015/11/09 22:33配信

CHANT編集部

カテゴリ:コラム


ララララーララーラララー
叫び!歌え!
止まらねぇ俺たち松本 暴れろ 荒れ狂え
ララララー…

J1開幕戦が行われた3月7日。
クラブ史上初めてのJ1の舞台を迎えた場所は、豊田スタジアム。
アウェイ名古屋の地にチームと共に戦うために集まったサポーターは、約1万人にも上った。
2階席までびっしりと埋まり、タオルマフラーが回されるとその光景は美しい深緑が躍った。

松本山雅がJ1で戦う2015シーズン。
それは松本山雅のサポーターだけでなく、Jリーグにとって大きな出来事だった。

約一年前。
たった3季のJ2シーズンを経験しただけでJ1昇格を自動昇格圏で手に入れた松本山雅。
昨年の松本山雅はなぜ強かったのかという理由を具体的に言葉にするならば、サポーターの力を筆頭に挙げることが第一のように
松本山雅にとって大声援となるサポーターの声は、チームの120%を出すことができる重要なチームとしての戦力のひとつだった。

サポーターと共に掴んだJ1昇格という大きな偉業。
選手とスタッフ、サポーター、そして故・松田直樹と掴んだ夢のJ1だった―。

昇格の歓喜に湧いたチーム最上級の歓びから一年。

はじめてのJ1で過ごしたシーズンは、険しく厳しいものだった。
松本山雅のJ2降格が決まった―。


●難しかったはじめてのJ1での戦い。それでもしっかりと示した松本の存在感

J1で戦うシーズンを向かうにあたって、シーズン前のチーム編成から松本は苦しんでいた。
J2で戦った戦力でも充分とはいえず、J1に向けた戦力を整えたいところだったが、うまく補強が進まずさらにはJ2を共に戦った選手たちが他クラブへと移籍してしまうなど、昇格してもステップアップしていく選手たちを見送る形となってしまった。
J2を2位という位置で終えた松本山雅だが、シーズンを通してJ2であっても戦力として充分というわけではなかった。
決してラクな試合があったわけではない。苦しい試合の中でも多くのサポーターが詰めかけ戦うこととなる聖地アルウィンでの試合となると、それは大きな大きな力となり、12番目の選手と共に選手にひとつひとつを全力で戦い続けた。
街をあげて応援してくれる熱意が伝わることで高いモチベーションとなり、松本山雅で試合をすることに誇りを感じるアルウィンで90分を丁寧に戦い勝ち点を重ねた結果だった。

しかし、はじめてのJ1への切符を手にしても選手たちは次のステップに進むために移籍という道を選択したり、レンタル先のチームへと戻ってしまった。
松本山雅の補強は急務だったが、結局、充分な補強とはいえない状態でシーズンを迎えることとなった。

J1の他チームと比べてみても、松本山雅の戦力は充分ではないということがわかるスタートだった。
それでも戦いはやってくる。
実力だけでなく経験という面を含めても厳しい戦いが想定されたが、それでも戦いは訪れる。
どんな時も、全力で進むこと。
それが「山雅らしい」姿でもある。

開幕戦に駆け付けた一万人のサポーターからは、アウェイにも関わらず会場を包み込み一体となる声が届けられ
松本山雅はJ1初戦で3得点を奪って見せた。
それでも試合内容は、オリジナル10であり長年J1で戦ってきた貫録のあるビッグクラブ名古屋が握り続けた。
3得点。しかし3失点。
松本山雅のJ1初戦は、3-3のドローという結果となった。

山雅はその後の試合でも得点を獲る試合が多かった。
0で終えた試合は全体の3割ほどで、多くの試合で得点を得ることができていた。
しかし、1点差で負けるゲームや先制しても逆転されるなど、得点を獲ることができてもそれ以上に失点を重ねてしまう試合が続いた。
あと一歩という試合が多かっただけに、はじめてのJ1ながら松本山雅の予想に難しかったであろう健闘は、人々の心に残った。

Jリーグ全体においてfootballを強く感じることのできる場所として認定されたであろうアルウィン。
アウェイのチームのサポーターが松本だけは行きたいと選択することも多いほど、その一体感は松本山雅だけのプライスレスな価値を感じる場所となっている。
松本サポーターの一体感ある応援風景、そしてそれを背に全力を尽くし戦う松本山雅の一生懸命さ溢れる姿に、また対戦したいとすがすがしい気持ちを持って帰路につく対戦チームのサポーターが大勢いたはずだ。
人々の心に響かせるものが、松本山雅には強く在った。


あと一歩。
その少しともいえる差が、実は大きな差であったことは、戦っている選手や監督、そしてサポーターの誰もが感じた一年だったであろう。
そのレベルや質、空気も含めて違いを強く感じたシーズンとなったはずだ。
勝てた試合は少ないもののそれでもJ1で戦いたい。そう改めて感じていることであろう。
J1はいつでも、目指すべきところでなくてはならない。
どのステージでも応援するスタイルは松本山雅のサポーターにとっては変わることなく続くであろうが、
雷鳥は頂を目指す
と掲げられた横断幕が指すように。

松本山雅はこの経験を得てさらに高いところを目指すこととなる。
J1で戦ったこのシーズンは松本山雅にとって、重大な歴史となったことであろう。


●松本には山雅が在る。J1で戦った誇りを持って未来へ

松本山雅は夏場の市場が開くと、補強に動いた。
セレッソ大阪から安藤、サンフレッチェ広島からは工藤、そして元韓国代表のキムボギョンと大きな補強があった。
J1レベルというものさしで見ると、決してスーパーな選手たちとは言えないかもしれないが、それでも松本山雅のサッカーにとって大きな影響が出た新たなる力だった。

その選手たちは元の所属クラブで出場機会がなかなか得られずにいただけに、松本でサッカーをすることでサッカーをしているんだという実感を改めて掴み、ここでサッカーができることが幸せだというのがひしひしと伝わってくるほどに
ピッチの上でその能力と共に気持ちも全開に見せ熱く戦っていた。
あまり感情を表には出さずに内に秘めるタイプの選手であっても、松本山雅のたくさんのサポーターで埋まるスタンドを背にすると、熱くならずにはいられない。
そんな感情にさせられるのであろう。

松本では松本山雅というチームが街の誇りである。
当たり前のように見る、松本山雅の存在の数々。
子供たちの運動会にはたくさんの子供たちが松本山雅のユニフォームを着て、参加する。
背番号3を背負う子供たちは、松本山雅の松田直樹という大きな存在、そして田中隼磨に憧れを持ってそのユニフォームを着ることを選択している。
マリノスや東京ヴェルディ、そして名古屋グランパスでの活躍は目にしていないであろう。
特別な「松本山雅」の背番号3に憧れ、そのユニフォームに腕を通すのだ。
子供たちにとってこれまでの功績は関係なく、憧れの松本山雅の田中隼磨なのであろう。

子供からお年寄りまで、松本山雅を生きがいにして生活をする人たちがたくさんいる。
松本山雅という存在が、街に光を勇気を与えてくれる。
そういった地域と密着するクラブの在り方をモデルにし、松本山雅のようになりたいと目標にしているクラブも多い。
だが、目指して手に入れられる人工的なものではなく、松本山雅は自然とそうなってきたからこその存在の確立があるといって良いであろう。

松本山雅には、松本山雅らしさが存在する。
それはどのチームにもなき、特別なものだ。

J2降格が決まった。
降格圏から脱出することができるとするならば、山雅であろうと最終節までの奇跡を描ける特別な力が存在するであろうと期待をしてしまうのは
やはりサポーターの力で120%を表現し奇跡を起こしてきた松本山雅だからこそ、だ。

しかし、やはり「差」は大きかった。
足りないところが数多く見られるシーズンを過ごしてきた松本山雅は降格を目の前に、やはり厳しいシーズンだったことを改めて受け止めることとなったであろう。
それでも、J1という場所には大きな意味があった。
自分たちの実力、そしてチームとして必要なこと、足りなかったこと、方向性が必要であることが明確に見えた日々だったであろう。

再びJ2で戦うことが決まった松本山雅だが、今後ももちろん頂を目指し再びチャレンジすることとなる。
J1での経験を持って今後さらに松本山雅がfootballを知り、footballクラブとなること。
そして松本山雅にしかない武器を持って、再び挑む日を目指すこととなる。

多くの他クラブのサポーターが、松本山雅の降格を惜しんだ。
また必ず上がってきてくれ。
そんな声を多く耳にした。
一体感のあるサポーターが力の限り、声の限りに歌ったチャント。
揺れるスタジアムに、戦う姿勢。
それを受けて怯むことなく、戦いに向かった松本山雅。

そのチームの在り方に、クラブという枠を超えて魅力を感じたサッカーファンが多かったであろう。
スター選手が在籍しているわけではない。
特別な奇跡的なゲームを数多く起こしたわけでもない。
それでも多くのサッカーファンの心に松本山雅という存在は大きく強くなった一年だったであろう。

残る試合は最終戦。

相手は横浜Fマリノスだ。

松田直樹を感じることになる一戦となることは、このカードを目にするだけで想像に直結する。

J1で戦う時間はあと90分。
松本山雅はサポーターと共に止められない荒れ狂うfootballを魅せる90分であってほしい。

footballクラブというよりも

プロサッカーチームというよりも

Jクラブというよりも

「松本山雅」という独自の在り方を持つ信州松本のfootballに

たくさんの人が触れたであろう2015シーズンも

残り、1試合―。

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