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【レノファ山口】 J2昇格、そしてJ3頂点を懸けた熾烈な戦いは最終ステージへ チームそれぞれの「形」 【FC町田ゼルビア】

2015/09/22 23:18配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


昨年から新しくJ3が新設され、今季はリーグとして2年目を迎えているが、J2昇格へ向けての最終コーナーを迎え、熾烈な戦いが繰り広げられている。

J3からJ2に昇格するには、J2ライセンスが必要であり、現在J3でJ2に昇格するためのライセンスをクリアしているのは現時点ではFC町田ゼルビア、AC長野パルセイロの2チーム。
現在首位のレノファ山口は今季J3に昇格したチームながら首位を独走したこともあり、J2ライセンス取得に向けて申請をし、全力を尽くし今月にも合否が出るであろうJ2ライセンス発行を目指している。

日曜日、J3は大きな局面を迎えていた。
首位を走るレノファ山口。
勝ち点6差で2位を走っていたFC町田ゼルビア。
町田から勝ち点6差で追いかけていた昨年の2位AC長野パルセイロ。

優勝するとJ2に自動昇格、2位がJ2の21位との入れ替え戦に挑むこととなるだけに2枠は今後に繋がる大事な枠だ。

J2昇格に関われるのは、2枠。

J3が開幕して2年。
まだまだ浸透度は低いかもしれないが、徐々にその存在感を示しJリーグ、日本サッカー界で注目されるクラブも増えてきた。
現在リーグの象徴的存在であると言えるであろう3チームが繰り広げる昇格への戦いは、目が離せない状況を迎えていた。

総当たり3回戦のJ3は最後のターンを迎えたが、2位を走り唯一レノファ山口に負けていない状況でFC町田ゼルビアがホームで最後の直接対決を迎えた。
大きな山場でありJ3の大きな局面となった町田×山口の戦いは、決戦となった。

●我慢の時を乗り越え地域リーグから諦めなかった未来 爆発的得点力を持つ超攻撃術 レノファ山口

現在首位を走るレノファ山口は、今季JFLから昇格したチームだ。
念願のJリーグクラブとなったレノファ山口だが、地域リーグからひとつ上のステップとなるJFL昇格を果たすために、長い時間を要し我慢の時間を過ごしてきた。
Jリーグ入りを目指すクラブとして、地域リーグからたくさんのクラブが本格的な強化に乗り出し、地域リーグ戦国時代を迎えていた頃、レノファ山口もJ入りを目指し戦ってきた。

地域決勝では、出場チームとして常連ながらも、世界一過酷な戦いとも表現されることもある地域決勝という戦いの場で、なかなか昇格圏まで食い込むことができず我慢の時間が続いた。
全国9つに分かれた地域リーグで一年間戦い優勝し、地域決勝に出場しても、結果を出せずまた次の年も地域リーグで一年間戦い…という循環は思っている以上に過酷だ。
地域リーグのクラブではなかなかスポンサー企業などの支援の金額も大きくならず、クラブ運営は厳しいものとなるが、それでもJリーグを目指すクラブは元Jリーガーである選手の獲得を進め強化に積極的となり、全国で戦うには遠征費なども必要となるため、どうしても財源は必要となる。
その苦しい状況を何年も過ごしてきたレノファにとって、Jリーグ入りは念願なのだ。

地域決勝に出るためには、地域リーグにて1位の位置でフィニッシュする必要があり、それを逃す可能性があると全社で3位以内に入らなければならないが、結果が出ずに難しい状況が続いていた山口。
地域リーグである中国リーグでも勝てず、全社でも結果が出ない日々が続いていた時、光が差した。
J3が新設されることになり、J3に加盟したいチームはJ3参加のための申請、承認があり、それに伴いJ3にJFLから参入するチームも出てくるためJFLで空く枠をかけての参加の申請、加盟の審議が行われ、レノファ山口のJFL入会が承認されたのだ。
結果的に、地域決勝を勝ち抜いた形ではなかったものの、その大きな壁をやっとの思いで乗り越え、JFL入会となったことで山口の本格的なJリーグへの道が開かれた形となった。

JFLで戦った昨年、加盟一年目にして年間順位で4位。
その中でJ入りをしないとする企業チーム以外で、J3の昇格基準を満たしていた山口がJ3昇格となり、JFL入会一年目にしてJ3昇格を決めたのだ。
JFLまでの時間は長い長いトンネルだったが、JFLという道のりを1年で突破し、Jリーグという戦いの場にたどり着いた。

そして今季。
念願のJクラブとなった山口は、昇格一年目にして首位を独走しているのだ。
町田との直接対決となった日曜日まで28試合を終えて、勝ち点は61。
2位の町田ゼルビアに一時は勝ち点10差をつけるなど、圧倒的な独走体勢で走ってきた。
直接対決前の町田との差は勝ち点6差。

それまでに山口が敗戦したのは、5つ。
長野に1敗、そして町田にはホームでもアウェイでも敗戦となり、2敗を喫していた。
そう考えると2位町田、3位長野に負けているものの首位をキープしているのは、取りこぼしがないという点で勝っているからであろう。
そして直接対決を前に初めての連敗と2つ敗戦を重ね、勝ち点を重ねられなかった。

シーズン通して引き分けが少ないのも強みだ。
現在で引き分けた試合は1つだけ。負けが5試合で引き分けが1。それ以外の試合にはすべて勝利していることで、勝ち点をコンスタントに積み重ねていることがわかる。
上位との対決では長野に1勝はしているものの1敗、そして町田には最後の直接対決前まで2敗と決して良い結果は残せてはいなかったものの、その他のチーム相手には勝ちを順調に重ねたことが今の山口の最大の強みだ。

山口は縦に速いサッカーを展開する。
センターラインまではボールを回し、敵陣に入ると一気に攻撃を仕掛ける。
アンカーである庄司、中盤小塚を経由し前線にボールを展開し、攻撃を仕掛けるサッカーで爆発的な得点力を誇る。
J3得点ランキングの上位5名中、4名が山口の選手であることが得点力の強さを示している。
特に得点ランキング1位を走る岸田は町田との直接対決前の時点で28試合で25得点と爆発的なゴールを量産している。
山口の総得点数は29試合でなんと70得点を大幅に越える。得点力不足という言葉とはほど遠いチームであり、29試合で得点できず0で終わった試合は町田との0-1の試合1試合のみだ。
単純計算で平均して1試合に3得点近い得点を生み出しているということになる。

残り試合でどれだけの勝ち点を重ねることができるか。
そして現在申請中である、J2ライセンスの発行が認められるためのクラブとして、地域としての力が必要となる。
J2に今季昇格した金沢が、昇格一年目で上位につけ存在感を示しJ1ライセンス取得に向けて動き出すこととなったが、山口も昇格一年目で結果を出していることでJ2参入のために動き出した。
チームも予想していなかった嬉しい打算のため、クラブとしてそして地域として精一杯を注ぐこととなる。

●今季こそは 1つも落とすことができない緊張感を持って挑むFC町田ゼルビア

J2経験があるのは町田、富山、鳥取だが、その中でJ2昇格条件を満たしているのはFC町田ゼルビアのみとなっている。
FC町田ゼルビアは現在2位の位置となっているが、首位を走る山口との勝ち点差が縮み、さらに3位長野との勝ち点も安心できるほど差が大きくはないため1戦1戦を緊迫した状態で迎えているだろう。
目指すのはJ2昇格であることは間違いないが、町田が目指しているのはもっと大きな目標だ。

それは、町田のシンボルになること。
J2昇格、そしてその後のJ1という目標を持っていないわけでは、もちろんない。
しかし、いつまでに昇格という明確な設定はなく、町田はプロクラブとして大きくなり一人でも多くの町田市民に愛されることを目標としている。
そのためには勝利を重ねることで明るい話題を多く提供し、そして戦うステージも上がることで、注目も上がり存在感を示せることになることに繋がっていくことを目指し戦っている。

町田の選手たちの中には、J1やJ2で戦ってきた選手が多く在籍している。
Jリーグで厳しい戦いや競争をしてきたその経験を持って今、町田で共に戦い、同じ目標を持っているからこその町田独自のチームとしての絆がある。
町田の選手たちを見ていると、サッカーが出来る環境があることを本当に大切にしているかのように
真摯に向き合い、FC町田ゼルビアの一員として日々一生懸命に取り組んでいることが感じ、伝わってくる姿がある。
中には天才と注目を集めた選手や、将来を有望視されてきた選手たちの姿もある。そういった選手たちの多くは一度は経験する自分とぶつかる壁。
自分は特別だと思っていたがそうではなく、厳しい現実として通用しなかったときにぶつかる壁は衝撃が強く、そこで折れてしまったり曲がってしまう選手も多い中で
町田でプレーする選手たちは、サッカーが好きだという原点を見つめ返しサッカーをすることができる歓びや「チーム」として同じ物事に向かって走ることができる当たり前のようで当たり前ではない日々に気づき
1日1日を大切にサッカーに費やしているように感じることができる。

FC町田ゼルビアというチームが、そしてその選手たちをまとめる相馬監督の創り出し与えるサッカー感が、選手たちに浸透しているのだろう。

相馬監督と選手たちとの距離感も近く、指揮官に選手から話しかけることが難しいチームもある中で
練習が終わると積極的に選手が監督の元へ出向き、自分のプレーについて確認するなどする姿も見られるところが、ゼルビアの良き場面のひとつでもあるであろう。
相馬監督と選手たちの間にある信頼は厚く、「チーム」としての時間を濃く日々過ごしている。

ひとつ戦うごとに、ひとつ練習するごとに、手ごたえを感じながらひとつひとつを戦っているFC町田ゼルビア。
昇格へ向けて勝ち点をひとつでも多く積み重ねたい。
そのためには取りこぼしのないよう、大切に勝ち点3を積み重ねることが必要で、1つ1つが落とせない試合となる。

天皇杯では、若手主体ではあったもののJ1名古屋に勝利をおさめたFC町田ゼルビア。
J1にトーナメントとはいえアウェイで勝利できたことは自信というプラスになったこともあるが、天皇杯を勝ち進むということはそれだけこなす試合は増え、体力的には苦しくなる。
嬉しい悲鳴と言えるよう、リーグも天皇杯も全力で向かい、目の前の戦いに勝利を重ねたい。

町田は、サッカーの街だ。
サッカーの街にあるプロサッカークラブだからこそ、たくさんの人の期待と希望を預かっている。
J2昇格へ向けて、チーム力を全力で魅せる。


総当たり3回戦最後の直接対決となる、レノファ山口にとってもFC町田ゼルビアにとっても落とせない試合が日曜日、行われた。
前2戦では町田が勝利をおさめていた。
山口に2戦勝利したのは、そして無得点に抑えたのも町田だけだった。
その町田がホームで迎えた圧倒的得点力を持つレノファ山口。


J2昇格へ向け、そしてチームの意地とプライドを懸けた決戦。
山口のエース岸田が26得点目となるゴールで先制点を奪うと、その後町田も強烈な鈴木のゴールで同点に追いつきという展開となったどちらも譲れない戦いは
PKを得て決めた2点目、そして途中交代の選手が結果を出す形で3得点目を奪い今季の得点力を示す形で
レノファ山口がFC町田ゼルビアから初勝利を奪う結果となった。

この結果、レノファ山口は勝ち点を64まで伸ばし、町田は勝ち点55。
勝ち点差は9に開き、長野が勝利したことで町田との勝ち点は3差まで詰め寄ってきている状況となった。
早いもので残り10試合。明日もJ3は試合が行われる。
J2昇格争いは山口が頭ひとつ抜き出る形で、熾烈さを極めてきている状況だ。


ステージがどこであっても、そこにある一瞬はその時にだけ生まれる奇跡。
充実したfootballな90分を―。

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