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【サンフレッチェ広島】 広島が貫いた「信念」 浦和が奪わなければいけなかった「戦意」 【浦和レッズ】

2015/07/20 23:17配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:マッチレポート

(photo/Getty Images)


ついに浦和の負け無し記録がストップした。
セカンドステージ一つ目の山場を迎えた7月19日。

浦和レッズ×サンフレッチェ広島。

サンフレッチェ広島は現在セカンドステージ首位。
そして浦和レッズはファーストステージ優勝、そして年間順位首位を走り、広島は年間順位でも2位を走っている。

この大きな山場で勝利を得たのは、サンフレッチェ広島だった。


●封じ込まれた広島サッカー 先制点を得た浦和

浦和レッズのホームスタジアムである埼玉スタジアムには、4万人以上の観客で赤く染めた。
サンフレッチェ広島サポーターもアウェイ席を紫を埋める。
この試合が大きな舞台であることをクラブ、そしてサポーターも理解し臨んでいた。

埼スタならではの雰囲気。浦和レッズの闘志が溢れるスタジアム。
これまで負け無し戦ってきたこともあり、チームの雰囲気と共に当然ホームスタジアムの雰囲気もより一体化し、熱気に溢れている。

そんな中で迎えた、決戦。

前半序盤、アクシデントが広島を襲う。
今季の広島の好調の理由のひとつであり、攻撃においてポイントになる選手でもあるシャドーに入る柴崎晃誠がプレー中、浦和陣地に深く切り込んだところで痛みに顔を歪め、倒れた。おそらく太もも裏を肉離れしたと思われる。
東アジア選手権の予備登録メンバーにも選出されており、なにより大一番となったこの試合での序盤でプレーができなくなってしまうこと、チームに迷惑をかけてしまうこと、交代枠を使わなくてはならないことなど、すべてにおいての悔しさが込み上げる。
このピッチから離れたくない。そんな想いが伝わる悔しい負傷交代となった。

柴崎晃誠を失った広島は、野津田を投入。
思わぬキーとなる選手のアクシデントがあったことによりゲームプランが乱れてしまった広島は、浦和のホームスタジアムである埼スタ独特の雰囲気と、浦和の容赦ない攻撃に呑まれ、防戦一方となってしまう。
広島としては、ある程度プランを持って、前半は我慢の時間も必要と踏んでいたと思うが、それでも苦しい時間が続いた。

そんな中、ペナルティエリア内でファールという判定があり、PKを与えてしまう。
その直前にパスを手で受けたようにも見えた高木のハンドともとれるプレーに広島側は抗議したものの、覆ることなくPKに。
PKを獲得した高木が自ら蹴ったものの、広島のGK林がPKを阻止。
PKを止めたそのワンプレーで広島が良い雰囲気を持てるかというチャンスを得たものの、その後も浦和の攻撃は止まらない。

そこで生まれた浦和・関根のゴール。
ゴール正面に上がってきていることが見えていた関根は味方にクロスを上げようとしたが、広島・柏の足に当たってしまいコースが変わり広島ゴールへ吸い込まれた。
浦和レッズは前半に先制点を奪うことに成功した。

その後もずっと浦和の時間帯が続く。
広島は防戦するのがやっとで、自分たちの攻撃をすることができない。
いつもは試合中何度も見ることができる柏の縦への勝負や、深くまで上がるミキッチからのクロスも封じられた。
浦和は広島のサッカーを熟知し、しっかりと守備をスカウティング通りに敷いた。

広島のサッカーは、守備から整え、その上でカウンターを仕掛けるというサッカーをすることを浦和は当然理解していた。
だからこそ、カウンターができないようボールを広島が持っても、カウンターを仕掛ける穴を埋め時間がかかるよう守備に時間をかけ、広島のプランを潰していた。

●広島の勝利の方程式 わかっていても止められなかった、決めきれなかった浦和

後半に入っても浦和の猛攻は止まらない。
しかし、入らない。
何度も効果的かつ決定的な場面があったものの、決めきれない浦和。
これが勝負を分けたといっても良いであろう。

浦和としては2点目、3点目を奪い、広島の「戦意」を失わせることが必要だった。
しかし、何度も攻撃を阻むことで広島は徐々に徐々にそのペースを掴んでいた。
攻撃される。そしてそれを阻止する。
それを繰り返すことで、広島は浦和の攻撃ペースに慣れていった。
浦和の攻撃は当然おそろしいものがある。しかし、何度も攻撃されることでその特徴、ペースを掴んでいった。

そして。
ジョーカーとなるべく浅野を佐藤寿人に代えて送り出した森保監督。
浅野が投入されたことで広島が得るもの。
それは前線での体力とスピードだ。
明確で明らか。
そのお決まりになった術を、ワンパターンと表現する人もいるであろう。
しかし、言い方を変えればそれが広島の「信念」だ。

浦和もそのパターンは重々理解していたはずだ。
しかし。

サッカーにおいて一番疲れた時間帯にスピードのある浅野が投入されることは、負けの無い強き浦和レッズであっても厳しいものだった。
しつこいようだが、絶対に分かっていたはずなのだ。
浅野のトップスピードの速さがいかにこわいことや、それを狙ってどうボールが出てくるかを。
しかし、浦和は疲れていた。

その疲れは「攻め疲れ」から来るものだった。

ボールが出た時。
すでに浅野はトップスピードでボールが出てくることを感じ、動いていた。
前節退場となり出場停止である那須に代わりセンターバックを務めていた永田も重々警戒していたはずだが、一瞬にして浅野に置いて行かれた。
視界から浅野を見失ってしまったら、もうそこにはピンチしかない。
浅野に裏を取られ背中を向けてしまった。そこから振り向くときにはもう浅野はシュートコースへと入っていた。

浅野は得意といっても良いであろうシュートコースで、浦和レッズから得点を奪った。

広島が同点に追いついた。

若き浅野が交代で投入され、プラン通りに得点を奪えたことにより、広島には勢いが生まれた。
それまで防戦一方だった中で得た浦和の攻撃のスピード、パターン、そして阻止できる自分たちの力への自信。
それを浅野の得点でひとつにし、広島は我慢の時間帯からひとつ抜け出すことに成功。
浦和は攻め疲れてしまった一方で、浅野投入により広島のやることが一本だったことをわかっていながら、そのパターンでやられてしまったことが大きな痛手となった。

その後も、浅野のスピードについていけない永田をペドロヴィッチ監督はすぐに交代。
鈴木啓太を投入し、ボランチ阿部勇樹が最終ラインに入り、浅野対策に出た。

しかし、浅野を止めることはできなかった。

浦和はそれでも得点に繋がりそうなチャンスを生み出していたものの、決めきれず。
逆に広島は浅野のスピードを使ったショートカウンターで浦和の最終ラインに攻撃をしかけると
後半39分、浅野がボールを持ち仕掛けたところで対したのはJリーグで一番今守備において最良のパフォーマンスをしているであろう槙野。
浅野との勝負に出て、そのリスクとしてその後キーパーとの1対1になることを避けるため、槙野は引いてディフェンスすることを選択。
その選択も間違いではなかったものの、結果的にそれによってボールとゴールの距離が縮まってしまい、しかも真ん中という位置での引きによって直線でのボールとゴールの距離が縮まった。
浅野が槙野の姿勢とゴールへの距離を読んだこともあり、そこでボールを配球。
最後は青山が得意のキックの正確さでゴールネットを揺らし、広島が逆転に成功した。

若き選手の活躍、浦和の埼スタで逆転ゲームをしたという自信は誇りのように広島を輝かせ
試合終了まで浦和の攻撃は続いたものの、守備を貫き

サンフレッチェ広島が勝利した。

ファーストステージも早い時期に当たったこのカード。
広島ホームで戦った浦和レッズ戦は、広島が前半から何度も仕掛け浦和のサッカーを封じることに成功しながらも、先制点を奪えず。
後半は体力が消耗してしまい、浦和のサッカーをされ、なんとか守備に徹し、スコアレスドローだったサンフレッチェ広島。

Jリーグ1のアウェイ感である埼スタ独特の空気の中で、戦い方のプランをいくつか持って挑んだと思われるが、アクシデントもあり広島のサッカーがなかなかできなかったもののそれも浦和相手にそして埼スタでは簡単にできないことは想定してたはずだ。
前半に失点したときは大きな落胆が見られた。
それは浦和が先制することで浦和がゲーム運びとしてその後、守備に周ることも考えられたからだ。
1点取って守るサッカーを展開することも考えられたため、カウンターをする広島としては難しいゲームになるかもしれない。
そのため先制点を取られたのは厳しかった。

しかし、浦和は2点目を取りに来た。
浦和は今季のゲームの中でも指折りの良いゲームを展開し、自分たちのサッカーが表現できていた分
2点目、3点目を取りにきていた。
実際、獲れていたであろうシュートも数多くあったが、決め切れられない内に広島がこれは守れるという自信を持ったこと、そして戦意を奪うことができなかったのは浦和としての痛手だった。

試合内容としては浦和レッズの試合だったといって良いであろう。
しかし、浅野投入からの広島のプラン通りの試合ができたのも、そこまで負けている状況ながら、猛攻を受けつつ自分たちのサッカーができないながらも
我慢の時間帯を過ごしながら一本のチャンスが来るのを待っていた、その強いメンタルは
二連覇した経験があり、勝つべきところで勝ってきた、我慢するところで我慢してきた 広島の経験が生きたところであろう。

試合は浦和レッズが握っていた。
しかし、広島は自分たちの信念を通し、大きな大きな大きな1勝を挙げた。

埼玉スタジアムで獲ったゴールは、さらにまた浅野を成長させることであろう。
広島のサッカーは丸裸にされている。どんなパターンでどんなサッカーをしてくるかも読まれている。
しかし、それでも起こせる勝利への方程式。それが広島サッカーであることを、示した。

浦和レッズ今季リーグ20試合目。初の黒星。
サンフレッチェ広島は5年ぶりに埼玉スタジアムで勝利を飾った。

浦和レッズは、負けから得たものがたくさんあったのではないだろうか。
2点目が獲れない時間が長引いてしまったからこそ逃したものは大きかった。
PKを外した責任を大きく背負い試合後、高木の流した涙。
それを支え負けながらも浦和らしいサッカーを展開し戦った選手たちを讃える浦和レッズサポーターの大きな声。
ホーム埼スタで喫した負けは、強い浦和レッズをさらに強くするはずだ。


サンフレッチェ広島は、もちろんこの勝利に大きな自信を得たであろう。
アクシデントがあり早い時間で投入され、埼スタという圧倒的アウェイで戦うことの難しさを身体で感じながら、勝利という経験を得た野津田。
負けている状況で投入され、自分のやるべきことはひとつしかないと自分の特性を存分に魅せ、チームのジョーカーと成った浅野。
広島の若い二人が、この試合をピッチで経験したことは今後広島にとって大きな経験となったことであろう。

そしてタイトルを獲った経験のある選手たちが多くいることで、タイトルへの戦い方を知っている広島。
そこに柏や佐々木、柴崎といった浩s間のタイトルへ向けた新たな戦力として近年加入し現在融合している選手たちの力もプラスされ
広島の堅い守備の象徴の一人である塩谷の復帰も今後見込まれる。
昨年は夏に大きな失速があり悔しい時間を経験した。しかし、今年はまだまだサンフレッチェ広島は向上材料が多い。
試合を重ねるごとに強さを身に付けている。それが今のサンフレッチェ広島だ。

さまざまなものが凝縮された、一瞬、一瞬。
それが詰まったfootballがそこにはあった。

セカンドステージ首位を走るサンフレッチェ広島が、大きな勝利を掴んだ。
浦和レッズは敗戦からまたひとつ強さを得られたであろう。

そんなfootballな夜だった―。

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cialis_price  Good!!0 イエローカード0 2016/05/20|18:20 返信

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