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【サンフレッチェ広島】 次の一歩を踏み出しいまだ成長中の柏好文 蒼き姿を観たいと願う 【日本代表】

2015/05/07 13:37配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


W杯予選が始まる6月。
いよいよ次なる戦いへのスタートを切る日本代表の次の動きといえば、国内組の短期合宿だ。
今日にも発表される予定のハリルJAPANの国内組候補選手たち。
ハリルホジッチ監督や日本代表スタッフたちが直接チェックした選手たちはどんな選手たちなのだろうと注目を集めるが、その中でも今日本代表に呼んでほしい選手の一人を期待を込めて取り上げたいと思う。

サンフレッチェ広島・柏好文だ。

今季の広島は現在5連勝中と一昨年の2連覇時以来の連勝を重ね、リーグ3位の位置に付けており、好調だ。
その好調のキーの一人となっている柏好文は、日本を代表するウイングバックといって良いであろう。

彼の活躍は今、Jリーグを語る上で外せない。

●幼き頃から常にスーパーだった存在から新たなチャレンジへ

柏好文は山梨県に生まれ、小さな頃からサッカーボールを蹴った。
山梨県出身のサッカー選手といえば中田英寿だが、柏好文も中田英寿の出身校である韮崎高校の門を叩いた。

韮崎高校時代、インターハイでベスト8に入るという結果を残したことが全国でのチームとしての最良の結果だったが、柏好文という名前はその頃にはもうサッカー界をにぎわせていた。
その頃のポジションはFW。細かいタッチでボールを運ぶドリブルでゴール前を切り裂きたくさんのゴールを奪った。

国士舘大学へと進学後、1年生時からスタメンに名を連ね新人王を獲得する。
国士舘大学時代にサイドバックへとコンバートされ、正確なクロスと相手を置き去りにするドリブルで注目を集め評価を高めた。
全日本大学選抜に選出され、日本という枠から出て海外の選手と対戦するということも経験した。

柏好文は、小さな頃から地元では飛び抜けた存在で、常にチームでは中心となってきた選手だ。
チームの中では常に誰よりも高い技術とセンスを持ち、なくてはならない存在であることが多かったが、年代別代表など、代表にはゆかりのなかった選手だった。
大学時代に選出された全日本学生選抜という場所が、唯一の「日本」というチームで戦った歴史だ。

大学を卒業すると、地元でもある山梨県のチーム ヴァンフォーレ甲府へと進みプロの道を歩み始めた柏は、すぐに甲府でもその存在感を示す。
大卒ルーキーとして入団し、当時はJ2だった甲府ですぐに試合に出場したが、その後プロ3年目に大きな転機が訪れる。
それが当時甲府の監督として就任した城福監督との出会いだ。

城福監督が指揮すると甲府のサッカーが大きく変化し、柏の持ち味も新たな形で出始めたと共に、試合を重ねるごとに成長を重ねた。
城福監督が敷いたシステムは柏好文のスタイルを最大限に出した。シーズン途中でウイングバックを任されると、得意の突破とドリブルでサイドを駆け上がり、時に中央に切り込み甲府の決定機を何度も作りだした。
ヴァンフォーレ甲府でもいつしかスーパーになった柏のその存在感を 他のチームが見逃すわけがなかった。

柏の活躍に名古屋グランパス、そして清水エスパルスが獲得オファーを出したが、柏は甲府でJ1を戦いたいとその誘いを断った。
地元山梨でプレーすることにこだわりをみせ、甲府愛を貫いた形となった。
名古屋や清水が用意した条件は大きく甲府の条件を上回っていた。
サッカー選手にとって金額は最大の評価であり、他クラブが高評価を示してくれていたことになる。
しかし、それでも柏は甲府に残留し、甲府に所属しJ1で戦うことを選択した。

その後、柏は甲府でキャプテンを務め、城福監督の元、チームのJ1残留のために尽力を突くし、活躍を重ねた。
ピッチ外でも地元のチームのために自らが地元出身選手として広告塔となり、チームを盛り上げることにも努めた。
多くの人たちにサッカーを観てもらいたい、もっと山梨にサッカーが浸透してほしい。そんな気持ちを抱きながらヴァンフォーレ甲府を大きくしようと働きかけた。

そして2013年オフ。
新卒選手でもないのに柏の元には複数のクラブからオファーが届いていた。
名古屋グランパスは2年連続、そしてサンフレッチェ広島、セレッソ大阪、横浜Fマリノス、川崎フロンターレ、アルビレックス新潟となんと6チームからオファーが届いたのだ。
大卒で入団して4シーズンを過ごし26歳となった柏好文は、この年一番の争奪戦の主役となった。
この時、ヴァンフォーレ甲府含め7チームが柏好文の力を認め、欲しいと手をあげたのだ。
甲府でJ1残留を成し遂げた柏は26歳を迎え、新しい次のステップを踏むことを決意。
6チームの争奪戦となった中で選んだのは、サンフレッチェ広島だった。

そして、その活躍を認めていたのはJクラブだけではなかった。
当時の日本代表監督であったザッケローニ監督も、柏のプレーをみたいとリストアップしていたという話がある。
ヴァンフォーレ甲府の中で圧倒的な存在感を魅せる柏好文の存在は、大きく可能性を秘めていた。

その年、サンフレッチェ広島は2連覇を達成。
Jリーグを制したクラブを新天地として選択し、新しい挑戦に挑んだ。


●プレースタイルと広島での変化のポイント

柏のプレーでまず目を惹くのは姿勢の良さだ。
ボールを持った時の姿勢がとても良いのだ。
これはどういうことかというと、ボールを持った時の姿勢が良いということは、上体がしっかりと上がっているため、足元を見るのではなくボールを見ずにプレーできているということだ。
ボールを見ずして細かなタッチでボールを操ることができ、視野もしっかりと確保できる。
足元ばかりを見ているディフェンダーを相手にしたとき、柏を止めることはまずできないであろう。

ボールを姿勢を良く持ち、ピッチを広く見ることで、その次のプレーの選択肢が増える。
自分がボールを持って駆けだしたときの周囲の選手たちの動きもしっかりと見えているのだ。

柏はボールを持ってからの瞬発的なスピードが抜群に速い。
ボールを持って、相手ディフェンダーに仕掛ける一瞬の速さや相手を抜き去る時の一瞬のスピードは驚異的であり、グン!と一気に伸びてくるそのスピードに付いていくことは難しい。
細かく左右の足でボールにタッチし、巧みにドリブルを駆使し駆け上がる。
細かいタッチをすることで、相手の左右の足にかかる重心を左右に振ることができ、その重心の逆をついて股を抜くシーンも多々観られる。
1対1にも果敢にチャレンジし、勝負に出た時細かいタッチのドリブルはもちろん、相手が少しでも距離を取ってマークにつくとターンを使い相手を抜き去る。
そのどれもが芸術的であり、気持ちの良い突破なのだ。

元々FWだったこともあり、自らがゴール前に切れ込んでシュートを放つ場面も珍しくはない。
そして奪ったゴールのほとんどがスーパーゴールと命名して良いようなゴールとなる。
前線でFWがシュートを打ってもこぼれそうなスペースに必ず詰め、「第3の動き」をしているのが柏なのだ。

そして90分衰えることのないスタミナも、大きな武器だ。
夏場であっても90分走り続け、サイドを何度も前後し走り続け、勝負をかけるときのスピードが落ちることはない。
後半の苦しい時間に相手にすると嫌だと相手が感じる驚異的な体力を持ち合わせていることは、柏のひとつの武器なのだ。

甲府時代、城福監督が引き出したその良さを圧倒的な存在として見せつけた柏だがそこが伸びしろの限界だったわけではない。
広島に移籍後、さらにその良さに磨きがかかり、チームが苦しい時に大きなチカラとなった。
昨年、サンフレッチェ広島は夏場に北海道でキャンプを行ったが、涼しい気候の元快適なトレーニングができたのは良かったのだが、その後広島に戻ると気候の違いから選手たちが夏バテのようにコンディションを崩した。
通常生活を過ごすだけでも苦しく、戻すことにかなりの時間を要した選手もいたほどだった。
その結果、90分の試合をハードに戦う体力を維持することが難しく後半になると体力の消耗激しく、チームとして非常に苦しんだ夏場となった。
チームが不調な中で、スタミナをみせていたのは柏だった。
苦しい時間帯でもサイドから勝負をしかけ、前線に正確なクロスを供給することができる。
そのプレーがあったからこそ、後半に長身の大卒ルーキー皆川を投入し、高さで競るサッカーで戦うという広島の新たな一面を見出したことに繋がった。

広島は昨年のリーグ前半、サイドからの得点が少なかったことを課題として、夏場のキャンプではサイドからの攻撃を中心にトレーニングを重ねていた。
サイドからクロスを何本も上げ、細かな確認を繰り返し、得点の可能性を模索したのだ。
その要求はあと2センチ手前!といったような細かなものもあったほどで、クロスを受ける選手によってボールがほしい場所やスピード、相手の位置によっての変化など細かく追求し続けていた。

柏のクロスは速く、ゴールキーパーとディフェンダーの間に低く入ってくる。
時にトップスピードからピタッと止まり、スピードに乗って走ってマークについていた選手を騙すと、止まった位置からフリーでアーリークロスを入れることもできる。
止まった位置から一気に中に切れ込むドリブルも持っている。

簡単には止められない選手であることは間違いないのだ。
多彩であり、速い。
そして広島に移籍してから変化がみられるひとつのポイントがディフェンス面だ。

広島のサッカーは守備時にはウイングバックもディフェンスラインまで下がることがあるが、しっかりと常に視野を持った柏はディフェンス時も広い視野を保ち全体を観ることができる。
そして瞬時のトップスピードが攻撃的の際に速いのと同じく、守備時も相手がトラップミスなどをした場合、その一瞬のミスに速く詰めることができボールを奪うことができるのだ。
ボランチから配球されるサイドへのロングボールでの大きな展開や、速く低いボールでの展開時にはもう柏は走り出し、サイドを駆け上がった状態でボールを受けることができる。
注目したいのはその際のトラップ。ピタリと足元に落とすことができるトラップは非常に魅力的であり、すぐに攻撃に転じることができる武器となっている。

サンフレッチェ広島に移籍してからのもうひとつの変化のポイントがある。
それは左右のサイドが出来るようになったということだ。
甲府時代は主に右サイドでプレーしていた柏だが、今現在広島では左でプレーすることが多い。
昨年は右に左にと両サイドでプレーし、左右で同じ質を出せる選手となったことで起用の幅が広がったのだ。
広島のサッカーはサイドにボールを振り分けることが多いが、柏の今季の好調があり今広島のサッカーは柏のいるサイドから展開することが非常に多い。
相手となるチームは確実にスカウティングしてきているはずだが、柏を止めることは難しく柏のドリブルのキレも増し、中央に切れ込んでいく切れ味も鋭さを増している。

その姿は単純だが、目を惹く姿であり、その繰り出されるプレーの数々や一瞬一瞬に心が躍るような面白さを抱く。。

だからこそ、今。

チームという場所から一歩先へ踏み出し、日本代表という新たな刺激を得た時の その後が観たいと思ってしまうのだ。


柏好文は、日本代表経験がない。
今28歳を迎えた柏好文を次のW杯時のことを考えると年齢的に…と思う人もいるかもしれないが、柏は今非常に伸びている選手であり、成長を続けている選手なだけに、むしろさらに熟成された3年後が楽しみで仕方ない。
広島のサッカーは日本代表で求められるサッカーと近く、縦に速いサッカーを習得するには時間もかからないであろう。

国内組合宿で是非試してみてほしい、今ノッている選手であることは間違いない。

柏好文。
スーパーな選手でありながら、今まで日本全国を騒がせるような選手になったことはないかもしれない。
しかし、Jクラブ7チームがほしいと破格の金額で手を挙げたのには理由がある。

今Jリーグを盛り上げている選手の一人である柏のプレーを 蒼き場所で観たいものだ―。



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