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【サンフレッチェ広島】 ついに帰ってきた佐藤寿人 広島のエースという称号に口づけた広島愛への誓い

2014/10/10 09:47配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム

 


ついに、待っていた瞬間が訪れた。

右サイドに位置した高萩から、メッセージが込められたパスが入る。
そのパスはGKとDFの間の絶妙な位置に入る素晴らしい軌道を描いていた。

何度も観たこの場面。
最高の形ともいえるこの形は、決めるべき人間が理想としている形だろう。

高萩のメッセージの届け先は

佐藤寿人―。

 

メッセージを受け取った佐藤寿人はダイレクトでシュートを放つと そのままゴールネットを揺らした―。


誰もが待っていたこの瞬間を迎えた。
結果を待ち望んでもがき、苦しみながら何度もイメージしたであろう。
コーナーフラッグの元へ走り、それを強く握りしめ自らの戦いの鎧であるユニフォームのエンブレムを引き寄せ、口づけた―。

広島のエースが帰ってきた―。

 

●苦しい状況を救ったのはやはり エースだった

ナビスコ杯準決勝1st legはサンフレッチェ広島が柏レイソルをホームで迎えスタートした。
実はこのカード、偶然ながらリーグで戦った後にナビスコ杯の2戦と3戦連続で同カードとなっており、同じ相手と短期間で3試合戦わなくてはいけないカードとなっている。
日曜日に行われたアウェイでのリーグ柏戦では0-0のスコアレスドローという結果だった。

台風の影響によるピッチコンディションは最悪な状態であり、ピッチに水たまりが大きく出現し何度もボールが止まってしまう状況の中で、広島らしいサッカーを展開することはできず、難しい試合となり試合を終えた。
最大の痛手はサンフレッチェ広島のサッカーを表現する上で欠かせない心臓である、森崎和幸が負傷交代したことだった。
日本代表、そしてU-19代表で選手を欠く状態が続くことが想定されている中で、さらにチームの核となる選手の負傷者が出てしまったことは厳しいという言葉の他に見つからない状態だった。

そこから4日での迎えたナビスコ杯ホーム柏戦。

ミキッチや丸谷に加え森崎和幸の欠場、そして日本代表や世代別代表に選出された選手を欠いている広島は緊急事態というほどに、ベストな布陣を組めない状況だった。

試合の序盤は柏の攻撃が目立ち、オフサイドだったもののネットが揺れるなど、柏が攻撃を仕掛けた。
広島ディフェンスは日本代表に水本、塩谷を送り出しているため3バックのうち2枚を欠いている状況であり、序盤はマークが乱れディフェンスが落ち着かない場面もあった。
しかし、落ち着いてくると広島らしく最終ラインから組み立てるサッカーで徐々に反撃を始めると、広島の誇る攻撃トライアングルの一角である高萩洋次郎から佐藤寿人へ送る魂の込められたパスから、待ちに待った佐藤寿人のゴールが決まった。

やはり佐藤寿人のゴールは格別だった。

高萩のパスが繰り出された瞬間、佐藤寿人のゴールまでの軌道というのだろうか造影というのだろうか。
これは―。
という決定的な確信になり、ゴールネットが揺れる前にすでに鳥肌が立ったほどだ。

佐藤寿人が決めたゴールで広島エディオンスタジアムは揺れた。
誰もが待っていた。
誰もが信じていた。

広島のエースは、佐藤寿人だと。


(佐藤寿人に起こった出来事は以前想いを執筆したのでそちらを参照していただきたい。

http://chantsoccer.com/posts/433)

 

その後、後半に入ると柏は退場者を出し10人に。
一人少なくなった柏のバランスを模索している間のその隙を見逃さなかった。
再びプレーヤー佐藤寿人を知り尽くす相棒の一角・高萩洋次郎がボールを持った瞬間に、最高な形で動き出していた佐藤寿人。
ディフェンダーが詰めてきているのも見えているだろうが、それでも佐藤寿人の力量を知る高萩はディフェンス2人の間に絶妙なパスを出す。
迫る2人のディフェンダーの左右からの足の合間をワンバウンドした難しいボールを 軽くボールに足を吸着させるぐらいのタッチでシュート。
ボールは吸い込まれるようにゴールに入っていった―。

佐藤寿人はゴールゲッター。
どんなボールをどのように処理したり、どう当てればゴールに入るか知り尽くしている。
ディフェンダーが二人迫っていても、ワンバウンドしても佐藤寿人はゴールへのアイデアは数パターン持っていることだろう。

それが見えた成せる技ありゴールだった。


広島のエースが魅せた。
佐藤寿人の広島愛を十二分に感じさせた2ゴールとプレー。
それはチームにとって、サポーターにとって、広島の人々にとって、格別で特別な替えがきかない、そんな大事なものであろう。


試合はそのまま佐藤寿人の2ゴールで勝利。
しかし、佐藤寿人はまだ前を見据えていた。

まだ1戦が終わっただけと語った佐藤寿人は、戦いの厳しさを知っているのだ。
そして、その後続けたのは


次もしっかりと勝って
代表に行っているミズ(水本)、シオ(塩谷)そしてU19に行っているカズヤ(宮原)、ハヤオ(川辺)と一緒に、決勝に行きたい。


という言葉だった。

●広島のエースとして続く2014シーズン

中2日でアウェイ柏での2nd legがすぐに待っている。
サンフレッチェ広島が目指すところはもちろん、優勝だ。


重要な選手たちの負傷もあり、今は厳しい状況だが広島にとってなによりも明るい光が戻った。
大事な場面で決めることができる選手
ゴールが決まることでチームの力を引き上げることができる選手
俺についてこいと背中で発することができる選手


それが、エースであること。


サンフレッチェ広島のエースは、佐藤寿人なのだ。

 

出場試合数試合で、日本代表に選出され佐藤寿人の出来事があって以降、スタメン出場することが多かったルーキー皆川佑介も、チャンスを多く与えられ2連覇しているサンフレッチェ広島という各チームに追われスカウティングをされつくしているチームのトップを任されながらも、日本代表に選出され新たな大きな刺激を受けて一躍大注目の選手となるなど、ものすごいスピードで駆け抜けた中で、チームで求められていることと代表で求められていることということがイコールではないため、まだ経験が少ない選手なだけに迷いも生まれたことだろう。
代表と所属チームの違いを切り替えつつも取り入れることができるのも経験であり、なかなか初めてであると難しく迷いとなったり悩みとなる選手が多い。
大エース佐藤寿人をベンチに座らせてる状況で、自分がトップとして出場しチームが苦しかったこともあり、責任を感じてしまう部分もあったことだろう。
しかし、佐藤寿人がゴールを決めたこと、佐藤寿人が広島のエースとして存在感を魅せたことで、途中出場した皆川はいつも以上に気迫あふれる身体を張ったプレーを魅せた。
トンネルを抜けたのは佐藤寿人自身だけではない。
皆川への刺激も、形見えないトンネルから出した結果となったのではないだろうか。

試合の最後のシーン。
途中交代で入ったFW浅野が森崎浩司から素晴らしいパスでGKと1×1となったが、決めることができなかった。
会場中が3得点目のチャンスに湧いたが、決まることはなかった。
ベンチにいた選手たちも立ち上がり前へと出ていたが、決まらなかった場面を見て笑みを浮かべながら、こうだよ!とジェスチャーしながらベンチへ戻る佐藤寿人。

それは練習で選手たちに、ゴールするためにはこうしたら良いと笑顔で褒めながら声をかける佐藤寿人の姿を思い出させた。
ナイスナイス!今の良いけど、もうちょっと右当てて出して!決まるから!
もう一回やってみよう!

そう親指を立てて、選手にアドバイスを出しながらも褒め、笑顔で讃える。そして背中を押す。


佐藤寿人の 伝え方なのだ。

 

―広島のエースが帰ってきた。

ナビスコ杯はもちろん、リーグ戦だってまだまだ勝ち点を積み重ねるつもりだ。

ナビスコ杯での得点は通算26ゴールと中山雅史、そしてジュニーニョの持つ記録に並んだ。
記録は新たな記録にすることで意味があると佐藤寿人は言い切る。
新しい歴史を刻むのは、自身だ。


背番号11の背中は、大きい。


佐藤寿人のシーズンはまだまだ終わってはいない。


今年の佐藤寿人も

Jリーグの魅力のひとつとして 眩しく、輝く。

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