CHANT(チャント) サンフレッチェ広島

【サンフレッチェ広島】 佐藤寿人に懸けられたたくさんの想いと期待 【J1】

2014/09/25 10:58配信

飯守 友子 (CHANT編集部)

カテゴリ:コラム


時代は過ぎゆくものだ。
という人もいるかもしれない。

Jリーグも数々の時代を経験し、過ぎていったが、それでもまだまだ終わったわけではなく今まさに必要な選手がいる。
Jリーグを語る上でまだまだ名前が出る選手。

それが佐藤寿人である。


佐藤寿人は今、スターティングイレブンに名を並べる機会が少なくなっている。

たくさんのサッカーファンが、佐藤寿人の名前がないことに違和感を覚えているかもしれない。
佐藤寿人という選手は広島サポーターにはもちろん、全国のサッカーファンにとって偉大な人物だ。

後半途中、佐藤寿人が出場すると会場が一番湧く。
まだまだ必要だということを
ゴールを期待できるFWだということを
求められていることを

その会場の大きな歓声が示す。

佐藤寿人はなぜ起用されないのだろうか。


●明らかになった暴言から背負った十字架

佐藤寿人の名前が突如ベンチを含めたメンバーの名前から消えたのは、8月11日のことだった。
サンフレッチェ広島×サガン鳥栖戦のメンバーの中に 佐藤寿人の名前はなかった。

当初はコンディション不足と伝えられたが、実はこの時。
この前節、大敗してしまった鹿島アントラーズとの試合にて、佐藤寿人は前半のみで交代を命じられた時、それに納得がいかず暴言を口にしたということが原因だとされた。

監督の采配に対し、選手が暴言や不満を口にすることはサッカーの世界では厳しく処分されることが多く、佐藤寿人は広島にとって大きな柱であるものの寿人だけを特別扱いするわけにはいかないと佐藤寿人に謹慎を含めた処分が下った。

その後、しばらく佐藤寿人の名前はメンバーから消え、広島は佐藤寿人という大きな柱不在で戦うこととなった。
佐藤寿人の代わりにスタメンに名を連ねるようになった皆川は、ルーキー一年目の大卒選手。

佐藤寿人と真逆の選手といってもよいだろう。
身長170㎝の佐藤寿人に対し、皆川は身長186㎝という長身で、大型の身体を使ったポストプレーや競り合いを得意とし、自らもゴールを狙いながら大きな身体で2シャドーへボールを落としチャンスを作るという役割をする選手だ。

サンフレッチェ広島が2連覇を達成できた大きな要因には佐藤寿人の存在は欠かせない。
しかし、佐藤寿人を筆頭としての広島の2シャドーの攻撃は2連覇をしたチームだけに、他のチームがその攻略のため充分なスカウティングをし、対広島戦術を展開するチームが多いため、追いかけられる立場の広島として新しいバリエーションが欲しかった。

その新しい可能性として見出されたのが、皆川を置いての攻撃だった。
それは中断中に行われた室蘭キャンプで形としたものだった。

室蘭キャンプでの皆川は練習試合で一人で合計8得点と爆発。
キャンプで得た可能性を中断明けにすぐに試した森保監督は、そのスパイスに可能性を感じただろう。

それまでベンチ入りもなかった皆川をベンチ入りさせると、中断明け天皇杯では先発起用。
それが当たりゴールという結果を出すとその後リーグでも積極的に佐藤寿人に代えて途中起用することが増えた。
その中で魅せた柏戦でのゴール。

スポットが皆川に当たる中でも佐藤寿人が広島のエースとしての仕事は十分に行っていた。
中断後、佐藤寿人はリーグにて3ゴールを挙げた。中断前は8試合ノーゴールが続くこともあり、心配されたこともあったが、それでも佐藤寿人は広島の絶対的エースとしての位置を譲らず不調も乗り越えてきた。

10年間連続二けたゴールの偉業を持つ佐藤寿人は中断明けに、キングこと三浦知良の持つJ1通算139ゴールという記録を超えた。

憧れのカズの記録を抜いた佐藤寿人はまだまだ満足はしていない。
もっとゴールを決めて愛する広島のためひとつづつ戦う気持ちでいたはずだった。

しかし、起きてしまった出来事。

その日から佐藤寿人がスタメンで出場したのは、皆川が日本代表に選出され不在となっていた天皇杯だけだ。

現在は後半からの途中交代で出場するという立場にいる。


●佐藤寿人が創る世界

中断のキャンプで、佐藤寿人は誰よりも大きな声を出し、選手たちに声をかけ続けていた。
キャンプ中の一コマ。
その日行われていた練習はクロスからのアタック練習。
クロスボールからの得点が少なくなっていた広島は、キャンプ中にクロスからの可能性を上げるために重点を置き、取り組んでいた。

クロスを上げる役のサイドバックの選手たちに、佐藤寿人は一本一本声をかけた。

今のクロス最高!
今の速さも高さもベスト!

一本一本に大きな声を出す。、そのほとんどが要求ではなく褒める言葉だった。

特にミキッチには何度も何度も声をかけた。
時にミキッチのクロスがズレ、佐藤寿人の動くポジションから逸れてしまっても

ミカ!ごめん!処理できないオレが悪い!ミカ、ナイス!

と、笑顔で謝りながら声を張り上げる。

もっと俺がうまくないといけないから!ごめん!と。

積極的に外国人に声をかける佐藤寿人の姿があった。
それは長年さまざまなクラブでキャンプを経験した佐藤寿人だからこその気遣いだった。

外国人選手はただでさえ異国で生活をしているが、キャンプとなるとさらに慣れない土地に長期間家族とも離れ、日々を過ごすこととなる。
缶詰状態となるキャンプでチームメイトやスタッフしかいない環境だからこそ、外国人選手たちがホームシックになってしまわないよう積極的に声をかけるのだという。

自分は関わらない他の選手の練習も、すべてしっかりとした目で見つめる佐藤寿人の姿があった。
そしてひとつひとつを評価し、声をかけるのだ。

それはもうちょっとこうしたらゴールに入るよ!
今のいいねー!完璧!
最高の角度だったね!

それらのほとんどが常にモチベーションを上げるような前向きな言葉だった。

そして自身の経験から指導もする。

今のもうちょっと右にあと5㎝ズラしたらもっと良くなるよ!
もう一本やってみようか!

ゴールを量産してきたのは偶然ではない。
そこに込める想いだけでは当然取れない。
ゴールを重ねてきたのは佐藤寿人の経験と、ゴールを取るための思考が存在するからだ。

佐藤寿人は身長がないとされるセンターフォワードであり、世界で戦うにもJリーグで戦うにも不利であることは間違いない。
しかし、それはないものねだり。佐藤寿人は身長がなくても得点を取る方法をずっと考えてきたのだ。

それはプロになる前から始まっていたことだろう。
どうすることで得点が取れるか。
背の高いディフェンダーを相手に得点するにはどうしたら良いのかを。

努力の人。
練習ながらただのシュート練習よりも、動きの中で行うゴールへの練習の方が佐藤寿人は枠内にシュートを飛ばす。
その姿を観て、率直にそう感じた。

どうしたら点が取れるのか。
それを追求に追求を重ねてきたからこその、確立なのだと。

誰よりも大きな声を出し、試合に出ている選手出ていない選手、そして外国人選手
全員に声をかけモチベーションを高め、自信を持たせる。

それが佐藤寿人のいる練習なのだ。

広島が強くなった理由のひとつとしてこういった練習への取り組みがあるからではないかと感じた。
佐藤寿人はチームにとって偉大な存在なのだ。


違う日の練習では一転、厳しい表情となり厳しい言葉で指摘する場面も見られたり
自分を高めるために口を開かず練習試合前のアップをこなす一面もあった。

練習試合であっても試合前に出場する選手たち一人一人に声をかけ
広島を魅せよう!
と選手たちを奮い立たせ試合に臨んだ。

佐藤寿人という存在はとてつもなく大きく、サンフレッチェ広島に欠かせない存在なのだと感じた。

その佐藤寿人が今、ベンチにいることは選手たちにとってもチームにとってもサポーターにとっても、どうして という気持ちかもしれない。
ただ、そこに森保監督の愛があると信じたい。


●森保監督の思惑と佐藤寿人にかける期待

森保監督が佐藤寿人を本当に見切ったのだとしたら、ベンチ入りもさせないであろう。
皆川不在の天皇杯でもスタメン起用はしなかったはずだ。

森保監督はサンフレッチェ広島でプレーしていた選手時代から、周囲の人たちからの信頼が厚く、今も選手からもサポーターからもサッカー人としての信頼が厚い人である。
人間的に素晴らしい人 というイメージを持っている。
どんな人にでも真摯に対応し、きちんと目を見て適当にではなく真剣に応えてくれる。
そして最後に堅く握手をするために差し出してくれる手からは、人間性を感じずにいられない。

自分を否定するような言動があったとしても、その選手に対しもう二度とチャンスは与えないなんて監督ではないはずだ。

個人的な憶測に過ぎないかもしれないが、森保監督は佐藤寿人に期待をかけているからこそ、佐藤寿人の力を知っているからこそ
もう一度段階を踏んで自分の位置を確保しろと言っているのではないだろうか。

プロの世界はいつでも競争の世界だ。
それは佐藤寿人にとっても変わらない。

一度自分でそれを降りてしまうような行動をしてしまったからこそ、自分で這い上がってその位置を確保しろと森保監督も我慢をしているように感じる。
途中交代で出場し、ゴールをいう結果を残したり
途中交代した選手としてチームの流れをガラリと変えたり試合を引き寄せたり
という活躍をしてこそ、スタメンの位置に戻ることができると森保監督は思っているのではないだろうか。

現在広島の成績は良い結果とはいえず、順位も落としている。
それは指揮官にとっても苦しい戦いであるはずだ。

その苦しい状況だからこそ佐藤寿人を使いたいのは、監督自らが思っていることなのではないだろうか。
それだけの力があることも知っているし、佐藤寿人にしか打開できないものもあるだろう。

選手たちの士気も上がり、刺激を与えることができるだろう。

しかし、それではダメだと厳しく思っているのではないだろうか。
サンフレッチェ広島は佐藤寿人だけのチームではない。
佐藤寿人あってこそのチームという部分ではなく、全員でサンフレッチェ広島だという強さを身につけるとともに
この苦しみを全員で乗り越えようとしているからこそ、一人に頼るのではなく我慢しているのではないだろうか。

佐藤寿人に期待しているからこそ、途中で起用し結果を出してくれと送り出しているのではないだろうか。

競争に勝って自分の仕事を全うできる選手だからこそ、ピッチに立つことができる。
その原点に佐藤寿人を立たせ、そこから這い上がれる選手だと思っているからこそ、今ベンチから森保監督は送り出している。
そう、私には見えるのだ。

実力があるのは十二分に知っていることだろう。
見切ったわけでもない、むしろ広島の中心だということもわかっているし、エースとして期待だってしている。
だからこそ、這い上がれ―。

FWは結果を出してこそのポジションだ。
それをわかっているから、佐藤寿人も得点を重ねるために人が成しえないほどの努力をきっと重ねてきた人だ。

監督だけではない。
佐藤寿人のゴールを待っている人はたっくさんいる。
佐藤寿人がまた輝く姿を心待ちにしている人が数多く全国にいることだろう。

佐藤寿人は2009年10月25日から一度も警告を受けていない。
ストライカーは戦う時にはアドレナリンが多く放出され、時には熱くなることもあるだろう。
悪質なファールを受け、身体を傷つけられることだって当然ある。
それでも佐藤寿人は内に秘める。
自身が相手を傷つけることもできるだけ避け、子どもたちに見られて間違いになることはしない。
そうスタイルを貫き、戦っている。

しかし、出てしまった感情。
それはピッチ外で起きてしまった。
佐藤寿人はそれをきっと重く受け止めているはずだ。


身長は確かに低い。
それでも佐藤寿人は得点を重ねる独自の能力を持っている。
ディフェンダーとは基本的には競らない。
競ることがない位置にまで戻って、ボールをスペースを持って受け取ることが多く、そこからゴールまでの道筋をボールを持った時点で描いている。
シュートもうまい選手だが、佐藤寿人を語る上で欠かせないのは
ボールを受ける位置が抜群にうまい選手 ということだ。

10年以上各クラブのスカウティングによって解析され分析されているだろうが、それでも佐藤寿人はゴールを重ねる。
それは佐藤寿人も進化している証拠だ。

どうして背の小さいフォワードを止められないのか。
それはただのFWでも点取り屋でもなく、佐藤寿人というポジションがあるからこそなかなか攻略することができないのだ。

ディフェンダーから消える動きを得意としたという表現を 現在J1最多得点記録を持っている中山雅史の特徴とするならば

現在2位の佐藤寿人は ボールを受ける最高の位置を作ることができる選手 であろう。


佐藤寿人は まだまだ終わってはいない。

大きな期待を背負い、それを形にする日はそう遠くはないはずだ。


俺がもっとうまくなきゃダメだから!


大きな笑顔で自分に言い聞かせる。
佐藤寿人はまだまだうまくなりたい、点を取りたいと貪欲に追求を続ける。


背は大きくない。
しかし、選手としてとんでもなく大きい。

 


どんなものでもいい。

佐藤寿人のゴールが、観たい―。

 

 


 

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