CHANT(チャント) FC東京

【FC東京】 2ステージ制が新たな可能性を生む 2015シーズン東京らしさがリーグを動かすか 【J1】

2015/03/03 14:02配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


2014シーズン 9位。

日本代表選手を3選手抱え、ベストイレブンにもその3選手が選出されながら最終順位は9位という結果に終わったFC東京。
昨年は14試合負けなしという記録も作り、一時期は上位との勝ち点差の少ない5位6位まで順位を上げたものの、終盤には失速し中位で終わってしまったが、今年はマッシモ体制がさらに熟される結果が期待される。

日本代表も監督が交代することとなり、これまで選出されていた3選手も日本代表に今後選出されるかはわからないものの、活躍を続けることで日本代表に選出されることが濃厚な現在、日本で有数の選手に変わりはない。
今年もその選手たちの活躍と共に、東京を東京らしくできる選手たち、そして新加入として新たな東京の選手になった層で構成されていく。


●注目度が上がった2014

FC東京はオフ中に大きな発表があった。
サポーターからも選手たちからも信頼が厚く、今のFC東京らしさを築いた阿久根社長の退任が発表されたのだ。
阿久根社長を慕う人はサポーターだけでなく、現場の選手やスタッフ、そしてスポンサーなど数多くの人々であったが、その阿久根社長の下で常務として支えてきた大金直樹氏が新社長へと就任する。
FC東京の前身である東京ガス時代、プレーヤーとしてピッチに立った元選手が社長というポジションに付くのはFC東京の歴史では初めてのこと。
東京ガス時代からのチームを愛するハートとチームを大きくしたいという目標をしっかりと持った社長だ。

育成に力を入れ、現場と選手、そしてサポーターをフラットに繋ぐことに力を入れてきた阿久根社長の愛されたその姿も引き継ぎつつ、大金氏カラーをこれから打ち出すことになるであろう。

昨年は東京としては大きな出来事があった。
それはルーキーFW武藤の想定しなかったほどの成長だ。

武藤は初ゴールを決めたセレッソ大阪戦で大きな印象を与えたが、さらに2ゴール目を獲った浦和戦ではその印象は「衝撃」となった。
東京サポーターの中には彼のことを東京で見てきた選手の中にはいない選手、見たことがない衝撃。と表現した人もいた。
ルーキーとはいえ、東京のアカデミーで育った武藤は目指したトップチームの選手となり、突然の開花から1試合1試合とんでもない幅で成長を重ねた。

その結果、日本代表に選出され、初めての試合で存在感を示すと2戦目にはゴールを記録するなど、その存在感をしっかりと魅せアピールに成功し、あっという間にJリーグの選手としての知名度を上げた。
W杯に出場した森重、そしてサイドバックは一昔前は日本特有といわれた献身的プレーが光る時代もあったものの今伸び悩む日本サッカーのサイドバックの中で、質の高いクロスとトップスピードからのバリエーション豊かなクロス、守備力と攻撃力のバランスを兼ね備える太田の活躍により日本代表選手が3選手となったことで、FC東京に向けられる多くの人の目が多くなった。

その結果、増えた観客数。
昨年はJリーグのクラブとして2番目に観客が多いクラブとなった。

その中で14試合負けなしの試合をしたことは大きかった。
たくさんの観客の前で負けない試合をすることで次も観たいという好奇心に繋げられたであろう。
それと並行して小平にある練習場にはたくさんの練習見学者が増えた。

FC東京は1試合3万人の動員を目指しているだけに、まだまだこれは目標の途中だとクラブは表現する。


●2015新戦力と経験を重ね戻った選手たち

マッシモ体制の中、昨年はリーグの中でも5位以内に入る失点の少なさで、失点は33。
総得点は47とリーグ全体としては少なくはないが、もっと得点がほしいと感じた試合が多かったのではないだろうか。
その中で、得点の可能性が一番高く、終盤には頼り切ってしまった感があった武藤の存在。
武藤は今年各クラブから徹底的に分析されることが予想される。
その中で、チームとしてどう武藤を使う形とするのか、そして武藤も厳しくなるマークの中でどのような役割で動き、結果を出すのかがひとつの今年の東京の「形」となるであろう。

さらに昨年11得点のエドゥが移籍してしまったこと、一昨年17ゴールの渡邉の移籍があり、攻撃力をみると戦力が落ちてしまったのではと心配する声も多い。
しかし、大きな補強があった。
プロになりはじめてのクラブとして入団してから昨年まで、チームの顔としてプレーしていた前田遼一をジュビロ磐田から獲得。
前田は永遠にジュビロでプレーするものだと感じていた人たちも多いほどにジュビロのレジェンド的存在となっていたが、その前田が覚悟の移籍先としてFC東京からのオファーを受けた。

前田遼一は日本代表でも活躍し、得点できない時にはなぜ前田という声も聞かれたが、前田遼一はとても巧なFWだ。
ポストプレーをさせるならば日本屈指のFWであることは間違いない。

自らが得点することはもちろん、相手のディフェンダーを引き寄せるだけでなく、ボールのないところでの動きが絶妙であり、それによってスペースを作り二列目の選手たちにスペースを与えることができる。
ディフェンダーが見えない死角をも心得ているのは、ジュビロ磐田で多くの得点を記録した日本を代表するFW中山雅史の元で培ったものであろう。
ジュビロ磐田に君臨した中山雅史、高原直泰といった偉大な日本を代表するFWに揉まれて育ってきたFWは、まだまだ日本を代表するFWとして数えることができる。
昨年J2で17得点を取った前田。
これまでもたくさんのオファーを他クラブから受けてきたが、断固としてジュビロ磐田からは動こうとしなかった。
チーム愛があった磐田への気持ちを捨てたわけではないであろうが、自身の可能性に前田は懸けた。
まだまだ向上することにあきらめてはいないのだ。
J1でプレーしたい。他クラブでまた違った成長をしてみたい。前田の決意がこもった大きな移籍となった。
だからこそ結果を出さなくてはいけないと、前田自身がそう誓っているはずだ。
J1得点王を2回取っているスコアラーはまだ眠ってはいないはずなのだ。

チームとしては大きな柱としての存在を失った。
GK塩田の存在は、FC東京の中では大きく、塩田自身の東京愛も本当に大きな大きなものだった。
それは東京サポーターや選手たちはもちろん それ以外の人たちから見ても歴然だった。
しかし、塩田もまた自身の可能性を持って大きな決断をし、移籍。
精神的な部分で大きな柱となっていた存在だっただけに東京を愛するすべての人が悲しんだことであろうが、ゴールマウスをがっちりと守る存在、権田に不安はない。
塩田の代わりになる存在はいないものの、それでもベテラン榎本を獲得したのは大きかったのではないだろうか。

ディフェンス面では昨年の面々がスタメンとしては変わらずで今年も守備力は高いとみられるが、さらにJ2最少失点を記録した昨年のJ2王者湘南から大きくなって帰ってきた丸山や、高校時代からトップチームの試合に出場し、次の五輪を目指す代表に選出されている奈良を札幌から獲得するなど、層が厚くなったことに加え、高橋秀人をセンターバックとしても考えることができる分、センターバックに心配はない。
サイドバックの面もベテラン徳永の右、そして左の太田は日本有数のサイドバック。ただし、サイドバックの競争という意味で考えると熾烈になるほどの層はない。
松田など控える選手の成長が楽しみな選手もいるが、太田が今後も代表に選出される可能性が高いと考えるとコンディション的な問題で抜けた時に穴となることは避けたい。

東京を強くするためには、東京を知る人間の活躍が必要
と森重が語るように、東京は育成に力を入れ、戻すことを想定して選手たちを他チームに出し、試合出場数を重ね、経験を重ねさせた。
その結果を持って戻ってきた選手たちが多いことで東京に新たな力を加えることとなる。

新加入選手と経験を重ねて戻ってきた東京の選手たちの融合を経て、今年はどんなFC東京となるのだろうか。

●2ステージ制で拡がる可能性

2ステージ制に変動する今年。
そのあり方の複雑さや日程の過酷さ、偏りなども含めて反対派が多い2ステージ制だが、2ステージ制となったことで優勝の可能性がFC東京には良と出るのかもしれない。

リーグは年間30試合余りを戦って長いシーズンを過ごしてきたからこその積み重ねによって得られる達成感があるが、2ステージ制になることによって中期で一度フラットな状態になることで後期に快進撃をみせたチームが優勝ということもあり得るようになる。
実際、昨年の東京のように14試合連続負け無しのような試合が続けば、前半戦でなかなか波に乗れなかった場合でも、後期で結果を出すことで優勝への道が開かれる。

FC東京はこれまでJ1でのリーグ優勝の経験はないが、東京の歴史の中で優勝争いに大きく絡んだのは2度あった。
そのどちらもが、2ステージ制の時の後期となっている。

リーグ優勝はないものの、カップ戦では3度の優勝の経験があるだけに2シーズン制のシステムは東京にはフィットするかもしれないという可能性を持つのではないであろうか。

もちろんそれは長丁場として考えることができるのも、2ステージ制の可能性のひとつ。
年間勝ち点が最高であれば、どちらのシーズンを制していいなくとも年間王者への戦いを頂点の位置で待っていられるのだ。

どのチームも同じ可能性を持つものの、長きシーズンの中で息継ぎが必要だったり、失速したりと長丁場ではなかなか結果を残すことが難しかったFC東京にとって、2ステージ制はどのような戦い方となり結果を残すこととなるのだろうか。

少し気がかりなのはキャンプ中のFC東京の練習試合の結果だ。
キャンプ中の練習試合の結果は調整中とはいえ、充分な手ごたえを感じられるようなスコアではなかったところが気にかかる。
日本代表が年末年始でアジア杯の準備から大会というスケジュールだったため、3選手の合流が遅れ調整が難しかった部分もあるのかもしれないが、昨年と監督も同じく選手たちは年間通じて試合に出場し続けてきたからこそ日々重ねたものが存在し、合流が多少遅れても大きく揺れることはなかったはずだ。

試合、キャンプでの練習試合の結果によって課題が見えその課題を克服した状態となるのであれば問題はない。
今年もFC東京は東京らしく、いつでも挑戦者という位置でリーグをスタートさせる。
今年もタイトルに向けて全力あるのみだ。

たくさんの熱きサポーターたちで青赤に染まるスタジアム。
眠らない街東京を響かせるのは今年何度数えることができるであろうか。
2015年の東京が2ステージ制となるJ1を大きく動かすことができるか、注目したい。

Good!!(77%) Bad!!(22%)

この記事も読んでみる