2015/03/06 18:00配信

武蔵

カテゴリ：コラム

先のアジアカップは不満の残る大会でした。

これは多くの方々にとって共通認識なのではないでしょうか。

日本代表の内容と結果、その両方に対する不完全燃焼感それが少なからず、

余った放送枠で垂れ流される日本以外の国の試合を見る原動力となっていたからかもしれませんが

その不満が、試合以外のところに向いたという方も多かったのではないでしょうか。

アジアカップ決勝の、山本昌邦氏の解説の内容もそのひとつです。

一言で言って、解説の体を為していませんでした。

解説の放棄では?

一番多かったのは、気持ちの重要さを説くことでした。

代表例を抜き出すと

「サッカーは感情、気持ちが大事」

「気持ちが足りない者はこのピッチに立ってはいけない」

などです。

また、印象的な場面として決勝点に繋がった、ゴールライン際でのオーストラリアのFWユーリッチの粘りを指し

「強い気持ちがこの点を生んだ」

としました。

確かにサッカーは戦術だけでは不十分です。

メンタルが重要だと思いますし、エモーショナルな競技だと思います。

例えば、肉体的なスタミナを支えるのは、精神的なスタミナです。

「強い気持ち」や「折れない心」といったものが必要なのは分かります。

しかしこの日の山本昌邦氏の解説は、特に後半途中からはそれ一辺倒でした。

それではサッカー解説としては不十分だと思うのです。

交代枠を使い切った韓国に脚をつる選手が出始め

戦術的合理性よりもその選手を負担の少ないポジションに置くことを

優先させたため、ある程度は致し方ないことです。

しかし、後半アディショナルタイムに追い付かれながらも

延長前半に勝ち越したオーストラリアの何が良かったのか

それをプロの視点から紐解いてほしいと思ったのです。

しかし、その願いは叶いませんでした。

彼によれば、あの決勝点の要因は

「強い気持ち」

だそうです。

日本代表→日本サッカー協会批判

そして、日本代表についても言及していました。

日本代表に関しては2つ

1つはもちろん「気持ち」に関することです。

しかし、日本代表の「気持ち」というと思い浮かぶのは

ブラジルW杯のことです。

期待したような結果を残せなかった先のW杯ですが

そこで学んだことは、気持ちではどうにもならないことがある

ということではなかったでしょうか。

それに関しては、様々な場所でゾーンディフェンスなどの

明確な理論に基づいたサッカーと

トレンドを踏まえたサッカーをせねばならないという議論が為されました。

山本氏はその手の反省をしていないということなのでしょうか。

それともまだ気持ちが足りなかったと言うのでしょうか。

また、日本代表のアジアカップにおける「気持ち」について

オーストラリアや韓国よりも劣っているとしました。

しかし、敗れた準々決勝のUAE戦

UAEとの日程面での有利不利に関しても気持ちでカバーするべきだった

と言いたいのでしょうか。

日程面の不利に関しては、明らかにそれを選手に意識させた

それにより前半の立ち上がりのピンチ、失点からして分かるように

試合にフワッと入ってしまったマネジメントなどについてこそ

言及されるべきなのではないでしょうか。

「気持ち」の一言で片づけて良いと言うのなら、解説としての価値はあるのでしょうか。

それと合わせて日本サッカー協会の育成に関しても言及されていました。

オーストラリアと韓国の世代交代が実を結んだこと

日本は結果を出すために遠藤や長谷部を呼んだのに結果が出なかったこと

これらは確かにその通りです。

言いにくいことをズバッと言った、と言えるでしょう。

しかし、その後のことについて考えると

山本氏の「人間力」に関して疑いを持たざるを得なくなります。

それは、山本氏一流のデータの活用に関することです。

データを引っぱり出すこと、データを活用すること

曰く「メンバーの23人全員で戦わなければこの手の大会では勝てない」

とのことでした。

これは今回のアジアカップの日本代表はメンバーを固定した末に

結果が伴わなかったので、批判されてもやむ無し、といったところでしょう。

しかし、オーストラリアの途中投入されたユーリッチが

決勝点を生む活躍をすると

W杯決勝で決勝点を挙げたドイツ代表のゲッツェを例に挙げて

延長戦は選手交代の出来不出来が勝敗を分ける、との解説をされていました。

これはお得意のデータを用いた解説です。

しかし思えば準々決勝のUAE戦

UAEの堅い守備の前に、ペナルティエリアにボールが入るのも

数える程度だった状況を見た山本氏は

「ブラジルW杯において、枠外からのシュートが決まったのは2本」

「だからもっとペナルティエリアの中にボールを入れなければならない」

という解説をした直後に柴崎の見事な枠外からのシュートが決まるといったことがありました。

そもそもが、練習でやるのは本番でやるためであってペナの中に放り込む、

ただボールをペナの中に入れればいいやというワケでは全くありません。

あの柴崎のゴールは、是非はともかく、練習通りの形だそうです。

山本氏はこれまで、例を挙げれば「奪って7秒でフィニッシュ」などと

データを活用したスローガンを打ち出してきました。

しかし、その結果として実際に上手くいったとは言えないでしょう。

山本氏が五輪代表や磐田で監督業を失敗した裏には

こういった、データは有るけども、その活用が出来ない

といったところに限界があるのではないかと

そこまで思いを馳せてしまいました。

放送の最後は

「精根尽きるまで気持ちを見せた両チームのサポーターが羨ましい」

と締めました。

自分の限界を悟った解説者が、気持ち理論で生きていこうという決意を

視聴者に対してみせたのかもしれません。

しかし、そのような解説者の価値って・・・?

と思わずにはいられませんでした。

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