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J2戦国時代 2015シーズン熾烈な昇格への道【セレッソ大阪】【大宮アルディージャ】 【ジェフ千葉】【ジュビロ磐田】

2015/02/12 09:42配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


戦国時代―。

J2はいつも休みなく続くリーグであり厳しい戦いとなっているが、今年は例年以上に熾烈な戦いが待っていることが予想される。
2015シーズンは質の高いプレーヤーが多くプレーし、強豪チームも多く、どのチームも油断は許されない状況で一戦一戦気が抜けない戦いが続くこととなるであろう。

勝ち点1、得失点差1が重要になる戦いを意識し、昇格を目指すことが求められる。

J2開幕は3月8日。
もう戦いまで 一か月を切った。

●圧倒的な戦力一歩先の質 セレッソ大阪

J1から降格し、今季J2で戦うセレッソ大阪は実力的にも選手たちのレベルの高さ的にもJ2では突起した存在であることは間違いない。

セレッソ大阪は昨年優勝を目指してチーム編成をしたはずだったが、サッカー界に衝撃を与えたフォルラン獲得など話題性もあったものの、エース柿谷の海外移籍や山口蛍の負傷に加えチームがうまく機能いない状況が続き厳しい戦いが続いた。
成績不振による監督交代を繰り返し、結果的に良い結果には結びつかず降格という最悪の事態となってしまったが、チームの復活を懸けて選手たちの流出も最低限に抑えることができた。
個々のレベルが高い選手たちに加え、昨年高円宮プレミアリーグ優勝という結果を残したユースからの昇格組を中心とした次世代の若手たちが加入したことに加え、昨年若い選手たち中心の編成だったことで終盤の苦しい中で感じられたメンタルの課題が出たこともあり、内容の濃い経験のある頼れるベテラン選手たちの獲得が多く行われた。
実力もあり経験値が高く、新たなスパイスを期待することができるベテラン選手たちの加入により、新しいセレッソの形を現在組み立てているところだ。

鹿島で指揮経験のあるアウトゥオリ新監督が新生セレッソ大阪を昇格へと導くために来日。
セレッソ、前進せよ。という強い来日メッセージからその覚悟を感じることができる。

セレッソ大阪には強力な選手が多数いるが、中でも注目したいのはカカウ。
J2のディフェンス陣相手に順応は多少必要かもしれないが、カカウの得点力がJ2においても爆発することがあれば得点王争いに名が挙がることであろう。
簡単には止めることのできない能力の持ち主であり、独自のリズム感がある。
さらに新戦力のパブロ、そして昨年は獲得金額や話題性に比べると不発という表現で終わってしまったフォルランが化学反応を起こすと、ワールドクラスの攻撃力になることも考えられる。
逆にいうとそれだけ攻撃陣は他チームにスカウティングされ守備をする戦術で挑まれることが多くなるであろう今年は、引いた相手を前に攻撃するためにどういった穴をこじあけ攻撃するかというプランが必要となる。
引いた相手にも得点できる、引いた相手にも自分たちのサッカーができるようなサッカーを準備する必要がある。

実力があっても勝てないという現実を昨年痛いほど味わった。
だからこそ、それを味わった選手たちが多くセレッソ大阪でプレーするのは強みであり、その理由の答えを理解した選手たちが多いことは武器となり力となることが求められる。
相手がJ2のクラブであっても慢心になることなく、挑戦者という気持ちでぶつかることが大切だ。

必ず一年で戻るという決意のもとに編成されたチームだからこそ、結果は絶対的に求められる。
戦力だけでなく精神的な部分、チームのバランス、経験…さまざまなものが考えられ編成された新しいセレッソ大阪が、J2でどんな戦いを魅せるのか楽しみだ。

●大量の選手入れ替え…それでも質の高い選手が揃う 大宮アルディージャ

かなりの選手の入れ替えがあったもののそれでも質の高い選手が揃う大宮アルディージャ。
ここ数年で大宮の現場には混乱があった。ハッキリとなにがあったかはわからないが、不穏な空気が何度も流れたことは間違いない。
J2に降格し、契約満了となった選手たちが多数だったが、来季主力と考えられていた選手たちもその中に多数いた。
チームのエースであったズラタンが浦和に移籍するなど、大きな存在の流出もあったものの、ムルジャが残るなどJ2レベルでは到底計ることのできないレベルの選手が残った。

それでも選手の流出が多かったことで、昨年からの戦力がアップしたとは言い難い。
J2という舞台が久しぶりの大宮だが、新たな戦力でどんなサッカーを展開するのか未知となっている。しかし、スタッフの変化は今年はないだけに昨年までの大宮のサッカーの基盤はいじらないものとみられる。
セレッソと同じく多くのチームが引いた展開となるであろう中で、どのように打開し得点を取りに行くかという点がポイントだ。
破壊力を持った選手たちという武器をどのように生かすか注目となる。

セレッソ大阪と大宮アルデージャが2節にて早くも対決することとなるが、このカードはどちらも一歩も引かずに激しい試合となることであろう。
相手が引いた状態ではないぶつかり合いの上位候補者対決は、早い段階でベールを脱ぐこととなる。


●チームとしての熟成度が上がるであろうチーム関塚本領発揮なるか ジェフ千葉

今年の優勝争い候補の一角として数えても良いであろう存在の1つであるのが、ジェフ千葉だ。
3年連続で昇格をあと一歩のところで逃してしまったチームという印象であるが、実はそうではない。
結果としてはあと一歩というところまでいくチームであることは確かだ。
しかし、ジェフはこれまで足元を固めず、大きな課題を持って進んできた。

チーム最高位という結果を出し、ジェフにとって大きな存在となったオシム監督以降の8年でジェフの監督に就いた人数は11名。
ジェフは毎年のように監督を交代し、サッカーを変えてきた。その代償は基盤・土台ができないシーズンごとに変えたチームだった。
昇格するためだけのチーム作りを毎年行い、昇格できなければそのサッカーに見切りを付けてきた結果、ジェフらしさという土台は完成されてこなかった。

そんな中で、ジェフが大きな舵を切ったのが関塚監督の就任だった。
関塚監督は早熟タイプの監督ではなく、時間を使ってチームを完成させていく監督である。
川崎フロンターレをJ2からJ1に引き上げただけでなく、J1で戦える強豪チームにした時間に要した時間は5年。
44年ぶりに五輪で日本サッカーを準決勝まで進出させたロンドン五輪チームも2年という月日の中の 限られた代表招集の時間の中で積み重ねてきた。

それを考慮し、関塚監督がジェフ千葉の監督に就任したのが 昨年7月のこと。

昨年はシーズン途中で監督に就任したこともあり、関塚監督の思い描く選手の獲得やスタッフの確保などは行うことはできなかった。
シーズン途中で監督に就任するというのはとても難しいことだ。
監督が必要とする選手の獲得も充分にできず、それまであるチームをそのまま丸ごと受け止め、その中で編成し、組むことなる。
現状状態で引き渡され、キャンプのようなチーム熟成期間や戦術理解期間もないため伝える時間も少ないまま実戦を重ねるしかない。

そういった難しい状況の中であったものの、関塚体制になってからの千葉には大きな変化があり、選手たちの意識も変わった。
新しい監督となったことでそれまで出場機会がなかなかなかった選手たちも出場機会を得るためのアピールを必死に繰り広げることとなり、試合に出場していた選手たちは自分の場所を失うわけにはいかないと奮起する。
そういったモチベーションをうまく関塚監督は利用し、チーム作りの良いスタートを切った。
関塚体制となってから順調に勝ち点を重ね、プレーオフに進出。その後、昇格まであと一歩というとこまで進んだ。しかし、結果的には昇格には届かず今季J2で再びトライすることとなったジェフ千葉。

毎年のようにあと一歩のところで逃す経験は、次の年のまだ1からのスタートとなることはモチベーション的に難しい。
しかし、昇格できなかったからといって継続しないわけではない。
昇格しなかった千葉だが、今年は体制を継続。関塚体制は新シーズンを迎え、関塚監督が編成に参加した。
その結果、ロンドン五輪代表を創り上げたスタッフがジェフ千葉に集結した。

関塚監督のチーム作りに一番近くで関わったスタッフたちが集結したことで、よりジェフにチーム関塚が浸透することは間違いないであろう。
今回はキャンプという時間も使えるチーム作り。選手の入れ替えはあったものの熟成するのは確かであろう。

厳しい指導を積み重ねるが、コミュニケーションを大切にし、選手とスタッフの距離感を問わない。
それが関塚流であり、日本における古き良きスポーツの姿も良い形で取り入れ、感じることができる現場となっている。

全員でつかみ取りに行く今年は、昇格そして優勝という目標にまた一歩近づきそうな存在となるだろう。

●名波体制を浸透させ二度目の挑戦 ジュビロ磐田

昨年、一年でのJ1昇格を目標…いや誓って挑んだはずのジュビロ磐田だったが、結果的にプレーオフに進出したのも4位という位置で終わってしまった。
自動昇格圏に届かなかったことすらプランとしては厳しいものだったのにも関わらず、最後の最後で4位という位置でのプレーオフ進出は厳しい厳しい現実だった。
結果的にプレーオフ1回戦では勢いに乗る山形を相手に、最終的にはGK山岸にゴールを許すという屈辱的な形での最後を迎え、J2残留が決まってしまった。

シーズン残り9試合という難しい時期に監督となった、ジュビロ磐田の象徴の一人であるレジェンドである名波浩監督。
シーズン途中、さらに終盤の難しい時期だったこともあり、監督経験のない名波氏が監督となったことはジュビロ磐田にとって未知でありつつもすがるような想いで託した襷だった。
チームのレジェンドにチームを託すということは簡単ではなく、ジュビロの覚悟があったのだろう。しかし、その短い期間でJ1から続く不調をすべて魔法のように変えるのは難しかった。

一年で昇格できなかったチームの迎える現実は選手たちの大量流出だ。
一年目は一年で昇格させると意気込み選手たちが残っても、昇格を掴めず2年目を迎えてしまった時には厳しい現実が待っている。
それでもジュビロは選手たちの大量放出はないと考えていたようだった。
シーズン終盤までの契約交渉の場ではそういった話し合いが行われていたのだろう。

しかし、シーズンオフに入り最後の契約を前に状況変化があり、頼みの攻撃陣が一気に移籍。
ジュビロに突き付けられた現実はとても厳しいものとなった。

しかし、今年は名波体制としてシーズン前のキャンプを行えることで昨年残り9試合で入った時間のなさとその時に背負った緊張感を考えると、穏やかに1からシーズンを迎えられることとなり、チームの向かう方向性を確認することで今季こそはというプライドを前面に出すことだろう。
黄金時代を選手として創った名波浩監督はじめ鈴木秀人コーチ、服部年宏強化部長と信頼関係が成り立ちお互いを知り尽くしたスタッフ陣の連携で、ジュビロ磐田復刻に向かう。

黄金時代の選手だったスタッフたちが黄金時代にこだわることなく、当時のジュビロらしさを求めるのではなく今のジュビロ磐田になにが必要かを間違えることなく、見極めることがJ2攻略の一歩となることだろう。
J1基準で戦うことが目標という名波監督は今年、どうジュビロ磐田を創るのか注目したい。

<続>

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