2015/02/04 19:31配信

武蔵

カテゴリ：コラム

今回のアジアカップ決勝、オーストラリアが粘り強く戦い、勝利した反面ピッチの内外で有利だったはずの韓国の敗戦が非常に印象的でした。

その敗戦も、どう表現したらいいものか非常に悩む類の敗戦でした。

どう表現しても100%的確に表現できているワケではないですしどう表現しても全く正鵠を射ていないワケではなさそうです。

それはサッカーを語る上での常ではありますが、ともかく一番正解に近いと言えることは「韓国が取りこぼした」ということでしょうか。

そういう意味では、日本の、UAE戦の敗戦と似ていると言えます。

ただ、先制され追い付き、延長に入って勢いづきたいところでケガ人を抱えて失速というところ以外はさしてそれを強調できるポイントはないのですが・・・。

権利を勝ち取った韓国、ピッチ外を制す

韓国に関して、ピッチの内外で有利だったとさきほど明記しました。

ピッチの外に関すること、それは日程です。韓国は準決勝からこの決勝まで中4日でした。

南半球で現在真夏、

さらに高温多湿のオーストラリア都市部での開催においてアジアカップを戦う上で望みうる最高の日程である中4日を手にしていました。

また、準決勝と決勝は同じくシドニーでした。

中4日に加えて、さしたる移動もなく臨む決勝は韓国の55年ぶりの優勝に向けて最高のお膳立てが整ったと言えるものでした。

ただ付け加えておくと、これは開催国のグループであれば当然のことです。

どの大会でも、A組に配される開催国は日程が有利になるものです。

その中でもA組の1位となると、日程的に一番恵まれることは普通のことです。

韓国はGLでオーストラリアに勝ち、いわばその権利を勝ち取ったのです。

これに関しては現状、フェアと言えるものでしょう。

これに対してオーストラリアは中3日です。

中4日に対し、言わずもがなコンディション面では比較的不利です。

さらに、オーストラリアは準決勝をニューカッスルで戦っていました。

今回のアジアカップが開催される各都市の中で、唯一時差が違うニューカッスルで準決勝を戦ったということで、悩まされるのは移動でしょう。

時差の分だけ、移動があるということですから。

そういうワケで、韓国は己の力でピッチ外の事情を制したのでした。

しかしそれがピッチ内で生かされたかというと非常に疑問です。

オーストラリア側の問題が起きるまで、ピッチ内での有利は、韓国に発生しません。

よそ行きの韓国、試合を支配される

オーストラリアは、ショートパス主体のブリスベンを指揮したポステコグルー監督のもとその通りにスタイルの転換を図ってきました。

しかしスタイルの転換はなかなかに難しく、プレッシャーを与えればすぐに長いボールを蹴ってしまうというレベルのものでした。

それは11月の日本戦でも証明されています。

そこへコンディション面での有利を生かした韓国が、とにもかくにも前から追っていけば、追ったなりの効果が得られたでしょう。

しかし韓国は立ち上がりの5分を境に、前から追う形を放棄しました。

スタートダッシュは何事も鉄則ですので、それを差し引きと、なんとも理解しがたい、腰が引けたよそ行きのサッカーというに相応しいサッカーでした。

また、韓国はスターティングメンバーからして苦悩が表れていたと言えます。

ボランチにはCBが本職のチャン・ヒョンスを起用。

大会を通じてボランチを張ってきたパク・チュホを2列目に上げるという非常に後ろ体重な人選でした。

このオーダーを採った時点で、韓国が自らの有利を捨て去ったとみることも可能です。

韓国が受けにまわったことで、ボールを落ち着いて持ちたいオーストラリアがペースをつかむことは当然です。

30分過ぎまでそれが続き、崩されてシュートまで行かれるシーンもありました。

韓国はセットプレーとソン・フンミンの才能でゴールに迫りましたが決定機をフイにすると、前半終了間際に先制を許します。

大会MVPに輝いたルオンゴの素晴らしい反転からのシュートによるものですがこれはFWのイ・ジョンヒョプが守備での警戒を怠り、

真ん中を通された事がきっかけで起こった失点です。

前に行くも後ろに戻るも、守備に関する不手際で自らの首を絞める格好となりました。

前掛かりになり、らしさを取り戻した韓国

後半の韓国は選手交代などでなかなか動きませんでしたが、

それもそのはず先制したオーストラリアは強さと高さに自信を持っており、必ず引いてくるとの計算がシュティーリケ監督にはあったのでしょう。

負けている決勝の舞台で、後半20分近くまで動かないというのはなかなかお目にかかれないものです。

しかし、それ自体は何ら問題ないように思えました。

韓国はボールを握り、次第に攻撃的になるにつれ、アグレッシブなボール奪取や強引なシュートなどらしさを取り戻し、

あと一手だけ、という状態までこぎ着けました。

と、ここでピッチ内で韓国に有利な面が見えてきます。

それは選手交代に関することです。

オーストラリアは5分の間に、ケガ人により2つの交代枠を失います。

逆に韓国は選手交代により勢いづくことになりました。

アグレッシブに前に出ていくことにより、ボール奪取をするハン・グギョンを投入したことで、チーム全体が加速したような印象を受けました。

現に、後半ロスタイムの同点ゴールは、放り込みのクリアを出足良く奪ったハン・グギョンが繋いで、ソン・フンミンに渡ったものでした。

ハン・グギョン投入後の韓国は、今まで日本などを苦しめてきたまさに韓国らしい韓国と言えるものでした。

フィジカルの強さ、速さを生かし、中盤でボールを奪われるという光景を日本のサッカーファンはそれなりに見てきたはずです。

この日の韓国は、ようやくここにきて、そのらしさを取り戻したのです。

しかし、韓国のピッチ内の有利は、オーストラリアと同じように消え去ります。

選手交代とケガ人という、同じ理由で。

「勝負弱い」というものの正体

延長に入ってからの韓国は、なりふり構わず選手交代と足を攣った選手のこともありとても有利とはいえない状況に追い込まれます。

そして、DFキム・ジンスの守備でのまずい対応を発端に勝ち越しを許し準優勝で大会を終えることになりました。

55年ぶりの優勝はまたも無くなってしまいました。

さらに、準優勝は最多の4回となり、また「勝負弱い」と言われることになるでしょう。

しかし、もう一歩踏み込んで、その「勝負弱さ」とはなんなのかを考えてみると

原因は、大事なところでらしさを失ってしまうところにあるのではないかと思います。

「負けに不思議の負け無し」

必ず敗因があると思わないといけない、というこの教訓を生かせる日は来るのでしょうか。

• ツイート