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【Jリーグ】 クラブ×代理人!?サッカー選手の契約事情 【シーズン終盤】

2014/11/06 21:16配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム

 

日本のプロサッカーシーズンはあと1か月となった。
今年は天皇杯の日程が改正され、いつも元旦だった決勝が12月となったことから、クラブが動いてる期間は今年12月の中旬までとなった。

来年早々にアジア杯があるため、日本代表は年末からキャンプを組むことが発表され、日本代表に選出された選手たちはチーム作りの年越しとなるようだ。

毎年、この時期になると報道などが騒がしくなる時期。
今年も東京がシャビ獲得か!?といったビッグネーム報道や、大久保嘉人を巡る争奪戦などで連日にぎわっているが、この時期サッカー界にとって避けられない道。
それは選手たちの契約だ。

応援しているチームや、選手がどうなってしまうのか、来季はどのような場所でどのようなチーム編成で戦うのかというのは誰もが気になる事情だろう。

ほとんどの場合、報道で知ることとなることとなるが、選手たちの契約事情について少し詳しく触れてきたいと思う。

●来季のチーム編成は夏以降から始まっている

この時期になると…と感じる方がほとんどだと思うが、実は各クラブかなり早くから選手たちの契約について話し合いがもたれていることがほとんどだ。
特に移籍金の撤廃となった頃からはさらに交渉が早く行われるようになった。
と、いうのも移籍金が発生しなくなったことによって、クラブは選手たちと早々に契約を済ませておかないと他クラブからの引き抜きが発生した場合に、お金を得ることができないからだ。
早々に契約をし、契約を交わすことで、移籍となった場合には違約金が発生することとなる上に、違約金がかかるならその選手はあきらめようという流れになりやすいからだ。
クラブとしての防護柵といって良いだろう。

しかし、それを当然選手側が拒否することもできる。
現行で契約している選手との早期交渉を持てる権利が所属クラブにはあるが、他からの評価を聞いてみたいという場合は所属クラブの提示を保留し、他クラブからのオファーを待ったり接触を一定期間持つことができるのだ。

最近の契約の事情として注目された例が、アルビレックス新潟から名古屋グランパスに移籍した川又の件だ。

優先交渉権を持つ新潟は川又に複数年契約を提示したが、川又が複数年での契約は…と難色を示した。
結果的に他クラブからの話を聞くということになり、他クラブからのオファーと条件面、環境面など総合的にオファーを出した数チームを比較し、将来的なことも考え、川又は移籍という形となった。

新潟側は今季終了後に満了となる川又に、何度も契約条件を提示し引き止めようとしていたが、川又はそれを保留。
川又としては満了してから0円状態でさまざまなクラブと交渉したかったという考えもあったかもしれないが、クラブ側はそれではまったく利益が出ず、選手だけがただ取られていくのを見守る形となってしまう。

クラブ経営、そして契約も大きなビジネス。
それ故に、新潟は干したわけではないとしながらも、事実上戦力として川又を使うことをやめた。
そうなってしまうと川又は出場機会がない以上、選手としての価値が下がってしまうことになり、出場していない選手を0円であっても獲得してくれるチームは減ってしまい、条件面に影響してしまう。
そうなると川又サイドは困るため、出場機会を求めて移籍するという流れになることは必至。サッカー選手にとって半年も棒に振ってしまうのは致命的であり、クラブ側と溝が深まれば深まるほど問題児のレッテルを貼られることとなる。
それを見越して新潟は少しでも違約金を回収するためにとった策だったはずだ。

結果的に川又は出場機会がなくなること、問題児扱いされ、次の移籍先がなくなることは避けたいことから交渉をスタートさせ、新潟に半年分の違約金を支払ってくれるクラブであり、自分を必要としてくれる、そして環境面やチーム編成など総合的なものを並べて判断し、名古屋グランパスにシーズン途中での移籍となったのだ。

お気づきだろうか。
選手にとってもチームにとっても契約にはこういった駆け引きが必要となることがあるのだ。

選手たちは小さな頃からサッカーに時間を費やしてきた選手が多いため、自分で契約の細かい部分の詰めや駆け引きをなかなかこなせない。
そのため、選手たちには代理人が付いていることがほとんどだ。

代理人とは選手の代わりにクラブ側や個人スポンサーなどと交渉し、金銭面や条件面などの交渉をする人間のこと。
サッカー界はこの代理人がすべてといっても過言ではないほどに、代理人が左右する世界となっている。

代理人については次の項目で。
少し話が逸れたので、話を戻そう。

川又の新潟の件についてもそうだが、どうしても手放したくない選手に関してはまだリーグが始まったばかりの春過ぎ頃から交渉がスタートする。
レンタル移籍をしている選手はまず、夏終わりほどからレンタル先のチームとの話し合いを持ち、それを経てレンタル先との関係を今後どうするか、戻るならといった提示や、レンタル延長ならば現在の所属チームとの話し合いなどといった可能性をすべて交渉し、所属チームとの交渉を改めて行うこととなる。
チームの顔ともいえる看板選手たちから始まり、そしてレンタル選手たちという順番のことが多い。
その後所属選手たち全体に順番に交渉という形で、提示が行われる。

11月の下旬までに戦力外通告の場合は、提示しなければならないという決まりが存在するが
実際には早いところで10月、遅くても11月の頭には決まっており、選手に伝えられていることがほとんどだ。

と、いうのも少しでも戦力外となった選手たちの今後を考えると、交渉期間が長きにおいてあった方が良いからだ。
報道と同時では、それから1月のクラブ始動に向けてまでの時間がない。なかなか次が見つからないという浪人期間よりも少しでもスムーズに速い段階から代理人が選手を他クラブに売り込めるようにと、判断するクラブが多い。
逆に遅いクラブだと11月の下旬に0円提示があってそれではじめて知る…ということはなくとも、11月中旬となるクラブもある。そういったクラブには代理人から遅い!という苦情が入ることとなる。
選手たちの将来を考えて、そしてそのクラブに新たに売り込めるような選手を用意するにあたっての時間が少なくなってしまう。
そのため、その時期は選手たちもかなり時間の流れ方にナーバスになっているチームも多い。

もちろん夏頃には難しいと思っていても、なんらかのチャンスが巡ってきてそこで大活躍となれば、契約条件や内容が大幅に変更されることもある。
一度契約はしないと提示してもそれがひっくり返される可能性もあるのだ。

今現在、各選手たちは来季の契約に関して終えている選手が多く、来季の移籍の可能性や戦力外などという現実も胸に秘めつつ戦っていることとなる。

「チーム」といってもクラブは個人事業主である選手たちを一人一人契約という形で集めている以上、夏以降は戦いながら契約交渉をするというのは通らなくてはならない道なのだ。

夏頃までにどれだけの材料とどれだけの判断力と予測をして、来季の構想を少しでもリアルに示すことができるか。
それがクラブにとっては重要なことなのだ。

●移籍先を探すのは代理人とクラブの駆け引き


移籍先を探すのは、選手個人ではなく代理人の仕事といって良いだろう。
移籍の条件を提示するのも、代理人を通して伝えられる。
条件面は代理人に任せる選手がほとんどであり、代理人にとって金額的な条件に関してが一番交渉力に力を入れる部分である。

選手たちは自分の年俸の○%という利率で代理人と契約するというのがほとんど。
例えば選手の年俸が1000万円の場合、代理人契約が6%だとすると代理人はその選手から60万円の契約料をもらって1シーズンサポートすることとなる。
世界的にみても代理人の取り分は5%から6%というのが平均的といわれているが、日本サッカー界では大手になれば10%というところもある。
10%は高いと感じるかもしれないが、10%取り分とするだけの仕事をこなしてくれるという。
時には監督との交渉で与えられたポジションへの不満や交渉、スパイクメーカーとの契約やアパレルメーカーとの契約を細かく仕切ってくれたり(サッカー選手は足はスパイク契約メーカー、身体はアパレルメーカーと契約といった振り分けもできることとなっている)
所属クラブから実家に帰省するときの飛行機の座席の確保や、新幹線の確保など、なにからなにまで身の周りの契約からお世話までをこなしてくれるのだという。

有名代理人となると会社として運営しているところも多く、そこに所属する選手間で移籍が成立する場合も多い。
例えば

A選手が●チームから戦力外を受けた
同じ代理人のB選手は◆チームから戦力外を受けた

A選手は◆チームに移籍が成立
B選手は●チームに移籍が成立

といったように、代理人が同じ選手間でシャッフルして選手を売り込むことも多いのだ。
そのため、契約選手が多い会社に所属している選手たちの移籍事情を照らし合わせると、なるほど…と合点がいくことも多い。

そして当然クラブ側と代理人の交渉は駆け引きが存在する。
代理人は少しでも金額と条件面の向上を目指し、交渉することとなる。選手たちも5%から10%の代理人費用をだすためには少しでも金額があった方がありがたく、そして選手個人では開けなかったトビラも代理人の交渉次第では開くこともあるからこそ、代理人に交渉をお願いしているのだ。

しかし、クラブとしても代理人の提示するものすべてにイエスというわけにはいかない。
クラブはクラブで意思を持ち、代理人の提示してきたものとの照らし合わせを経て、「落としどころ」を予測し、交渉しなくてはならないのだ。

抱える選手が多ければ多いほど交渉には時間が必要であり、時間を一人一人の選手に割きながら代理人は行動するため、時間がかかる。
そのためクラブは、交渉の時間には期限があるため不利な交渉となってしまうことも多く、早くから動かなくてはいけないのだ。

 

と、このように夏頃から契約に関するシビアな話し合いが行われ、中には交渉が決裂してしまう場合や、他クラブとの交渉を円滑に行うために0円になるのを待つ選手も存在する。
クラブ側もそうはしたくないため必死に来季の見込まれる予算を計算し、その中から金額的な交渉、条件などを詰めているのだ。

選手を獲得したい側も 選手を売りたい側も 選手を放出したい側も簡単ではなく、来季の構想や予算の確保、そしてその上での戦力と強化を考えて行わなくてはならず
とても難しい判断が必要となる。


残り1か月弱となったJリーグ。
選手たちとの契約は 如何に―。


 

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