湘南vsFC東京 その① ~リベンジ~
2015/04/13 17:05配信
カテゴリ:マッチレポート
2つの「リベンジ」
この組み合わせは、両者共にJ1であった2013年以来となります。
11月23日 味の素スタジアムでの第32節
湘南はあの日、降格圏の16位に沈んでいました。
残り3試合で、残留圏である15位甲府とは勝ち点差9。
つまり、残り試合を全て勝たなければその時点で降格が決まってしまうという状態でした。
その試合で湘南は、首尾よく先制したもののFC東京に同点に追いつかれ
後半ATにネマニャ・ブチチェビッチの逆転ゴールに沈みました。
走りに走る、湘南のチームスタイルを考えれば
文字通り、力尽きたと言える敗戦、シーズンの終焉でした。
それ以来の「見送り人」との対戦で、燃えないはずがありません。
一方のFC東京にも湘南に対する「リベンジ」の一念は持っています。
その年の5月の平塚、湘南のホームゲーム。FC東京は湘南に逆転負けを喫しました。
その内容たるやショックの大きいもので
先制を許し、一度は逆転を果たしながらも
高橋秀人の悲劇的なスリップや
長谷川アーリアジャスールのボールロストなどで再逆転を喫しました。
降りしきる雨も、高橋の涙を覆い隠し切ることは出来ませんでした。
双方に当てはまる「リベンジ」の思い。
この思いを成就させるのはいったいどちらでしょうか。
ボールを握るFC東京、主導権を握る湘南
FC東京は昨季からメンバーを入れ替え、それに伴う変化がありました。
それはCBとアンカーにカニーニと梶山を起用したことです。
それによりFC東京はボールをキープ出来る時間が徐々に増え
速攻遅攻ともに、(これでも)幅が広がっていると言えます。
ボールの持てるFC東京
これは当日のアクシデントでもない限り、まず動きません。
となると、ゲームの出発点をここに置くことが出来ます。
それに対する湘南の出方で、ゲームの行方が決まります。
現状、湘南の取れる戦法は2つです。
1つは、いつも通りの湘南スタイルを完遂することです。
それとはつまり、523や343とも言える形で前からプレスをかけるものです。
そうすることにより、FC東京の芽生えかけの長所を摘むことが目的です。
文字通り、息を継がせぬ速度でプレッシャーを与えることで
FC東京の意図的な攻撃を封じ
湘南としてはお得意の高速中央完結型ショートカウンターを
発動させることを目指すというものです。
ハイリスク・ハイリターンのリターンの部分を得たいところです。
2つめは、541で自陣に撤退することです。
フォーメーションが3421である湘南がブロックを組む
それはすなわち541ということになります。
個で劣るという意識のある湘南が、撤退して人数を掛けて守るという構図は
想像に難くありません。
どちらにせよ、FC東京がまずボールを握り
梶山を起点に組み立てるというのは動かないでしょう。
そこに対する湘南の出方によって、試合はどうとでもなるでしょう。
そしてそれを決める権利を、湘南は持ち合わせているのです。
試合が動くとすれば、FC東京の5バック崩しからか
湘南はどちらの戦法を採用するでしょうか。
おそらくは両方です。
湘南のチームスタイル、アグレッシブにボールとゴールを目指すサッカー
「J1で勝つために」昨シーズンJ2で磨いたこのスタイルを
早々に崩すことはないでしょう。
ただ一方で、開幕節の浦和戦
前半からアグレッシブに試合を展開するも1-1で折り返すと後半は息切れ。
失点を積み重ね、1-3と敗戦を喫しました。
名将チョウ・キジェ監督が、同じ失敗を繰り返すとは思えません。
また、プレッシャーというものは
受ける側にとって慣れというものがあります。
慣れられてしまった場合、プレッシャーを更に増すということは
体力の問題上、出来ないというのが常識ではあります。
つまりおそらくは、前半の途中までハイプレスを繰り出し
同じく前半の途中から撤退をするというような形になるのではないでしょうか。
これも常識的な戦術と言えるでしょう。
問題は上記「ハイリスク・ハイリターン」のハイリスクの部分です。
FC東京にとって5バック崩しの基本形というものがあります。
それは
①相手SH裏、WB前に、味方SBを走らせ、そこにボールを入れる。
②相手WBを引き出し、その裏にスペースを得る。
③相手WB裏のそのスペースにインサイドハーフやFWを走り込ませる。
といった形のサイド攻撃です。
FC東京は、昨年のH柏戦やH広島戦でこの形により
多数の決定機を生み出し、ともに勝利を収めています。
また前節の甲府戦でも、相手3センターの脇を自在に使い
相手のWBや3センターに負担を強いています。
結果として甲府はフォーメーション変更を余儀なくされ
サイドに追いやられたアドリアーノは某紙の採点で4を付けられました。
ハイリスクというのはもちろん、湘南にとっての失点の危機のことです。
SH(シャドー)の裏のスペースをまずは使うことになるので
FC東京の5バック崩しは
湘南が523で前から追い掛けてきた場合に、より効果を発揮します。
湘南はFC東京が何度となく繰り出すこの形を研究してはいるでしょう。
しかし、対策が考えられているか
そして、その対策が有効かはフタを開けてみるまでは分かりません。
そのため、FC東京の5バック崩しが有効となれば
湘南は541で自陣に撤退してしまうかもしれません。
湘南は通常とは違う「気持ち」を見せろ!
FC東京はこのやり方を、武藤や米本などの個の力で成功させてきたという側面があります。
個で劣ると言わざるを得ない湘南に防ぐ術があるのでしょうか。
湘南のチームスタイルを考えれば、それは1つしかないでしょう。
自慢の走力をもって、ハイプレスでボールの出どころを抑えるのです。
撤退は、言ってしまえばいつでも出来ます。
それに、撤退も万能ではありません。
ハイリスク上等。
体力面は気持ちでカバーしたいところです。
それを可能とするのは「リベンジ」という、いつもとは違った気持ちではないでしょうか。