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多摩川クラシコ マッチレビュー 「成長しない男」

2016/04/18 15:09配信

武蔵

カテゴリ:マッチレポート

2009年8月1日Jリーグ第20節

等々力競技場で行われた第16回多摩川クラシコは

後半ロスタイム・谷口博之のゴールによって

川崎の見事な逆転勝利で幕を閉じました。

この試合の分岐点はまず間違いなく

後半25分、FC東京の1枚目の交代策だったでしょう。


442のボランチの位置に

守備に特徴のある米本拓司に代え、同じく高卒1年目ながら

攻撃に特徴を持つ田邉草民を投入したこの交代策こそが

試合の趨勢を傾かせたと言えるでしょう。


この頃から当然のように脈々と受け継がれてきた

打ち合い上等・攻撃スタイルの川崎を相手に先制し、追い付かれたあと

ヤマザキナビスコカップを含んだ過密日程や、8月の気候なども手伝い

徐々にオープンな展開となりつつありました。

その状況でFC東京の城福浩監督は、田邉を投入し

チームを攻撃的にシフトさせることを選択しました。

足が止まりつつある中、少しでも

ボールキープの時間を増やしたいという意図もあったことでしょう。


一定の理由がある上で、結果も出てしまっては仕方がありません。

オープンな打ち合いとなる中で、後半ロスタイムに失点し

冒頭の通りの結果が出たことで、その采配は裏目と言えるものとなりました。

それから約7年が経ち

多摩川クラシコも第27回を数えるようになりました。

今度の舞台は味の素スタジアムです。


前節はスタミナ切れを起こしたFC東京も

ACLの無い川崎と同じく中5日という臨戦過程により

比較的、良いコンディションと良い準備を望むことができます。


つまり、戦術の選択肢は増えるということで

指導者の腕の見せどころと言うことが出来るでしょう。

先手を取ったFC東京のハイライン

とはいえ、明確な「自分たちのサッカー」がある川崎。

その、いつでも強力な攻撃サッカーを展開する川崎への対策に

低いラインで手堅く守るという策を採るチームは少なくありません。


ただ、この日のFC東京は違いました。

非常に高いDFラインによるコンパクトな442を敷き

2トップはGKまでは行かないものの、CBにはプレスに行きました。


ここでGKを数に入れないとすると数的同数となるため

ボランチを1枚落として3対2を作る必要性が出てきます。


川崎は大島僚太の試合前のアクシデントにより

442のボランチには、J1初先発の原川力が入っていましたが

初先発のせいか、そこで数的優位を作ったにもかかわらず

そこからの有効な組み立てを見せることは

なかなか出来ていませんでした。


そんな中、クリアボール処理のミスから、FC東京に先制点が入ります。

ちょうどエドゥアルドと車屋紳太郎の位置が被ってしまったところで

ボールを奪われ、バーンズの独走を許してしまいました。


ただ、これも遠因としてはビルドアップの停滞を挙げることができます。

ビルドアップで苦労したからこそ、こぼれ球を拾い

このまま高い位置でボールを保持したいという

気の焦りを生んだのではないでしょうか。


そして、それを苦労させていたのも

バーンズを高い位置からのドリブル開始に導いたのも

FC東京のハイラインと言えます。


ここまではFC東京のハイラインがゲームを支配する要因となっていました。

しかし、ここで動き出すのは歴戦の中村憲剛です。

試合を動かす中村憲剛の頭と体

中村憲剛は、原川と役割をスイッチして下りてきたり

また、両方とも下がってボックスビルドアップの形を作り

ビルドアップの安定化を図ったりと

試合を川崎ペースに持っていくための工夫をし始めます。


442のボランチの仕事は多岐に渡ります。

攻撃においては、最終ラインまで下りてビルドアップに参加したり

相手DFラインの裏へランニングしたりしますし

守備においては相手のボランチまでプレッシャーを掛けたり

味方DFラインのカバーリングに動いたりしなければなりません。


今日この試合の中継の解説を務めた金田喜稔氏は

FC東京のボランチであるハ・デソンに関して

「パスを散らす仕事は出来ているが、ミドルシュートが無いと怖くない」

と評しました。


これは確かに一理あることですが、そのプレーを実現させるためには

少なくとも、それ相応の運動量が必要となります。

元々の資質もあるでしょうが、ケガ明け間もなく

そして復帰後から試合に出ずっぱりのハ・デソンにとって

それは厳しいタスクであると言えるでしょう。


そして反対に、中村憲剛には

何をすれば良いのかを理解する頭脳と

それを実現するための技術、運動量が備わっているということです。


川崎が追い付いた場面は

切り替えの場面でフリーとなった中村憲剛からの

一本のロングパスが大久保嘉人のゴールに繋がりました。

この場面、確かに手前側で残っていた

徳永悠平のミスと言えるかもしれません。

ただ、徳永が位置を下げていたのは、大外の車屋を見るためであり

中村憲剛が全くのフリーでボールを持っている状態を見れば

相手の裏抜けを警戒して然るべきだったという擁護ができます。


FC東京の守備を上回った中村憲剛の働きにより

川崎が同点に追い付きました。

繰り返されるバランス崩壊

再度スコアが動いたのは後半11分。

小川諒也の左サイドからのFKから前田遼一が合わせました。

川崎はニアのストーン役に中村憲剛を立たせるという

セットプレー時の弱点を衝かれる格好となりました。


その後の川崎は同点にするべく、横幅はサイドバックに出させ

中央に人数を掛け、中央でのパスワークでの突破を試みるものの

前半から川崎が中央攻撃を試みる時にはそうでしたが

FC東京に中央を固められて停滞します。


しかし、そんな中で迎えた後半31分。

人数は足りており、試合のペース的にも全く焦ることは無かったのに

米本拓司がペナ内で不用意なファウルを与えてしまいPKに。

これを大久保が冷静に決めて同点となりました。



城福監督はリードしているということもあり

ここまでの2枚の交代策はバランスを考えたものでした。


しかし、PKを与えた瞬間にムリキをスタンバイさせ

その助っ人FWを、同点となった直後に投入しました。

これは明らかに勝ち点3を意識したものです。

そして、残り10分少々の間で

川崎との打ち合いを、川崎の土俵での戦いを望んだと言えるものです。

ここで、この試合の行く末は決まりました。

7年前と同じく、交代により試合が大きく傾くこととなりました。


まだコンディションの整っていないのか、運動量の少ないムリキを投入したことで

空いたスペースはより広大となり、オープンな展開となります。

そしてムリキ投入からわずか3分後、川崎の決勝点が生まれました。


行ったり来たりとなり、ボランチのケアするスペースが広大となったことで

セカンドボールを拾われ、川崎の中央攻撃を許しました。

エウシーニョのスルーパスから小林悠のファインゴールで逆転、勝負あり。


ダメ押しの4点目は、中村憲剛の才能を見ることができるものですが

今さら言うべきものもありません。

FC東京側から見れば

マッチアップするボランチ・米本がセンターサークルで後ろ向きの守備をしていて

相方のハ・デソンがカバーに入れていないところで目を覆いたくもなりますが

この時点ではビハインドであるため、仕方のないところです。

「決定的なチャンスにいたるその直前にミスがあったり、またチャンスがあっても決め切れなかったというところを改善していかなければいけない」

これは試合後の城福監督のコメントです。

ただし、今から7年前、2009年8月1日の多摩川クラシコでのものです。


7年前のこの時においては

「ボールが行ったり来たりの試合になってしまうと、川崎の個の特長がより出る」

と、自チームのバランスについて

相手チームの特徴とともに反省の弁を残しています。

しかし、この試合においては

「ゴールを取るべきときに取らないと」とした上で、ムリキ投入も

「勝点3を取るために点を取らないといけなかった」としました。

崩れたバランスについての言及は、今のところ確認できていません。


城福監督は今年、就任1年目でACLをプレーオフから戦い

ここまでケガ人を数多く出しながらも

リーグ戦との両立をなんとか図ってきました。

負けた試合でも、決定機が無かった試合はありません。

決定機を決めるのは選手の仕事ですので

つまり、監督としての仕事をこなしていると見ても良いと思います。


しかし、試合の中でバランスを取ること。

試合の流れを読み、バランスを考えた手当てをし

その上で最善の結果を得ること。

これがFC東京では見せることが出来ていません。


2012年のJ2時代の甲府において

対戦相手に関係なく、例えホームであっても

一度、劣勢となれば手堅く試合を終わらせる姿勢を見せていたことからも

それが出来ない指揮官ではないと思います。

ただ、FC東京においては

例えば今年の開幕節・大宮戦で、圧倒的にボールを支配しながらも

中島翔哉投入直後に、中島が絡んでの失点により敗北するなど

そのバランス感覚を発揮することが出来ていません。


そして、その開幕戦やこの日の川崎戦でのそれは

あの日の等々力で見せたものとなんら変わりないものではないでしょうか。

FC東京サポーターにとって城福監督が

「成長していない」と映っても仕方がありません。

クラブに関わる人は、成長のない監督に未来を託せるものなのでしょうか。


チームが発展途上、それは当然のことです。

で、あるならばなおさら、川崎ほどのチーム相手に

バランスを無視し、タレントに寄りかかった采配を見せたことは

このチームにおける、決定力不足以上の不安要素に思えてなりません。

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