川崎の躍進を支える 「自分たちのサッカー ~守備編~」
2016/03/29 20:05配信
カテゴリ:コラム
J1は第4節までが終了し
国際Aマッチウィークの中断期間に入っています。
ここで単独の首位で中断期間に突入したのが川崎で
戦績を3勝1分としています。
川崎が、これまでタイトルと無縁だったことは有名ですが
ここ最近では、タイトル争いからの脱落が早まりつつあった川崎に
いったいどんな変化があったというのでしょうか?
守備ブロックの質の向上
これまでの4試合の合計だと、12得点6失点ということで
一見して、川崎にとって自慢の攻撃力をよく生かしているように思えます。
ただ、4試合のスコアを並べてみると1-0 4-4 3-2 4-0。
目に付くのは2試合の完封勝ちです。
昨年の川崎は34試合のうち
完封勝ちが5試合、スコアレスドローが1試合でしたので
この数字はハイペースと言え、進歩を窺わせます。
リーグタイトル奪取に必要となるのは勝ち点3ですが
勝ち点3を取るために必要なのは、圧倒的な得点力ではなく
完封勝ちの試合を生み出せる安定した守備力です。
昨年の広島はもっとも顕著な例で
23勝のうち、完封勝ちは11(スコアレスドローは3試合)を数え
J1が18チームとなって以降の最多勝ち点を記録しての
見事な年間勝ち点1位を達成しました。
「打線は水モノ」は、野球の言葉だけではないということです。
「向上」の中身
それでは、なぜ川崎の守備は結果を出せるようになったのでしょうか。
それは、442のゾーンディフェンスの導入にあります。
開幕節の広島戦では、見事なゾーンディフェンスを見せました。
他チームがことごとく手を焼き、Jリーグを席巻している
広島の415で数的優位を作るシステムに対し
ファーストディフェンスから最終ラインのコントロールまで
見事に連動したゾーンディフェンスを見せ、完封しました。
そして、得点はカウンターから。
守備力向上とカウンターによる得点ということで
チームとしての上積みを見せつつ
アウェイで前年度王者から勝ち点3を挙げることに成功しました。
これが川崎の守備力向上の中身と言えるでしょう。
ただ、サッカーは相手があるものということ。
それと、導入から日が浅いということもあり
守備がハマらない試合もありました。
守備面における課題
第2節の湘南戦では、先制したものの
一度追い付かれると、その後は打ち合いとなり
最後は追い付いたものの、4‐4というスコアによるドローに終わりました。
また、第3節の名古屋戦も、勝利はしたものの
シーソーゲームの末の3‐2という打ち合いになりました。
この2戦の試合展開に、川崎の課題が垣間見えそうです。
実は、湘南戦は失点までは非常に安定していました。
しかし、位置の悪かった高山啓義主審の判定に泣かされた、やり切れない失点の後は
組織的守備のタガが外れてしまいました。
2失点目に関しては、攻→守の切り替えの際に後れを取り
選手が戻り切れなず、選手間の距離の圧縮が足りないまま守備機会に突入し
守備ブロックを1つ1つ丁寧にズラされてから
最後は圧縮の足りなさからできたスペースを使われてしまいました。
その後、懲罰交代となった森谷賢太郎だけのせいではなく
チーム全体の守備の精度が問われる失点でした。
他では、3失点目はセットプレーからのものです。
相手選手にコーナーキックを足で合わせられる点など
もちろん、まだまだ改良の余地がありそうですが
セットプレー守備時のストーン役が175cmの中村憲剛というのも
機動力とテクニックを生かすチームスタイルと裏表であることから
慢性的で明確な弱点と言えるでしょう。
名古屋戦でも、先制後は守備ブロックが効き
非常に安定した試合運びを見せていました。
しかし、名古屋が6バックと言える陣形で引き
まずは川崎の攻撃をガッチリと受け止めてからのロングカウンターを
狙う展開となってからは攻撃が停滞し
次第に攻→守の切り替えで後れを取るようになり
1点目は、勝っているのにカウンターにより失ってしまいました。
つまり、川崎は攻守において「自分たちのサッカー」が確立されました。
ただ、その形が一度崩れた時に
もう一度、自分たちのペースを取り戻せないことが課題と言えます。
サッカーはいつでもマイボールの時間ではないということに気付いたようですが
それと同じく、いつでも442のブロックを敷けるわけではないということです。
また、切り替えの速さに難があることが見受けられ
そのスピードの改善に注力するか
または、攻撃面が特徴であることは分かりますが
今後は守備のことを考えた、攻撃時の人数の割き方が必要となるでしょう。
とはいえ、昨季までは攻撃面での「自分たちのサッカー」しか
武器が無かったと言える川崎にとって
条件付きとはいえ、短くない時間の守備の安定は
非常にポジティブな驚きと言えます。
また、ゾーンディフェンスの特徴として
そのシステムを容れるまでは、それほど時間を要しませんが
その円滑な運用に至るまでは、山のような実戦経験を必要とします。
従って、試合を追うごとに良化していくことが見込まれますし
第4節の甲府戦は、その一端が現れたと言って良いでしょう。
今年の川崎はひと味違うのではないでしょうか。
新しく手に入れた「自分たちのサッカー」で、タイトルを目指します。