CHANT(チャント) 日本代表

繰り返される「自分たちのサッカー」にあの男の影

2016/09/06 19:27配信

武蔵

カテゴリ:コラム

「自分たちのサッカー」の発端と言えば、先のブラジルW杯でしょう。

ご存知の通り、1分2敗のグループリーグ敗退に終わり

少なくとも目標を達成することは出来なかった大会です。

その敗戦の弁として一部の選手たちの口から出たフレーズがこれになります。


これについてもう少し掘り下げると、下準備もせずに中央突破にこだわること。

中央に選手が集まり、再現性の無い即興性に頼った攻撃に終始し

相手にとって守りやすい状況を作ってしまうこと、と言えるでしょうか。


これを解決するには、攻撃時にサイドハーフがサイドに張り

そこにボールを届け、起点を作り

相手の守備ブロックにスライドを強いて、広げることが必要となります。

そこからサイドのコンビネーションや裏抜けを駆使して

さらにボールを運びたいところです。

そして、相手の守備ブロックが広がれば、中央突破もしやすくなることでしょう。



なぜ、こういった欧州では標準装備されている効率的なサイド攻撃を

仕掛けられないかということについて考えると、あの男の影が見え隠れしてくるのです。

それは本田圭佑です。

「出来ない」のではなく「しない」のであること

まずもって言わなければいけないことは

UAE戦前段階における日本代表にとってのそれは

「出来ない」のではなく「しない」のであるということです。


ロシアW杯アジア地区2次予選のシンガポール戦で

「自分たちのサッカー」にこだわり、ホームでスコアレスドローに終わって以来

7連勝をする中で、懸念のサイド攻撃は改善傾向にありました。


そして、今年6月のキリンカップでは

ハリルホジッチ体制となってからは、最も内容が良いと言える

そして、最も指揮官を喜ばせたと言える試合を見せました。

敗れたボスニア・ヘルツェゴビナ戦ですら

「9度のビッグチャンスを作った」と言わしめたほどです。


日本はそのサイド攻撃を、出来ないワケではないのです。

ではなぜ、しないのか。

UAE戦でまた再発してしまったのか。

そこを語る上で、本田の存在は欠かせません。

本田圭佑の身体的特徴から理由を探る

6月シリーズのキリンカップは、指揮官の想定通りの内容だったと言えるでしょう。

しかし、ボスニア戦に敗れ、最上の結果が出なかったことは客観的な事実です。


どこが足りなかったのかと言えば、やはり決定力と言えます。

戦術的には良い仕事をしたと言える宇佐美貴史と浅野拓磨ですが

特に浅野は数度の決定機を決められなかったり、横パスを選択したりと

チャンスをフイにしてしまいました。


この先、公式戦が続き、結果も求められる中で

実績、能力とも証明されている本田がこのポジションで起用されるのは当然と言えます。


そもそも、この浅野の起用そのものが

6月シリーズはケガの影響で出場無しに終わった本田の代役と言えました。

本田は紛れもなくレギュラーであり、そしてその代役は本田に取って代わるだけの

パフォーマンスを見せることは出来なかったのです。


つまり、本田が戦術をこなした上で、その確かな能力を発揮することが

日本代表強化の最短ルートと言えそうなのです。

ただ、大事なUAE戦では結果が出ませんでした。

もちろん、本田は先制点を挙げ

個人としてこのポジションに求められる結果は出しました。

ただ、チームが勝てないのでは意味がありません。

そして、本田が中央に位置取ることによってチームの攻撃停滞を招き

攻守のバランスを失った結果、敗れた、というのは大部分で事実と言えます。


なぜ、本田は指揮官に求められるサイドとしての役割を全うしないのでしょうか。

そこには、本田の身体的特徴を考えることで浮かび上がる答えがあります。

本田はこれまで、自らを「足が遅い」と言ってきました。

そしてそれは、圧倒的なスピードを武器とする浅野と比べるもないことです。


サイド攻撃のキモは、サイドハーフがサイドに張ることですので

必然的に、スタートの位置はゴールから遠ざかります。

そして、逆サイドに展開された場合には相手サイドバックの裏を取る必要がありますが

それは時間との勝負であり、スピードが必要となります。

そして、攻→守の切り替えの際にも、所定のブロックの位置は遠くなり

ここでもスピードが求められる場面が増えると言えるでしょう。


これらの点、サイドハーフに求められる役割、能力は増え続けており

サイドハーフの重要性が増していることも、同時に示していると言えます。


攻撃のスタート時の位置取りに関して、本田は中で待つ傾向にあります。

中で待てばそれだけゴールと近くなり

本田ほどの能力であれば、下手すればそこはもうシュートレンジと言えます。

実際に、カンボジア戦ではそのエリアからミドルシュートを決めて見せ

能力の高さを再確認させてくれました。


つまり、本田は自らの能力を生かすために

サイドの職責を放棄しているのではないかという疑問があります。

そして、それこそがチームとしての最善の道だと思っている節があります。

現に、UAE戦後の会見では、精度や、あるいは勝負強さといった

ボンヤリしたものを敗因として挙げています。

つまり、戦術については(話せないことも多いのでしょうが)

問題と思っていないのではないか、という疑惑が浮上します。


ただ、それではいけません。

シンガポール相手には引き分けで済みましたが、UAEには敗れました。

ここに至ってこれ以上、客観的な証拠が必要でしょうか?

本田には、私心(と言われてしまう要素)を無くし

このチームで監督に求められている役割を全うする義務があるのではないでしょうか。


あくまで疑問であり疑惑ではありますが

以上のとおり、状況証拠と呼べるものがあります。


続くタイ戦で改善が見られなければ

根本的な考え違いを起こしている可能性が高まると言えるでしょう。

ただ、UAE戦を受けて宇佐美が「まずは幅を取ってサイドで持ちたい」としたり

岡崎慎司が「サイドに張って、いろいろ試していくのもあり」とするなど

チーム内では、脱「自分たちのサッカー」へ向けた声も挙がっています。


「自分たちのサッカー」とは

本田を始めとした主力の能力を最大限引き出すことのみに着目したサッカーであり

それに固執することで発生します。

そして、そこに相手がどういうサッカーをするかというのは存在しません。

しかし、もはやそんな子供じみたサッカーをしている場合ではないのです。


繰り返しになりますが、本田は紛れもない主力です。

その主力が、チームのための最善の策を採ることを望みます。

そしてその最善とは、指揮官の唱える欧州基準に寄り添うことではないでしょうか。

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