U-23日本代表vsU-23メキシコ代表 「後半押された理由と、メキシコが苦手な理由」
2016/03/28 19:45配信
カテゴリ:コラム
U-23日本代表が1月のU-23アジア選手権で優勝し
リオ五輪の出場権を得たのは記憶に新しいところです。
そのU-23日本代表は、国際Aマッチウィークを利して
ポルトガルへと強化遠征に来ています。
ここでは2戦を予定しており、3/25(金)にはその初戦である
前回のロンドン五輪で金メダルを獲得したU-23メキシコ代表と対戦しました。
そのロンドン五輪で、日本はメキシコに準決勝にて逆転負けを喫しました。
リオ五輪でも、対戦した折には難敵となることは間違いありません。
出足の鋭さで圧倒した前半の日本
A代表と掛け持ち状態と言える遠藤航も招集した日本は
ケガで未招集の鈴木武蔵と室屋成を除けば
1月のU-23アジア選手権を制した時とほぼ変わらない先発メンバーを揃えました。
ただ布陣を4231とし、前線の並びを少し変えてきました。
鈴木武蔵がいない分は、豊川雄太を起用し右SH。
南野拓実が左SHで、中島翔哉をトップ下としました。
守備のセット時は442で、メキシコとミラーゲームの様相です。
日本は序盤から、人数を合わせたプレスを敢行しました。
いきなりの得点シーンでは
メキシコが4バック+2ボランチでビルドアップをするところに
前の4枚と2ボランチが、人に付くようにしてプレッシャーを掛けています。
6対6となり、人数が揃っていることから
自分の見るべきマークがハッキリしている状態です。
従って、相手の不用意なショートパスを狙って取る準備が出来ます。
その通りに奪取した南野がバイタルエリアの中島へパス。
中島は反転して左足シュートを放ち
相手に当たってコースが変わったことも奏功し、日本が先制に成功しました。
メキシコとしては、ビルドアップに6枚も使うということで
序盤はセオリー通りのセーフティなシステムとしていましたが
しかし、セーフティな対応は出来なかったということになります。
それにしても、奪ってから3秒でフィニッシュまで至っており
U-23アジア選手権でも鋭いカウンターを繰り出した日本としては
狙い通りの形だったと言えるでしょう。
前半はその後も、日本のプレスにメキシコが苦しむという展開となります。
反面、日本はメキシコの守備に手を焼く場面は少なく
概ね、日本ペースと言える推移を見せます。
ボール保持率ではメキシコが日本を上回っていましたが
ボールを前進させることができないメキシコが
自陣でボール保持率だけ高めた、という状況だったと言えるでしょう。
前半33分には同じような形から日本が追加点を挙げます。
4バック+1でビルドアップをしたメキシコに対して
人数を合わせたプレスを敢行し続けた日本という構図です。
前を向いたメキシコのボランチに対して
遠藤航が1対1で完勝し、中島がそのボールを拾って運びます。
メキシコはカウンター対応として2CBを縦関係にしてまで
中島にプレッシャーを掛けますが
それによりリベロシステム的に最終ラインにギャップが出来てしまい
そのスペースで、ポストプレー全般に巧みな久保に起点を作られてしまいます。
中島が入れた縦パスを、そこへ全速力で駆け上がった南野へ絶妙なフリックをされて
メキシコ守備陣としては、万事休しました。
これも奪ってから7秒でフィニッシュに至っています。
そして、狙い通りなのはそこだけではなく
この場面では、後ろ向きの守備をしていた前線の3選手と
自分のマークに付く形で位置を上げていた
右SBのファンウェルメスケルケン際が
メキシコにとってのパスコースをしっかり消していました。
これは、コンパクトな陣形を保ちスペースを圧縮した上で
球際の勝負に持ち込み、発生する「デュエル」に勝つ
そして「縦に速い攻撃」に持ち込み、得点するという
ハリルホジッチA代表監督の理想を体現したゴールと言えます。
そのやり方は、A代表でコーチを務める手倉森誠U-23代表監督によって
この年代別代表にも伝わっているようです。
前半は2‐0と日本リードで終了します。
ここまでは日本にとって理想的な展開と言えました。
対メキシコにおいて付きまとう問題
後半頭から日本は2人、メキシコは4人のメンバーチェンジをしてきました。
この辺りは親善試合といったところでしょうか。
ただ、後半のメキシコは持ち前の速いパス回しに
フリックや、ワンタッチプレーが増え
それに連れ、徐々に日本の守備がハマらない状態が増えました。
その点においては、親善試合とはいえ
非常にイヤな展開と言えました。
なぜなら、これはロンドン五輪のみならず、2013年と2006年の
コンフェデレーションズカップでいずれもメキシコに敗れた時
全て先制した後に逆転を許したあの試合の数々と
共通点の多い試合展開だったからです。
ボールが取れない、前進されてしまうということは
チーム全体の防衛ラインは下げざるを得なくなります。
つまり、最終ラインが下がり押し込まれた状態となります。
そこから陣地を回復させることができず
ピンチが続き、耐えきれずに失点するというパターンが
日本の対メキシコにおいて見ること出来るシーンです。
それはなぜでしょうか?
例えば「メキシコは後半からギアを上げてきた」
「親善試合ということでメンバーチェンジを続けた結果」
ということで全ての説明が付くのでしょうか?
フリックやワンタッチプレーが有効なのは
ボールの位置を基準とするゾーンディフェンスにおいても
人に付くマンツーマン的なディフェンスにおいても
それほど変わるものではありません。
しかし、問題の多くは日本の守備のやり方にあります。
人に付くということは、相手選手のポジショニングによって
ある程度はこちらの守備者のポジショニング
ひいては全体の守備陣形を操作されてしまうということです。
サッカーはボールをゴールへ入れる競技です。
そしてボールは1つですが、相手選手は11人います。
従って、人に付く守り方というのは
守備側にとって効率が悪くなる場面を相手に作られてしまいがちです。
そしてメキシコは、それを可能とするシステム化された選手配置と優れた技術により
そのような場面を作るのが伝統的に上手いと言えます。
数的同数を作るプレスに、運動量的な限界があることは事実です。
また、そのプレスへの慣れというのもあるでしょう。
しかし、この問題は対メキシコにおいて必ずと言って良いほど発生します。
人に付く守備の問題を指摘され始めて久しい日本は
メキシコに再現性をもって攻略され続けているということです。
日本の失点シーンは外の2対2で起点を作られ
トップ下の選手、つまり遠藤航のマーカーである8番が
空いたスペースへのランニングをし、これに遠藤航が付いていっています。
メキシコは意図的に、ボランチの一角で、より球際に強くて厄介な遠藤航を
バイタルエリアから動かそうとしています。
そしてそれは割と容易に達成されてしまうのです。
それが上手くいき、残った井手口陽介のところで2度フィニッシュに持ち込み
そのうちの1回をゴールに入れることに成功しました。
人に付く守備にしても、亀川諒史が自分のマーカーに付いていくことが出来ていれば
この場面においては失点を防ぐことが出来たかもしれません。
ただこの場面や、ここに至るまでの一連の試合展開は
何度も書いている通り、メキシコの狙いどおりでしょう。
そして、このような形は何度も引き起こされているものです。
日本が本戦においてメキシコと当たる場合は
それはおそらく、メダルを懸けた重要な一戦となるでしょう。
その時には見たくない、この日の後半の光景は
今まで、日本とメキシコの間で、何度も繰り返されてきたということです。
競合相手の快勝の中にも
本番へ向けた課題が残った、と言える試合でした。