CHANT(チャント) 浦和レッズ

【浦和レッズ】 2016発進から3節までの戦い。ACLではアジアのライバル広州相手に貴重な勝ち点1 【2016】

2016/03/28 12:15配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


現在J1は4節を終了し、現在の浦和レッズは3勝1敗の勝ち点9。
今季も層の厚いメンバーを擁し、起用に変化を付けながらACLも戦っている。

近年。
タイトルへ向けて進みながらも、タイトルを逃している浦和レッズだが
指揮5シーズン目となったペドロヴィッチ監督の創るサッカーでタイトルを獲ることにこだわりを持っている。

今季は今までベースとしてきたサッカーにさらにプラスαを加える意識がハッキリと見えている浦和レッズ。
目指すは頂点。
すべてのタイトルにチャレンジすること。それが浦和レッズにとって当たり前のように求められている高いノルマだ。


●リーグ開幕戦となったアウェイ柏戦で見えた大きな変化

ACLで迎えた今季スタートとなった初戦勝利から中2日。
日立柏サッカー場で迎えたJリーグ開幕戦は、序盤から浦和の変化がハッキリと見えた試合となった。

序盤から浦和がボールをポゼッションしながら緩急を付けたパス回しでゴールまでを構築するのは変わらずだが、
途中でボールを奪われると、すぐに複数選手で囲みボールを取り戻しに行く。
再びボールを奪うと前線に速いパスを出し、バイタルエリアの中へとスピードを持って侵入し相手の脅威となる攻撃を仕掛ける。
奪われたら奪い返すをチーム全員の意識として持っていることがわかる動きが続き、その対応に柏が打開を見つけ出すことが難しい時間帯が続いた。

ボールを奪われても奪い返すという形がハマった浦和は、柏が中央を固めることに引っ張られ手薄となっていたサイドを積極的に使いながら、攻撃を繰り返す。
ボールを持っても簡単には奪われないのはこれまで通りだが、ボールをロストしてしまってもすぐに数人で囲みボールを奪い速い攻撃を仕掛ける浦和レッズには
大きな変化を見て取ることができた。

後半に入ると、ACLから中2日というシーズンインしてすぐの過密日程が後を引き、運動量が落ち始めると柏に主導権を握られる時間が訪れる。
それでも前半武藤の胸で押し込んだように見えた幻となってしまったゴールがノーゴールと判定されたその影響をマイナスにすることなく、圧力をかけた攻撃を続けていた浦和が、後半7分に武藤が詰める形で先制ゴールを決める。
しかし、その後ホームの底力を感じさせる柏に猛攻を受ける時間があり、同点弾を許してしまう。

その後、柏が山中を投入すると流れは柏が握る形で押し込まれる時間が続いたが、耐えると
途中交代で出場したズラタンが武藤のCKからのボールを頭で合わせ勝ち越し弾。
最後まで追撃を受けながらも、なんとか最後までを守り、2-1で勝利をおさめた。

疲れが見え始めてからの浦和は運動量が落ち前半みせた「変化」のプレッシングは一時的に停止し、体力を使うボール奪取から切り替え従来の戦い方を軸に戦い、確実なポゼッションからのゴールに繋がる形のサッカーにシフトした。
ボールを失い攻撃を受ける場面が多い時間帯もあったものの、集中して守ることができ攻撃の機会を見つけるとディフェンスラインも加わり厚みのある攻撃をすることができた。
柏の時間帯も脅威と感じる時間帯がありながらも、点差以上に差をつけることができた浦和レッズのサッカーは、今季も強いと印象付ける試合となったはずだ。


●対策に負けたジュビロ磐田戦

ホーム開幕となったジュビロ磐田戦。
序盤から浦和がボールを持ち、主導権を握り続けた。
何度も相手ゴールに迫りながらも決め切ることはできず、磐田の敷くブロックを前になかなか打開することができずにいた。

その中で、磐田は明確なプランを持って少ない攻撃チャンスの中でも光を見せる。
アダイウトンを中心とした攻撃に、浦和は若いながらも頼りになり強さを持つ関根で対応しながら攻撃を防ぐ。
浦和は何度もゴール前に迫る攻撃をしながらもカミンスキーを中心に阻止され続けなかなか得点を奪うことができずにいると、バックパスの処理のミスから、ボールを奪われてしまい失点。

0-1の状態で迎えた後半は、ホーム開幕戦で昇格してきた磐田相手に負けるわけにはいかないという浦和が、攻撃に圧力をかけるであろうメンバー交代を行うと読んだ名波監督は、
その1点を死守するために浦和の攻撃に耐える時間を長く持つのではなく、浦和に1点を獲られてしまったとしても勝利ができるよう、追加点を奪いに行くため脅威を与えることを選択する。
その交代が予定よりも早い時間での交代となった、今季初出場となるエース・ジェイの投入だった。

これによってジェイの対策のために一人ディフェンスを増やす選択をしたペドロヴィッチ監督。
得点を奪うための攻撃カード3枚の交代ではなく、1枚をディフェンスのカードとして使わせたことはジュビロ磐田にとってプラスだった。

その後、浦和レッズは崩しから今季10を背負う柏木がゴールを決めて同点に追いついたが、すぐさまジェイの強さを痛感することとなるゴールを奪われ、1-2。

そのまま試合は終了してしまい、ホーム開幕戦でジュビロ磐田に痛い1敗を喫した。

磐田はシーズンを通してこうしたサッカーを軸に戦うわけではないと名波監督が言い切ったように、しっかりとした浦和対策をし挑むチームが多い。
自分たちのサッカーをさせてもらえないであろう脅威と認定しなくてはならない浦和レッズとの対戦だからこそと位置づけ、
勝ち点を1でも3でも獲るためには、1週間をかけて対策をチームに浸透させ分析を重ね迎えるというチームを浦和が迎えることはシーズンを通して多いということだ。
追われる立場であることは今にはじまったわけではないが、浦和としてはどこが相手であっても戦い方の主軸に大きな変化を加えることはない。

しかし、ジュビロ磐田戦で現れてしまった、「対策をしてきたチーム」と「おおまかにジェイ対策のみの対策に動いたチーム」の勝敗の差が出てしまったことは、課題として持たなくてはならない。
浦和が柏戦で見せた、奪われたら奪いかえすの図式は展開することができなかった。そして相手チームに「こわさ」を与えることができなかったこの敗戦が、浦和レッズとしてどうプラス材料に転換するかが鍵となる。


●昇格組とのホームでの対戦 違いを見せつけた完封勝利

続く3戦目では、ホーム埼玉スタジアムにアビスパ福岡を迎えた。
5年ぶりのJ1昇格となり今季J1で戦うアビスパ福岡が迎える埼玉スタジアムは、その日の来場者は昨年の平均に比べるとかなり少なかったものの、それでも真っ赤に染まり大きなチャントが響くどこよりもアウェイを感じるであろう独自の空気を感じたことであろう。
福岡としては、まずその空気に呑まれないことが第一の戦いとなったであろうこの試合は、立ち上がりからすぐの浦和のビッグチャンスから始まった。
しかし、その絶好の機会を浦和は決めきることができない。

その後も何度も浦和は積極的に攻撃を仕掛け、ボールを失ってもすぐに囲みボールを獲り返し、攻撃を仕掛ける。
福岡がブロックを敷く前にボールが入るほどにスピードに違いを見せつけ、驚異的な攻撃を続ける。
主導権を完全に握り、1.5歩ほどの優位を持って余裕を持ちながら短いパスと長いパスを使い分け、身体を一歩前に出しながらボールを受け試合を進めた。

対するアビスパは、リーグ1といって良いであろうパス本数の多い浦和のボール回しすべてにプレスをかけると体力が消耗してしまうため、前半はさほどプレスはかけず耐える時間が続く。
エース・ウェリントンの能力からの打開を目指し耐えながらカウンターの形をとった。

前半18分。
この日は左の位置に入った関根が、森脇からのサイドを変えるロングボールからダイレクトでクロスを送り、興梠に届くと、エース興梠の今季初ゴールとなる先制点が決まる。

この日は浦和の布陣に変化があった。
最終ラインの真ん中には遠藤が、左のWBには関根、右のWBに梅崎が入った。
この変化に見どころが多かった試合でもあった。

磐田戦までは最終ラインの真ん中に位置しリベロとしてプレーしていた槙野が途中から左へと移動し、今季加入した遠藤航が真ん中に入った。
福岡戦ではスタートから中央に遠藤、左に槙野、それによって左での起用が続いていた森脇が本職である右という位置でのスタートとなり、遠藤が目立たないながらもしっかりと真ん中の役割をこなし、攻撃の芽を摘む。
そしていつも左のWBに入っている宇賀神の位置に関根、右に位置していた関根の位置に梅崎という変化があったが、右の位置でもチームにとって重要な働きを毎試合みせている関根だが、左でもその頼れる働きは健在。
攻撃はもちろん柏戦では後半から同じく五輪候補である山中の上がりに対応が遅れる場面も見られたものの、磐田戦ではアダイウトンに負けない強さを見せ、福岡戦では左に入り攻撃に、そしてディフェンスもバイタルの中でもファールを恐れることのない自信を持って果敢に厳しくディフェンスにいくなど、頼もしいプレーを数多くみせた。

福岡のエース・ウェリントンは個人能力の高い選手であったが、湘南でチームメイトとして共に戦った経験もある遠藤が、落ち着いて対応。
脅威と感じる攻撃もいくつかあったものの、周囲との連携を取りながら対応し落ち着いて処理することができていた。

続く2点目にも関根が絡んだ。
関根がスピードに乗ってボールを受けると左の位置にスペースが空いたことで梅崎が左に入ってボールを受けると、クロスを送りファーに入り込んでいた興梠が左足でボレー。
鮮やかにゴールが決まり、早い時間の追加点ながらも相手の戦意を失わせることができる2点目を奪った。

試合の内容からいくともう少しゴールやシュート数が欲しかったものの、得点の数以上に圧倒した浦和レッズが2勝目を挙げた。
この試合が浦和レッズにとってホームでの勝利が200勝となるメモリアル試合となり、ホーム埼玉スタジアムでの今季リーグ初勝利となった。

厳しい日程で迎えたアジア最大のライバルである広州恒大との試合をアウェイで戦った浦和は、
2点を先取されながらも、柏木のCKから、相手のGKが柏木の放った回転のかかったボールをこぼすと武藤が決めて1点を返し、広州恒大の強力な外国人選手たちを中心に何度も重圧のある攻撃を受けながらも
試合終了間際に興梠が同点弾を決め、アウェイ広州との試合で貴重な勝ち点1を奪った。
広州に早い時間にアジアの笛でのPK含め2点を先取されながらも、90分を使いながら同点に追いつくことができた経験は、浦和レッズにとって大きなモチベーションに繋がるはずだ。

奪われたら奪い返すがプラスされた今季の浦和レッズだが、それもひとつの選択肢であり、それを成り立たせるために生まれるリスクマネジメントを忘れてはいない。
大きなリスクを持ってでも戦うべきところ、リスクを最小限にして選択肢を持って戦うことなど
浦和レッズのサッカーという広いベースを持ちながら、その中で変化を試合の状況や疲れなどの影響などによって使い分けていくことになりそうだ。

昨年は負けなしで1stステージを制したが、こだわりを持っていた年間勝ち点1位という場所を得ることはできなかった。
負けなしのステージ優勝ではなく、勝ち点という部分にこだわっていかなくてはいけない今季。
勝ち点3を多く重ねることが必要となる。


浦和の目指す先は1つ1つのの勝利はもちろん、最終的に頂点に立つこと。
曇りのないその一点を目指してスタートした今季。


今年の浦和レッズからも目が離せない。
浦和の魅せる戦いが、Jリーグの中でも高いレベルの戦いとしてひとつの目安になっていく。
成しえるために向かうタイトルへの道は、今季どんな道となるであろうか―。

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