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【Jリーグ】 1点の重みを判定するゴールラインテクノロジー導入の課題 東京五輪までに導入されるか否か 【AFC】

2016/03/27 21:30配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム

2016シーズンが始まり1か月が経ったが、今季も複数の試合で生まれてしまった「幻の」ゴール。
開幕戦・柏×浦和での浦和レッズ武藤雄樹が胸で押し込んだように見えたゴールの行方など、ボールがゴールラインを割っていたのでは?とする疑問の場面が今季のJリーグでも存在する。
試合を左右し勝敗を決めるのに一番の重要場面である「ゴール」を巡っての判定に、モヤモヤが残ってしまうことも少なくない。

Jリーグでは現行の4名の審判に加え追加副審の導入を決定した。
得点の見極めやペナルティエリア内での出来事に対する判定を行い、両ゴールライン付近に目視する審判が追加され審判6人制度となる。
今季は試験的に、J3の試合で6月頃からコミュニケーションシステムを行えるスタジアムに限り各節1試合ずつ導入される予定であり、
その他、Jリーグヤマザキナビスコカップ準決勝の4試合と決勝、Jリーグチャンピオンシップの全試合で導入されることとなっている。

あくまで人間の目での判定にこだわりをもってきたサッカー界だが、数年前に革命が起きた。
ゴールラインテクノロジーが導入されることに決まり、2013年のコンフェデレーションカップ、2014ブラジルW杯でも導入された。
現在はプレミアリーグやブンデスリーガでも導入され、来季からのCLでも採用が決定。今年行われるEUROでも導入が発表されている。
FIFAが導入を決定してからジワジワとゴールラインテクノロジーが世界的に導入されてきている。

この世界の流れに沿ってJリーグでも導入される日はそう遠くはないであろう。
費用的な問題や今後の発展の問題に課題を残すものの、それ以上に世界的大会のひとつとなるであろう東京五輪が迫ってきている今。
日本のスタジアムに、そしてJリーグに近い未来導入される日は近いのではないであろうか。


●ゴールラインテクノロジー現行は4つ 最大で2500万円超の設置費用が必要

すべて人間が判定すべき場としてサッカーは主審1人、副審2人、第4審判と1試合を4人の審判で判定してきた。
ゴールシーンだけではなく、オフサイドやファールなども含め、審判は試合の勝敗に関わる重要な役割を担っている。

世界最高の戦いの場であるW杯にて、誤審と思われるような事例が後を絶たず世界サッカー界全体の大きな問題となったことや、
試合を大きく左右することとなるゴールという部分ではテクノロジーを取り入れるべきとの声も多く、FIFAがついにテクノロジー導入に着手。

機械だからこそ絶対に間違いがあってはならないため、間違えのない人間では判別できないものを即時判別できることを軸としてテクノロジーを数社がプレゼンし、最終的にFIFAに認められたのは現在4つ。

1つは「ゴールレフ」と呼ばれるドイツとデンマークの会社が開発したゴールラインテクノロジー。
これはゴールエリアに磁気を作り、ボールに組み込まれているマイクロチップによってゴールを完全に通過したか否かを判別することができるというテクノロジーだった。
ゴールと判定された場合は主審の腕時計にGOALの文字が伝えられるようになっていた。
現在は改良され、ゴールに磁場を構築しボールの中のセンサーが受信機にボールの位置情報を送信することで審判にゴールが決まったか否かを1秒以内に伝えるようになった。
この改良版も第3番目となったゴールラインテクノロジーとしてFIFAに認可されている。

もうひとつは「ホークアイ」というシステム。
ホークアイはミサイルや脳手術に使用されるシステムの開発をする企業の子会社であった現在ソニーの子会社である会社が開発した。
両ゴール付近に設置される6台から8台のハイスピードカメラがそれぞれ違う角度から正確な位置を毎秒500コマで撮影し、それを映像ソフトが解析を行い、瞬時に三次元化することができる。
ゴールラインを通過したことが認められると同時に主審の時計に信号が送られるシステムだ。
撮影から解析、判定まで1秒以内に行うことができ、判定までに時間を要しないテクノロジーだ。

現在4番目に認可されたテクノロジー「ゴールコントロール4D」は、スタジアムの高所に14個の高速度カメラを設置し、1か所のゴールエリアにつき7台のカメラがゴールエリアを監視する。
ゴールが認められると審判の腕時計が振動し、ゴール認定を知らせる仕組みとなっている。

最大でスタジアムに設置する費用は2500万円超といわれており、運用費用も1試合40万円ほどが必要とされているだけに、Jリーグとしての負担はかなり大きいものになるといっていい。

日本で開催された試合では横浜国際競技場(日産スタジアム)、豊田スタジアム等、FIFAが費用を負担する形で設置され、クラブW杯の試合にて導入された。


●ゴールラインテクノロジー導入の課題

ゴールラインテクノロジーを設置するにあたり、最大の問題は費用であろう。
1か所に1600万円から2500万円ほどの費用がかかり、毎試合40万円の費用がかかることとなるが、その費用をどこから捻出するかというところが焦点となり簡単に導入を決めるわけにはいかない。
世界的な動きとしてはFIFAやUEFA、リーグが費用を出しているため、Jリーグで採用された際にはJリーグが費用を支払うこととなる。
しかし、世界的なリーグとはお金の動きや動くお金の大きさに違いがあるため、Jリーグがすべて負担し世界と並んで設置するというのは今すぐには難しいであろう。
いまだコミュニケーションシステムを使うことができないスタジアムも存在する今ゴールラインテクノロジーを設置するのは厳しく、
新スタジアムが各地で建設予定や建設を呼びかけている状況で、ホームスタジアムに変更が多くなりそうな今後だからこそ、ゴールラインテクノロジーを導入するタイミングを見定めるのは難しい。

ゴールラインテクノロジーを導入する上でFIFAのブラッター会長の言葉にもあったのだが、
ひとつのテクノロジーを導入してしまうと、それ以外の部分もテクノロジーに頼れという声が起きてしまうことも問題となる。
ゴールをテクノロジーで判別するならばオフサイドもテクノロジーで、と次を求める声に繋がり、すべてを機械化しサッカーの判定が機械によって判定されてしまうような未来を生んでしまわないかという心配もある。

試合のジャッジは重要なものだ。
審判の笛に誤審があってはいけないものの、それも含めてfootballとされてきた。
Jリーグの笛とACLでの笛が違うように、サッカーは主審の笛を含めたスポーツであるのかもしれない。
人間で判定を行ってきたサッカーだからこその歴史もあるのは確かだ。

東京五輪まであと4年。
その時には五輪の試合でも、ゴールラインテクノロジーが導入されることもあるかもしれない。
4年という月日の中でゴールラインテクノロジーを導入するリーグが世界で今後増えることとなるのは間違いないであろう。

その時、Jリーグは―。

今季から導入される追加審判によって、どうゴール判定に変化が出るであろうか。

改めて。
ボールが完全にゴールラインを越えていなければ、ゴールとしては認められない。
ボールの面が少しでもゴールラインにかかっているならば、ボールのほとんどがゴールラインを割っていても、ゴールとしては認められない。

一瞬の出来事であり、ゴールライン上にいない主審が目視で判定すること自体難しいのは確かだ。


1試合の1ゴールにはさまざまな背景がある。
ゴールとされたボールが実はラインを完全に割っていないこともある。

1点の重みがあるfootball。
ゴールラインテクノロジーがあっても判定は主審があくまで持つこととなる。
近い未来、1点をめぐる判定に変化があるかもしれない。

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