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【J3】 セカンドチームとサテライトチームそれぞれの強化と地方クラブの壁 【サテライトリーグ】

2016/03/21 12:12配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


Jリーグは24年目を迎え、J1からJ3までJリーグクラブと呼ばれるクラブは56クラブとなり、日本全国で各カテゴリーのJリーグの試合を観れるようになった。

サッカーは言うまでもなく、試合に出場できる選手は11名。
ベンチメンバーは今季からJ1からJ3まで統一され、7名までベンチに選手を入れることが可能となっている。
試合に出場する選手と合わせて最大で18名。
交代で入れる選手は3名までとされていることから、試合開始からピッチに立つ11名と途中交代3名で、最大で14名の選手がピッチに立つことができる。

チームとして勝利にこだわりながら選手を育て強化していかなくてはならないのは、未来像はそれぞれ違うものを持っていたとしても各クラブ同じだが、今季からその強化に大きな変化がある。

まずはJ3のチームとしてU-23チームを参入させ戦うFC東京、ガンバ大阪、セレッソ大阪のセカンドチームという新しい強化の形が誕生した。
23歳以下の選手たちに加え、ピッチ上に3名までオーバーエイジ枠として年齢上限のない選手たちが出場できることとなっている公式戦だ。
若手選手たちを中心に公式戦の場で経験を積ませることで強化し、トップチームの今後に反映させるというのが各チームの狙いである。

もうひとつの変化は、サテライトリーグの再開だ。
6年前まで行われていたサテライトリーグだが、J1に所属する全チームの強制的な参加であったものの練習試合の内容と変わらず本格的な強化に繋がることを疑問視した声や、遠征費にかかる経費の負担の大きさなども問題となり、日程調整の厳しさなどもあったことで2009年には全日程を消化することができないなどして消滅してしまったが、
今季からJ1チームの9チームが参戦する形でサテライトリーグが復活した。
問題とされた遠征費用をおさえるために、トップチームがリーグで対戦する対戦相手と次の日にサテライトリーグが組まれる日程も多く、それによって遠征費を削減するような工夫もされている。
サテライトリーグが再開されたことで、勝敗に関係する控え組中心のプロ×プロの試合が行われることになり、近隣のJクラブとの不定期で組まれる練習試合や、強豪大学やJFLチームなどとの練習試合よりも強化に繋がりやすい場となると期待される。
負傷明けの選手などの回復具合を試す場としてや感覚を取り戻す場所としても活用できるため、サテライトリーグがあるというのは控え選手たちや怪我明けの選手たちのアピールできる場所となるであろう。

●地方クラブの強化の難しさ

関東や関西には複数のチームが密集している。
J1からJFL、そして強豪大学までバリエーション豊かに揃っているといえるであろう。
そういったチームと常日頃から練習試合を定期的に組むことができる環境というのは強化をするにあたり大きなプラスである。

練習試合では激しく当たることはなかなかないものの、それでも実力あるチームと練習試合をしてチームのチームメイト以外と実戦として練習を行うことで、
課題を見つけたり選手の起用方法にヒントが生まれたりと、さまざまな強化に繋がる機会となっていたはずだ。

それでも強化として物足りなさを感じていたクラブが多く、サテライトリーグやJ3リーグ参入という形でしっかりとした公式戦、準公式戦の場で勝ち負けにこだわりつつ強化をしたいというチームが多くあったことで、
今季からこういった大きな変化が生まれたのであろう。

しかし、地方クラブではそういった相手を見つけることすら難しい状況にある。
試合にはまだ出場することが難しい発展途上の選手たちや、ベンチ入りはするもののポジション的に途中交代することが難しい選手たちの強化はチーム外からの刺激を受ける環境にないところが多い。
近隣に他の各カテゴリーのJリーグクラブがない場合はもちろん、JFLのチームもなく、本格的に将来Jリーグ入りを目指すという形態ではないような地域リーグのチームしかないような地域や、
大学サッカー部も、地域では強くとも全国大会で上位となることは難しく、練習試合相手としては厳しいという状況にある。

そうなると、チームの紅白戦が質としては一番高いものとなり、自らのチームの下部組織ユースチームとの練習試合などを組むことが多くなる傾向にある。

地方のクラブとなると近隣に複数のチームがない場合には、サテライトリーグに参入してしまうと当然遠征費がかかることとなり負担が大きくなることから、トップチーム以外の強化という面の環境を得られないままの状態が続いてしまっている。

クラブ格差が生まれてしまうこととなるが、そういった中で積極的に若い選手たちを起用し、育てながらリーグを戦うといった方法や
トップチームの結果がすべてという中でも、我慢する時期が必要となったりしながら数年に渡る強化プランを立てながら選手を育てていくというビジョンを持ったチームが多くなる。
サテライトリーグやJ3参入のための資金作りをするというのもひとつの手かもしれないが、それならばトップチームの選手獲得にお金を使いたいというのが第一となってしまうことは否めない。
強化資金にもチーム規模にも余裕がないチームが多く在るという現状だ。

地域によって生まれてしまう不自由さだが、その状況を逆手にとって生む強化方法をそれぞれ生み出していく他ない。
若い選手をより早く育てることで戦力となる可能性も秘めつつ、他クラブから必要とされる選手となり、移籍金のないJリーグながら契約違約金や育成費などを収入として得ることができ、チームに強化費を生むことができる。

言い訳やないものねだりをするのではなく、独自の強化プランを持って地方クラブは進まなくてはならないであろう。

●Jリーグ・アンダー22選抜から学ぶ強化の意味

J3が発足した3年前。
Jリーグ各チームから22歳以下の選手たちを招集し、1試合限定のチームを作り、J3にて公式戦を戦ったJリーグU22選抜。
しかし、結果として強化に直接的に繋がったとは言い難い結果となった。
前日練習をして試合をして解散という、寄せ集めのチームで戦うことは難しかった。
2シーズンを戦い、どちらもチームの結果は最下位。
一発勝負のように戦う中で、チームとして成り立っているJ3のチームに負け続けた。

理想としてはJ1やJ2の選手たちであるならば、J3というカテゴリーで寄せ集めであっても一発勝負であっても圧倒するくらいの選手能力であってほしかったというのが正直なところだ。
しかし、現実は違った。
寄せ集めの選手たちはなかなか自分の能力を魅せることができず、当然連携も難しく、敗戦を続けた。

若い選手たちの個を伸ばし経験を積ませるという断続的な育成強化にはならなかった。
JリーグU22選抜の試合で結果を出したからといって、すぐにトップチームに反映されるようなこともなかった。
各チームがその結果をどう踏まえ、トップチームに反映させるかというのは難しいものだが、22歳以下の選手たちがJ3にて結果を持って帰ってきても、
22歳以上で試合に出場はできていないが、22歳以下のその選手よりもモチベーションも質も上という位置付けの選手たちを乗り越えるほどの結果には繋がらなかった。

参加費として各チームは選手一人につき35000円を支払い参加させたが、強化として成り立っているかというと疑問が出てしまう形態であったことは否めない。
結果的に今年からは廃止となり、クラブがセカンドチームを持ってJ3に参入するという欧州でも実施されている方向性となり、サテライトリーグも復活した。

しかし、だ。
先にも述べたように、地方クラブはJリーグU22選抜で試合に出場していたほうが、地元で練習試合を行うよりも良かったのかもしれないと考えると、難しい。

だが、直接的な強化に繋がったとは言い難い形態だったJリーグU22選抜の教訓を踏まえて、
今後J3参入のセカンドチーム3チームや、サテライトリーグがどうトップチームの強化に影響を与えるかということに地方クラブ他、J3やサテライトリーグに参戦しないチームにとって今後の方向性を見出す上での参考になることであろう。

トップチームでまだ出場機会を得られない選手たちが、J3の舞台やサテライトリーグでがむしゃらにトップチーム入りを狙うような白熱したものになるのであれば、その戦いには大きな意味があるであろう。

チームが決めたことだから。と目の前に出された試合をただこなすだけのモチベーションで戦うだけならば、その場は全く意味を持たないものになってしまう。
チームが大きな費用をかけて強化のために用意したその場を自覚し、その貴重な機会を自らの発展のためにどう使うことができるかという選手のモチベーションも重要になってくる。
与えられた機会は、決して当たり前ではないということを選手たちがそれぞれ自覚を持ち、チャンスを掴もうと必死に戦う姿が見られるようなリーグになるならば、観る側にとっても、観る面白さと楽しみのある場となるのではないであろうか。


若い選手たちを中心とした強化がはじまった。
現在日本サッカーは育成年代での世界での戦いに出ることも難しくなっている今だからこそ。
日本サッカーは全体的に強化という部分と向き合わなくてはならない。

プロになるのがゴールではない。
プロになってからの選手たちが、プロサッカー選手として必要とされる選手として長くプレーするためにも、強化は絶対的に必要だ。
チームとしても選手たちの能力をどれだけ伸ばせるかということを考えて、選手を獲得し、その人生に責任を持って強化に取り組まなければならない。

J3で戦うチームと、サテライトリーグで戦いながら強化される選手の違いも生まれるかもしれない。
興味深いこれからの強化の今後に注目を続けたいと思う。

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