CHANT(チャント) 日本代表

日本vsUAE 毎度お馴染み、自分たちのサッカー

2016/09/02 18:41配信

武蔵

カテゴリ:コラム

日本代表の、次なるW杯へ向けた戦いが始まりました。

2018ロシアW杯アジア地区最終予選です。

日本はグループBで、オーストラリア、サウジアラビア、UAE、イラク、タイと同組。

この9月シリーズでは、初戦をUAEとホームで

2戦目をタイに移動してアウェイで戦います。


9月シリーズということで欧州リーグはシーズンが始まっています。

日本は、国内組は4日前に招集され、欧州組は2日前の招集です。


反対にUAEは2カ月にも渡る長期合宿を敢行し、今回の最終予選に備えてきました。

後進国こその特権とは言え、準備段階ではUAEとはずいぶんと差があります。

ただ、その間の親善試合では、北朝鮮に0‐2で敗れており

実力的に、日本を相手にするにはかなり厳しい国であると言えるでしょう。

今回はアジアカップとは違い、延長PKもありません。

先制点までは明確だった日本の狙い

序盤は互角の展開と言えましたが、日本が先制します。

これはセットプレーからのゴールでしたが、ここから分かることが2つありました。


1つは、清武弘嗣のセットプレーは日本の武器になり得るということ。

2つは、この日の狙いはUAEのファーサイドであること、です。

特に2つめは、スカウティングの結果と言えるもので

スカウティングの実行能力をインテリジェンスと呼ぶ向きもあることから

これをいかに実行していくかが、この試合における選手たちの役割と言えました。


実際に、このフリーキックを得たのは、まず相手SHの外で起点を作ってから

サイドのタンデム(SHとSBの組み合わせ)のコンビネーションによって

攻撃のポイントを得て、酒井宏樹が危険なタックルを受けた、というものでした。


UAEは一見して、対人の守備に明らかに難を抱えており

ビルドアップ段階からUAE守備陣を動かしていき、サイドに振って視野を変えさせ

フリーランニングでマークを剥がしていけば、攻略はそう難しくない状況でした。

酒井が受けたファウルは、UAEの対人守備の難から発生したものだと言えます。


そして、そういったスカウティング、プランニングと

2次予選のシンガポール戦以降で徐々に仕込まれたサイド攻撃を組み合わせることが

現日本代表の、首脳陣も含めた強みというところなのでしょう。



ただ、先制して気が緩んだのか、慢心したのか

徐々にシンガポール戦、またはブラジルW杯で見せたような

「自分たちのサッカー」に回帰していく姿が見られるようになります。

それとともに、試合の趨勢はUAEへと傾いていきました。

繰り返される「自分たちのサッカー」

「自分たちのサッカー」の問題点は、攻守に渡って存在します。

まず攻撃面では、中央に偏ることによって相手守備の難易度を下げてしまうことです。


得点の最短ルートは中央突破にあります。

ただ、そのルートを相手が易々と明け渡すわけもありません。

サッカーをやっていた人なら分かると思いますが

守備に関しては「まず、味方ゴールのある方向を切る=背中にする」

という指導を受けることでしょう。

それが、トップレベルで合っているか間違っているかは置いておいて

守備側にとって、ゴールのある中央を固めるのは当然です。

従って、わざわざ守備を固める中央に、渋滞と呼べるほどの人とボールを集めて

そこにおいてのコンビネーションにこだわるということは

相手にとって守りやすくしてしまうと言えます。


ハリルホジッチ監督が2次予選のシンガポール戦以降で仕込んできたサイド攻撃は

「自分たちのサッカー」から脱却するために必要な、新たな武器と言えました。

もっとも、それは欧州では標準装備と言える機能ではありますが。



守備面での問題はそれと表裏一体です。

つまり、相手が約8人ほどで固めてくる中央を突破するには

前線の中央に人を集めないと「崩す」ことはできない、という考え方をすることで

単純に守備の枚数が足りなくなるということです。


守備の枚数が足りないことの何が問題かというと

カウンターを受けた際に、単純に自陣深くまでボールを運ばれてしまいます。

これは危険というだけでなく、より多くの選手が長い距離を走らされることで

体力面の消耗も非常に多くなります



サッカーは90分で勝つために得点を挙げなければいけません。

得点を挙げるためには攻撃を仕掛ける必要があります。

攻撃を仕掛け続けるために必要なのは、攻守のバランスです。

前線に人数を多く掛けたからと言って、相手に脅威を与えられるとは限りません。

それどころか、相手にチャンスを与えることにもなってしまいます。


そんな、ザッケローニ元監督から散々戒められたはずのバランスを

理解しているのかいないのか、ともかくピッチ上で体現出来ない選手たちは

大島のパスミスからカウンターを食らい、与えたFKを叩きこまれて同点とされます。


勝っている状況でUAEの前残り2枚に対して2CBで対処せねばならないというのは

「自分たちのサッカー」にとって当然の帰結と言えるでしょう。

2次予選のシンガポール戦以降、あるいは6月シリーズで見せた

サイド攻撃が鳴りを潜める選手たちにカミナリが落ちたのか

後半1発目の攻撃機会では、左サイドの清武がサイドに張り

相手の広がったSBCB間から裏へ抜ける酒井高徳のインナーラップを使うという

目指すべきサイド攻撃がキレイな形で表れました。


そして、それ以降はまた「自分たちのサッカー」に収束していくのです。

いったいなぜなのでしょうか。


この形のサイド攻撃は、ビルドアップの段階で両SHがサイドに張る必要があります。

まずスタートの位置としてサイドに張り

ボールサイドとは逆のSHに入れば、自分のマーカーである相手SBの視野外から

ゴール前でフリーとなり、シュートポイントを得るべき動きをすることが求められます。


そして、ビルドアップの段階でそれをケアするように

相手の守備ブロックが広がりを見せたら

その時は、縦パスを入れたり、外→中で中央突破が可能となるでしょう。


もう少しいえば、攻撃というものは

最後尾からのビルドアップから少しずつ相手をズラしていき

最終的には相手ゴール前で、手の施しようがない穴を作ることを指します。

あくまで中央突破は選択肢のひとつであり、チームとして中央突破が強みだとしても

その下準備が必要というワケです。



それを怠ると、中央突破が行き詰まり、結局はクロスを放り込むこととなります。

前半の左からのクロスに本田圭佑が個の力で競り勝ったものや

後半の右からのクロスに本田圭佑が個の力で競り勝ち、浅野琢磨が詰めたものなど

決定機と言えたのは、苦し紛れのクロスから身体能力で勝ったものです。


前半の最初のように、狙ってクロスポイントを得ているのであれば良いですが

中央突破に失敗してからの苦し紛れ感がありありのクロスでは

得点の可能性は高くないでしょう。


それでも、この日のUAEのクオリティの低さ、弱点が露わであった点も含め

それで押し通れる可能性はありました。

ただ、それで押し通ったからといって、どこまで通用するのでしょうか。

少なくとも、W杯では通用しないことは、周知のところです。



日本がこの先に進んでいくために必要なものは

2次予選のシンガポール戦以降、特に6月シリーズで示されたはずでした。

しかし、今回はまた「自分たちのサッカー」に退化することで

自分たちの首を絞める結果となりました。

日本代表が「自分たちのサッカー」にこだわることについて

何か深い病巣が隠されているように思えてなりません。


やれば出来ることは知っていますが、いつやるかが明確でない点は

初戦負け国のW杯出場無しというデータ以上に怖いと思います。

Good!!(50%) Bad!!(50%)

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