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【ジュビロ磐田】 J1復帰後初勝利!PDCAサイクルから成るチームマネジメントの形成 【J1】

2016/03/07 22:15配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:マッチレポート


はじめてのJ2降格から2季をJ2で過ごしてしまうこととなったが、自らの手で自動昇格を掴みJ1に再び戻ってきたジュビロ磐田のJ1初戦は、
東海ダービーとなった名古屋グランパスとの試合だったが0-1と黒星スタート。

迎えた2戦目は、Jリーグを語る上で筆頭として絶対的存在である浦和レッズとのアウェイでの戦いとなった。
どのチームにとってもアウェイ浦和という、日本で一番のアウェイを感じる場所でもある地での戦いをどう模索するのかというところも勝ち点計算を行う上で重要となる。

負けて良い試合はないが、浦和とのアウェイでの試合では最大で勝ち点1取ることができたらOKという考えを持つチームも多い中、ジュビロ磐田は最後まで勝ち点3を獲りにいく試合にこだわった。

この試合に挑んだジュビロ磐田のPDCAを組み立てたのは、
ジュビロ磐田のレジェンドの一人でもあり、現在チームを指揮する名波監督だった。


●組み立てられた対浦和(P=Plan)プラン、そして(D=Do)実行

90分を15分間隔で6つに分けたと名波監督が語ったように、対浦和との試合を6つの時間帯に分けてプランを組んだジュビロ磐田。
対浦和を想定し、スカウティングを経て組まれたそのプランは、ジュビロ磐田が年間を通じてやっていくサッカーとは別のプランだが、
浦和レッズに勝ち点3を取るために組んだプランは、磐田の今やれることの最善が詰まった戦い方だった。

序盤から最終ラインを高く上げ、コンパクトな状態を保ちながらゲームを進めた。
浦和レッズのパスの本数はJリーグで1.2を争う多さだが、そのパスのほとんどにプレスへと向かい、積極的にボールを奪いに行く。

浦和は今季、ボールを獲られたらすぐに取り返すということを戦いの中でプラスしたが、そのことも想定し、ボールを奪うと速くボールを散らすことで囲まれることを避け、攻撃の核となり能力の高い浦和の選手たちにも負けない能力があるアダイウトンに預けることに重点を置き、アタックを仕掛けた。
J1でもその能力が充分通用するであろうと感じさせるアダイウトンの強い突破力と、攻撃力を最大限に活用しながら浦和のバイタルエリアへと侵入を続けた。

対する浦和レッズは、積極的なプレスに合いながらも、緩急を付けたパス回しと高く上げられたディフェンスラインの裏を突くような効果的な仕掛けや、サイドを広く持ちながらラインを下げさせるような攻撃を断続的に仕掛け、
磐田ディフェンスに何度も圧力をかける。
最終ラインを突破されてもカミンスキーのセーブが光り、カミンスキーのポジション取りも良く、決定的な場面をあまり作らせない。

迎えた前半30分。
浦和・森脇からのバックパスに磐田・太田が追う形でプレスをかけ、浦和GK西川が処理するも、槙野へと預けようとしたパスは弱くプレスにいった太田がそのまま奪う形でシュート。
ゴールネットを先に揺らしたのはジュビロ磐田だった。

開幕初戦となった柏戦でも、西川のヒールを使ってのボールの阻止から相手に奪われ失点に繋がっていることも含め、
足元がひとつの武器である西川の処理のミスという点では非常に厳しいミスとなってしまった。

ペースを握られることに対して、こわがらず自らのプランを持って実行し、相手のミスを摘む形で先制点を奪うことができたジュビロ磐田。

前半を1点リード無失点で折り返した。


●同点にされてからの(C=Check)評価と(A=Action)改善

真っ赤な43000人以上が入ったホーム開幕試合で浦和レッズは当然負けるわけにはいかない。
常に勝利を求められる浦和レッズだからこそ、大事なホーム開幕戦で負けはもちろん認められない。
1点ビハインドで迎えた後半から攻撃の手を強め、浦和らしいボール回しも速くなり、ポゼッションをしながら何度もジュビロ磐田ゴールへと襲いかかる。

前半から何度もアダイウトンと浦和・関根が果敢にボールの奪い合いをし、身体をぶつけ試合に大きく左右する働きを続けてきていた。
アダイウトンは身体が厚く強く、ちょっとやそっとでは当たり負けもせず足元のボールも奪われないが、対する関根も身長はさほどないものの日本選手の中でもかなり強さを持った選手であり、
上半身も厚く、コンタクトしても負けることはない。
ガチガチとぶつけ合い、アダイウトンに大きく飛ばされた場面もあったものの、当たるだけではなくボールを味方に一度当てて外すことでスピードでアダイウトンのマークを外すなど攻略しながらマッチアップしていたところも見ごたえがあった。

その関根がサイドから何度も深いところまで切り込みクロスを上げるなど、浦和のスピーディーかつ効果的な攻撃が続く中、
前半から積極的なプレスを展開し、浦和のパスの多さとサイドを広く保つことで走らされていたジュビロ磐田の疲れは相当なものがあったであろうが、集中切れずバランスが大きく崩れることもなかった中、どのようなカードを切るかということが重要となっていた。
カードを切ったことでバランスが少しでもズレてしまうと、そこは経験豊かな浦和レッズだけに簡単に複数点を決められてしまうリスクも生まれる。

そこで名波監督が執った一枚目の交代カードは、ついにJ1で登場となった負傷から明けたばかりのエース・ジェイだった。
想定していた時間よりも早い起用となったジェイだったが、ジェイを入れたことでアダイウトンが下がり、浦和はすぐにその対策へと対アダイウトンで激しく戦っていた関根に代えて永田を投入。
浦和レッズの交代カードは1点ビハインドの状態で、ジェイ対策のためのディフェンダーというカードだった。

この1枚のカードが名波監督のプランとしても、名波監督がジェイという交代カードを使ったことで得たプラスだった。
浦和の攻撃カードを3枚交代で使われるよりも、ディフェンスに交代カードを1枚使ったことで攻撃の交代カードが減ったことはジュビロ磐田にとってはプラスだったのだ。

後半33分、コンディション不良かと心配されていた今年から背番号10を背負う柏木が、浦和らしいゴール前の短いパスの崩しから鮮やかなゴールを決めて、1-1の同点にした。
この同点弾が決まったところから名波監督のマネジメントによる6つに分けられた時間帯の最終章を迎えたジュビロ磐田だったが、同点にされたところで2枚目のカードとして松浦を投入。
後半途中から攻撃の新たなスパイスを投入する松浦というカードはジュビロ磐田にとって攻撃を活性化させるために必要カードである。

松浦投入から1分後。
松浦から小林が身体を使いよくゴール前で倒れずに堪え、ジェイへと配球。
日本代表であり日本を今代表する良い意味でしつこさを持って相手の侵入を許すことが少ない槙野がついた状態ながら、それ以上に強さを持ったジェイがついにJ1初ゴールを決めた。
ジュビロ磐田は後半37分、勝ち越しに成功。

追加点を重ねた磐田は、残りの時間でもしっかりとブロックを敷きながら浦和の攻撃に耐え、
試合終了のホイッスルを迎えた。

真っ赤なアウェイの埼玉スタジアムながら、ビジター席には満員に詰めかけたサックスブルーのサポーターが歓喜で揺れた。
J1復帰初勝利は、アウェイ浦和の地で挙げた。


ジュビロ磐田は昨年加入した強力な外国人、アダイウトン、ジェイ、そしてカミンスキーという3選手が、J1でも助っ人と充分に呼べるレベルの技術、効果共に高いプレーを魅せた。
強力な外国人選手たちの能力だけでなく、その3選手をうまくチームにフィットさせ、モチベーション高く試合に入りプレーすることができるよう日常からうまくマネジメントしながら
チームに溶け込ませている名波監督のチームマネジメントがあるからこそ、その能力が生かされているのであろう。
能力が高い選手であっても外国人選手は特にそのメンタルやモチベーションを日本でどこまで高めることができるかという点は未知だが、スキラッチやドゥンガといった世界的プレーヤーである外国人たちと共にプレーしてきた名波監督だからこそ、
外国人選手たちが気持ち良く戦えるかつ、自分だけのプレーではなくチームプレーをすることへの協調性を生むようなマネジメントを持っているのかもしれない。

強力な外国人とそれだけではないジュビロ磐田の選手たちがうまく連携し、同じ目的を持ってプレーできているということが見えた試合となった。

2年前のキャンプ中に行ったニューイヤーカップでの対浦和戦をも参考にしたという名波監督は、
対浦和という熟考したプランを持って挑み、アウェイ浦和で勝ち点1ではなく勝ち点3にこだわって戦ったこと、
それに向けてのマネジメントをしながらチームを動かしたこと、選手交代の効果から、時間帯の計算された動きなどすべてプランを持って
チームを勝利に導かせたその手腕は、今のジュビロ磐田の最大の強みとなっている部分であろう。

黄金時代の中心であり日本代表でも10を背負いチームを牽引した天才レフティが目指すサッカーは、決してこういったサッカーではないであろう。
しかし、名波監督は名波浩らしいサッカーを押し付けるのではなく、勝利するために選択肢を持って、現在チームの持つ戦力と能力を引き出すことを最優先に
ジュビロ磐田を指揮している。
こういうサッカーがやるたいからとエゴイストとなるのではなく、PDCAを持って確実に自分たちが勝ち点を得る方法を求め、指揮官として責任を持ち高いところを目指している。

浦和と戦ったその戦い方が、最高潮なわけではない。
アダイウトン、ジェイ、カミンスキーと3選手が同じ時間にピッチに立つことの圧力はまだJ1では見せていないし、
松井大輔というジョーカーやボランチをリオ五輪世代である川辺が入ったときのまた違ったチームの特性など
まだまだジュビロが見せていないプラスがあり、選択肢を持っている。

J1へと復帰したジュビロ磐田の今季の目標は勝ち点45に向かうこと。
まずはそのスタートとなる勝ち点3をアウェイ浦和戦で得た。
この勝ち点が大きな勝ち点3となるか、積み重ねた中の勝ち点3となるかはこれからだという名波監督。

勝ち点3を獲りにいく。怖がらずに戦えと送り出した指揮官は、采配でも後手とならずアクションを起こした。


ジュビロ磐田は高度なチームマネジマントを持って、J1を戦い抜く。

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