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【サンフレッチェ広島】 今年のサンフレッチェ広島も強い―。どんなことにも動じない安定性と重ねた経験値。 【J1】

2016/02/25 23:02配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


Jリーグ開幕を前に行われたFUJI XEROX SUPER CUP 2016にて、昨年のJリーグ優勝チームであるサンフレッチェ広島と、天皇杯優勝チームであるガンバ大阪が対戦し、
サンフレッチェ広島が3-1で勝利し2016シーズンをゼロックス杯優勝という形でスタートさせたサンフレッチェ広島。

中2日でACLが開幕し、初戦を中国の山東魯能と戦ったが、逆転負けを喫し黒星スタートとなった。

そして土曜日には2016明治安田生命Jリーグが開幕となる。
昨年終盤にはチャンピオンシップから続く過酷な試合日程をこなし天皇杯準決勝までを戦った長いシーズンを過ごした広島だが、今季シーズンインと共に1週間で3試合をこなすという厳しい日程のスタートを迎えている。

頂点に立ったからこそ、味わうことのできる過酷な日程、こなせる試合。
選手たちの疲労が蓄積されることが心配されるものの、試合をこなすごとに強く成長する選手も多くいる。
戦い続けることでコンディションが良くなっていく選手もいることであろう。
試合が続くことは、イコール疲労というだけのことではなく、プラス要素も存在することを忘れてはいけない。

チャンピオンに立ったからこそ、サンフレッチェ広島を倒そうとすべてのチームが襲いかかる今年。
頂点で迎え撃つ側の方が難しい立場となることもあるが、今のサンフレッチェ広島はJリーグ屈指の強さを持ったチームであることは間違いなく、多少のことでは動じることのない強い芯を確立しているチームだ。

今季もすべての道で目指すは、頂点。
タイトルを獲るということに限界はない。

サンフレッチェ広島の2016シーズンは、すでにスタートを切った。


●ポジション争いとチームマネジメントから生まれるチーム力の向上


2012シーズン、2013シーズンと連覇という形での優勝を経て、広島サッカーはどのチームにも分析に分析を重ねられ、丸裸にされてきた。
2014シーズンこそリーグは8位という位置に沈んだもののナビスコ杯では決勝までを戦い準優勝、ACLではクラブ史上初めての決勝トーナメントへと進出するなど結果を残せていない一年ではなかった。
しかし、うまくいかないが重なった年でもあったことは否めない。堅守であった広島が4失点完封で負けてしまう試合もあるなど苦しんだ試合が多くあったシーズンであった。
課題を重ねたからこそ問題を修正し、再びチームとして固め、リーグの順位でふるわなかったこともあり結果が思うように出なかったシーズンとなり、主力が再び抜け広島サッカーの土台が崩れるのではないかと心配されたが、
結果的に広島サッカーという土台は全く崩すことなく、続けてきたことを熟成させ継続に徹し、そこに新たな力を加えて進化しながら昨年はクラブ史上最高勝ち点である74という驚異的な勝ち点が積み重なるほどに、勝利を重ねた。

昨年は全員がシュートを放ち、とにかくシュートを打ち切ることにこだわりを持っていたことがわかる戦いをみせた。
GK以外の選手がポジション関係なくゴールを決めるなど、得点の部分で大きな変化があった。
チーム得点王となったドウグラスはチームを去ってしまったが、ドウグラスの個人的能力も高かったものの、
ドウグラス個人の能力に頼って獲って重ねた得点ではなく、広島サッカーの中でうまくハマったことで重ねてきた得点であるため、大きな痛手となるというよりは、ドウグラスが抜けてしまったことで広島の新たな可能性が再び見られることの方が楽しみという期待を持つ。

ドウグラスが移籍してしまい、新たに清水エスパルスからピーター・ウタカが加入。
先日のフジゼロックススーパーカップでは、後半の途中から起用され、相手に当たったものの大きな一振りでゴールを生み、今後を楽しみにさせる活躍を魅せた。
なにより、楽しそうにウタカがサッカーをしているようにも映り、これからウタカを得た広島サッカーがどんな形となり進化するのかが楽しみである。

昨年もドウグラス加入後、すぐにドウグラスがスタメン定着をしたわけではなかった。
広島の欠かせない攻撃の一角であった両シャドーが抜け、さまざまな可能性を試していた森保監督は、
ベテラン選手や既存選手のポジションコンバート、若い選手の起用など持ち味の違う選手たちにそれぞれ機会を与え試していた。
競争が生またことで、そのポジションで結果を出すことが絶対であるという意識が生まれ、それぞれの選手が持ち味を出しながら質の高い働きでシャドー役として、それぞれの可能性を魅せた。
その中で、ドウグラスが一角の定位置を奪いゴールを量産する結果となったが、再び広島はその位置でポジション争いが生まれている。

クラブW杯にて、正確なキックと大舞台でも恐れることのない強いメンタルを魅せた茶島雄介も楽しみな選手の一人だ。
ゼロックス杯ではスタメンに名を連ね、今後のスタメン起用の期待もかかる。
昨年、シーズン序盤にホームで迎えた浦和戦で初スタメンとなった茶島だったが、初スタメンでかなり緊張しているという中でも決して穴となることなく、思い切ってプレーしていたのが印象的だった。
浦和相手に効果的な存在となったことも自信に繋がり、浦和レッズという絶対に負けられない相手、そしてチームの中の空気もよりピンと張った状態となる大きな試合でスタメン出場したことで、より試合に出たいという選手としてなくてはならない「欲」の部分に火がついた形となったであろう。

試合を組み立てる上で、どのような戦力で戦うかという部分はもちろん必要だが、
ベテラン選手たちが多く熟成された高品質なプレーを魅せる広島の選手たちの中で、若い選手たちが自分の能力をもっと伸ばし試合に出場したいと感じるようになるまでのメンタルコントロールはかなり難しいものがあるであろう。
広島は若い選手に若い戦力を育てるためにとやすやすと席を譲るチームではないが故に、自分の能力に価値があると示さないことには試合に出場することはできない。
試合に出られないまだ未熟のままの状態で練習で成長をしなくてはならない中で、向上心を持たせ希望を持たせるための森保監督のチームマネジネントというのは、重要になってくるのであろう。

ベテランばかりのイメージ強い広島だが、一昨年途中くらいからであろうか。若い選手の起用も目立つようになった。
森保監督が選手たちとの距離感を良い意味でほどよく近く保ち、しっかりと観ているという距離感にいるからこそ、若い選手たちも自分たちの良さに自信を持ち可能性をみてもらっているんだという意識を持てていることで、
日々チャレンジすることができているのではないであろうか。
日々の練習の中で良いところを確認すると、その可能性を試すために起用され、結果を生む。それが他の若い選手たちの刺激にもなっていることは間違いない。
そうやって今広島の若い選手たちの成長は著しく在るといって良い。
一昨年までは試合に出場している選手たちと、そうでない選手たちの差は練習を観ていても大きな差があったが、今は多くの刺激を経て次は俺だとハングリーさを持って競争し必至に追い越そうとしていることがわかる。

若い選手たちが試合で結果を出すことができている今の広島において、もちろんベテランや中堅の選手たちも負ける気も譲る気もない。
下からの追い上げが激しければ激しいほどに、結果を出さなければ自分たちのポジションはなくなるという危機感を持って、立ち向かえている。
その結果チーム全体の質の向上、そして意識の向上があり、熾烈な競争があってもお互いを敵と見てバラバラになることなく、お互いがお互いのことをよく理解し、尊重するサッカーが生まれている。

今季もチーム内で熾烈なポジション争いが生まれることで、サンフレッチェ広島にプラスされる新たな力が生まれ、さらに強くなる気がしてならないのだ。


●どんな状況でも動じることのない安定性

サンフレッチェ広島は、どんな状況であっても動じることのない安定性を持っている。
安定性のあるチームとしてはリーグ随一であるといっても過言ではない。

サンフレッチェ広島がなぜ強いのかを語る上で理由となる大きな要因。
それは、どんな時も崩れることがないことにある。

リーグの試合において試合が90分であることは当然決まっており、90分という時間を持って計算をしてチームを動かすことが求められるが、
広島ほど90分という時間をフルに使いこなせているチームはないと感じるほどに、90分広島のプランで試合を進めることができる。

ボールを相手も持たれても、怒涛の攻撃を受けても、慌てることが一切ない。
どんなに辛く厳しい状況であっても、自分たちのペースを乱すことなく、我慢することができる。

必ず自分たちの時間がやってくるその時まで、疲れる時間帯であっても我慢強く守備を敷き、そこから一気にカウンターでボールを前線に送り、決めきることのできるカードと経験を持っている。

失点をしても、2点差を付けられても、慌てることなく試合を進めることができる。
大きな差を突き付けられても戦意を失うことはほぼないであろうと感じるほどに、広島の試合におけるメンタリティは強いと感じる。
冷静さの中に、熱き闘志も組み合うことで、多くの結果を生んできた。

競争が熾烈となったことで、試合に途中から出場する選手たちは自分に託された役割を充分に理解し責任感を持ってピッチに入り、結果を求めることにより貪欲となった。
試合に出場している選手たちの質も選手としての在り方も、広島サッカーにおいてそして日本サッカーにとってトップレベルであることを理解しているからこそ、その選手に代わって出場するという重さ、そして試合に出たいという欲を融合して結果に繋げたいとより高いモチベーションを持ってピッチに入っているように感じる。
それが爆発した形も多数生まれ、多くの劇的なゴールが生まれた昨年。

森保監督の試合全体を観ながらの起用のタイミングや、選手たちの志気をうまくコントロールするチームマネジメントという部分で大きな結果を生んだシーズンだった。
選手たちからの森保監督への信頼が厚いからこそ、送り出してくれる指揮官の期待に応えたいという選手たちの気持ちも強く感じる。

ガンバ大阪や浦和レッズと今、サンフレッチェ広島は3強時代にあるといっても過言ではない。
宿敵である浦和レッズとの戦い、そして強敵ガンバ大阪との戦いは他のチームとの一戦一戦に真摯に向き合っている中でも、より力の入る試合となる。
良い意味で冷静さが多少ブレることもあるが、その熱き試合を昨年は勝ち取ってきたことが多かったという結果が自信にも繋がったはずだ。

浦和にもガンバにも重圧を感じるほどの攻撃を受けても、動じることはなかった。
自分たちの時間帯になるまでを耐える力があった。
決めきれずにいる相手に一矢報いる形でゴールを奪った。

それはサンフレッチェ広島の強さを示す試合となった。

ガンバ大阪や浦和レッズ含め、各チームが打倒広島で挑む今季。
毎年のように主力選手が抜けてしまうサンフレッチェ広島だが、その選手たちがいなくなったことを言い訳にはしない。
言い訳にする必要がないほどに、広島は進化を続けているからだ。

昨季チーム得点王のドウグラスが抜けた。
大きな穴であると痛感しているからこそ、全員でその穴を埋めにいく。
そして新たな可能性を持って、さらにサンフレッチェ広島は進化する。

迎える危機は、最大のチャンスにもなり得ることを何度も経験してきたサンフレッチェ広島だからこそ、また強くなることができるであろう。

自分たちのサッカーを。
広島らしいサッカーを全員が全員のために全うする。

それが、サンフレッチェ広島が持つ強さとなり、今年もJリーグを熱くしてくれることであろう。

今年もより強くなるであろうサンフレッチェ広島に期待したい。

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