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ロシアW杯アジア地区2次予選 日本vsアフガニスタン 「試しながら勝つ」

2016/03/25 20:10配信

武蔵

カテゴリ:コラム

ロシアW杯アジア地区2次予選

日本vsアフガニスタン

「試しながら勝つ」

サッカーにはサイクルというものが付きものです。

選手の加齢から、指導のマンネリ化による練習効果の低下まで

チームのパフォーマンス低下の要因となりうることは色々とあります。

そして、どのチームにおいても例外なく、それらは訪れます。


代表チームのサイクルというものは

代表チームにとって最大のビッグイベントであるW杯に合わせて

4年ごとのスパンで考える必要があります。

その最大のビッグイベントの地区予選は

前のW杯のちょうど1年後から始まります。

つまり、日本は監督解任というイレギュラーな事態が有ったこともありますが

時間は限られたものとなっているのが現状です。

そして、代表チームの実戦が国際Aマッチウィークに限られた現代では

親善試合だけでなく、公式戦の中においても

新戦力や新戦術を試しながら戦わないと本番には間に合わないということです。

そして当然、公式戦では勝つことも求められます。


サイクルのピークが最大のビッグイベントに合うように

チームを導いて行くのは、指揮官の役目と言えるでしょう。

日本は2次予選E組で首位に立っています。

しかし、初戦のシンガポール戦で引き分けたことが尾を引き

最終予選進出が、2次予選の最終戦であるシリア戦まで決まらない

といった状況になることが濃厚です。

29日(火)にホームで迎えるシリア戦に向け

そして、本音としては最終予選や「その先」へ向けて

今回のアフガニスタン戦は、結果を求めつつも

それらを踏まえた良い準備を示す必要があります。


そして、この日のアフガニスタン戦においては

その良い準備が示されたと言って良いでしょう。

「その先」へ繋がる新戦術

日本は、帰国後に合流して間もない

本田圭佑や香川真司をベンチスタートとしました。


岡崎慎司と金崎夢生の2トップ、清武弘嗣をトップ下。

インサイドハーフに柏木陽介と原口元気。

アンカーに長谷部誠を配置した4312で臨みました。


これは明らかに異色な布陣です。

4312はどちらかというと中央に人数を掛けるイメージであり

これまで2次予選で取り組んできた

サイドに、ドリブルに覚えのある選手を置き

相手の守備ブロックを横に伸ばしやすくした上で、そこにボールを付ける

そして、そこで生じたスペースを使う。

またボールが出てこなくても、逆サイドのクロスに対して

相手SBの視野の外から飛び込む、といった形で

SHを利用するサイド攻撃をメインとするやり方を

棚上げにするかと思われる布陣でした。


実際、それを担ってきた本田や宇佐美貴史は出場機会が無く

そして、その従来の形は数えるほどしか見受けられませんでした。

それも、前半にサイドにポジショニングした柏木へ

長友佑都からとパスが出ましたが、パス自体が合わない、というものでした。

しかしその代わりに、この日は新しい崩し方が見られました。

アフガニスタンの守備ブロックは442(4411)です。

アフガニスタンの攻撃に迫力はなく

そのケアは2CBとアンカーの3枚で行えば事足りる状態でした。

それを踏まえてか、両SBが高い位置を取り

4312で足りなくなりがちな横幅を補うとともに、相手のSHを牽制します。


日本のインサイドハーフは、例えば片方がビルドアップに参加したら

もう片方は相手ボランチの脇に陣取ります。

日本が3対2を作り、アンカーがボールを持った際には

アフガニスタンは2ボランチの一角が出てこなければなりません。

その出てきたボランチが空けたスペースにトップ下が下り

アンカー、インサイドハーフ、トップ下の関係で

そのスペースにボールを供給する・・・という形が狙いだったのでしょう。

その間、相手の2CBは日本の2トップと数的同数のため

自身前方のスペースをケアすることが出来ません。


決定機には繋がっていなかったものの

前半からその形によって、トップ下の清武がフリーとなる場面が見受けられました。

前半18分には長友がシュートを外し

中でフリーとなっていた金崎が激怒するシーンがありました。

格下のアフガニスタンに対し、最初の得点が前半43分だったこともあるでしょう。

そして前半28分に20番のハディドが痛んだ際には

長谷部を中心にチーム全員による円陣が組まれました。


もしかしたら、見る人によっては

チームとして上手くいってないように写ったかもしれません。


しかし、新しく取り組んだであろう戦術によって

再現性を持って相手を崩すことが、だんだんと出来てきていました。

そして、新しく取り組んだであろう戦術に対して

チーム全員で挑む意思が感じられました。


戦術を出発点としたこの試合この時間帯のこの経験は

シリア戦や「この先」へ繋がってくるものだと思います。

それは、立ち上げから1年しか経っていないこのチームのサイクルを

加速させてくれるものとなってくれるでしょう。



一番大事な先制点のシーンは、まさにその形からということで

この再現性を持ったシステムが報われる形になりました。

相手ボランチを柏木で釣って、長谷部へリターン。

長谷部から、フリーとなった清武へ入れ、そのまま前を向いて中央の岡崎へ。

岡崎のターンは素晴らしいものでしたし

サッカーはゴールを決めた選手が称えられるのは当然のことですが

この新戦術が、この場面においては岡崎と金崎を相手のDFラインとの勝負に

専念させたということは、確実に言えるものであります。

新戦術の「その先」

4312というのはそれほどポピュラーな布陣ではありません。

なぜなら、中盤の3枚で横幅をケアするのは

相手のレベルが上がれば上がるほど至難となるからです。

世界のうちで4312を使うチームは

ポピュラーでない4312をポピュラーな442に変形させ

攻撃時と守備時で使い分け、それぞれのメリットを生かしながら戦います。

現代では現ユベントスのアッレグリ監督が代表的な指導者の例です。

昨季CL準優勝のチームにおいては、攻撃時にはトップ下であるビダルを用いて

4312→442、更には中盤や最終ラインを5枚にするといった使い分けを見せました。

また、その前に指揮をとったミランにおいては

4312→442変換の、現在に繋がる形を見せ

その中身は、守備時にトップ下のモントリーヴォを落とすというものでした。


ピルロだからビダル、デ・ヨングだからモントリーヴォというような補完関係も

ここにおいては重要となってきます。


日本がこの日見せた4312では、相手のレベルが上がっていくと

いわゆるアンカー脇を使われてしまうことが多くなるでしょう。

相手が相手ということもあったのか

この日の日本からは、4312のまま守るための方法論は見られませんでした。


常識的には、4312を先に繋げるためには442変換をシステム化する必要があります。

逆に言うと、それが叶えば、今日の4312とそれによる新戦術は

少なくともオプションとしては先に繋がる可能性が高いということです。

そして、ハリルホジッチ監督であれば、その道筋は付いていることでしょう。


W杯予選へ向け、新戦力や新戦術を試しつつ結果を出す。

そういった意味ではかなり満足のいくアフガニスタン戦でした。

「その先」へ向けて、期待は高まるばかりです。

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