CHANT(チャント) 横浜FC

侮るなかれ 三浦知良は横浜FCの立派な戦力だ!

2016/08/12 16:38配信

武蔵

カテゴリ:コラム

8月7日に行われたJ2第27節のC大阪と横浜FCとの試合で

今シーズン2度目の偉業が達成されました。


その偉業とは、Jリーグ最高齢得点記録であり

達成したのは、キングカズこと横浜FCのFW三浦知良です。

このゴールは49歳と126日でのものとなりました。

カズさん、2つの凄さ

彼の凄いところは、今さら言うまでもないことで溢れていますが

その中の1つは、なんといってもその存在感であると言えるでしょう。


横浜FCで11シーズン目を過ごしているカズさんですが

彼はそのJ2の舞台において、試合前の選手紹介時、どのチームとの対戦であっても

一番大きなリアクションが、相手サポーターも含めて浴びせられる存在です。

それが、今季27節までで9回あった先発出場であればなおさらです。

C大阪戦は途中出場でした。

しかし、それならそれで交代時には

いえ、その前に交代出場すべくベンチ前に呼ばれた時には

会場の空気を一変させるという、大きな効果を生みました。


それは、その時点で2点のビハインドを負っていた横浜FCにとって

そこからの逆転勝利のために必要なピースであったと言えるでしょう。



カズさんがピッチに登場すると、実際にスタジアム全体が沸き

それは、キンチョウスタジアムのホーム側も例外ではなく

拍手によって送り出されるという現象が起きました。

これまで日本サッカー界を引っ張ってきた

ある意味では今でも引っ張って行き続けているこのレジェンドへの敬意だけは

敵・味方関係ないものだと再認識させられます。

しかし、実際にそのレジェンドとピッチ内で敵として対峙する選手としては嫌でしょう。

悪気は無くとも、味方サポーターがピッチ内の選手を孤立させてしまう、とも言えます。


こうして、例えばカズさんの持つ存在感というものが

レジェンドを相手にする際に不安材料となり得るということです。

そして、その6分後に得点を決めると、ひと際大きい拍手と大歓声を受けます。

交代出場時に続き、またしてもスタジアム全体から浴びせられる賛辞は

「横浜FCの追撃弾」というよりは「キングカズのメモリアルゴール」

に対するものと言えました。


凄いところといえば、もう1つ挙げなければなりません。

それは、彼がこのチームにとって欠かせない戦力であるという点です。

この試合、横浜FCは、J2随一の巨大戦力を誇るC大阪相手に

0‐2からカズさんのゴールを皮切りに3‐2と逆転勝利を果たすことになります。

その立役者は、間違いなくこの背番号11でした。

この日の横浜FCは、大久保哲哉とイバの大型FWで形成された2トップでした。

しかし、この手のツインタワー的な組み合わせとなると、彼らがいかに強力であっても

対応をするべきDFはそれに際して、あまりあれこれと悩む必要がなく

少なくとも、数多くのプレーの選択肢に悩まされることがないと言えます。

まして、この日は、肉弾戦であれば日本代表級の山下達也が相手でした。


横浜FCはこの2トップを先発させたここ3戦で2勝1分と結果を出していましたが

さすがにこの日は、相手が悪かったと言える後半24分までのデキでした。

その「質」により高まる、戦力としての重要性

後半24分に大久保に代わって投入されたカズさんは

先発した大型FWたちとは、また違った特徴を2つ出します。


1つはその戦術眼です。

攻撃時には前線にイバを残し、自分はトップ下的な位置取りをすることで

セレッソの空きがちなボランチ周りで起点となり

山下に手を焼いていたイバや、ボールの収まりどころに苦慮した味方を助けます。


「相手のボランチをケアすること」を指示されていたカズさんは

攻守に渡って相手のボランチに脅威を与えました。

もう1つは運動量と、その質です。

ピッチに入れば、年齢は関係ありません。

カズさんはそのとおりに、FWとしては低めのスタートの位置から

相手DFラインの裏を衝いて、押し下げようとしたり

前述のように相手ボランチ周りで起点となった時は

サボらずにパスアンドゴーを試み、チームの武器となりました。


運動量とはよく言いますが、ただ闇雲に走るだけなら誰でもできるでしょう。

それこそ、本当にムダ走りで良いのなら、若い選手でも良いのです。

この日のカズさんが発揮したのは、運動量と同時に運動質と呼べる類のものでした。

得点時は、カズさんがサイドで起点となり

相手DFラインの裏にクロスとも言える浮き球のパスを出すのですが

その後のセカンドボールを拾ったのはカズさんです。

ここでも、重要な「出したら動く」というプレーの質を見せています。


そして、サッカーにおいて最も重要なプレーである、シュート、そしてゴール。

これができる彼はこのチームにおいて、戦力以外のなにものでもありません。


このメモリアルゴールによってガラッと変わる会場の雰囲気。

それに影響されたか、苦しめられ続けた山下を振り切り

この日、初めてクロスをシュートに繋げたイバの同点弾。

さらに、カズさんを起点に、サイドに流れたイバが交わし切らずにクロス。

これを、中でマークを外した内田智也が決めて逆転、勝負あり。


3位C大阪に逆転勝利し、横浜FCはここ5試合を3勝2分としました。



横浜FCの中田仁司監督も、試合直後のインタビューで

「今日はカズ『さん』に尽きる」としました。

おっしゃるとおりにこの試合は、カズさんが、その存在感、戦術眼、運動量

さらにはその質といった、ピッチ内外で持てるものを全て発揮することで

チームの窮地を救い「2‐0は危険なスコア」を証明するに至りました。

これは、現役選手の誰もができることではなく

49歳にしては凄い、という次元のものではありません。

この日の主役は、ピッチ内に限ってもカズさんでした。

「カズさんで取ったと言える試合」がある限り、彼は横浜FCの戦力であり続けます。

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