CHANT(チャント) 日本代表

【日本代表】 求められる役割を貪欲に徹底することで生まれた刺激 W杯2次予選 3/24 アフガニスタン戦 【W杯予選】

2016/03/25 22:10配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


W杯アジア2次予選、アフガニスタン戦が埼玉スタジアム2002で行われた。
日本はアフガニスタンに5-0で勝利し、2次予選グループE首位の日本は勝ち点を19に伸ばした。

2016年初試合を迎えたハリルJAPANだが、この試合で大きなプラス要素を発見することができたのではないだろうか。
予選の試合で結果が求められる試合だったとはいえテスト要素も大いに兼ねたこの試合で、日本代表の新たな可能性になろうと選手たちがそれぞれ自分の求められる役割を全うし、アピールした。

世界と戦うためには必要となるであろう、チーム力の強化。
それには日本代表というチームの中での選手同士の競争も必須だ。

●貪欲なゴールゲッター 金崎夢生

この日スタメン出場となった金崎は、序盤から自らがゴールを求めていることが見て取れるプレーを続けた。
シュートを打つことでゴールを決めるということに貪欲となり、そのひとつの信念を持ってプレーし続けた。
多少厳しい体勢でも、可能性の低い場所からでも、自分がシュートを放つことにこだわったその姿勢は、日本代表というチームにとって良い刺激になったのであろう。

絶対にゴールがほしい!とプレーするFWがいたことで、チームとして得点を重ねてもさらに得点を求める試合へと繋がった。
ゴールを生まなくてはとFWとしての役割、自分に求められている仕事を理解し、ピッチに立った金崎は
時に自分へのパスでなくとも、そのボールで俺が決めると言わんばかりにボールを持ちゴールに向けて放った。

代表という短期間での戦いの場において、自分の能力や特徴を存分に表現しなくては次はないかもしれない。
金崎のように日本人選手が戦力としてなかなか認められない海外でのプレー経験のある選手だからこそ、余計に当たり前ではないその一瞬一瞬で結果を出さなくては自分に機会がまわってこないことを理解しているであろう。
競争相手となる現日本代表の選手たちはもちろん、これから五輪を経験する選手たちが活躍によって選出されるかもしれないJリーグで戦う選手たちなど、すべてのライバルたちとの戦いを制するためには、その与えられた時間の中で結果を出さなくてはならない。
結果、決まった5点目は決してキレイなゴールではなかったものの、欲しかった自分のゴールに大きく歓びを爆発させた。
貪欲にゴールを目指し続ける金崎の姿に、試合中に笑みをみせたハリルホジッチ監督。そのシンプルながらFWとして必要なアピールと気持ちは充分に伝わったことであろう。

とてもわかりやすく素直なその表現は、ストレートに自分はFWだからこそ得点がほしい、必要だという姿勢が見えた。
攻撃を期待され日本代表という場で結果を出すということは、得点を生むことであることをストレートに示したプレーの数々だった。

そしてもうひとつ。
ゴールがほしいという良さがあったからこそ放たれたシュートの数々ではあったが、シュートで終わるということはとても大切なことである。
シュートで終わるということはゴールに繋がる機会が増えるからといった結果だけでなく、シュートで終わることでボールがピッチ外に出るか、キーパーが処理することとなることが多く、プレーが切れるかプレーが止まることが多い。
シュートに行く前にパスをカットされ、カウンターを受けるリスクを減らすこともできるのだ。

もちろんシュートで終わったとしても、そのシュートの弾かれ方や、弾かれてからのセカンドボール奪取によってカウンターを受けるリスクはあるものの
攻撃に人数をかけている中でパスをカットされ、全速力で戻らなくてはならないよりも、シュートで終わってプレーが切れたり止まる可能性が高いほうが、相手から攻撃されるリスクは低いのだ。
そういった意味でも金崎が多くのシュートを放ち、ボールを攻撃の途中で奪われることなくシュートで終わる攻撃が多くあったことはプラスであったはずだ。
プレーが切れたり止まることで、人数をかけ攻撃をしていた前線の人間やサイドの選手たちが自分のポジションにゆっくり戻ることができ、ポジションを整えてからリスタートできる。

そういった意味でもシュートで終わる、ということは必要なことだ。

どうしてもゴールがほしい!とプレーする金崎のプレーに対し、結果を求めることに負けたくないという選手たちが相乗効果を生むことでチームとして得点も重ねることができる。
FWならばゴールを。そのメッセージを強く発した金崎は、日本代表にとって新しいスパイスとなるのではないだろうか。

●世界に通用する高さへの勝負 ハーフナー・マイク

1年5か月ぶりの招集となったハーフナー・マイク。
現在はオランダのADOデン・ハーグでプレーし13得点と活躍し、ハリルホジッチ監督政権の日本代表で初の招集となった。
これが最後のチャンスかもしれないと挑む日本代表での戦い。
アフガニスタン戦では後半途中からピッチに投入されると、シンプルに自らの役割に徹しプレーした。

クロスボールを入れ、高いマイクの頭に合わせ、落とす。
その「一芸」がW杯という戦いの場において、必要となることもあるであろう。

まだW杯への出場権を得たわけではないが、W杯出場は日本代表にとって最低ラインのノルマだ。
世界と戦うために積み上げたチームがブラジルの地で世界の壁に音を立ててぶつかった。思っていた以上に世界の広さを突き付けられた形となった日本代表。
W杯という戦いにおいて、23人という代表選手たちを構成する上で、さまざまな戦いを想定しなければならない。
オールラウンダーが全員でもダメ。うまいだけの選手でもダメ。選手の配置はもちろん状況や戦い方、勝っている時負けている時、得点が欲しい時、守りたい時等さまざまな想定をして選手を選考しなくてはならない。

後半途中から絶対に得点がほしいという場面で、体力も尽きている時間帯で残り時間も少ない。
そんな時にクロスに対して絶対に競れるという選手がいるとすると、どうであろうか―。
ハーフナー・マイクに求められているものは、この部分だ。

しかし、ザックJAPAN時のマイクは飛び道具として弱い部分もあった。
高くてもそれが簡単に世界に負けてしまう高さならば、日本人らしくすばしっこいスピード系の選手の方が世界には脅威となるかもしれない。
だからこそ、マイクが高さを絶対の選手とするならば、世界に通用するのは最低ライン、むしろ勝てる選手でもなくてはならないのだ。

アジアで通用するレベルのものではなく世界のトップクラスのディフェンダーや強きFWたちにも、そしてもちろん世界の名高いGKたちにも勝てる強さを持った選手でなくてはならないであろう。

ハリルホジッチ監督は世界で戦う日本代表を見据え、そのひとつの可能性を実際に見るためにマイクを招集したのであろうと察する。
アフガニスタン相手にとにかくマイクへと集中的にボールを当て、攻撃の時間を作った日本代表。
3点リードしていたという試合状況を考えてではなく、あの時。日本代表がリードされているもしくは引き分けている状況と仮定した上で、どうしても1点を獲らなくてはならない状況と仮定しての投入だったはずだ。
その中で、ハーフナー・マイクが落としたボールから金崎の貪欲なゴールが生まれたことは、日本代表としては仮定の中で1点をもぎ取ったという「結果」に繋がった。

今後に繋がったひとつの可能性とハリルホジッチ監督はカウントしたのではないであろうか。
これから日本代表が持たなくてはならない多くの可能性のひとつとして、強化する価値のあるひとつのプレーとなったのではないであろうか。

5-0という試合の中で、さまざまな要素が見えた日本代表の戦い。
29日には次なる戦いが待っている。

シリア戦では本田圭佑他、メンバーの変更があるであろう。
テスト要素もあったものの、あくまでW杯へ向けての予選。勝たなくてはいけない試合だ。

結果が求められるという前提の戦いであるからこそ、そこには覚悟も責任も必要となる。

ひとつギアを上げると明言したハリルホジッチ監督が、これから日本代表を世界仕様にするための時間を築く。

Good!!(100%) Bad!!(0%)

この記事も読んでみる