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【コンサドーレ札幌】 北海道コンサドーレ札幌と名称を変更。継続を力に上位進出を狙う。2016展望 【J2】

2016/02/14 11:56配信

Tomoko Iimori

カテゴリ:コラム


黄金世代の筆頭、日本サッカーの生んだ天才・小野伸二獲得に続き、昨オフには同じく黄金世代の筆頭であり日本代表で一時代を築き日本最高ボランチと言われた稲本潤一を獲得と、話題性が高かったコンサドーレ札幌。
シーズン途中まではプレーオフ圏内を争うグループの中にいながらも、その後は一歩後退した位置での戦いとなり、上位争い、プレーオフ争いを現実的に行うことができなかった。
戦国時代J2の中でも札幌は存在感を出すことができるのではないかと思われたが、リーグ全体的に勝ち点の標準が高かったシーズンの中で中位という位置となってしまった。

今年も目標を昇格と掲げるが、選択した道は「継続」。
シーズン途中から指揮を執ることとなった四方田監督のまま、選手の大幅な入れ替えもなく要所に戦力をプラスする形でチームの熟成を図る。

戦国時代が続き厳しい戦いとなる今季のJ2で、存在感を示し勝ち点を重ねプレーオフ圏内、そして上位争いを展開することができるであろうか。


●結果が悪くない中での監督交代劇

昨年、シーズン中盤まではコンサドーレ札幌も勝ち点が僅差でひしめくプレーオフ圏内の戦いの中で争っていた。
一昨年シーズン途中から就任したバルバリッチ監督は、近年の札幌の監督を務めた監督たちと比較しても、明確な戦術ルールを持った監督だった。
若い戦力が多い札幌は、選手の経験という部分ではまだまだ未熟な部分も多く、個の技術でカバーできるほどの質の高さを持っているわけではない発展途上中の選手も多い。
そのため、ハッキリとしたルールが存在する中にはめたサッカーをしたことで、チームとしての理解度が高く浸透もした。

積極的に前からボールを奪いに行くのではなく、相手がボールを回し持っていても、センターラインを越える攻撃以外はボールを追いにはいかなかった。
後ろでブロックを敷き、前線の選手たちも自陣に戻り、相手のボールが入ってくるまで待ってからボールを奪いにいった。
ボランチ位置で稲本のボール奪取能力が非常に高く、稲本自身がボールに関わる位置でなくともボールが出せるであろう場所に身を動かししっかりとコースを消すことで、危険度の高い場所に相手ボールが出てこないという強みも生まれた。
自陣の中盤でボールを奪うと、一気にカウンターで攻撃に出る。

シーズン序盤から中盤でボールをコントロールし前線にチャンスを生み出す小野伸二が負傷によって出場できていなかったこともあり、
中盤で構築するサッカーではなく、カウンターでゴールを狙い守るサッカーをした札幌。

この形が札幌にぴったりとはまった。
守備に関してのルールが多いことがわかるディフェンスは、時には5枚にも変動し、しっかりと守れるディフェンス力を持って戦っていた。
見ていて面白いサッカーでは決してないかもしれないが、明確な主旨を持っているサッカーを展開したのは、近年の札幌ではなかなか見られなかった。
これまでは目指す理想と現実の差が開き、なにを目指しているのか、どんなサッカーがしたいのかという点がフワフワしてしまうサッカーだった時期も存在したが、
この明確なプランを持ったサッカーは戦術理解度も高く、J2においてある程度戦える手ごたえを感じさせるサッカーであった。

しかし、バルバリッチ監督は解任。

理由は、守れるものの得点を重ねることができず引き分けで終わってしまう試合の多さや、2点目を獲るには難しいサッカーであること。
プロサッカーはお金をもらっている以上エンターテイメントの魅力もなくてはならないという観点から、見ていて面白いサッカーでなくてはならないという理由からだった。
決して面白いサッカーではなくとも勝てば良いというだけの納得せざるをえないほどの順位や勝ち点だったわけでもなかった。
負けはしないが、勝つ可能性はあるものの勝てていないサッカーならば、リスクを負ってでも勝ちを目指すサッカーをしてスタジアムを湧かせたい。
それがコンサドーレ札幌が必要としたものだったのだ。

チームに長く携わり、若き選手たちの育成を行ってきた四方田監督がトップチームの監督に就任。
シーズン途中の監督交代は、なんの準備もないままにすぐに試合を迎えなくてはならないため、チームがうまく機能するまでには試合をこなす他ない。
厳しい状況のその中で、四方田監督は自らのサッカーを掲げ、思ったよりも早くそのサッカーの方向性は浸透した。四方田監督の指導を受けたことのある育成世代からトップへと上がった選手が多かったこともあったのであろう。

守備的だったバルバリッチ監督とは違い、積極的に前へと出るようになった札幌の攻撃は、ハイプレスへも動き、ボールを高い位置で奪取することも増えた。
そのため、どうしても疲れの出る時間帯が存在してしまうものの、それまでハーフラインを越えるところから動き出したサッカーだったところから、前へ前へと出るサッカーとなったことで、確かに見る側としてはサッカーとして面白い展開が増えたサッカーへと変化した。

小野伸二が復活するとその可能性はおおいに拡がり、シーズン途中から加入した2014年よりも周囲の選手たちの把握が進み浸透したことは大きかった。
小野伸二はボールを持っても頭を下げて足元を見てプレーする選手ではないため、常に視野が広くピッチ全体の図を把握してボールを動かすことができる。
時に足元ばかりを見て駆け上がる選手たちとの連携が合わずにイライラする場面も2014は観られたが、昨季は時間を共に重ねた中で共有した連携を把握し、
チームとして四方田監督の掲げるサッカーを元に、積極的に周囲を理解して戦った。
それはチームの武器となり、小野伸二が復帰してからの札幌は大きな心臓部を手に入れ、終盤にはプレーオフ圏内に他チームの勝敗によるという条件付ながらも届くこともあるかもしれないという可能性を生む位置にまで回復した。

しかし、自身の力でプレーオフ圏内を争っていた時期もあったものの
昇格という具体的な目標に手が届きそうな位置で戦ったかというと、それは手が届かなかったという位置だったことが現実だ。

それでも札幌は大幅な方向転換はせず、継続を選択した。

四方田監督の元にチームの方向性は継続され、バルバリッチ監督の戦術の元ではディフェンスの連携での強みはあったものの、スピードや個の能力としては戦国時代J2の攻撃に勝っていたとは難しく
センターバックの補強がポイントとなっていたが、ヴィッセル神戸を満了となった経験豊かな黄金世代・増川隆洋を獲得。
さらには新外国人を迎え、継続にプラスαの形で2016年を戦う。


●J2の脅威となった稲本潤一

昨年、J2に所属のチームに取材へ向かうと必ず一貫して質問してきたことがある。
今季J2で戦っていて、この選手はすごい、この選手は驚異と感じた選手は存在したか、というという質問だ。

主旨の全く違う取材であっても、その質問を一年通じて行っていたが、
その中で一番多く名の出た選手は、昇格候補筆頭だったチームの選手…大宮アルディージャの家長よりも、セレッソ大阪の現役日本代表・山口蛍でも、J2最強FWだったであろうジェイでもなく

コンサドーレ札幌の稲本潤一
という回答だった。

稲本さんには、なにもさせてもらえなかった―。
そう話したのは、昨年ザスパクサツ群馬に所属し、今季大宮アルディージャに移籍した江坂任だった。

江坂は大卒ルーキーながら13得点を記録し、オフには複数のJ1チームが争奪戦をしたほど、昨年のJ2で注目された選手の一人だが
これがプロなのだと痛感したのは稲本さんの存在だった、と言った。

昨年はシーズンスタートから稲本の稼働時間がかなり長く、稲本がいなければ札幌のサッカーは成り立たないほどに、稲本の存在感は大きな大きなものだった。
読みの鋭さ、コースを消す能力、ボール奪取はもちろん、身体の強さ、攻撃への一針報いるパスに、セットプレーでのポジション取り…。
中でも寄せの速さは群を抜いていた。一瞬の相手のミスとも言えないようなズレでも見逃すことはない。その瞬間にボールを奪っている。
J2の選手のプレーではないと感じさせる、脅威をみせた。

ピッチの上で攻撃に転じる際、稲本を突破しなければならない中で、
どんな手を使ってもすべて読まれたと言葉にした選手も存在した。
一人で2人3人の動きを予測し全てを押さえることのできるその壁は、J2の中で一番の脅威となっていたのだ。

負傷等によりシーズン通してずっと出場をしていたわけではなかったが、その存在感はズバ抜けたものがあり、
他のチームには存在しない、札幌だけの大きな武器となったことは間違いない。

一瞬のトラップの仕方によって、その一瞬の隙に足が伸びてきている。
トラップの方法を間違ってしまったら、その瞬間にボールを奪われピンチが与えてしまう。

それが稲本潤一から見える「世界」を感じる驚異だったと戦った選手たちは口にする。
2016シーズンもその大きな武器がJ2の脅威となることであろう。

降格から、4シーズン目。
今季も昇格へ向けての厳しい戦いが予想されるが、継続という選択が生む結果を魅せることができるであろうか。
タレントが多く、そして連携も深まってきている札幌が、大量補強ではなく、自らがとこだわり我慢しながら育ててきている選手たちと、経験豊かな強力なベテランたちの融合、そしてプラスαでJ1への道を切り開くことができるであろうか。

札幌が目指す場所は、J1だが、ただJ1に上がるのではなく
チーム、選手はもちろんサポーター、そして地域全体となっての昇格を掲げる。

北海道コンサドーレ札幌という名に変更され、より北海道全体へと根付く存在へ。
北海道から世界へ。これは当然冗談でも夢物語でもなんでもなく、夢であり、具体的な目標だ。

2016シーズン、継続の戦いから未来を拓く。

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